10連休の中頃、東北三山(栗駒山・岩手山・秋田駒ヶ岳)を登ってきました。3つの山とも標高8百メート付近からは雪の斜面を登ります。さて栗駒山と秋田駒ヶ岳は完登することができたのですが、岩手山は雪斜面の傾斜がきつくなり、不安を覚えた仲間がいましたので、そこから撤退しました。
秋田駒ヶ岳では最高峰の男女(おなめ)岳を登ったのですが、頂上直下は短いものの岩手山並の傾斜があったと思います。
自宅に戻ってから考えたことは「一般登山者が安全に登ることができる雪の傾斜の限界はどの程度か?」ということでした。
最初にまず条件を決めました。
- 雪の状態は「蹴り込めば登山靴が半分程度埋まる程度の硬さの雪」としました。概ねスキー場のゲレンデ並と考えて良いでしょう。
- 一般登山者については「無雪期登山の経験は十分ある。8本爪以上のアイゼンを装着している。ストックまたはピッケルを持っているが、本格的な雪上訓練の経験はなく、ピッケルを使った滑落停止練習はしていない」としました。
雪山登山の難しさは斜面の傾斜だけではなく、雪面の硬さでも変わります。例えば初冬の富士山では風に叩かれた雪面は氷のようになりアイゼンの爪がかろうじて刺さる位になります。こうなると僅かな傾斜でも滑落する危険性がありますから、危険度は高まります。
さて岩手山の撤退した地点から頂上にかけての傾斜を国土地理院の地図で分析すると約28度でした。
また男女岳の傾斜もほぼ28度でした。雪の状態は男女岳の方が少し柔らかく蹴り込めばくるぶしまで雪に埋まる状態でした。また男女岳の急斜面は80m程度で岩手山の1/10程度です。
つまりスケールの違いと雪の状態の僅かな違いで男女岳は登ることができ、岩手山は断念したということになります。要因としてはスケール(からくる一種の恐怖心)の違いが大きかったと思います。
以上のことから本格的な雪上訓練をしていない一般登山者が安全に登ることが可能と考える傾斜の限度は30度以内と私は判断しました。なお安全に登ることができると考えるのは登山者本人です。ざっくというと設定条件下では30度程度の傾斜では万一滑ってもすぐ止まりますから安全性は確保されていると私は考えています。
その理由はスキー場の傾斜を考えるとわかります。
スキー場では傾斜25度~30度程度を急斜面と呼び、それを超える斜面を超急斜面と呼ぶようです。
急斜面の代表コースとしては白馬八方の黒菱ゲレンデで、ここは最大傾斜31度平均傾斜27度です。春先のアイスバーン時に転倒するとかなり滑り落ちる可能性がありますが、雪が柔らかい(つまり設定条件と同じ)状態ではまず滑り落ちることはありません。
しかし一般登山者にとって登山は楽しみのために登るものであり、不安に怯えながら登るものではありません。
そう考えるなら傾斜角度25度程度を限界と考えて残雪期登山を楽しむのが良いでしょう。
つまりスキー場の中級者向け斜面を登山靴で登り下りするイメージです。このあたりを目安に登山計画を組むべきだったのでしょうね。