WSJにInvestors try stock picking as volatility risesという記事が出ていた。
米中貿易交渉が長期化し、また世界的に政治地政学的リスクが高まる中、米国株の値動きが荒くなっている。
一般に投資家はボラティリティの上昇を嫌う。だが記事は一部の個人投資家が株式相場の値動きが荒い時こそ、個別銘柄を安値で拾うチャンスと考えていると報じている。
大きな流れで見るとリーマンショック前の2000年代は、個別株の動きが産業セクターの株価動向より投資パフォーマンスに影響を与え、それ以降は産業セクターの株価動向が個別銘柄より投資パフォーマンスに影響を与えたことがバンカメ・メリルの調査で示されている。
この流れに変化が出たのが、今年の第1四半期だった。10年ぶりの個別銘柄の影響の方が産業セクターの影響よりも強くなったのだ。
セクター優位というのは、例えばIT銘柄なら何でも上昇するという時代だから、投資家は個別銘柄を物色するよりITセクターをETFでまとめ買いする時代である。個別銘柄優位というのはその逆でIT銘柄の中にも値上がりする銘柄も値下がりする銘柄もあるから、個別銘柄を選択しようとすることを意味する。
ただ私は、限られた資産を運用する個人投資家、特に退職金を運用する人々にとっては個別銘柄に過度に投資することは危険だと考えている。
それは個別銘柄を選択することは容易ではないからだ。著名な投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイでもベンチマークであるS&P500を上回ることは中々難しいのである。
「運用環境が不透明だから、優良個別銘柄を選びましょう」というのは、証券会社の誘惑である。優良個別銘柄に投資するとセクター平均や市場平均を上回るパフォーマンスを上げることができる可能性があるということと、一投資家がその優良銘柄を発掘できるかどうかということは分けて考える必要がある。
個別銘柄選択を否定する訳ではない(実際私も個別銘柄選択でも投資を行っている)が、それは遊びの範囲でやるべきことである。
遊びの範囲とは「投資が成功すれば、海外旅行に行く時ラグじゃリーホテルに泊まろう。でも上手くいかなければ暫く国内旅行で余暇を過ごそう」という程度の余裕の中で遊ぶという意味である。