金融そして時々山

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最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国のジニ指数は所得配分後?

2014年04月30日 | 社会・経済

今日エントリーした「中国の所得格差は恐らく政府発表よりかなり悪い」という記事に関して、読者の方から「それは税金・年金など所得再配分後の数字ですか?」という質問を頂いた。

記事を読んだ記憶では所得再配分後とは明記していなかったと思うが次のような理由から私は所得再配分後の数値であると判断している。

理由

ジニ指数の各国比較は色々な機関が発表しているが、一覧性の高いCIAのデータを見ると次のとおりだった。

中国 0.474 日本 0.376 (参考 米国 0.45)

日本については昨年10月に厚生省が発表した2011年の所得再配分調査によると、所得再配分後のジニ指数は0.379だった。したがって日本については所得再配分後のジニ指数を使っていると思われる。またA国のジニ指数は所得再配分前、B国のジニ指数は所得配分後では各国比較ができないから、CIA等の機関は所得再配分後のジニ指数を使っていると判断される。

ちなみに日本の所得再配分前のジニ指数は0.55と高い。その大きな理由は「公的年金は所得に加えないため、年金を受給する高齢者が増えるとジニ指数が大きくなる」という特性があるようだ。

ジニ指数についてこれ以上詳しいことは調べていないが、各々の国の所得再配分前と後のジニ指数を比較するとその国の社会保障制度等格差是正策が見えるのだろう。ただし手に余る仕事なので、いつか専門家の研究を読んでみたいと思っている。

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中国の所得格差は恐らく政府発表よりかなり悪い

2014年04月30日 | 国際・政治

今朝CNBCサイトで見かけたのが。China wealth gap may be far worse than official estimatesというタイトルの記事。

中国の所得格差が大きいことは周知の話なので目新しいものではないが、簡単に紹介すると次のとおりだ。

政府推計による中国のジニ指数は2012年の0.474から13年の0.473に若干改善しているが、China Family Panel Studies(北京大学がイニシアチブを取っている家計調査)をベースにした民間推計では0.55と所得格差はもっと大きい。

ジニ指数は0が完全平等で数値が1に近づくほど格差が大きくなる。ジニ指数0.47でも米国の0.45より高いが、0.55となると世界トップクラスであることは間違いない。

中国の所得格差が経済成長とともに広がってきたことは周知の事実で、ミシガン大学の調査によると1980年代に0.3だったジニ指数は0.55に拡大している。

この数字だけを見ると中国の急速な経済成長が所得格差の原因なのか?と条件反射的に思う危険性があるが、私は第二次大戦から70年代までの頃の中国、つまり大部分の人が等しく貧しかった時代というのが長い中国史の中では例外的な時代で、現在は中国史の標準?に戻ってきたのではないか?と考えている。

戦前の東洋史家・内藤湖南の「宋代以降近世説」やそれを踏まえた與那覇潤氏の説を参考にすれば、宋代(960-1277年)に中国では皇帝以外の身分制や世襲制が廃止され、経済活動の自由が拡大し(機会の平等が拡大した)、商才を発揮してひと山当てた人や試験勉強に没頭して科挙に合格した人など一握りの成功者に莫大な報酬が入る仕組みができた。つまりこの説に立つと中国は経済面では千年前から競争社会で格差がつきやすい(あるいは格差を経済発展の原動力とする)社会なのである。

しかし格差を努力のインセンティブであることを認めても、それが度を超すと弊害が大きくなる。

管見では所得格差や科挙に合格して高級官僚になった人たちの貪官汚吏(たんかんおり)振りが人々の我慢の閾値を超えると社会不安が拡大しやがて革命が起きて王朝が交替するというのが、中国史のサイクルである。

社会経済学者はジニ指数が0.4を超えると社会不安が発生する可能性があると指摘するが、もう一つ注目しておくことは貧困者の数だ。今中国では1億2千8百万人(つまり全日本人と同じ数の)の人が貧困ライン(年収368ドル)以下で暮らしているという。

この貧困者数が歴史上の民衆暴動時のトリガー値と比べて大きいのか小さいのか?ということは興味のあるところだ。

コメント (1)
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