アップルは来年(2013年)マック製造の一部を米国で行うと発表した。FTによると、クックCEOはそのために1億ドル以上の投資を行うと発表した。アップルの製品の大部分は鴻海(フォンファイ)の子会社フォックスコンで作られている。フォックスコンについては2010年に10名以上の飛び降り自殺が発生したことでマスコミを賑わせた。また今年11月には深セン工場で5千名が暴動を起こしたというニュースが流れていた。
クックCEOは、今年1月にニューヨーク・タイムズがアップルの下請けを行なっているフォックスコンの工場の実態について批判的な記事を発表した後、この問題の解決に取り組むと表明した。そしてアップルは非営利団体のFair Labor Associationに参加し、同アソシエーションはフォックスコンの工場で聞き取り調査を行なってきた。フォックスコンは来年7月を目処に雇用を増やし、給与水準を維持したまま労働時間を短縮すると発表している。しかしその後も騒動が続いていることを見ると問題の根は深そうだ。
サプライチェーンの労働条件の改善まで発注企業の責任範囲と考えると、中国でモノ作りを行うコストは結構高くなるだろう。アップルの動きはサプライチェーンの労働条件に対する透明性と知的財産権の保護から生み出された一つの”解”だろう。
ただしクックCEOはNBCのテレビインタビューで「総ての生産ラインを中国から米国に持ってくるのは困難だ。それは価格の問題ではなく、技術の問題である。米国の教育システムが変化し、もの作りに必要なスキルを育てなくなっていることが原因」と述べていた。
従ってすぐに製造業の米国回帰が大きな動きになるとは思わないが、アップルの動きがサプライチェーンの変化を告げる可能性はある。
時代の変化を告げいているというと、クックCEOはアップルはテレビについて”何か”新しい仕掛け”を考えていることを示唆していた。具体的な内容はまだ秘密だが、遠くない将来テレビで何かが起きることは間違いなさそうだ。