総選挙で自民党の勝利が織り込まれて以来相場の上昇が止まらない。「噂で買って事実で売られる」という相場の特性から選挙後や内閣発足後は売られるのかな?と予想していたが、これは見事なハズレ。
今朝(12月27日)も日経平均はシカゴ先物市場の90円高を引き継いでしっかりと推移している。ドル円為替は85円台半ばと私が予想していた84円をあっさりと越えてしまった。
株高・外貨高はマイポートフォリオの点からは大いに歓迎。ブログの読者の中にも今年は大いに含み益(あるいは含み損の減少)で、気分良く年を越せると考えておられる方も多いのではないか?と推測する。
市場は安倍政権による「インフレ率2%をターゲットした金融緩和政策」を歓迎し、日本株買い・円売りドル買いが進んでいる。
だが言うまでもなく財政発動による景気浮揚には国債の追加発行が必要だし、円安は原材料とエネルギー資源の上昇を招き、電力代等の高騰を通じてじわりと家計を圧迫する。
自らを危機突破内閣と名付けた安倍内閣。新しく財務相に任命された麻生大臣は「24年度補正予算については44兆円の国債発行枠にこだわらす」と記者会見で発表した。
麻生氏の財務相任命については「国債発行枠増額等財政健全化の観点から大型景気対策に反対する財務省幹部をコントロールできるのは麻生氏のみ」と解釈する識者が多い。
ところで円安やインフレは多くの日本人にとってプラスになるのだろうか?
どのような人にとってプラスになるのか?というと、まず海外資産を保有し、その海外資産から将来配当が期待できる人である。円安になると輸出企業は目先競争力が高まり輸出が増える。しかし長期的に見ると、原材料費やエネルギーコストが上昇するので、円安は諸刃の剣である。
サラリーマンにとってはどうだろうか?インフレが給与の上昇に転嫁されていう限り適度な物価上昇は悪い話ではない。だが給料の上昇がインフレに追いつかない限り、生活は苦しくなる。
ではこれから日本で益々増える高齢者特に年金生活者にとって円安・インフレはどうだろうか?これは短期的にはまったくマイナス。物価は上昇しても年金(特に企業年金等)はフルに物価スライドしないから生活は苦しくなろ。楽しみにしていた海外旅行も高くなる。
むろん長期的にみると、デフレ脱却が日本経済を活性化し、税収や社会保険料の増加につながり、年金財政基盤を強化するという効果はあるが、これは一般の人には見えない話だ。
冷静に考えると安倍内閣は「危機突破」内閣というより、「危機転嫁」内閣というべきなのだろう。つまりデフレと経済停滞という慢性病的な危機を「インフレ・財政の一層の悪化」という劇薬的治療にかけた、と判断するべきだ。だからといって私は阿部内閣がやろうとしていることを否定する訳ではない。だが劇薬治療は長続きしない。
本当に経済を活性化するには、TPP参加等による経済活動の活性化や金融円滑化法の打ち切り(既に麻生大臣は言及しているが)により、経済主体を筋肉質に変えることができるかどうかにかかっているのである。