金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

クルーグマンも結構批判されているね

2010年06月22日 | 社会・経済

ニューヨーク・タイムズにポール・クルーグマン教授がNow and Laterというタイトルで「経済が停滞している今こそ支出を増やすべきだ」という小文を寄稿していた。

クルーグマンの主旨は「米国の財政赤字の大きな原因は経済危機による税収減と金融システム救済による支出で危機が緩和すると改善する。予算局の予測では景気が回復するとGDPの10%に相当する赤字は2014年には4%に削減される。もっともこれで財政均衡が図られるわけではない。財政を改善させるにはヘルスケアコストの削減を中心に支出削減を図る必要がある。また5%の付加価値税を導入するべきだ。だが今は税制緊縮策をとるべき時ではない。景気が回復してから財政均衡を目指すべきだ」というものだ。

このエッセーには今時点で238のコメントが寄せられていた。ざっとみると批判的な意見が多くストレートに賛成という意見は少なかった。

短くて面白いコメントを紹介しよう。Pau, it sounds Greek to me.「ポール、それは私にはギリシアに聞こえるよ」

The Japanese has been following your advice for the past 15 eyears・・・ How has that working for them?

「日本人は15年間あなたのアドバイスに従ってきたけれど・・・それはどのように効き目があったの?」

同氏の意見に賛意を示す人も「財政支出削減のために軍事費を削減するべし」とか「代替エネルギー開発など長期投資を行うべし」など付帯条件付が多い。

☆  ☆  ☆

日本では菅内閣が「強い経済 強い財政 強い社会保障」をスローガンに掲げた。ただこれだけでは単なるwish listを並べただけに過ぎない。財政支出を抑制しながら、以下に経済を強くするか?社会保障を充実させるか?の具体策が課題だ。

「ITで70兆円の市場創出」というのもスローガンとして悪くない。しかし目的と手段が倒置するとこれはおかしなことになる。「IT技術を使って、公共サービスを合理化する」「消費者にとって利便性が高く、コスト負担の少ない医療サービスを生み出す」という目的が明確化しないで、市場創出が目的化すると巨大な浪費に終わる。

今こそ限られた財政支出を如何に有効に使うか?が問われる時はないだろう。

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中国が工業生産高で米国を抜く日

2010年06月22日 | 社会・経済

ファイナンシャル・タイムズは米国の著名な経済コンサルタント会社・IHSグローバルインサイト社が2011年に工業生産高で中国が米国を抜き世界一になると予想したと報じている。

米国は1890年代後半に英国を抜いて、工業生産高で世界一になったが、110年でその座を中国に譲ることになりそうだ。

ボストン・コンサルティング・グループのSikin氏は世界一の座を中国に譲ることについて米国は過度に悲観的になるべきではないと述べている。曰く「人口で4倍、賃金で10分の1の国がいづれの日か工業生産能力において前にでることは明らかなことだ」

IHSによると昨年の米国の工業生産高は1兆7,170億ドルで、中国は1兆6,080億ドルだったが、2011年に中国の工業生産高は1兆8,700億ドルになり僅かに米国を超える見込みだ。

これはインフレ調整前のドルベースの予想で、インフレ調整後では米国のインフレ率は中国のそれよりも低いので中国が世界一になるのは数年遅れて2013-14頃とIHSは予想している。

いずれにせよ中国が工業生産高で世界一になると、1850年代にその座を英国に奪われてから150年ぶりに返り咲くことになる。中国は英国にその座を奪われるまで1,500年以上工業生産において世界一であった。

後世の歴史家は中国は150年の停滞を経て再び世界一の地位に戻ったと書くだろう。これは私見だが。

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