金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

バルマー、ウインドウズの将来を擁護する

2010年06月04日 | デジタル・インターネット

先日アップルのジョブズCEOが「ウインドウズの凋落は続く」と演説した件を紹介した。その流れで公平の観点から今度はマイクロソフトのバルマーCEOがウインドウズの将来を擁護する演説を同じカンファレンス(日は違う)で行ったことを紹介しよう。

バルマーCEOはコンピュータの世界は急速に変化していくが、多目的に使う一般的なコンピュータとしてのPCの人気は持続するだろうと述べた。一方彼はマイクロソフトが「携帯電話のサイクル」を見落としたことを認め、スマートフォンにおける同社のOSが5番目の人気しかないことに失望を示した。そして「業界リーダーが直ぐに交代する状況を考えるとマイクロソフトにもチャンスはある」と述べた。同社はクリスマスシーズンに新しいバージョンを投入する予定だ。

☆   ☆   ☆

米国のスマートフォンの市場シェアは動いている。今年3月の調査によるとアンドロイドOSを搭載する機種のシェアが28%に上昇して初めてiPhoneのシェア(21%)を上回った。これは携帯電話会社ベライゾン・ワイヤレスがグーグルのアンドロイドを搭載したDroid(モトローラ製)を積極的に販売したからだ。

なお米国で一番売れているスマートフォンはブラックベリーでシェアは36%だった。

マイクロソフトが割ってはいることができるかどうかはこれからの見ものである。

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キャリートレーダー、ボラティリティに苦しむ

2010年06月04日 | 金融

ファイナンシャル・タイムズはVolatility puts added pressure on carry tradersという記事で昨今のキャリートレードの状況を分析していた。

記事によると今年の初めの頃、ヘッジファンド業界で流行した手法は「ユーロをショートして、アジアと南米の通貨と株式を買い持つ」というものだった。だがこれが利益を生んだのは5月まで。ギリシアなど南欧の国債懸念が世界的に広がると、株や豪ドルなど成長指向通貨まで急落し始めた。このボラティリティの高まりでヘッジファンドなどキャリートレード別名Differentiation tradeに賭けていた投資家は一斉にポジションの撒きなおしに殺到した。

つまり投資していた新興国の株や成長通貨を一斉に売り始めた。

幾つかの世界最大規模のヘッジファンドは損失を計算し始めている。140億ドルの資産規模を持つムーア・キャピタルのマクロ・ファンドは5月の最初の3週間で7.7%の損失を出した。また多くのアジアをターゲットしたファンドはもっと大きな損失を出している。

RBS証券のストラテジストRuskin氏は「米国の経済状態の確かが確認される第3四半期のデータが出るまで、リスクトレードは極めて不安定だろう」「リスク指向への打撃は経済にダメージを与え、それがまたリスク指向を減少させる」と述べている。

ヘッジファンド業界はユーロ圏に問題が起きても相対的にアジアへの影響は少ないと考えていたが、実際は悪影響が広がる懸念のため他の市場でもリスク指向が縮んでしまった。

この問題の一つの原因についてロンドンのあるマクロトレーダーは「ヘッジファンドはしっかりしたファンダメンタル分析に基いてキャリー取引を行ってきているが、彼等は同業者がやっていることやロングポジションのサイズの大きさを見ていなかった」と分析している。

つまりアジアの相対的に小さな株式市場で幾つかのファンドが一斉に株を売り出すと懐が狭いので自らの売りで大きく値を崩してしまうということだ。

キャリートレードが成立する条件は「資金調達に使う通貨の金利と資産運用から得る金利の差が十分に大きいこととボラティリティが低い」ことだ。

キャリートレード愛好者にとってより大きな問題は「世界的に流動性が収縮し米ドルが強くなる時にボラティリティが増加する傾向がある」ということだ。

また米ドルのLiborが上昇している(ファンディングコストが上昇している)ことを考えると、ドルをキャリートレードのファンディング通貨に使う魅力は薄れている。むしろファンディング通貨としてユーロや円が使われるだろう。

エマージングマーケットが安定してボラティリティが低下するとキャリートレードが復活するだろう。その時ファンディング通貨に使われる可能性が高いのはユーロだ。ソブリンリスク問題は簡単には片付かないのでユーロ安が持続すると人々が考えるからだ。

いずれにせよ世界を動き回る資金の大きさが器(新興国の市場規模)の大きさを越えている限り、時々このような問題が出ることは避けられないのかもしれない・・・・

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中国の労働政策は変化している

2010年06月04日 | 国際・政治

昨今中国の労働政策の変化を示唆する動きがマスコミを賑わせていた。一つはホンダの工場のストライキでもう一つは台湾の電子メーカーの中国生産拠点フォックスコンの従業員連続自殺事件とその後の3割の賃上げだ。従来中国のマスコミは労働者のストライキについて報道する習慣がなかったが、ホンダのストライキについては人民日報のタブロイド版が積極的に取り上げている。

ファイナンシャル・タイムズの記事によると、人民日報のタブロイド版Global Timesの社説は「市場開放以来30年間、一般の労働者は経済繁栄の最小の分け前しか受け取っていない。ホンダの4つの工場における一時的な生産ラインの停止は中国の工場における組織化された労働者保護の必要性にハイライトをあてる」と報じている。

タイムズは労働争議というデリケートな問題をマスコミが取り上げた背景について次のような解説を加えている。

第一に政府当局が、メディアを通じて単に現実を認めたということである。尽きることのない安い労働力の提供により、中国経済は離陸したがそれは終わりに来ている。その一つの理由は人口動態の変化だ。中国の一人っ子政策のため、40歳以下の労働者は5分の1に減少した。労働者の数が減ったことは交渉力が増えることを意味する。ホンダの従業員は50%以上の賃上げを要求している。

80年代と90年代の出稼ぎ労働者と異なり、現在の地方からの労働者はより多くの選択肢とより大きな望みを持っている。多くの労働者は数年間都市部で働いて金を貯めて帰郷することに満足していない。彼等は活気のある都市部に移住することを求めている。このことは彼等がもっと高い給料を必要とすることを意味する。

第二の理由として、共産党はより良い労働環境を作り出すことに利害が一致するからである。安い中国人の労働力を日本や欧米の多国籍企業に提供することは、手段であって目的ではない。鄧小平は外国の投資資本を豊かにするのではなく、中国人が豊かになることは輝かしいことだと述べている。企業利益に対する労働配分率は低下しているが、これは共産党の掲げる「調和の取れた社会」というスローガンに反するものである。

2年前に中国政府は労働契約法を変え、会社と労働者は書面による契約を交わすことを定めた。賃金上昇圧力とともに、雰囲気の変化は「低賃金、ストライキのない、雇用と解雇が自由な労働市場」に慣れた外国人投資家に明らかに影響を与えている。

しかし外国企業が中国から撤退する動きはほとんどない。というのは中国は単なる低コストの生産拠点から重要な市場に変わり、グローバルなサプライチェーンに組み込まれているからだ。

たとえばホンダは部品メーカーのネットワークを中国に持ち込み、中国の部品メーカーと関係を構築している。

以上のような理由から中国政府は恐らく労働者に慎重なサポートを与え続けるだろう。ただし労働運動が政治運動化することについてはいかなることがあっても寛容性を示さないだろう。

☆  ☆  ☆

中国労働者の賃上げ圧力が続くことは、中国に工場を持つ日本企業には短期的に頭の痛い話だろうが、これは避けては通れない話だ。長期的に見ると中国の内需が拡大し、人々が裕福になることで政治的な穏健化が期待できるからだ。

ところで中国の一人っ子政策のインパクトはかなり大きいようだ。日本や韓国は少子化策を取ることで経済の高度成長を達成した(教育等への投資を生産設備にまわすことができたので)。そして中国もしかり。だが今日本は少子化政策のツケを払う必要に迫られている。中国もまた20年後位にはツケを払う必要があるのだろう。膨大な数の高齢者を少ない若者の背中で背負うため中国は豊かになりたいと切に感じ始めていると理解するべきだろう。

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