金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

鳩山政権は何を残したか?

2010年06月02日 | 政治

今日6月2日事実上鳩山政権が崩壊した。鳩山政権は何を残したか?ということについは既にマスコミが語り始めているし、今後同じネタで受けを狙うだろう。細かいことはそれで飯を食っている政治アナリストなるプロに任せるとして、私のざっとした感想を述べよう。官民合わせて総ての権力には良い面と悪い面がある。お釈迦様の言葉を借りると「ただ良い人」という人もいなければ「ただ悪い人」という人がいないように、「ただ悪い政権」というものもなければ「ただ良い政権」というのもない。それぞれの政権は良いことをしながら悪いこともする。あるいは悪いことをしながら良いこともするというようにspectrumのどこかを占めると考えるのが客観的な見方だろう。

このように見ると鳩山内閣も幾つか良いことをした。第一にはマスコミが一番持ち上げることだが政権交代を実現した(表面的な事実はそうなのだが個人的には若干異なる見解を持っているが)。次に事業仕分けを通じて「政府の無駄の削減」に手をつけた。この辺りまでは一般的には意見の対立が少ないところだろう。

でそれ以上のことをやったか?というと後は中途半端というか政策そのものに賛否両論が分かれるものが多い。まず「子供手当て」、とりあえず今年度分月1万3千円の支給。これについては「高所得者まで支給が必要なのか?」とか「保育所の充実など現物給付の方が重要」という意見が与党内にもあったことで分かるように、政策目的(少子化の歯止め等)に対する適合性という点で問題の整理が不十分だと言わざるを得ない。

だがもっと大きな問題は郵便貯金や保険の民営化に対する大きな後戻りだ。これは明らかに市場経済を通じた合理的な資源の再配分という市場原理に反する行為だ。こんなことを続けると日本経済はますますギリシアなどのように公務員が肥大化した非効率的な南欧経済化して国の将来はおかしくなる。

今日ユーロ圏で起きている問題は、日本がこのまま誤った路線を歩み続けると陥る問題を先取りしているのである。鳩山首相は消費税の値上げを含む財政再建に対して具体的な姿勢を示さなかった。いやむしろ自分がいる間は消費税の値上げに反対するという形で財政健全化に消極的な態度を取っていた。

だが何といっても一番大きな問題は「言葉の重み」「発言に対する責任」ということを貶めたことだ。政治家は聖人である必要はないが君子たろうとするものでなくてはならない。何故かというと君子とは古代中国から東洋社会が理想の政治家の徳性をもった人物だからだ。孔子は君子と言葉について幾つかの箴言を残している。今思いつくだけでも「君子はまずその言を行い、しこうして後に従う」という言葉がある。まず実行してからものを言うということだ。出来もしないことは言わないし、言ったことは実行する、これは政治の世界の話だけではない。ビジネスの世界では初歩の初歩だ。いやビジネスどころか近所付き合いだってこんな初歩が守られない人は信用されないだろう。

冒頭の意見に立つと確かに鳩山政権というのは確かに幾つかの良いことをした(少なくともその政策をその時点では何割かの国民は支持したということにおいて)とはいえるが、マイナス面の方がはるかに多かったと結論される。その理由は首相の言葉の重さに対する信頼を国民と諸外国に失ったということが一番だ。次に「痛みを甘受しない限り財政の再建はありえない」という明快な事実をと糊塗して、国民を幻惑したことである。鳩山首相の辞任は遅きに失したというべきなのだろう。

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2010年06月02日 | ブログ

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北の旅人より

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登山靴のソールを張り替えた~登山靴のうんちく

2010年06月02日 | 

先日山から帰って夏山用の登山靴を洗った時底、特につま先が薄くなっていると感じたので、購入した石井スポーツにソールの張替えに出した。

この靴の製造元はAkuというイタリアのメーカーで日本では石井スポーツだけが取り扱っている。石井スポーツは靴底の状態を見て「今すぐ張り替えないと絶対駄目という訳ではないが替えておいて良いでしょう」と言ったので替えることにした。張替えに必要な時間は約2週間。登山の予定がないこの時期が好都合だ。

石井スポーツによると「登山靴の底の寿命は使用程度にかかわらず4年」ということだ。これはポリウレタンのミッドソールが4年から7年で経年劣化し底が離れるリスクがあるからだ。

私の靴は2年前に買ったものなので経年劣化の恐れはないが、このところ頻繁に山に行くのでビブラム底が磨り減ってきたということだ。夏山での利用を目的に買った靴だが、2月の蓼科山など2500m級の冬山で使っても全く足が冷たくならないから立派な靴である。

なお石井スポーツによると「ソールの張替えは2回が限度でしょうね。それ位で上部の方も劣化しますよ」という話だった。

靴底離れについては昨年北岳から下山中に仲間の靴底がはがれたことがあった。その時は僕が持っていた針金で応急処置をして事なきを得た。針金はパーティに一本は用意しておきたいパーツである。

さて登山靴の経済について考えてみると、私のAkuの代金2万5千円で底の張替え代が1万3千円(宅配料など込み)だ。5,6年の間に2回張り替えて使うとすると5万円程度。つまり年間1万円程度の投資だ。1万円で鋭い岩角や硬く冷たい雪から足を守り、高みの極みまで連れて行ってくれるから登山靴はありがたいパートナーである。

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一言でいうと鳩山首相は北朝鮮で負けた

2010年06月02日 | 国際・政治

今日6月2日午前中に鳩山首相と民主党の小沢幹事長が辞任するという報道が流れた。一般的に言われる鳩山首相の辞任理由は普天間基地問題の不手際と政治資金スキャンダルで内閣支持率が2割前後に低下したことだ。

鳩山内閣の支持率はかなり前から低下を続けていたがここにきて更に低下した理由は朝鮮半島の緊張の高まりだと私は考えている。特に北朝鮮がブラフとは思うが戦争も辞さないという強硬姿勢を示していることだ。

このような状態を見て良識ある日本人であれば、腰の座らない鳩山内閣に国の安全を託して良いのか?という疑問を持つことは当然である。鳩山首相辞任のニュースはFTやニューヨーク・タイムズなどの海外メディアにも直ぐ報じられた。概ね日本のメディアと同じような論調だが、タイムズは最後にこうコメントしていた。

Japan’s public did not support altering the military alliance with the United States at a time when North Korea was testing nuclear weapons. <nyt_author_id></nyt_author_id>

日本国民は北朝鮮が核兵器のテストを行っていた時に米国との軍事同盟(=安全保障条約)を変えることを支持しなかった。

私は前にブログで小沢幹事長が1年生議員らを200人程連れて中国詣でをしたことを厳しく批判したことがある。このような意味のない朝貢外交は、米国からは不信を買い中国からは嘲笑を持って見られるだけだった。200人もの外交団員を連れて行くのであれば、米国のように経済・資源・外交等において具体的な交渉をするべきなのである。

ついでにいうと鳩山首相が唱えていた「東アジア共同体」構想というものも、ユーロ危機の中で一層空疎に響いた。

新しい首相は金曜日頃には決まるという話だ。新しい総理には是非現実感覚を持って政治に臨んで欲しいものである。

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幸せは歳とともに、残念ながら米国の話ですが

2010年06月02日 | うんちく・小ネタ

ニューヨーク・タイムズにHappiness may come with age, study saysという記事が出ていた。「研究によると幸せは年齢とともに来るだろう」という意味だ。それにしてもHappiness may come with ageとは美しい言葉だ。お誕生日など節目を迎えるお年寄りに贈る言葉としては最高のものだ。

2008年に18歳から85歳までの人34万人を対象に行われた電話調査の結果が、この5月17日にNational Academy of Scienceから発表された。幸福に関する質問は「昨日「『愉快』『幸福』『ストレス』『悩み』『怒り』『悲しみ』のどれを感じたか」というものだった。

調査結果によると18歳の時人々は幸福を感じるが年とともに幸福感は50歳まで低下する。そこから幸福カーブは急上昇を始め、年とともに幸福感が増大する。そして85歳の時18歳の時よりも自分に満足するようになる。

調査によるとストレスは85歳の時一番低くなる。悩みは50歳までしっかりと一定レベルを保つがそれから急速に減少する。怒りは18歳から確実に減少し、悲しみは50歳でピークに達し73歳まで減少し、その後若干上昇する。

愉快・幸福カーブも同じ同じ軌跡をたどる。愉快・幸福も50代まで減少するがその後の25年間上昇を続け最後に僅かながら減少するが50年代前半のレベルまで下がることはない。

この研究は何故人々が幸福と感じるのかという原因は分析していない。

ところで日本では内閣府が幸福度の調査を行っている。http://www5.cao.go.jp/seikatsu/senkoudo/h21/21senkou_02.pdf

それによると日本人は30代で高い幸福度を感じる人が一番多く、その後幸福度は年とともに減少し、70代で「かなり幸せ」(10点満点の7点)と感じる人は44%に過ぎない。

この調査も何故人々の幸福度が年齢とともに減少するか?を詳しく分析していない。ただし日本人が幸福感に影響を与える要素として、高い順番に「健康状況」「家族関係」「家計の状況」「自由な時間・充実した余暇」「就業状況」・・をあげていることから類推すると、年齢とともに健康状態や家計の状況が悪くなるので幸福度が低下すると私は考えている。

だが幸福度は価値観のプライオリティを変えることで変化させることができるだろう。年を取ると若い時よりは体に問題はでてくる。しかし自由な時間は増える。自由な時間のプライオリティを高めてみてはどうだろうか?

失ったものや減り行くものを嘆くよりも今あるものに自足するべきだろう。

「蔵売って 日当たりのよき 牡丹かな」 小林 一茶

蔵を建て中身を充実させるために一所懸命働いてきた人が何かの理由で蔵を売りその蔵が移築された。すると今まで日陰咲いていた牡丹に日が射して何と美しいことかという意味だろう。

日米の高齢者の家計の問題は別の機会に論じるとして、健康状態や医療の程度は似たようなものだろう。とすれば高齢者の幸福感の違いは人生観の違いからくると考えるべきなのだろうか?

いずれにせよ Happiness may come with ageといえる社会を作りたいものだと思う。それが夢のある社会だと思いませんか?

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