金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

電気自動車は主役になるのか?

2008年05月27日 | 社会・経済

昨日都内でタクシーに乗ったら、少し狭くてシートが硬い。運転手さんに聞くとトヨタのプリウスだった。最近のトヨタ車はドイツ車を真似てシートを硬くしているということだ。運転手さんによると都内では数十台のプリウスがタクシーとして走っているということだが、私が乗るのは始めてである。燃費はプロパン車の4倍位良いそうだが、トータルで経済的かどうかは、バッテリーの耐久性などが不明なのでまだわからないということだった。

ガソリン代の高騰や温室ガスの問題から、車の世界で話題をさらっているのは、ハイブリッド車や電気自動車だ。私は高級自動車とは縁がないので、FTで読んだ知識位しか持ち合わせないが、メルセデスが来年リチウム・イオン電池を搭載したハイブリッド車を販売するということだ。ご興味のある方は「ベンツ S400」などで検索すると簡単に見つけられるのでどうぞ。

他の自動車メーカーも2,3年の内にリチウム・イオン電池を使ったハイブリッド車や完全な電気自動車の販売を開始するということだ。GMはサターンやシボレー ブランドのハイブリッド車を発表する。GMのシボレーボルトという電気自動車は、1リットル3気筒のエンジンを搭載しているが、その目的はバッテリーに電気を供給することで直接車輪を回すことではない。ボルトが一回の充電で走行できる距離は64kmなので、夜間に自宅で充電すると通勤利用は可能だが、電池切れに備えて発電用エンジンを搭載しているということだ。

FTはローランド・バーガー・ストラテジーというコンサルタント会社の「ガソリン価格が上昇し続け、電池の値段の下落が続くと、(ハイブリッド車を含まない)完全な電気自動車のシェアが欧州で25%、全世界で10%を占めるようになる」という意見を紹介している。もしそうであれば、これは自動車業界で100年に一度の技術シフトだろう。

このことはビジネスの世界に極めて大きなインパクトを与える。アライアンス・バーンスタインという米国の資産運用会社は自動車用バッテリー市場は現在の90億ドルから2030年までに1,500億ドルに拡大すると見込む。電力会社も夜間電力の利用が増えることで熱いまなざしを向けている。トヨタとフランスの電力会社EDFは、欧州で充電スポットを開発するため検討を始めている。

ハイブリッド車や電気自動車の普及を促進する要因は、量産によるコストダウンとガソリン車に対する「炭素税」の設定だ。ホンダの福井社長はガソリン車とハイブリッド車の価格差は2千ドルまで縮まってきたと言う。

だが問題は色々ある。一つはリチウム・イオン電池の安全性だ。リチウム・イオン電池は小型化すると過熱し発火する危険性がある。このためホンダは来年のハイブリッド車には、現世代のニッケル電池を使う予定だ。

温室ガスを抑制する環境保全の観点からは、電気自動車のエネルギー源である電気の発電方式が問題だ。つまり電力供給が温室ガス効果の高い石炭を使う火力発電に依存すると車自体はクリーンでも、トータルでは環境保全上好ましくない・・ということになる。

完全電気自動車がハイブリッド車よりトータルで見て、クリーンであるのか、また省資源的であるのかは検討を要するところだ。

また一回の充電で走行できる距離や充電に要する時間を考えると、例えコストが下がっても総ての車が電気自動車になると考えるのは極端過ぎる。燃費の良いガソリンエンジンやディーゼルエンジンを開発するとか車体重量を軽くするなどという努力が平行して行われるだろう。

欧州における電気自動車のシェアが25%というコンサル会社の予想は良い読みかもしれない。交通渋滞から走行距離の短い東京ではもっと完全電気自動車が増えるかもしないが。

少なくとも大量の自動車を抱えるタクシー会社や宅配業者は、充電のための車両交替が簡単なので、電気自動車の採用を検討するべきだろう。10年後の東京では電気自動車のタクシーに乗っても話題にならない程、電気自動車が普及しているかもしれない。

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