昨日米連銀は金利を0.25%引き下げ2%とした。市場ではこれをもって連銀は金利引き下げを一休みするのではないか?という観測が高まっている。このような観測は連銀の声明文の中から「ダウンサイドリスク」という言葉が消えたなどという細かい観察から来るのだが、そのことは省略する。私は米国のダウンサイドリスクが減少したとは考えていないので、そのことを少し述べたい。
FTはRBS Greenwich Capitalのストラティジスト・ラスキン氏の言葉を紹介している。
「消費者は下落する住宅価格、燃料と食料価格の上昇、消費者信用へのアクセス難の増加、雇用と所得の減少というパーフェクト・ストームに包囲されているという心地がしている」
またケース・シラー指数(住宅価格指数)を作った一人であるシラー氏は今回の住宅価格の下落は大恐慌時のそれを上回る可能性があると警告している。大恐慌時に住宅価格は30%下落しているが、今回は2006年6月時のピークに比べて20大都市指数で14.8%下落している。
住宅価格の下落が一番激しいのはラスベガスとマイアミで過去1年間で各々22.8%、21.7%下落している。住宅価格の下落は続いており、これが経済成長にブレーキをかけているのだ。
米国では約9百万人がネガティブ・エクイティの状態にある。ネガティブ・エクイティというのは、住宅抵当ローンの残高が住宅の売却価格を上回っている状態だ。この状態になると、借り手はまさに動けなくなる。というのは米国では新しい雇用機会を求めて人々は住宅を処分して新天地に向かうのが通常の姿で、これが経済のダイナミズムを作り出してきた。しかし住宅を売るに売れないと引っ越すことが出来ず、新しい雇用機会をつかむことも難しい。
従って住宅価格の下落を止めないと米国の景気は良くならないのである。
住宅価格の下落を止める方法は短期的には、巷間言われるように米国住宅局に問題のある住宅ローンを購入させることだろう。
しかし長期的な観点からは、私は労働配分率を高めて、健全な住宅ローンを組んで自宅を購入できるような消費者層を育ててることが肝心だと考えている。つまり企業収益を高めるため、低コストなパートタイマーへの依存度を高めてきた結果、住宅購入力のある消費者層が減ってきたのが、サブプライム問題と住宅価格下落の根源的な問題があると私は考えている。ただしこのような意見は英米の新聞・雑誌でも余り見かけないので、正しいかどうかは分からない。