金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国の逆資産効果は根が深い

2008年05月26日 | 社会・経済

今日の東京は気持ちの良い五月晴れだが、株式市場の方は、週末の米国市場のヘビーなセル・オフの影響で300円程値を下げている。米国で株が売り込まれたのは、住宅価格が下落したからだ。全米不動産協会の発表によると、既存住宅の売上高は前年比1%下落している。

現在米国では売れ残りの住宅が、455万戸あり、今の販売ペースであれば、これは11ヶ月の在庫に相当する。

政府の統計では住宅の中央値は、1年前に比べて8%下落しているが。しかし20の大都市圏をベースとするS&P ケース・シラー指数によると、2006年のピークに比べて15%価格は下落している。

ところで今FTの記事を見ているが、その記事には興味深いグラフがついている。それは1990年から現在にいたる米国の個人貯蓄率と住宅価格の変化をしめすグラフだ。貯蓄率は90年代前半の6-8%水準から一貫して下落し、05年にはとうとうマイナスに転じた。その後少し持ち直しているものの、1%程度で推移している。一方住宅価格は97年頃から上昇を始め2006年にピークを付けてその後下落に転じている。

この二つのグラフが示唆するところは、住宅価格が上昇するにつれて、貯蓄率は低下したということだ。

記事は「住宅がネガティブ・エクイティ~つまりローン残高が、売却価値を越えるほど住宅価格が下落した状態~になると、住宅のオーナーはローン返済をあきらめて、抵当権の実行に屈するようになる」と述べている。この辺りの感覚は日本の常識では中々理解し難いところだ。日本でもバブル崩壊後ネガティブ・エクイティの状態に陥った消費者は多かった。住宅を売って住み替えようとしても、ローンが返済できず動くに動くことができなかった人は多かったと思う。しかし黙々とローンの返済を続けたのが、大半の日本人だったろう。ネガティブ・エクイティになると、住宅をギブアップしてしまう・・・という感覚には違和感を覚える。

それはさておき、住宅価格の下落が止まらない限り、消費者やローンの出し手である金融機関の疑心暗鬼は続くので、米国金融市場は安定しないということだ。

私は以前からブログや雑誌で米国の住宅市場でバブルが発生した理由は「企業が収益性を追求する余り、健全な購買力を持つフルタイムのホワイトカラー族が減り、サブプライムローンしか借りることができない収入の不安定な階層が増えたことにある」「住宅市場を健全にするには、所得格差の問題を解決するべきである」と論じている。ただし余り多数を占める意見ではないようだが・・・・

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