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横田の里の常連さんが綴る里のネタ特集

睡眠で体の調子を整えるサプリメント「グリナ」

2013年11月25日 | 冬ネタ

ヒットは時として、偶然から生まれることがある。しかし、その偶然に気が付くかどうかは、それに携わった人間が常に問題意識として「それを考えているかどうか」にある。

 味の素が2005年8月、通販限定の商品の第一弾として発売した睡眠で体の調子を整えるサプリメント「グリナ」は、まさに偶然から始まった。

 それは、まったく別のアミノ酸の試験に、ある1人の研究員が参加したことだった。この試験は、プラセボ(偽薬)と呼ばれる効果・副作用のないものを飲んだときと本当のサプリメントを飲んだときを比較し、実際に効果があるかどうかをはかるもの。

 アミノ酸の一種のグリシンは、アミノ酸の中でも構造がシンプルで、甘味はあるが、それまで効果・効能はないとされてきたので、この時のプラセボに使われた。「これが始まり」。とダイレクトマーケティング部長、森島千佳さんは振り返る。

 プラセボのはずのグリシンを飲んだ研究員は、朝の目覚めが良いことに気が付いた。本人だけではなく、いびきがなかったことに奥さんも気が付いた。実は、この研究員は睡眠時無呼吸症候群で、「普段から睡眠に関し、何かできないか」と考えていた。

 そこで、「もしかしたら?」と思い、職場結婚で同じ研究職だった奥さんが手伝い、何度かグリシンを試してデータを集め始めた。数カ月たって、ある程度「睡眠の改善に効果がありそう」という感触をつかんでから研究企画の提案を行い、正式な研究が始まった。

 しかし、睡眠の研究には問題が山積だった。何より睡眠は、体調などにより毎日微妙に異なる。コントロールが難しく、客観的に「データ化」し難い。「快適な睡眠に効果がありそう」とまでは分かっても、その先が進まず、3年の年月を要した。

 社員を被験者に寝不足状態をつくりだし、ある程度の条件をそろえる負荷試験を行い、脳波などを計測すると、「科学的な知見が得られ、それが開発に弾みをつけた」(森島さん)。

 発売に当たり、森島さんは「長くじっくり育てたい商品なので通販専用商品に向く」と判断、同社初の通販商品として発売。パッケージは色味にこだわり、元気の出るオレンジと、翌日のいきいきとした朝を想起させるブルーをあしらった。

 多忙な現代社会で睡眠に関する悩みは多く、現在、睡眠市場ともいうべきマーケットが生まれつつある。休息サポートサプリメント「グリナ」はその先駆けとなり、はやり廃りの激しいサプリメントでは珍しく発売から8年、2けた成長。のべ70万人が愛飲する商品になった。

 最初の「あれ?」という疑問とそれを「確かめる」という熱意がなければ、生まれなかった大ヒットである。(村上信夫)