クリスマス連休や正月休みで列島を脱出する海外旅行組は要注意。北米では、新種のブタインフルエンザによる人から人への感染が報告され、東南アジアなどでは鳥インフルエンザによって亡くなる事例もある。最新事情を専門医に聞いた。
■手洗い励行が鉄則
今年11月に米国アイオワ州では、ブタのインフルエンザ(H3N2)に3人の子どもが感染したと報告された。ブタ由来のインフルエンザと言えば、2009年に世界的に大流行したH1N1がある。再びあのときのようなパンデミック(世界流行)に陥ることはないのか。
東京医科大学病院渡航者医療センターの濱田篤郎教授は説明する。
「米国は、ブタ由来のインフルエンザの監視を強化しているため、これまでも人間が感染したとの報告はあり、決して珍しい話ではありません。今回、人から人へ感染し、新たなインフルエンザへ変異する恐れがあるため、注意喚起を行っているのです。しかし、日本の旅行者の方々は、それに警戒を強めるよりも、従来のインフルエンザに注意してください」
人間に流行する季節性のインフルエンザは、北半球でこれから流行を迎える。欧米諸国へ旅行するときにも、「手洗い」をマメにするなど予防に励むべき。また、気候の温暖な亜熱帯地域へ行くときにも油断は禁物だ。
「シンガポールやマニラ、ジャカルタなどでもインフルエンザは流行します。気候が温かいからと安心しないでください」(濱田教授)
こうした旅行に行くときの感染症予防法を濱田教授から聞き、チェックリストにまとめてみたので参考にしてほしい(別項参照)。
■異例の蚊の増殖
東南アジアでは、家禽類との接触による鳥インフルエンザ(H5N1)感染も報告されている。世界では2011年に55人の感染が報告され、29人が亡くなっているが、日本の旅行者は家禽類に近づかなければリスクを下げることは可能。むしろ、「蚊」による感染症に注意すべきと濱田教授は指摘する。
「蚊は雨期に増えます。インドネシア地域はこれから雨期のシーズンを迎え、例年はタイやフィリピンなどは乾期に入るのですが、今年は状況が違います。洪水に見舞われたタイのように、今年の雨量は多く、現在でも水たまりが残っているため蚊が増殖しやすい。発熱や発疹が伴うデング熱など、蚊が媒介する感染症があるので、虫よけを心掛けてください」
日本ではまだデング熱などの海外感染症を知らない人もいる。そんな人々の知識を高めようと、濱田教授は厚労省研究班の一環として、今年11月に「海外旅行と病気」のホームページ(www.tra-dis.org)を開設した。
■B型肝炎にも注意
気候の温暖な国に行くと、心も解放されて見知らぬ人と一夜をなんて話はよくある。当然のことながら性感染症のリスクが高まるわけだが、最近ではB型肝炎に感染する人が増えているという。
「インドや欧米で流行している種類のB型肝炎ウイルスに感染する人が、日本人に増加中です。性行為だけでなく、ピアスの穴をあけるなど美容行為などでも、感染リスクはあるので注意しましょう」と濱田教授。
インドや欧米のB型肝炎ウイルスは、慢性肝炎に移行しやすく、肝硬変や肝がんに結びつきやすいので要注意。旅の思い出を楽しいものにするためにも、海外で感染症にうつらないようにしたいものだ。
■海外旅行感染症予防チェック
□短期間の旅行でも、渡航先の感染症情報を厚労省検疫所のホームページなどで事前確認する
□予防接種が可能な感染症については、接種を受けるべきか医師に相談する
□蚊が多い地域では、虫よけ剤を活用する(現地には日本より持続時間の長い虫よけ剤がある)
□こまめに手洗いをする。のどがイガイガするときはうがいも励行
□生水、生食を口にしない。肉類も中までしっかり火が通ったものを食べる
□狂犬病などを予防するため、飼い犬も含めて現地の動物には近づかない
□万一、動物やコウモリに噛まれたら、流水で傷口を洗い現地の医療機関へ
□見ず知らずの人と性行為をしない
□帰国後1カ月以内に38度以上の発熱が生じた場合は、感染症科のある総合病院を受診する
□帰国後に医療機関を受診するときには、必ず渡航歴を申告する
日本でなきゃあ~
美味しい刺し身も食べられないぞ★
しかも、里でなきゃあね!