先日、富士山清掃ツアーに参加してきた。
途中、談合坂ではぶ厚い雲が空から見下ろしていたが、掃除という目的に配慮したようだ。ポツポツと雨粒を感じたものの、すぐにやんでくれた。
スペシャルゲストに、アルピニストの野口健さんがいて、地元の環境NPO「富士山クラブ」とともに、作業前の事前学習をしてくれた。
野口さんは、2000年頃から富士山の清掃活動を始めたそうだ。当時は、産業廃棄物から粗大ゴミ、飲食物の容器などがあふれていたという。樹海には、タイヤ1800本が捨てられ、挙句の果てには自動車までが置き去りにされていた。写真から、予想を超える惨状を知り、驚くばかりである。
「これは、今年の写真です」
そこには、道路に転がったペットボトルが写っていた。容器のラベルは水であるが、中には黄色の液体が見える。本来は、トイレに流すべきものが入っているのだ。ペットボトルで用を足すのは個人の自由だけれど、それを道端に捨てていくのは問題である。こんなボトルが20本も30本もあると聞き、眉間にシワが寄った。
富士山は、世界遺産に登録された際、同時に宿題を課せられている。これが果たせないと、登録が取り消される可能性もあるというから、簡単な話ではない。提出期限は2016年2月1日。何とか解決できるとよいのだが。
「では、作業現場に出発します」
私はてっきり、ハイカーが残した飲食物の容器や、タバコの吸い殻などを拾って歩くのかと思っていた。黄色いペットボトルがあったらどうしようと心配していたが、富士山クラブの方の説明は想定外であった。
「この土の下にはゴミが埋まっています。悪質な業者が、細かく砕いたゴミを捨て、それを隠すために上から土をかぶせています。すでに逮捕されていますが、ゴミはそのままなので、掘り出す作業をお願いします」
うへえ。なかなか大変そうだ。
スコップを借りたが、地面は硬い。捨てられてから、かなりの時間が経過しているようで、結構な力が必要だった。どうにか地面に穴が開くと、ガラス片、割れた瓦、陶器の欠片などが出てきた。これを分別して、集積場まで持っていく。
「これはプラスチックだから、燃えるゴミでいいんだよね」
「これはコンクリみたい」
同行した2歳上の姉と相談しながら、慎重にゴミを分けていく。タイル、変形したカーテンレールなども地面から出てきた。雨どいと思われるものも埋まっている。
ゴミの種類から、家を取り壊した際の廃棄物なのではと感じた。相当な量がありそうだ。
「おや?」
スコップが、大き目の白い陶器片を掘り当てた。緩いカーブを描く形状から、洋式便器の一部とわかる。
「…………」
これは、ちょっとしたショックだった。軍手の上からとはいえ、できれば触りたくない。しかし、神聖な富士山の麓にあるのはもっと悪い。まったくもって、不法投棄はけしからん。
「30分経ちました。休憩してください」
適宜水分補給をしたら、また続きをやる。徐々に慣れてきて、掘り出すコツや、分別の基準がわかってきた。宝探しのように、大きなゴミが出てくることを期待して、スコップを動かす余裕ができる。
現場には数十人ほどいたが、和気あいあいとして雰囲気がいい。「富士山をキレイにしたい」という共通の想いがあるからかもしれない。90分ほど作業をしたら、これだけのゴミが回収できた。
「みなさん、お疲れ様でした。今日はどうもありがとうございました」
残念なことに時間が来てしまった。
作業は決して楽ではなかったが、もう少し続けたい気持ちがあった。地面の下には、まだまだたくさんのゴミが埋まっているのだろうから。早く元通りになってほしい。
「いい経験ができたね」
「ホントだね」
姉と言葉を交わし合う。知らない参加者たちも「来てよかった」と話していた。
ほんのわずかでも、大好きな富士山の役に立てれば幸せだ。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
途中、談合坂ではぶ厚い雲が空から見下ろしていたが、掃除という目的に配慮したようだ。ポツポツと雨粒を感じたものの、すぐにやんでくれた。
スペシャルゲストに、アルピニストの野口健さんがいて、地元の環境NPO「富士山クラブ」とともに、作業前の事前学習をしてくれた。
野口さんは、2000年頃から富士山の清掃活動を始めたそうだ。当時は、産業廃棄物から粗大ゴミ、飲食物の容器などがあふれていたという。樹海には、タイヤ1800本が捨てられ、挙句の果てには自動車までが置き去りにされていた。写真から、予想を超える惨状を知り、驚くばかりである。
「これは、今年の写真です」
そこには、道路に転がったペットボトルが写っていた。容器のラベルは水であるが、中には黄色の液体が見える。本来は、トイレに流すべきものが入っているのだ。ペットボトルで用を足すのは個人の自由だけれど、それを道端に捨てていくのは問題である。こんなボトルが20本も30本もあると聞き、眉間にシワが寄った。
富士山は、世界遺産に登録された際、同時に宿題を課せられている。これが果たせないと、登録が取り消される可能性もあるというから、簡単な話ではない。提出期限は2016年2月1日。何とか解決できるとよいのだが。
「では、作業現場に出発します」
私はてっきり、ハイカーが残した飲食物の容器や、タバコの吸い殻などを拾って歩くのかと思っていた。黄色いペットボトルがあったらどうしようと心配していたが、富士山クラブの方の説明は想定外であった。
「この土の下にはゴミが埋まっています。悪質な業者が、細かく砕いたゴミを捨て、それを隠すために上から土をかぶせています。すでに逮捕されていますが、ゴミはそのままなので、掘り出す作業をお願いします」
うへえ。なかなか大変そうだ。
スコップを借りたが、地面は硬い。捨てられてから、かなりの時間が経過しているようで、結構な力が必要だった。どうにか地面に穴が開くと、ガラス片、割れた瓦、陶器の欠片などが出てきた。これを分別して、集積場まで持っていく。
「これはプラスチックだから、燃えるゴミでいいんだよね」
「これはコンクリみたい」
同行した2歳上の姉と相談しながら、慎重にゴミを分けていく。タイル、変形したカーテンレールなども地面から出てきた。雨どいと思われるものも埋まっている。
ゴミの種類から、家を取り壊した際の廃棄物なのではと感じた。相当な量がありそうだ。
「おや?」
スコップが、大き目の白い陶器片を掘り当てた。緩いカーブを描く形状から、洋式便器の一部とわかる。
「…………」
これは、ちょっとしたショックだった。軍手の上からとはいえ、できれば触りたくない。しかし、神聖な富士山の麓にあるのはもっと悪い。まったくもって、不法投棄はけしからん。
「30分経ちました。休憩してください」
適宜水分補給をしたら、また続きをやる。徐々に慣れてきて、掘り出すコツや、分別の基準がわかってきた。宝探しのように、大きなゴミが出てくることを期待して、スコップを動かす余裕ができる。
現場には数十人ほどいたが、和気あいあいとして雰囲気がいい。「富士山をキレイにしたい」という共通の想いがあるからかもしれない。90分ほど作業をしたら、これだけのゴミが回収できた。
「みなさん、お疲れ様でした。今日はどうもありがとうございました」
残念なことに時間が来てしまった。
作業は決して楽ではなかったが、もう少し続けたい気持ちがあった。地面の下には、まだまだたくさんのゴミが埋まっているのだろうから。早く元通りになってほしい。
「いい経験ができたね」
「ホントだね」
姉と言葉を交わし合う。知らない参加者たちも「来てよかった」と話していた。
ほんのわずかでも、大好きな富士山の役に立てれば幸せだ。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
富士山がどうかはわかりませんが、
最近の山ガール・山ボーイはそれほど、弁当のごみやペットボトルをポイ捨てはしないようです。
それにしても、黄色のペットボトルはいけません。
便器の破片もなおさら。
自己中も甚だしいですね。
とはいえ、捨て方に困ったのだろうなとも思う。
富士山とは違うけど、昨日読んでいたものに、
「日本人は毎年10キロの服を買い、9キロの服を捨てる」とありました。
ごみのこと、真剣に考えないといけませんね。
富士山は、日本一の山でありながら、山ガール・山ボーイでなくても行かれちゃう山だからね。
山ガールはもう少し山への思いがあるのじゃないかな。
夏休みはここからはじまりましたね。
楽しい夏休みを!
労働といっても、わずか90分間でした。
ツアーなので、具合の悪い人が出ることを恐れたのかしら。
ゴミ拾いはともかく、地面を掘る作業で疲れました。
便器のすき間にも土が固まっていましたから、相当前に廃棄されたものなのかも。
黄色いペットボトル、発想が変です。
そんなに回りくどいことをせず、草むらでとはいかないんでしょうか。
携帯トイレだってあるのに。
お手軽ペットボトルを選ぶのなら、当然持ち帰りですよね。
片づける人の身になって考えられないのが不思議。
ゴミは減らすのが一番!
はい、初日にして最大のイベントです(笑)
娘が受験生なもので、夏の旅行はなし。
あとはまったり、東京で過ごす予定です。
富士山の宿題はたくさんあります。
入山規制は絶対ですね。
お手軽すぎるとあとが大変。
山頂に自動販売機があるという事実も初めて知りました。
レジャー化しすぎなんでしょうか。
勉強になった一日です。
掃除しに行ったから優しく迎えてくれたんでしょうね。
それにしても産廃業者並みのお仕事、お疲れ様でした。
私は以前から山に登る人が嫌いでした。
若いときダムの仕事でよく高い山に登ったけどゴミを捨てて行くのを見てましたから┐(´д`)┌ヤレヤレ
さて、ペットボトルにどうやってオシッコを入れるんでしょうね。
まさか突っ込んでするのかな~ヾ( ̄o ̄;)オイオイ
山の神は優しかったと思います(笑)
蜂にも蚊にも刺されなくてラッキー☆
以前は、医療廃棄物もたくさん落ちていたそうです。
注射針とかね。
そっちのほうが危険です。
山に登る人は、身軽になりたくてポイ捨てするんでしょうか。
山の神の祟りはどうなっているんでしょう。
ペットボトルにする人は、スモールサイズなのかも…。
女性はできないと思います。
前記事からゴミを拾う作業をイメージしてましたが、まさか掘り返すとは!
非常事態でやむを得ない場合はともかく、証拠隠滅を謀るなどもってのほかです。日本人の心はどこへいってしまったのか…?
ペットボトルの件も山中で自然にしちゃえばいいのに、もし車内とかでしたなら持ち帰るべきですよ。
今夏は受験生の家族ってことで、体制作りですね。こちらもたいへんでしょうから、みなさん体調崩さないように頑張ってください。
スコップを渡されたときは、すごく驚きましたよ。
力がないと思い知らされました。
この業者、不法投棄して自分さえ儲かればいいと思っていたんでしょうね。
良心があればできないことです。
ペットボトルもしかり。
自然に分解するとでも思っているんでしょうか。
捨てる人のことを考えてほしい…。
体調管理は気をつけないといけませんね。
お気づかいありがとうございました。
せっかくの世界遺産が泣きますね。
自分さえ儲かれば、自分のまわりさえきれいになればという幼稚な考えは、即改めてほしいです。
意義ある素晴らしいイベント、本当にお疲れ様でした。
ポイ捨ては問題ですが、まだわかる気がします。
腹が立つのは不法投棄ですね。
本来、産業廃棄物として安全に処理しなければならないゴミが、簡単に捨てられているんですから。
おそらく、依頼主からはお金をとっているんでしょう。
自分の欲のために、よくできると呆れますよ。
掃除はよかったのですが、姉とそのあとビヤホールに行きました。
飲んだらむくんでしまい、先日やっと元通りになりました。
疲れたときは、無理しちゃいけませんね。