先日、担任していた生徒たちが、めでたく卒業した。
「先生、子どもがお世話になりました。ありがとうございました」
卒業式では、PTAのお母さんが花束をくれる。
式が終わり、教室に戻ると、生徒たちも大きな花束を用意していた。
「せんせーい! 悪いこといっぱいしちゃったけど、うちらのこと好きでしょ?」
「これね、みんなで買ったの」
「今までありがとうございました!」
毎日のようにバトルしていたことを考えると、これは非常に意外である。だから、どんな贈り物よりうれしかった。
「うわあ、ありがとう! みんな、大好きだよ!」
「イエ~イ!」
「写真撮ろう、写真」
記念撮影したあとも、友人との別れを惜しんで、夕方まで残る生徒がいる。放っておくと、学校でオールしそうなので、ほどよい時間で下校させた。
やれやれ。これで、私たちも帰ることができる。
帰宅したら、まずは花束を花瓶に活けなくては。
ところが、男性は花を持ち帰らないことが多い。おそらく、この作業が面倒なのだろう。結局、花がしおれて変色し、枯れるまで放置されていた。でも、贈り主の気持ちを考えると、邪険にできない。
卒業式が終わった翌週は、イタリアンレストランで担任団の打ち上げをした。
料理もワインも口あたりがよく、サービスも満点。いい店を選んだ。
「最後に結婚することを打ち明けたら、生徒がみんな『おめでとう』って言ってくれました」
「いいわねぇ。廊下を通ったら、教壇の上で泣きながら話しているところが見えたわよ」
「うちは、最後に一人ひと言でメッセージの時間を作ったんです。しんみりしてよかったなぁ」
「そうなんですか? うちなんて……」
話は尽きない。
担任団は6人いるが、そのうち4人が4月から職場を異動する。私も異動するはずだったのに、どの学校も「アイツはいらん」と拒否したようで、不本意ながら残留だった。
お別れする4人に、最初は花を送ろうとした。
「まてよ……。冬は花の値段が高いのに、また邪険に扱われたらイヤだよね。別の物にしようかしら」
浮かんできたのが、チョコレートの花である。
しかし、催事場で買ったため、常設店舗がわからない。
ネットで検索したら、もっと手ごろな「キャンディ・ブーケ」という商品がヒットした。造花と飴やチョコレートなどの菓子を組み合わせ、ブーケに仕立てているらしい。
色もデザインも、うっとりするほど鮮やかで、ひと目で気に入った。
打ち上げの前に、この店に寄ったら、1000円台の手ごろな花束が買えた。これは、チョコレートが12粒入っているそうだ。
デザートが終わったところで、おもむろに花束を取り出す。
「はいっ、異動先でも頑張ってくださーい」
思った通り、喜んでもらえた。スマホを取り出し、店員さんに頼んで記念写真も撮った。これなら、生花を置き去りにした男性陣も、大事にしてくれるだろう。
そして翌日。
元気に出勤すると、枯れた花束が撤去された棚の上に、なぜか私がプレゼントしたキャンディ・ブーケがあるではないか。
「なにぃ?」
その男性は、いったん自宅に持ち帰った花束を、また職場に持ってきたようだ。よく見ると、チョコレートを取り出して食べた形跡がある。一応、おやつとして機能しているとわかり、ホッとした。
「花より団子」とは言うけれど、「花も団子も」のほうがありがたい。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「先生、子どもがお世話になりました。ありがとうございました」
卒業式では、PTAのお母さんが花束をくれる。
式が終わり、教室に戻ると、生徒たちも大きな花束を用意していた。
「せんせーい! 悪いこといっぱいしちゃったけど、うちらのこと好きでしょ?」
「これね、みんなで買ったの」
「今までありがとうございました!」
毎日のようにバトルしていたことを考えると、これは非常に意外である。だから、どんな贈り物よりうれしかった。
「うわあ、ありがとう! みんな、大好きだよ!」
「イエ~イ!」
「写真撮ろう、写真」
記念撮影したあとも、友人との別れを惜しんで、夕方まで残る生徒がいる。放っておくと、学校でオールしそうなので、ほどよい時間で下校させた。
やれやれ。これで、私たちも帰ることができる。
帰宅したら、まずは花束を花瓶に活けなくては。
ところが、男性は花を持ち帰らないことが多い。おそらく、この作業が面倒なのだろう。結局、花がしおれて変色し、枯れるまで放置されていた。でも、贈り主の気持ちを考えると、邪険にできない。
卒業式が終わった翌週は、イタリアンレストランで担任団の打ち上げをした。
料理もワインも口あたりがよく、サービスも満点。いい店を選んだ。
「最後に結婚することを打ち明けたら、生徒がみんな『おめでとう』って言ってくれました」
「いいわねぇ。廊下を通ったら、教壇の上で泣きながら話しているところが見えたわよ」
「うちは、最後に一人ひと言でメッセージの時間を作ったんです。しんみりしてよかったなぁ」
「そうなんですか? うちなんて……」
話は尽きない。
担任団は6人いるが、そのうち4人が4月から職場を異動する。私も異動するはずだったのに、どの学校も「アイツはいらん」と拒否したようで、不本意ながら残留だった。
お別れする4人に、最初は花を送ろうとした。
「まてよ……。冬は花の値段が高いのに、また邪険に扱われたらイヤだよね。別の物にしようかしら」
浮かんできたのが、チョコレートの花である。
しかし、催事場で買ったため、常設店舗がわからない。
ネットで検索したら、もっと手ごろな「キャンディ・ブーケ」という商品がヒットした。造花と飴やチョコレートなどの菓子を組み合わせ、ブーケに仕立てているらしい。
色もデザインも、うっとりするほど鮮やかで、ひと目で気に入った。
打ち上げの前に、この店に寄ったら、1000円台の手ごろな花束が買えた。これは、チョコレートが12粒入っているそうだ。
デザートが終わったところで、おもむろに花束を取り出す。
「はいっ、異動先でも頑張ってくださーい」
思った通り、喜んでもらえた。スマホを取り出し、店員さんに頼んで記念写真も撮った。これなら、生花を置き去りにした男性陣も、大事にしてくれるだろう。
そして翌日。
元気に出勤すると、枯れた花束が撤去された棚の上に、なぜか私がプレゼントしたキャンディ・ブーケがあるではないか。
「なにぃ?」
その男性は、いったん自宅に持ち帰った花束を、また職場に持ってきたようだ。よく見ると、チョコレートを取り出して食べた形跡がある。一応、おやつとして機能しているとわかり、ホッとした。
「花より団子」とは言うけれど、「花も団子も」のほうがありがたい。
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