これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

トゥールダルジャンと女優たち

2016年03月10日 22時58分24秒 | エッセイ
 以前から気になっていた、ホテルニューオータニのトゥールダルジャンに行った。
「わあ、キレイ! たまにはいいよね、こういうお店」
 友人の幸枝は大喜びだ。店の入口から受付までは長い距離があり、青い回廊が続いている。客席の椅子はフカフカで座り心地がよく、天井からは大きなシャンデリアが藤の花のように垂れ下がっていた。
 トゥールダルジャンという店名は、銀の塔という意味らしい。シャンデリアを映す大きな鏡や、テーブル上の豪華なシルバーに、洗練された雰囲気を感じた。
 しかし、グラスの飲み物が少ない。シャンパンや赤ワイン、白ワインがどれも2種類しかないのはなぜだろう。料理に合うものに限定しているのだろうか。ボトルのメニューは見ていない。
「かんぱーい」
 幸枝とグラスを合わせて、シャンパンの気泡を味わう。スッキリしていて飲みやすい。
「エクルヴィスのジュレ仕立て オゼイユソース フヌイユ飾りでございます」



 女優のような美しさ。ふと、稲森いずみが浮かんできた。フォークですくって口に入れると、予想を遥かに超える味わいが広がった。特に、ベージュのペースト状のものが美味だ。こってりしている割にしつこくないし、まろやかで舌触りが抜群である。
「ううーん、これはすごい……」
 美味しいものは、ゆっくり食べることができない。「急ぐな、急ぐな」と自分に言い聞かせても、手が勝手にフォークを動かしてしまう。あっという間に平らげてしまった。
「サンドルと薫香のシャンピニオンソース フィレンツェ風アリュメット添えでございます」



 お料理の名前が長すぎて、まったくおぼえられないのが玉にきずだが、これは中性的な印象を受ける。いくつになってもカッコいい天海祐希を思い浮かべた。
「お魚が香ばしい~」
 幸枝も絶賛していた。皮はパリパリ、身はプリプリだし、つけ合わせもソースも完璧。この店のお料理はハイレベルである。
 ただ、残念ながらサービスは期待通りではなかった。グラスが空いても「次は何にしましょうか」と聞かないし、パンがなくなってもおかわりをもってきてくれない。黒服を着たウェイターは、呼ばれるまで壁で立ったままだ。お腹がすいていたので、手を上げて追加のパンをもらった。



「サツマイモみたい」
「くくくっ」
 見た目はイモでも、このバケットは皮の硬さも中の軟らかさも程よくて、バターの風味が生きている。日頃、糖質をとりすぎないよう注意をしている私でも2個、制限なしの幸枝は3個食べた。今まで食べたバケットの中でも、ピカイチである。
 そして、最後はメイン。
「幼鴨のロースト マルコポーロでございます」
 私は鴨が大好きだ。胡椒を追加でかけますかと尋ねられ、「はいっ」と勢いよく答えた。胸肉といっても軟らかく、味が濃い。
「あっ、写真を撮り忘れた!」
 いかんいかん、がっつき過ぎたか。隣を見ると、幸枝はこれから食べるところだった。チャンスとばかりに横から写真を撮る。



 青で縁どられた皿に、気品の漂う熟女が足を崩して座っているかのようだ。松坂慶子あたりが妥当ではないかと感じる。
 余分な脂身がなく、かといってパサパサしているわけでもなく、ほどよく締まった鴨である。黒胡椒のピリッと感に引き立てられ、これぞメインディッシュという存在感を漂わせる。これも、のんびり食べることができなかった。我ながら困った習性だ。
「クレメダンジュ フランボワーズのイチゴのマルムラードでございます」
 


 これまた「なんのこっちゃ」という名前のデザートであるが、丸く絞られたクリームが可愛らしく、色合いも素晴らしい。さしずめ、桐谷美鈴といったところか。
 甘味、酸味のコンビネーションや、軟らかさ、硬さのバランスがとれており、ラストを飾る逸品であった。
 コクのあるコーヒー。こちらは呼ばなくてもおかわりを注いでくれたから、結局3杯も飲んだ。



 甘さを控えた焼菓子も、コーヒーを引き立てている。



「いやあ、美味しかったわぁ」
「ね~!」
 今回は、お手軽なランチにしたのだが、もっと上のコースをいただきたくなった。
 また来なくてはと、宿題を与えられた気分になる。
 次は、どんな女優に会えるか楽しみ♪


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コメント (6)
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