これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2013 誕生日会

2013年09月22日 20時48分36秒 | エッセイ
 甥が13歳、姪が11歳の誕生日を迎え、お祝いをしに出かけた。
「簿記やってみる」
 妹の家に着くと、高2の娘がカバンから簿記の問題集を取り出した。先日、某大学の模擬授業を受け、簿記に興味を持ったらしい。11月に検定を受ける予定だが、問題集を買っただけで安心してしまい、ページをめくるのは初めてである。



「えーと、次の各項目について、資産に属するものにはAを、負債に属するものにはBを、純資産に属するものにはCを、いずれにも属さないものにはDを記入しなさい」
 問題を声に出して読んでいると、父が近寄ってきた。
「なんだ、簿記か」
「あ、おじいちゃん」
「じいちゃんも、簿記できるんだぞ。備品はAだ」
「A?」
「買掛金はB、貸付金はA……」
「ちょっと、ちょっと」
「建物はA、現金もA……」
「お母さん、おじいちゃんがミキの問題集、やっちゃうよ~!」
 さて、主役の一人である甥は、歯列矯正のため歯科に行っていた。帰ってくるなり、「今日はグルグル巻きにされた~」と、不自由なワイヤーを嘆いていたが、すぐに機嫌を直していた。
 姪は、かなり身長も伸びてきて、食事の準備を手伝っていた。子どもの成長は早い。
「ミキ、そろそろご飯みたいだから、問題集をしまいなさい」
「はーい」



「お誕生日おめでとう。かんぱーい!」
 誕生祝といっても、それを機に親族が集まることに意義がある。
 残念ながら、アルコール係の姉夫婦は仕事で来られなかった。だから酒類が淋しい……。もとい、姉がいなくて淋しい、と言うべきか。
 妹は、テーブルとキッチンを往復して忙しそうだ。かといって、ジジババを話し相手にすると、やたらと体力を消耗する。
 たとえば、母に「牛タン食べる?」と聞くと、「うん」と答えた。しかし、現物を見ると、「牛タンはいらない」と断わるではないか。だいぶ、理解力が落ちたようだ。
 父は父で、頑なに私が勤務先を異動したと思っているし、どうも話がかみ合わない。やはり、姉がいないとつまらなくて、妹の漫画を読んでいた。
 ケーキを食べ終わったところで、甥と姪にプレゼントを渡していないことに気づいた。
「いかん、いかん。おーい、プレゼントだよ~!」



 包みの中身はゲームソフトだ。2人とも喜び、早速3DSで遊びはじめた。図体は大きくなっても、こういうところはまだ幼い。ゲームを卒業するのはまだ先なのだろう。
「ゲームは手先を動かすから、高齢者にもいいって。この前、テレビで言ってたよ」
 夫が思い出したように言った。
 いや、ゲームよりも、ボケ防止の名案がある。父が、ミキに簿記を教えてくれればいいのだ。頼りにされれば、きっと張り切るだろう。高齢者に活躍の場を提供することが大事だ。
「あ、おじいちゃん、間違ってる。資本金はCなのに、Bって書いてあるじゃん」
「…………」
 答え合わせを始めた娘が、赤で×をつけていた。こんな初歩的なところを間違えたら、ちょっと頼めないかも……。
 もやもやした気分のまま、誕生日会はお開きになった。
「ごちそうさま。またね!」
「おやすみ。ありがとう!」
 次に会うのはクリスマスである。
 ジジババに、ゲーム機をプレゼントするべきか否か。


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