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これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

あったらいいな

2008年09月25日 18時04分55秒 | エッセイ
 娘のミキは、レーサーになってサーキットをぶっ飛ばす夢を見ていた。
 うなるエンジンが声援のように反響し、1着でゴールインを決める。
 やった! 優勝だぁ~!!
 ミキは両手をあげてガッツポーズをし、表彰式に臨んだ。優勝カップを受け取るとき、またエンジン音が鳴り響いてきた。
 レースは終わったのに、どうして?
 しかし、音は鳴り止まず、ますます大きくなって近づいてくる。ゴゴゴゴゴー!!
 ハッ、とミキは目を覚ました。
 エンジン音だと思っていた音は、隣で寝ている私のイビキだった……。

「お母さん、これ買いなよ」
 東北新幹線の車内で、隣のミキが背もたれのポケットに入っている通販カタログ『トレインショップ』を見ながら言った。
『スノア・ストッパー  イビキを感知して作動する、睡眠を妨げないスグレモノ \10,290』
 長年、私のイビキに悩まされてきたミキのリクエストである。提案というより命令に近いものがあった。
 うつぶせ寝枕を使ってみたものの、寝相の悪い私はすぐに仰向けになってしまい、イビキをかき始めるそうだ。ミキに文句を言われないために、早速電話で注文してみた。
 さすがはJR、オペレーターが男性だった。私は通信販売が好きなので、いろいろな会社を利用しているが、男性が応対するところは初めてだ。何か違和感があった。
 1週間ほどして商品が到着した。
 ワクワクしながら開封したが、パッケージの文字を見て一気に不愉快になった。
『スノア・ストッパー  もうこれで彼のイビキに悩まされない』
 まるで、イビキが男性特有のものであるかのような書き方ではないか。女性失格の烙印を押されたようで、気分が悪くなった。この表現は改めたほうがいいと思う。



 腕時計のようにこれをはめて寝ると、3回以上イビキを感知したとき弱い電流が流れる。刺激によって姿勢を変えさせ、イビキを止める仕組みになっているらしい。なるほど!
 刺激の強さは7段階になっており、好みで調節する。
 最も弱いレベル1に合わせ、電流の強さをテストしてみた。腕にピリピリッという刺激が走り、予想以上に痛い。
 そして、この刺激は、微弱電流により目元や頬・口元のたるみを解消する美容商品によく似ている。多少の違いはあるだろうが、基本的な作りは同じなのではないだろうか。
 ちなみに、私は8年前にE-FACEという名前の、目の下と頬に貼り付けて顔の筋肉を鍛える商品を買った。最初は熱心に使用していたが、段々装着するのが面倒になり、1年も経たないうちにお蔵入りになっている。



 スノア・ストッパーを使い始めた初日、ミキからは「お母さんが静かだったからよく眠れた」と感謝された。頑固なイビキも電気刺激にはかなわなかったようだ。手強い敵を新兵器で撃退し、私は満足だった。
 ところが、一週間もすると腕が刺激に慣れてしまったのか、イビキが形勢逆転を狙って反撃しはじめた。
「ガーガーガー、ぴたっ、ガーガーガー、ぴたって感じで、またうるさかったよ」
 ミキから苦情を申し立てられ、私は心底がっかりした。

 そこで私は思った。
 腕ではなく、顔に装着するスノア・ストッパーを開発してほしい!
 今はコードレス化しているE-FACEに、イビキを感知する機能を付加してはどうだろうか。長時間装着しても肌荒れしないことが前提となるが、イビキを感知したら電気刺激が起きて姿勢を変えさせるだけでなく、肌のたるみにも効くとなれば一石二鳥。たとえイビキが治まらなくても、美容機器として役に立てばオーケーだ。
 でも、イビキが治まったときは、何の役に立つのだろう?



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コメント (4)
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