富士急ハイランドでは、キング・オブ・コースター・フジヤマが一番好きだ。
「フジヤマは最高傑作のコースターだから、一度くらいは乗ってみなよ~」
絶叫マシーンが嫌いな夫を誘ってみたが、やはりフラれてしまったので、娘のミキと二人で並んだ。
待ち時間は30分くらいだったろうか。回転がよいので、午後になっても長時間待つことはない。
「すご~い、ミキたちが乗るのは金太郎だよ!」
2002年に誕生したという、金箔3kgを使用したピッカピカの車両『フジヤマ金太郎』の先頭に、私とミキは乗ることになった。
最高到達地点79mまで上昇している途中で、初乗車のミキがビビりはじめた。
「もういいよ……。これ以上高くならなくても……」
無理もない。頂上に近づくにつれ、人は米粒のように小さく見え、はるか遠くの景色まで見渡せるのだ。万一、ここで車両事故でも起きたら死ぬな~、と不安がよぎる。
絶叫マシーンを楽しめるか否かは、事故に対する捉えかたで決まるのかもしれない。
不幸な事故が、たびたびニュースで取り上げられる。ほんのわずかでもその可能性があるならば、心配性の夫は断固として乗ることを拒否する。しかし、お気楽者の私は、事故の確率が非常に低いことに安心し、「大丈夫じゃ~ん!?」とばかりに乗りまくる。
実際のところ人体はもろい。テーブルの上から落下した生卵のように、高いところから人が落ちれば大変な惨事となる。安全装置の故障もまた然り。
誰もがわかっているけれど、不安をかき消すほどの娯楽性があるから、絶叫マシーンには長蛇の列ができるのだろう。
「フジヤマのファーストドロップは長いから、力を入れないほうがいいよ。バーにしがみついてるほうが怖いんだよ」
私は真顔のミキにアドバイスをする。
「力、入れちゃダメなの? 逆かと思った」
「手は上げたほうが怖くないんだよ。手を離すと、風になったみたいで気持ちいいから、やってごらん」
金太郎はついに頂上に到着した。先頭に乗るとコースがよく見える。レールはいったん右に曲がり、ちょっとじらしたあと左に曲がって落ちていく。
この瞬間がたまらない。
ゴオオオオオッ、と音とともに、金太郎は猛スピードで地面めがけて走り出す。
体が浮き、髪が後ろに引っ張られる。風を体全体で受け止めると、自分が大気の一部になったかのような気がする。抵抗せず、風と共存することを楽しんで、気分はまるで鳥人だ。
フジヤマのすごいところは、3分36秒に渡って乗客を飽きさせない点だろうか。急落下はその後何度も続き、鳥人気分が持続する。後半は速度を上げ、首が痛くなるくらい荒っぽく疾走する。
発着所に着いたときは、係員の拍手につられて、思わずこちらも手を叩いてしまうくらいハイになる。
「すっご~い! 楽しかったねぇ!!」
上昇中の弱気発言はどこへやら、ミキは目をランランと輝かせて興奮冷めやらぬ様子だった。この子もまた、私と同様に、楽観的な絶叫マシーンフリークになるだろう。
結局、夫が乗ったのは観覧車だけだった。
フリーパスを買ってあげたのになぁ……。
お気に召したら、クリックしてくださいませ♪
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待ち時間は30分くらいだったろうか。回転がよいので、午後になっても長時間待つことはない。
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最高到達地点79mまで上昇している途中で、初乗車のミキがビビりはじめた。
「もういいよ……。これ以上高くならなくても……」
無理もない。頂上に近づくにつれ、人は米粒のように小さく見え、はるか遠くの景色まで見渡せるのだ。万一、ここで車両事故でも起きたら死ぬな~、と不安がよぎる。
絶叫マシーンを楽しめるか否かは、事故に対する捉えかたで決まるのかもしれない。
不幸な事故が、たびたびニュースで取り上げられる。ほんのわずかでもその可能性があるならば、心配性の夫は断固として乗ることを拒否する。しかし、お気楽者の私は、事故の確率が非常に低いことに安心し、「大丈夫じゃ~ん!?」とばかりに乗りまくる。
実際のところ人体はもろい。テーブルの上から落下した生卵のように、高いところから人が落ちれば大変な惨事となる。安全装置の故障もまた然り。
誰もがわかっているけれど、不安をかき消すほどの娯楽性があるから、絶叫マシーンには長蛇の列ができるのだろう。
「フジヤマのファーストドロップは長いから、力を入れないほうがいいよ。バーにしがみついてるほうが怖いんだよ」
私は真顔のミキにアドバイスをする。
「力、入れちゃダメなの? 逆かと思った」
「手は上げたほうが怖くないんだよ。手を離すと、風になったみたいで気持ちいいから、やってごらん」
金太郎はついに頂上に到着した。先頭に乗るとコースがよく見える。レールはいったん右に曲がり、ちょっとじらしたあと左に曲がって落ちていく。
この瞬間がたまらない。
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体が浮き、髪が後ろに引っ張られる。風を体全体で受け止めると、自分が大気の一部になったかのような気がする。抵抗せず、風と共存することを楽しんで、気分はまるで鳥人だ。
フジヤマのすごいところは、3分36秒に渡って乗客を飽きさせない点だろうか。急落下はその後何度も続き、鳥人気分が持続する。後半は速度を上げ、首が痛くなるくらい荒っぽく疾走する。
発着所に着いたときは、係員の拍手につられて、思わずこちらも手を叩いてしまうくらいハイになる。
「すっご~い! 楽しかったねぇ!!」
上昇中の弱気発言はどこへやら、ミキは目をランランと輝かせて興奮冷めやらぬ様子だった。この子もまた、私と同様に、楽観的な絶叫マシーンフリークになるだろう。
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