三笑会

三笑会は、平成30年6月1日~陶芸活動と陶芸教室、喫茶室、自家野菜販売、古美術・古物商経営を総合的に活動していきます。

「阿波遍路恋唄」床本 その3

2024-07-28 10:14:54 | 日記

「阿波遍路恋唄」床本 その3

【竹】「わしらは四国八十八か所を全部回ったことないけんど、お梅さんは一番札所の霊山寺からこっちへ回ってきたんだろ。ここまで来る途中の遍路道はどこもきれいになっとったんとちゃうか。この辺りだけのこと言うたら、この大根峠の向こう側は阿瀬比村の人たちが遍路道の草刈りとかしとるし、峠から平等寺へ行く遍路道はわしら岡花村と西光寺村の者が掃除しとる。それもこれも、お遍路さんが無事に気持ちようお四国してもらいたいとの一心で道をきれいにしとるんじゃ。多分、どこの遍路道も同じと違うじゃろか。これもお接待の一つじゃのう。」

と、遍路話は任せろと二人競って話すうち、頷きながら聞くお梅、足をさするをお松が気づき

【松】「お梅さん、いける?これから麓の平等寺まで歩ける?」と、尋ねると、お梅は苦しそうに

【梅】「先程、お二人から頂戴したお水や焼き芋でずいぶん元気にはなりました。でも、実はここに来るまでに挫いた足がまだまだ痛くてとても歩けそうにないのです。」

【竹】「オオそうだったんか。ほな、わしが今から麓の村までいて、大勢集めてくるから待っとってくれ。「音坊山ふるさと活性会」というのもあってな。そこのみんなにも大急ぎで寄ってもらうわ。お松、それまでお梅さんのそばにおっといてくれ。」

【松】「ええ、まかして竹一さん、アでも・・・でも村の人たちが大勢来たら私たちのことがばれてしまう。」

【竹】「オオ、ほなちょうええでえ。そしたらわしは堂々と、このお松と祝言をあげると、村の人たちに言うまでじゃ」と、にっと笑って竹一は驚くお松を抱き寄せる。あまりの嬉しさあふれ出しお松は思わず泣きじゃくる。

【竹】「ほな、ひとっ走りいってくるわ。」

と、勇んで竹一、お松を残し村へ向かって駆け出だす。

【松】「うれしい、祝言だって。どうしよう、恥ずかしい」と、一人お松は竹一の後ろ姿をいつまでも見送り見送りそわそわと 

【松】「町のかわら版が聞きつけたらどうしよう。そうだ早速、想定問答集でも作ろうか」と独り言を繰り返す。

かたやお梅は不安げに

【梅】「ほんにありがとうございます。助けて頂き、こんなに嬉しいことはないのです。でも、まだ二十一番札所。この先の一人旅が不安です。お二人のような親切な方にまた巡り合えるとは思えません、心細くて仕方がないのです。」と胸の内を打ち明ける

 


「阿波遍路恋唄」床本 その2

2024-07-28 10:02:28 | 日記

「阿波遍路恋唄」床本 その2

【梅】「いえいえ、何をおっしゃいます。お二人の親切、助けてもろうてそのままではなりません。お二人に出会わなければ私の命はなかったはず。」

【竹】「そんなことはない、このオトンボ山、岡花村や西光寺村、ここの誰と出会うても、みんな同じようにあんたはんをお助けするはずじゃ。これはな、ずっとずっと前からこの村に受け継がれてきとうお接待の文化っていうもんじゃ」

【梅】「なんとまあ、お接待、お接待の文化とは一体どんなものなのでしょう。どうぞ教えてくださいませ」と問われてお松は身を乗り出し

【松】「これは村の寺子屋で聞いた話やけんど、なんでもこの四国では、お遍路さんへのお接待は「御大師様への功徳」になるけんな。自分の代わりにお遍路さんにお四国参りを託すという意味もあって、時にはお賽銭にしてなって、お金を渡すこともあるんよ。お接待には、ほんまにいろんな形があってな、道筋の小さな休憩所、うどんやお菓子、お茶などを出すお接待所、ほかにも、善根宿や通夜堂なんていうのもあるんよ」

と言えばお梅はほとほと感心し

【梅】「私には、労咳という不治の病を患った夫がおります。モウどうしたらよくなるのかと、思い悩んでおりました。そんな折、長屋のみんなからお四国さんのことを聞きました。お遍路さんになって順礼の旅に出て、御大師様にお願いすると、夫の病気が治るかもしれないと…それを聞いたらもう居ても立っても居られなくなって、藁にもすがる思いで江戸を飛び出し、順礼しておりました。今度は私が長屋のみんなに教えてあげたい。 ぜひお四国参りやお接待のことをもっと、もっと教えてくださいませ。」

と聞けば竹一喜んで、

【竹】「この話は、次の札所の平等寺の和尚さんから聞いた話やけんどな、お遍路さんの装束は、死に装束の意味があってな、死に顔を隠す菅笠をかぶり、墓標にするための金剛杖を片手にとるんよの。お梅さんも、わしが今言うた順礼の出で立ちをしとるでないで。ほれ、笠にも「同行二人」と書いてあるだろ。お遍路さんは、道中弘法大師様が見守るなかで自分と向き合うんじゃ。それぞれの悩みをな、見据えるんじゃ。」

【松】「私も和尚さんに聞いたわ。お遍路するんは、願いごとを叶えるためだったり、病を治すため、供養のためだったりと、理由は人それぞれにあってな、でも、それだけではないんよ。ずっとずっと昔から順礼によってご利益を受けるという意味だけではなしに、自分から困難に立ち向かうことで人生の答を見つけるという意味も奥に隠されていてお遍路さんが絶えんのよ。このお四国ではどこでもお遍路さんをもてなすのは当たり前のことなんよ、なんか見返りがほしいてお接待している訳ではないんじょ。」と、話し終えるを待ち兼ねて、次はわしじゃと竹一が

 


「阿波遍路恋唄」床本 その1

2024-07-28 09:46:37 | 日記

「阿波遍路恋唄」床本 その1

この世に名高い遍路道、巡る足取り願いを込めて、思い思いの遍路道、八十八か所結願目指し、御大師様と連れ立って人の世救う四国霊場

二十一番札所太龍寺、次に向かうは平等寺、その道中のオトンボ山、峠を越えてある祠、一人の女がうずくまる。

【梅】「もう動けぬ、どうぞ誰かお助けなされてくださりませ 天道様、御大師さま」と夫は不治の病にて、床に伏して幾年月、平癒祈願の一心にわが身を捨てての遍路旅、江戸を立ちいではるばるとようようここまで来たれども、不意の石ころ足とられ、転んだ拍子に挫いた足首、どうにかこうにか祠まで、足を引きずり辿り着き、その場にばったり倒れこむ

動きたくても動けぬ身体、ここに留まりかれこれ二日の昼下がり、

【梅】「せめて夜露はしのげても、食べるものとて無くなりし、水も飲み干しもう動けぬ」

麓の村はまだ遥か、痛みと飢えと渇きとに、心細さも加わって、我が身の終わりと堪える心も弱り果て、江戸に残した夫を思い

【梅】「今頃は、どうしていやしゃんす」と、空を見上げて嘆きその場にしばし眠り込む

いつしか聞こゆる達者な足音、新野町岡花村の竹一と花の盛りの西光寺村のお松の両人 好き合う同士言い合わせ、竹藪掃除に行くとの口実作って、忍んでここまでやってきた

【竹】「オーイお松、逢いたかったよ」

【松】「竹ちゃん、私も会いたかったわ」

と、嬉しさかみしめ共々に、二人夫婦になるように、願いを込めて祠詣でに立ち寄れば、そこに見えるは生き倒れ、両人お驚き、慌てて駆け寄り抱き起こす。

【竹】「もうし、もうし女子し」

竹一が手持ちの水を飲ませると、女のお腹が鳴り響く。

お松慌てて差し出す焼き芋 

【梅】「オオ、お芋」

と、飛びつくように頬張って一口食べてはあふれ出す、涙と元気と有難さ、何度も何度も涙と口も拭きながら、女は元気を取り戻す。

【梅】「ありがとうございます ありがとうございます 私の名はお梅と申します 江戸よりはるばる遍路の旅へ参った者でございます。今は何のお礼もできません お四国参りを成就させ、江戸へ帰った暁には、きっとお礼を差し上げたい お二人の所とお名をどうぞ教えてくださいませ」とお梅が頭を下ぐれば、二人は顔を見合わせて

【竹】「いやいや礼など及びませぬ、当たり前のことをしたまでじゃ

子供のころからわしらは、村の爺さん婆さんにずっと聞かされて育ってきた。困っているお遍路さんには手を貸すもんじゃ」

 


「地這キュウリを収穫」

2024-07-26 10:29:06 | 日記

「地這キュウリを収穫」

 長雨と酷暑の影響で遠退いていた畑に出かけ地這キュウリを収穫した。ポットで苗を育ててから畑に移し、それからは何の手入れもしてこなかったが、写真のようなキュウリを収穫することができた。天の恵みに感謝したい。

 


「いいだ公演まであと少し」

2024-07-24 22:09:00 | 日記

「いいだ公演まであと少し」

 8月3日に長野県飯田市で開かれる“いいだ人形劇フェスタ2024”で中村園太夫座が上演する演目は“阿波遍路恋唄”、夏期大会も終わったことから“阿波遍路恋唄”の仕上げに集中するのみ。これまで10回近く上演してきたが、創作浄瑠璃だけに工夫・改良点が次から次へと湧いてくる。写真は、夫の不治の病を治そうと四国遍路をしている江戸から来たお梅、22番札所平等寺に至る遍路道で足をくじいてしまう場面だ。