三笑会

三笑会は、平成30年6月1日~陶芸活動と陶芸教室、喫茶室、自家野菜販売、古美術・古物商経営を総合的に活動していきます。

「阿波遍路恋唄」床本 その2

2024-07-28 10:02:28 | 日記

「阿波遍路恋唄」床本 その2

【梅】「いえいえ、何をおっしゃいます。お二人の親切、助けてもろうてそのままではなりません。お二人に出会わなければ私の命はなかったはず。」

【竹】「そんなことはない、このオトンボ山、岡花村や西光寺村、ここの誰と出会うても、みんな同じようにあんたはんをお助けするはずじゃ。これはな、ずっとずっと前からこの村に受け継がれてきとうお接待の文化っていうもんじゃ」

【梅】「なんとまあ、お接待、お接待の文化とは一体どんなものなのでしょう。どうぞ教えてくださいませ」と問われてお松は身を乗り出し

【松】「これは村の寺子屋で聞いた話やけんど、なんでもこの四国では、お遍路さんへのお接待は「御大師様への功徳」になるけんな。自分の代わりにお遍路さんにお四国参りを託すという意味もあって、時にはお賽銭にしてなって、お金を渡すこともあるんよ。お接待には、ほんまにいろんな形があってな、道筋の小さな休憩所、うどんやお菓子、お茶などを出すお接待所、ほかにも、善根宿や通夜堂なんていうのもあるんよ」

と言えばお梅はほとほと感心し

【梅】「私には、労咳という不治の病を患った夫がおります。モウどうしたらよくなるのかと、思い悩んでおりました。そんな折、長屋のみんなからお四国さんのことを聞きました。お遍路さんになって順礼の旅に出て、御大師様にお願いすると、夫の病気が治るかもしれないと…それを聞いたらもう居ても立っても居られなくなって、藁にもすがる思いで江戸を飛び出し、順礼しておりました。今度は私が長屋のみんなに教えてあげたい。 ぜひお四国参りやお接待のことをもっと、もっと教えてくださいませ。」

と聞けば竹一喜んで、

【竹】「この話は、次の札所の平等寺の和尚さんから聞いた話やけんどな、お遍路さんの装束は、死に装束の意味があってな、死に顔を隠す菅笠をかぶり、墓標にするための金剛杖を片手にとるんよの。お梅さんも、わしが今言うた順礼の出で立ちをしとるでないで。ほれ、笠にも「同行二人」と書いてあるだろ。お遍路さんは、道中弘法大師様が見守るなかで自分と向き合うんじゃ。それぞれの悩みをな、見据えるんじゃ。」

【松】「私も和尚さんに聞いたわ。お遍路するんは、願いごとを叶えるためだったり、病を治すため、供養のためだったりと、理由は人それぞれにあってな、でも、それだけではないんよ。ずっとずっと昔から順礼によってご利益を受けるという意味だけではなしに、自分から困難に立ち向かうことで人生の答を見つけるという意味も奥に隠されていてお遍路さんが絶えんのよ。このお四国ではどこでもお遍路さんをもてなすのは当たり前のことなんよ、なんか見返りがほしいてお接待している訳ではないんじょ。」と、話し終えるを待ち兼ねて、次はわしじゃと竹一が

 


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