三笑会

三笑会は、平成30年6月1日~陶芸活動と陶芸教室、喫茶室、自家野菜販売、古美術・古物商経営を総合的に活動していきます。

「阿波遍路恋唄」床本 その4(最終)

2024-07-28 10:23:57 | 日記

「阿波遍路恋唄」床本 その4(最終)

【松】「何を言うとん、そんな心配いらんけん。四国の人はどこでもお遍路さんに優しいんよ、みんな特別なことをしているんと違うんじょ。これが当たり前、お接待を素直に受け入れてお遍路してよ。でも、まずは平等寺にしばらく逗留して足を治さなな。そうそう、岡花村と西光寺村には中村園太夫座といって評判のな阿波人形浄瑠璃の一座があるんよ。ぜひ観てほしいな。それから、お梅さんはさっき一人旅って言うたけど、違うんじょ。お遍路さんは一人じゃないけんな。ほら、さっき竹一さんも言うたでしょ、お遍路の間はずっと弘法大師様がそばに付いてくれてるんよ。」

と話すうち、嬉しさ不安が入り交じり、迎えが来るのを待つ二人、思い思いの心持ち、時を超えても変わらぬ情け、受け継がれるは遍路道、お接待の心意気、御大師様へと続く道

はや暮れかけの雲間より一筋差し込む光明に照らされ浮かぶ祠より現れいでたる御大師様

【弘】「これお松、竹一と両人ともどもに、わが心にかなう善行 まことに良きことなり。この後はめでたく夫婦と相成って 幸多く暮らすがよい。

これお梅、前生からの因縁か、巡り合えた数々の縁。苦しきことも、この縁を大事にすればきっと結願できるであろう。同行二人と記せし通り、わしも共に順礼いたすであろう。心安くまいるがよい。」

俄かに驚き、取り乱し、右と左ときょろきょろとさわぐ心もそのままに、またもやあふるお梅の涙、御大師様を見上ぐれば、

【梅】「御大師様、どうぞ夫の病をお治しくださいませ。夫が元のようになるように、心をこめて順礼いたします。お言葉胸にきっと結願いたします。」

【弘】「夫の病平癒の願い、確かにきいた。その願いを一心に四国参りをするがよい。また、道々でのお接待は有難く受けるがよい。結願がかなうその頃にはお前の心から迷い、不安も遠のき、気持ちも安らかになるであろう」と、宣ふ御声麗しく、尊く導く太師の教えを残し、かき消すごとく失せ給う

に、響きわたるは二人の声。重なり響くは夕暮れの鐘の音、御大師さまの遍路道 有り難かりける御法なり。

【梅】「御大師様。私には、いつも御大師様がお傍にいてくださっていることを信じてお遍路いたします。竹一さんやお松さんのような優しい人にまた会えると信じてお遍路いたします」と、お梅はその場で深々と頭を垂れ、唱える念仏は「南大師遍照金剛」、もとより唱えるお松ととも(令和四年一月六日)

原案作成:陶久敏郎

床本作成:鶴澤友輔

三味線 :鶴澤友輔

太   夫:竹内雅代、新田みか

 


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