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インド映画の平和力

ジャーナリストさこう ますみの NEVER-ENDING JOURNEY

『スター・ウォーズ』新作映画:シャルミーン・ウベード=チナーイ監督は組む相手が悪すぎる

2023年04月25日 | ドキュメンタリー
 先ごろ英国ロンドンで開催された『スター・ウォーズ』ファンの祭典「スター・ウォーズ セレブレーション ヨーロッパ 2023」

 その一幕に登場したのが、アナウンスされた新作劇映画3本のうちの1本を手がけるという、シャルミーン・ウベード=チナーイ(Sharmeen Obaid-Chinoy)監督だ。その言動は、傍目にも、相当に無理をしているというか、どうにも浮き上がっているように見えて、私には痛々しかった。
 そういえば昨年の秋、米国のエンタメ情報サイト『Deadline』の速報を目にしたが(2022年10月23日付)、やっぱり進行していたのか。流れていればよかったのに。

 監督にしてみれば図るところはいろいろあるのだろうが、いくらなんでも組む相手が悪すぎる。キャスリーン・ケネディ(ルーカスフィルム社長)に、デイジー・リドリー(『スター・ウォーズ』続3部作の主演女優)、しかも『スター・ウォーズ』続3部作のその後を描く作品とは。

 思えば、映画館で『スター・ウォーズ』を見ていて、「あとどのぐらいで終わるんだろうか」と腕時計をあらためたのは、『フォースの覚醒』(エピソード7、2015)が初めてだった。『スター・ウォーズ』シリーズがディズニーのフランチャイズに移ってからの、続3部作の1作目。
 中盤、主人公のレイが帝国軍の戦闘機に追われて、シリーズに名高い宇宙船ミレニアム・ファルコンに乗りこむあたり。そこにいたるまででじゅうぶん、旧3部作の1作目『新たなる希望』(エピソード4、1977)のプロットをなぞり返しているにすぎないと察し、飽きあきしていた。そしてエンドクレジットまで、この印象は裏切られず。

 以後、『最後のジェダイ』(エピソード8、2017)、『スカイウォーカーの夜明け』(エピソード9、2019)と続いた作品内容が惨憺たる出来に終わったのは、熱心なファンをはじめ各方面から糾弾され尽くしているとおり。
 旧・新合わせて6作品で形成してきた設定や世界観の破壊ぶりは指摘し出せばきりがなく、主人公の造形にしても、物語づくりの基本における御法度をことごとく犯したのだから当然の結果である。
 この惨状を招いた最たる責任者のひとりがキャスリーン・ケネディであり、デイジー・リドリー個人はともかく、彼女が演じたレイというキャラクターは「続3部作という悪夢」の象徴でしかない。

 キャスリーン・ケネディやディズニーにしてみれば、ムスリム出自のパキスタン人でカナダ市民権をもち、女性の人権をテーマにしたドキュメンタリー映画でアカデミー賞を2回受賞しているウベード=チナーイ監督は、宣伝戦略的にも使い勝手という面でも、白羽の矢を立てる甲斐があるのだろう。

 だが、ウベード=チナーイ監督は本来、ドキュメンタリー映画のフィルモグラフィが物語るように、ポリコレ(えせフェミニスト、えせ人権・多様性尊重)と場を共有するべき存在ではない。
 
 日本で劇場公開されたのは『ソング・オブ・ラホール』(2015、米)だけだが、アカデミー賞を受賞した短編2作も非常に見ごたえのある作品である。
 すなわち、アシッドアタック(acid attack)の被害者女性のうったえを描いた『セイビング・フェイス 魂の救済』(Saving Face、2012、パキスタン=米、共同監督)、いわゆる「名誉殺人」(honor killing)で九死に一生を得た若い女性の闘いを追った『A Girl in the River: The Price of Forgiveness』(2015、パキスタン=米)。

 ジャーナリスト、ドキュメンタリー監督としての基軸を知るには、あえて1本だけ挙げると、『New Yorker』2018年4月2日付のロングインタビューがいいだろう。

 ちなみに『ソング・オブ・ラホール』は Amazon Prime Video で見ることができる。
 もう1本、やはりネットで鑑賞できる、これもたいへん興味深いドキュメンタリー映画があるので、稿を改めて紹介したい。

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