磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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へんてこな犬

2005年09月10日 | 短編など
私は10年以上前から短篇はひとつも書いていません。
若いときに書いた作品です。
時代もあるんだろうなあーと思います。
メルヘンという分野はあまり書いている人はいないようですね。
アヒルが話したり、ネコが長靴をはいたりしますが、
まあ、それはそれ、お話として楽しんで下さいませ。




へんてこな犬



1

お鼻の長い象をアキラ君はクレヨンでゾウーンと大きくかきました。

「えへへ、ぼく、じょうずだろう」

立ち上がって誰もいないのに、ぶらぶらと見せびらかせて、はしゃぎまわりました。

妹が戸を開けました。

風が吹き込んできて、ヒュールルとその絵は飛んでいきました。

「わあー」

アキラ君はあわてて、団地の階段をおりて行きました。




2

そこに老いた野良犬ポンコツンがいました。

「何だ、ワンダ」
ポンコツンは絵をみました。

「何とぶっかこうな鼻だ。鼻というものは、丸くて小さいのが、よろしいものを。なんと変てこな犬だ」
ポンコツンは、こんな気の毒な犬がいるわけがない、いまいましい絵めと思いました。

そして、ポンコツンはおしっこをその絵にかけました。

3

「こらー! それは、ぼくの絵だぞ。せっかく、うまくかけたのに」
アキラ君は怒りながら走ってきました。

ポンコツンはあわてたもので、いつものゴミ箱あさりとまちがって、絵をくわえて逃げました。

アキラ君はおっかけましたが、追いつけませんでした。とぼとぼと団地の階段をのぼりました。

「臨時ニュースをもうあげます。昨晩、森下サーカスの子象が1頭逃げ出し……」
テレビのアナウンサーが話していました。


4

そのころアキラ君は、
「ママ、僕の象さん、逃げ出したんだよ~」
と、一所懸命に大きな声で話しました。

おかあさんは夕食の用意が忙しくって
「そうぞう」
としか言わないのでアキラ君はふてくれさていました。


5

一方、ポンコツン老犬は老眼鏡をひとさし指でおさえて驚きました。
「なんと大きな犬だなあー。何を食べたらあれだけ大きくなるんだ!」

ポンコツンは小さな犬でしたので、大変驚きました。

ポンコツンは広場の柿ノ木の下に近づいて行きました。

「わん、わん」
ポンコツンはへんてこな犬に愛情をこめた声をかけました。

変てこな犬は、
「おじさん、僕、お腹がペコペコでねぇ、何か食べたいの」
と、悲しいそうな声でした。

ポンコツンはそれでゴミ箱につれていきました。
「さあー、食べよう」

ポンコツンはゴミ箱の中をあさりました。すると、急にへんてこな犬はあたりが真っ暗になったいたのに気がついて、おかあさんが恋しくなって泣き出しそうでした。


6

「ねえーねえ、おじさん、家に帰りたいよお~」
ついには泣き出してしまいました。

魚の骨の尾っぽをかじったポンコツンおじさんは魚の骨を足の上に落としました。

「ぼく、お家がどこかわからないんだよ~」

わんわんと、へんてこな犬は泣きました。

ポンコツンは両前あしをくんで、地べたに寝ころがったり、ひっくりかえたりして考えました。

「そうだワン」
いい考えがうかびました。

そして、のそのそとポンコツン老犬とへんてこな犬は歩いて行きました。


7

アキラ君はおかあさんと妹とおとうさんとで食事をしていました。

「ねえ、おとうさん」
 アキラ君は話しかけました。

「なんだ」
 おとうさんはアキラ君の方を見ました。

「ぼく、今日ね、象さんの絵をかいたんだ」
「象たん、象たん」
 アキラ君の横で妹のアカネちゃんがお茶わんをたたきました。

おかあさんはアカネちゃんに、
「しー」
と言って、ウィンクしました。

するとアカネちゃんはピタッとお茶わんをたたくのをやめました。

「それがね、うまくかけて、喜んでいたら、アカネちゃんが戸を開けて、風がヒューと吹いてきて、その絵は飛んでいったんだ」

アカネちゃんはお皿をスプーンでカンカンたたいて、唇を丸くして、
「ヒュー、ヒュー」
と言いました。

それを見たおあかさんは、人さし指を口もとにもっていき、口を丸くして
「しー」
としました。

アカネちゃんは「シー」と言って静かにしました。

「それがね、へんてこな犬がていてね、その絵をくわえて逃げだしたんだ」
アキラ君は悔しそうにはなしました。


8

一方、ポンコツンたち。
「今日なぁ、おまえさんに似たへんてこな犬を見たんだよ。エヘヘ……。あの、本物じゃなくって、絵だったんだけどもねえ」
ポンコツン老犬は、てれながら象さんに話しました。

「そうだ、アキラ君。今日、サーカスから象が逃げたんだよ。新聞の夕刊にかいてあったよ」
おとうさんが話しました。

「本当ですか。あんなに大きいのに見つからないものですか」

アキラ君は、
「まさかあ、あのへんてこな犬がつれて行ったんじゃないだろうなぁ」
と冗談を言いました。

「あはは、そんなわけがあるわけないわよ」
「そうだとも、あはは……」

アカネちゃんも、コップをスプーンでコンコンとならして、
「あはは……」
とヨダレをたらして笑いました。


9

一方。ポンコツン老犬たち。
「ここが、おまえさんの家だよ」
「ここの階段は、のぼりにくいなあ」
「おまえさんは大きすぎるからなあー」

トントン
「誰かきたみたいね」

「わおーん」
ポンコツンおじさんは、あいさつをしました。

「あれ、誰だろう」
おとうさんが立ち上がりました。


10

アキラ君もつられて、ついて行きました。
それにつられて、アカネちゃんも行きました。
「あっ、象だ」
「わっ、象だ」
コンコン
「うっ、象さんだあ~」
みんな、驚きました。


11

おとうさんはあわてて、警察に110番しました。
アキラ君とアカネちゃんはデザートのバナナを象さんにあげました。











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