磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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原子力の父 フェルミの生涯

2009年01月27日 | 読書日記など
『原子力の父 フェルミの生涯』
   ローラ・フェルミ(Laura Fermi)(著)/
     崎川模行(訳)/法政大学出版局1955年

「訳者あとがき」にこう書かれてある……。下「」引用。

「さて、この伝奇物語の非常な面白さは、その劇的な物語がフェルミ夫人のローラによってかかれたところにある。ローラ夫人はローマ大学の理学部に学び、フェルミの業績を理解する能力をそなえた女性であっただろうし、また、人間フェルミの人物や性格を詳しく描写し得る唯一の人であるわけである。しかもフェルミはこの夫人故にイタリアを去ったのであるから、彼の劇的な運命をつくりだした人でもあったのである。夫人がこの面白い伝奇物語を書き上げた文才に恵まれていたということは、フェルミにとっての運命の神のもう一つの傑作であったと、私は感ずるのである。」



出会い……。下「」引用。

「一九二四年のある春の日曜日、私は友だちに誘われて散策を試みました。私どもはローマのある町の停留所で落ちあいましたが、その折、友だちは一人の黒い背広に黒いソフトの、猫背で首が前に出たずんぐりした青年をつれていました。イタリアでは黒の背広は近親者の喪を意味しますが、私は後になって彼の母が最近なくなったことを知ったのでした。真黒な濃い髪をもった浅黒い男でした。この青年を紹介するのに、私の友はつとめて印象づけようと試みたらしく、
「この方は前途有望な物理学者で、まだ二十二なのに、もう大学を教えていらっしゃるんです。」
 この変わった容貌の青年は、このように私に説明されたのでしたが、二十二才という年は私にはかなりの年輩に感じられました。だって、私がまだ十六のときだったからです。」

フェルミはローラと、サッカーをしたという。

カトリックの教義と……。下「」引用。

「カトリックの教義とファシズムが同時に狂信的な態度で語られ、教室で初めて十字架のキリストの像と、国王と王妃の肖像と、そしてムッソリーニの肖像が一緒に壁に掲げられているのをみたとき、彼女は強い印象をうけると同時に、すっかり混乱してしまったのでした。」

ドイツと同盟……。下「」引用。

「一九三八年になると事情は変ってきました。その変化の原因はムッソリーニのエチオピア戦争にさかのぼり、イタリアにたいする国際連盟の経済制裁にはじまるのです。その制裁は中途半端で戦争を停止させるほど強力ではなかったのですが、ムッソリーニを西欧列強からひき離すことには十分でした。その制裁の結果は、アフリカでの勝利よりずっと深刻で、けっきょく、ファシズムとドイツのナチと同盟を結ばざるを得なくなったのでした。」

七月十四日「ラサの宣言」公布。下「」引用。

「ユダヤ人はイタリア人に属していない--何世紀もの間にこの神聖なる国土に上陸し来たセム族に関しては、現在何ものも残されていない。」

そして、アメリカへ。

「広島」に製品を……。下「」引用。

「ゲニア・パイエルスは、奥さんの連中のかなでもいつも一番先にニュースを聞きこんできましたが、八月七日の朝も、私にニュースを知らせてくれたのです。時間は十時半、そのとき私は台所にいました。其の頃は子供たちの夏休み中で、私は仕事をしなかったからです。私はゲニアが二階に駆けあがってくるのを聞きました。木の階段を彼女が急いで駆けあがってくる音で、彼女が心中興奮していることがわかりました。
「私たちの製品が日本に落されたのだって」と、彼女は踊り場につくなり叫びました。
「トルーマンが声明をだしたのですよ。十分前に技術区域に伝達されたの」
 彼女は台所のなかに入ってきて、眼をかがやかせ、掌を上に、腕をひろげて、赤い口をあけて棒立ちに立っていました。
「私たちの製品」という言葉、彼女は使いました。「広島」がすんだ朝なのに、まだ私たち奥さん連中はロス・アラモスで原子爆弾がつくられたことを知りませんでした。」

そして、長崎……。下「」引用。

「広島につづいて第二の爆弾が長崎に落下されました。ロシアは六日間の戦争を日本にしかけました。八月十四日、日本は降伏しました。まるで原子爆弾の反射でもあるかのように、いろいろな感情と言葉の爆発がロス・アラモスに起こりました。
 婦人たちは直ちにすべてのことわを知りたいと思いました。しかし多くのことは当時はもちろん、現在でも公表されていません。子供たちは鍋や蓋をスプーンの楽器の楽隊の先頭に家々をねり歩いて大騒ぎで祝福しました。大人たちは自分たちの仕事の結果を考え、そして、にわかに話をするようになりました。」

そして、非難も……。下「」引用。

「賞賛の声にまじって原爆を非難する声が起り、「野蛮」、「恐怖」「広島の罪悪」、「大量殺人」といった言葉が方々から聞こえてきたとき、彼女ちは酔いからさめたようでした。彼女は驚き、良心に訴えていろいろ考えましたが、それらの疑問にたいして何の答も得られませんでした。」

訳者も著者もヒロシマ・ナガサキのことを、ほとんど知らないのかも?……。









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