磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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おばあさんの人形の部屋02

2006年02月27日 | 短編など

おばあさんの人形の部屋





02.ミルキィー・ドール

 ミルキィーはミルキィーという人形をもっています。
 ミルキィーはミルキィーのことをミルキィーと呼びます。

 でも、人形のミルキィーはミルキィーのことをミルキィーと呼ばないので、べつにややこしく、こんがらがることはありませんでした。

 ミルキィーは小学生ですが、ミルキィーをこよなく愛していました。
 ミルキィーはミルキィーにとって、人形っていう冷たい言葉ではなくって、それは妹だったり、お姉さんだったり、また、時々はミルキィー自身でもあるんです。

 ミルキィーはミルキィーとおなじ服をもっていて、いつもおそろいの服を、まるで姉妹か親子のように着ていました。

 それにミルキィーはミルキィーとうりふたつなのです。ミルキィーはミルキィーをモデルに作られたのではないのに、不思議なくらい似ています。

 寝るときも同じ布団に大小の枕をならべています。もちろん。パジャマもおなじ赤い花もようです。

 ミルキィーがミルキィーに会ったのは、昨年のクリスマス・イブでした。
 人形ずきのおばあさんが、わざわざ東京まで遊びにきたとき、ミルキィーはおばあさんとデパートに行きました。

 おばあさんは、ミルキィーにクリスマス・プレゼントを買ってくれると言いました。
 ミルキィーとおばあさんは、いろいろと見たのですが、これというものが見つかりませんでした。
 そして、ふたりはおもちゃ売り場の一番おくのすみに行きました。

 それは、まるでふたりがいっしょに言いあわせたかのように……。
「あれ、あれよ」
 と、ふたりは唇をふるわせて言いました。

 ミルキィー・ドール、その時にはそんな名前はありませんでした。
 デパートからの帰り道、電車のなかで、ミルキィーは人形の息がくるしいのではないかしらと、包みからだしてやりました。

「よし、よし」
 ミルキィーは親戚の赤ちゃんの頭をなでるように、やさしくなでました。

 そうしていると、ミルキィーの前でつり革を持ち立っているおばさんが、ミルキィーたちに話しかけました。

「かわいいお人形さんね。クリスマス・プレゼント?」
「はい」
「そう、よかったわね」
 よこの席でおばあさんはにこにこと微笑んでいました。

「このお人形ちゃん、お嬢ちゃんに似ているわね」
 と、見知らぬおばさんが話しかけてきました。

 ミルキィーはおばあさんの顔を見ました。そして、ミルキィーは人形の顔とにらめっこしました。
 どこかの駅についたとき、おばさんは電車からおりて行きました。

 すると、おばあさんはハンド・バックからコンパクトを出しました。
 そして、ミルキィーの顔の前に、コンパクトの鏡をさしだしました。

 ミルキィーはそれを見ながら、人形とミルキィーの顔を見くらべました。
「ミルキィー」
 と、おばあんが話かけました。

「このお人形、ミルキィーの好きなタータン・チェックの赤いベストとスカートね」
「ええ」
 ミルキィーは人形をひっしと抱きしめました。

「ミルキィー、ミルキィー。このお人形さんにお名前をつけてあげてね」
「お名前?」

「そうよ、ミルキィーちゃんには、ミルキィーと言うお名前があるでしょう」
「じゃ、このお人形さんの名前、ミルキィー!ミルキィーってするわ」
「ええ、ミルキィーなの」

 そんな、やさしいおばあさんは三ヶ月前にあの世に行かれました。








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ありがとうございます。












閑話休題

人形にまつわることで、
古来からいろいろと
言い伝えられてきましたね。

人形と日本人とは、
他国とは違う、
思い入れがあるようですね。

でも、カトリックの国では
似たようなこともあるような気がします。









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