『占領下の言論弾圧 増補決定版』
松浦総三・著/現代ジャーナリズム出版会1974年
この本は当時のことをよく知っている人が書いている……。
--戦後生まれた人たちの文献のみの推理したような本よりも、当時のことがリアルに書かれてある……。
いろんなことが上げられていて、どれを取り上げていいか迷う……。
--評価の差があるという……。下「」引用。
「『世界評論』や『日本評論』のような左翼雑誌の編集者だった両者にはそうみえたのだろう。
これに反して、穏健な雑誌『展望』編集者臼井吉見や、保守雑誌『文芸春秋』編集者池島信平や放送タレント三木鶏郎などは、占領軍の検閲は天皇の軍部の検閲よりはるかに軽かったとみている。」
占領下の方がよかったという人も……。下「」引用。
「三木鶏郎はいう。「これが占領下であったらアドバイザーだったアメリカ人から“なあに革命の安全弁だよ”と逆にかばってくれたことが忘れられない」(『日本とアメリカ』朝日新聞編)。」
川端康成も検閲でカットされたという。下「」引用。
「ノーベル賞作家の川端康成の文章も、こんな風に訳出され、それが日本文学などに全く理解がないCCDの将校の政治判断でカットされるのだから、たまったものではない。」
吉川英治の『武蔵』は平和武蔵として、モデル・チェンジしたという。
マッカーサー非難。下「」引用。
「パーナード・ルービン記者が、かれの友人のアーニー・パイルが戦死した沖縄へ去ったころの、昭和二一年四月の下旬、東京・馬場先門の外人記者の集会所である丸の内プレス・クラブで、マッカーサー司令部の記者にたいするあつかい方に対して“抗議集会”が開かれた。中心人物はマーク・ゲインである。
事件のいきさつは、クルガノフ(ソ連)記者によると「マーク・ゲインはマッカーサー司令部の活動を批判して、財閥や超国家主義にたいして、見せかけだけではないほんとうの闘争をした鋭い記事をかいた。かれの『マ元帥は財閥解体の計画を拒否している』とか『日本にいるアメリカ人は右翼化している』は、ものすごい反響をよびおこした。-略-」
倫理に問題があった占領軍……。下「」引用。
「ケーディスは、鳥尾鶴代(鳥尾子爵夫人)とスキャンダルをおこしたのをGIIのウィロビーに暴露されて、昭和二三年末に帰国した。だが、こういう事件がなくても、彼は遅かれ早かれ帰国させられただろう。単に情事を暴露されただけならば、二一年ごろには“妾政治と通訳政治”(ワイルズ『東京旋風』)といわれるぐらい、たくさんの占領軍高官は日本人女性を妾にしていたのだから、それだけで帰国させられることはなかっただろう。」
「1 “ヒロシマ”はこうして秘匿された」というタイトルの記事があった。
民主的であったが、原爆報道は別であったという……。
大田洋子の作品の価値を理解していた人がいたようだ。下「」引用。
「大田洋子の「屍の町」は、昭和二一年夏ごろ「障子紙や便箋など雑多な原稿用紙」三五○枚にかかれて、中央公論編集部へ送られた。当時の中央公論編集部は、編集長が畑中繁雄、部員に海老原光義などがいた。この「屍の町」のナマ原稿を読んだ海老原であった。編集者の生甲斐は、すぐれた原稿を手にしたときである。海老原は一読して、「この小説は後世にのこる大文学だ」と思ったという。」
index
「長崎の鐘」は、まずアメリカで英語版が出版されていたという。下「」引用。
「流行歌にまでなった永井隆『長崎の鐘』も、著者に無断で一足さきにアメリカで英語版がだほされている。-略-昭和二四年には、永井隆の「長崎の鐘」の英訳がアメリカで出版されたことを式場はきいて、足しげく占領軍の検閲課へかよった。-略-この昭和二四年という年には、『長崎の鐘』と永井隆ブームの年であり、もっとリアルに描かれた大田洋子の『屍の町」も出版が許可され、それまで占領軍に翻訳許可されなかったジョン・ハーシーの『ヒロシマ』が出版されたのもこの年である。
昭和二四年という年は、ソ連の原爆の所有が明らかになった年であり、占領軍にとっては、もはや原爆を秘密にすることの意味もなくなった年であった。」
Index
『改造』がつぶされる原因の一つは原爆報道だったという……。
「第六章 レッド・パージの演出者と犠牲者」
--日本共産党と総評にはびっくり……。下「」引用。
「当時、闘いの中核であるべき日本共産党は、いわゆるコミンフォルム批判によって、所感派と国際派の二つに分裂しており、レッド・パージ反対にたいして何らなすところがなかった。そして、そのご十数年たったいまでも、この闘争不在の時期について正しい反省と評価が十分になされていない。
日共だけではない。講和後の労働運動を一手に担ってきた総評も、そのころはレッド・パージに反対するどころか、むしろアメリカ占領軍と日本の独占資本家に協力し、レッド・パージにきめて消極的ながら参画したフシがいる。」
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もくじ
index
松浦総三・著/現代ジャーナリズム出版会1974年
この本は当時のことをよく知っている人が書いている……。
--戦後生まれた人たちの文献のみの推理したような本よりも、当時のことがリアルに書かれてある……。
いろんなことが上げられていて、どれを取り上げていいか迷う……。
--評価の差があるという……。下「」引用。
「『世界評論』や『日本評論』のような左翼雑誌の編集者だった両者にはそうみえたのだろう。
これに反して、穏健な雑誌『展望』編集者臼井吉見や、保守雑誌『文芸春秋』編集者池島信平や放送タレント三木鶏郎などは、占領軍の検閲は天皇の軍部の検閲よりはるかに軽かったとみている。」
占領下の方がよかったという人も……。下「」引用。
「三木鶏郎はいう。「これが占領下であったらアドバイザーだったアメリカ人から“なあに革命の安全弁だよ”と逆にかばってくれたことが忘れられない」(『日本とアメリカ』朝日新聞編)。」
川端康成も検閲でカットされたという。下「」引用。
「ノーベル賞作家の川端康成の文章も、こんな風に訳出され、それが日本文学などに全く理解がないCCDの将校の政治判断でカットされるのだから、たまったものではない。」
吉川英治の『武蔵』は平和武蔵として、モデル・チェンジしたという。
マッカーサー非難。下「」引用。
「パーナード・ルービン記者が、かれの友人のアーニー・パイルが戦死した沖縄へ去ったころの、昭和二一年四月の下旬、東京・馬場先門の外人記者の集会所である丸の内プレス・クラブで、マッカーサー司令部の記者にたいするあつかい方に対して“抗議集会”が開かれた。中心人物はマーク・ゲインである。
事件のいきさつは、クルガノフ(ソ連)記者によると「マーク・ゲインはマッカーサー司令部の活動を批判して、財閥や超国家主義にたいして、見せかけだけではないほんとうの闘争をした鋭い記事をかいた。かれの『マ元帥は財閥解体の計画を拒否している』とか『日本にいるアメリカ人は右翼化している』は、ものすごい反響をよびおこした。-略-」
倫理に問題があった占領軍……。下「」引用。
「ケーディスは、鳥尾鶴代(鳥尾子爵夫人)とスキャンダルをおこしたのをGIIのウィロビーに暴露されて、昭和二三年末に帰国した。だが、こういう事件がなくても、彼は遅かれ早かれ帰国させられただろう。単に情事を暴露されただけならば、二一年ごろには“妾政治と通訳政治”(ワイルズ『東京旋風』)といわれるぐらい、たくさんの占領軍高官は日本人女性を妾にしていたのだから、それだけで帰国させられることはなかっただろう。」
「1 “ヒロシマ”はこうして秘匿された」というタイトルの記事があった。
民主的であったが、原爆報道は別であったという……。
大田洋子の作品の価値を理解していた人がいたようだ。下「」引用。
「大田洋子の「屍の町」は、昭和二一年夏ごろ「障子紙や便箋など雑多な原稿用紙」三五○枚にかかれて、中央公論編集部へ送られた。当時の中央公論編集部は、編集長が畑中繁雄、部員に海老原光義などがいた。この「屍の町」のナマ原稿を読んだ海老原であった。編集者の生甲斐は、すぐれた原稿を手にしたときである。海老原は一読して、「この小説は後世にのこる大文学だ」と思ったという。」
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「長崎の鐘」は、まずアメリカで英語版が出版されていたという。下「」引用。
「流行歌にまでなった永井隆『長崎の鐘』も、著者に無断で一足さきにアメリカで英語版がだほされている。-略-昭和二四年には、永井隆の「長崎の鐘」の英訳がアメリカで出版されたことを式場はきいて、足しげく占領軍の検閲課へかよった。-略-この昭和二四年という年には、『長崎の鐘』と永井隆ブームの年であり、もっとリアルに描かれた大田洋子の『屍の町」も出版が許可され、それまで占領軍に翻訳許可されなかったジョン・ハーシーの『ヒロシマ』が出版されたのもこの年である。
昭和二四年という年は、ソ連の原爆の所有が明らかになった年であり、占領軍にとっては、もはや原爆を秘密にすることの意味もなくなった年であった。」
Index
『改造』がつぶされる原因の一つは原爆報道だったという……。
「第六章 レッド・パージの演出者と犠牲者」
--日本共産党と総評にはびっくり……。下「」引用。
「当時、闘いの中核であるべき日本共産党は、いわゆるコミンフォルム批判によって、所感派と国際派の二つに分裂しており、レッド・パージ反対にたいして何らなすところがなかった。そして、そのご十数年たったいまでも、この闘争不在の時期について正しい反省と評価が十分になされていない。
日共だけではない。講和後の労働運動を一手に担ってきた総評も、そのころはレッド・パージに反対するどころか、むしろアメリカ占領軍と日本の独占資本家に協力し、レッド・パージにきめて消極的ながら参画したフシがいる。」
全スキャン。
もくじ
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