『原発になお地域の未来を託せるか-福島原発事故-利益誘導システムの破綻と地域再生への道-』
清水修二・著/自治体研究社2011年
著者は福島大学の理事・副学長。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/98/cd31eee7f75fc64c633fe9a90c4f2cd2.jpg)
仙台市の自治体職員研修所で抗議をしている時に、東日本大震災……。
福島大学、著者の住む……。下「」引用。
「家族にも職場にも電話がつがらない状況で気をもむばかりでしたが、三日目に何とか山形経由で福島大学に戻りました。それ以来、学生たちの安否確認やら、さらなる原発事故拡大への対応やらで、大わらわの日々が続きました。」
チェルノブイリ訪問。そしてフクシマ……。下「」引用。
「かつて私自身が訪問したチェルノブイリ現地周辺の「汚染大地」が、私の住んでいる福島県にこつぜんと出現することになりました。原子力災害の特殊な性格について私は論文を書いたことがありますが(拙稿「原子力緊急時対策と医療」『フクシマ大学地域研究』六巻四号、一九九五年)、わが身をその「特殊な災害」の渦中に置くことになるとまでは、想像力が及びませんでした。現実にそのような場を経験してみると、実にさまざまな思いもよらないストレスやあつれきが生まれるものだということを思い知りました。」
歴史に刻まれた「フクシマ」。下「」引用。
「「二○一一年三月一一日・フクシマ」は世界の原子力開発史に永久に刻み込まれることになるでしょう。なぜこんなことになってしまったのか。事故の科学技術的な検証はこれから長い時間をかけて行われることになりましょうが、こういう大事故には必ず「社会科学的な」背景があります。「千年に一度の天災だから仕方がない」では済まされない、日本特有ともいえる構造的社会問題が横たわっています。」
米軍基地も含む「迷惑施設」と利益誘導……。下「」引用。
「そしてその代償に、多額の金が現地に落ちるしくみが日本にはあります。いわゆる「迷惑施設」をそのような利益誘導の手段で立地するのは、なにも原子力に限った話ではありません。米軍基地でもごみの処理・処分場でも、構造は同じです。(拙著『NIMBYシンドローム考-迷惑施設の政治と経済-』東京新聞出版局、一九九九年参照)」
町の商店、住民……。医療崩壊……。拒否……。下「」引用。
「屋内待避の指示を受けた住民がどういう立場に置かれ、どういう心理状態にとらわれるか、経験しないとなかなか想像できないと思います。原則として家から出るなと謂れ、それが一カ月、あるいはもしかしたら数カ月も続くのです。それも普通の環境ではありません。テレビをほとんどつけっぱなしで放射能の情報ばかり気にしながらの毎日です。ストレスに耐えられなくなった住民は「自主避難」を始めました。そうなると町の商店は次々とシャッターを下ろしてしまい、商店街はひと気がなくなります。病院も看護師などがどんどん減って患者もみられなくなりました。
さらに追い打ちをかけるように心理的なストレスを増幅するのは、当の区域が「汚染地帯」扱いされることです。実際には心配するほどの放射線量になっていなくても、そこが屋内待避区域になっているという理由で、物流が滞ってしまう事態が生じました。津波被災地向けの救援物資すら、トラック業者が搬送を拒否して運び込めないといったことが実際に起こりました。」
電源三法システムの成立。下「」引用。
「日本には、発電所の立地を促進するためのユニークな財政制度が存在しています。いわゆる電源三法のシステムです。三法とは「電源開発促進税法」「発電用施設周辺地域整備法」そして「電源開発促進対策特別会計法」の三つを指します。-略-」
「福島県はどれだけ電源三法交付金を受け取ってきたか」 下「」引用。
「県と市町村を合わせた三六年間の総合計が約二七○○億円です。金額が一番多いのは、大都市に電力をサービスする代償「電力移出県等交付金相当部分」で八五二億円、次が発足当初からの由緒ある「電源立地促進対策交付金相当部分」で七二三億円、第三が各世帯・事業所ごとに現金を配る露骨な利益供与「原子力発電施設周辺地域交付金相当部分」で六二五億円です。この数字は水力・火力・原子力をすべて合わせたものです。」
「寄付金という名の利益誘導」
--青森県……。下「」引用。
「財政ルートを通じた交付金とは別に、原子力施設においてはいろいろな名目で電気事業者から地方自治体に寄付のなされる事例が多くあります。奇しくも東日本大地震のあった三月一一日、青森県が電気事業連合会(電事連)から一○億円の「財政支援」を受けることが決まったとの報道がありました(「東奥日報」三月十二日付)。これは青森県が「海外返還低レベル放射性廃棄物」の受け入れを決めたことに対応するもので、電源三法交付金が配分されない市町村に四○○○万円ずつ配ることになっています。青森県では何かにつけて電事連が寄付や事業費支援を行うのが日常茶飯事です。」
--福島県。下「」引用。
「福島県で有名なのはサッカー場の一件です。一九九四年に東電は、総工費一三○億円のサッカー場(現名称「Jヴィレッジ」)を寄付すると福島県知事に申し出ました。見え見えの利益供与による立地交渉ですが、東電は「これは決して取引ではない」と説明し、県も発電所増設と切り離して寄付だけを受け取る形で処理しました。今度の事故で原発増設の話はもう持ち出さないでしょうから、県は結局、何の反対給付も差し出すことなく一三○億円を取得したことになります。」
もくじ
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清水修二・著/自治体研究社2011年
著者は福島大学の理事・副学長。
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仙台市の自治体職員研修所で抗議をしている時に、東日本大震災……。
福島大学、著者の住む……。下「」引用。
「家族にも職場にも電話がつがらない状況で気をもむばかりでしたが、三日目に何とか山形経由で福島大学に戻りました。それ以来、学生たちの安否確認やら、さらなる原発事故拡大への対応やらで、大わらわの日々が続きました。」
チェルノブイリ訪問。そしてフクシマ……。下「」引用。
「かつて私自身が訪問したチェルノブイリ現地周辺の「汚染大地」が、私の住んでいる福島県にこつぜんと出現することになりました。原子力災害の特殊な性格について私は論文を書いたことがありますが(拙稿「原子力緊急時対策と医療」『フクシマ大学地域研究』六巻四号、一九九五年)、わが身をその「特殊な災害」の渦中に置くことになるとまでは、想像力が及びませんでした。現実にそのような場を経験してみると、実にさまざまな思いもよらないストレスやあつれきが生まれるものだということを思い知りました。」
歴史に刻まれた「フクシマ」。下「」引用。
「「二○一一年三月一一日・フクシマ」は世界の原子力開発史に永久に刻み込まれることになるでしょう。なぜこんなことになってしまったのか。事故の科学技術的な検証はこれから長い時間をかけて行われることになりましょうが、こういう大事故には必ず「社会科学的な」背景があります。「千年に一度の天災だから仕方がない」では済まされない、日本特有ともいえる構造的社会問題が横たわっています。」
米軍基地も含む「迷惑施設」と利益誘導……。下「」引用。
「そしてその代償に、多額の金が現地に落ちるしくみが日本にはあります。いわゆる「迷惑施設」をそのような利益誘導の手段で立地するのは、なにも原子力に限った話ではありません。米軍基地でもごみの処理・処分場でも、構造は同じです。(拙著『NIMBYシンドローム考-迷惑施設の政治と経済-』東京新聞出版局、一九九九年参照)」
町の商店、住民……。医療崩壊……。拒否……。下「」引用。
「屋内待避の指示を受けた住民がどういう立場に置かれ、どういう心理状態にとらわれるか、経験しないとなかなか想像できないと思います。原則として家から出るなと謂れ、それが一カ月、あるいはもしかしたら数カ月も続くのです。それも普通の環境ではありません。テレビをほとんどつけっぱなしで放射能の情報ばかり気にしながらの毎日です。ストレスに耐えられなくなった住民は「自主避難」を始めました。そうなると町の商店は次々とシャッターを下ろしてしまい、商店街はひと気がなくなります。病院も看護師などがどんどん減って患者もみられなくなりました。
さらに追い打ちをかけるように心理的なストレスを増幅するのは、当の区域が「汚染地帯」扱いされることです。実際には心配するほどの放射線量になっていなくても、そこが屋内待避区域になっているという理由で、物流が滞ってしまう事態が生じました。津波被災地向けの救援物資すら、トラック業者が搬送を拒否して運び込めないといったことが実際に起こりました。」
電源三法システムの成立。下「」引用。
「日本には、発電所の立地を促進するためのユニークな財政制度が存在しています。いわゆる電源三法のシステムです。三法とは「電源開発促進税法」「発電用施設周辺地域整備法」そして「電源開発促進対策特別会計法」の三つを指します。-略-」
「福島県はどれだけ電源三法交付金を受け取ってきたか」 下「」引用。
「県と市町村を合わせた三六年間の総合計が約二七○○億円です。金額が一番多いのは、大都市に電力をサービスする代償「電力移出県等交付金相当部分」で八五二億円、次が発足当初からの由緒ある「電源立地促進対策交付金相当部分」で七二三億円、第三が各世帯・事業所ごとに現金を配る露骨な利益供与「原子力発電施設周辺地域交付金相当部分」で六二五億円です。この数字は水力・火力・原子力をすべて合わせたものです。」
「寄付金という名の利益誘導」
--青森県……。下「」引用。
「財政ルートを通じた交付金とは別に、原子力施設においてはいろいろな名目で電気事業者から地方自治体に寄付のなされる事例が多くあります。奇しくも東日本大地震のあった三月一一日、青森県が電気事業連合会(電事連)から一○億円の「財政支援」を受けることが決まったとの報道がありました(「東奥日報」三月十二日付)。これは青森県が「海外返還低レベル放射性廃棄物」の受け入れを決めたことに対応するもので、電源三法交付金が配分されない市町村に四○○○万円ずつ配ることになっています。青森県では何かにつけて電事連が寄付や事業費支援を行うのが日常茶飯事です。」
--福島県。下「」引用。
「福島県で有名なのはサッカー場の一件です。一九九四年に東電は、総工費一三○億円のサッカー場(現名称「Jヴィレッジ」)を寄付すると福島県知事に申し出ました。見え見えの利益供与による立地交渉ですが、東電は「これは決して取引ではない」と説明し、県も発電所増設と切り離して寄付だけを受け取る形で処理しました。今度の事故で原発増設の話はもう持ち出さないでしょうから、県は結局、何の反対給付も差し出すことなく一三○億円を取得したことになります。」
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