戦争未亡人 日の当たる田んぼ
私はあのおばあさんを知っています。
ほんの2~3分しか見てないけれど、
あのおばあさんを知っています。
NHKの昭和万葉集で戦争をテーマにした
和歌がとりあげられていた時、
わたしはあのおばあさんを知ったのです。
暑い夏の夜を眠けまなこで、どんな和歌だったのかも
見逃してしまいました。
一人のおばあさんが田んぼのあぜ道に立って、
にこっと笑っておられました。
顔は日に焼け、気持ちよく皺ができていました。
アップされると、歯が幾本か抜けていて、愉快さがくわわりました。
そんなことも気に止めずに、にこっと笑っておらました。
背筋がしゃんとしていて、年よりくさくなく、左手には鍬をもっておられました。
「おばあさんは、戦争でだれをなくされたのですか」
とアナウンサーが質問しました。
おばあさんは少し気をはりなおして、
「息子です」
と、こたえられました。
青い風が吹きました。
アナウンサーはご主人でしょうと問い直した。
おばあさんは青い風がとおりすぎて驚いておられました。
歯の間から空気がもれる東北弁(秋田)。
3人の子どもを育ててゆかれた。
炎天下、汗が流れ白いタオルでぬぐわれていました。
なんとたくましく大きな人でしようか。
青い風を吹かせることができる人でしょうか。
おばあさんの胸には死なれた夫は、
むかしのまま、ビーズ玉のように輝き、
もう終戦から34年、息子も夫の歳をとうにこえておられます。
夫、おばあさんの息子に変わっていました。
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ありがとうございます。
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あのおばあさんを知っています。
NHKの昭和万葉集で戦争をテーマにした
和歌がとりあげられていた時、
わたしはあのおばあさんを知ったのです。
暑い夏の夜を眠けまなこで、どんな和歌だったのかも
見逃してしまいました。
一人のおばあさんが田んぼのあぜ道に立って、
にこっと笑っておられました。
顔は日に焼け、気持ちよく皺ができていました。
アップされると、歯が幾本か抜けていて、愉快さがくわわりました。
そんなことも気に止めずに、にこっと笑っておらました。
背筋がしゃんとしていて、年よりくさくなく、左手には鍬をもっておられました。
「おばあさんは、戦争でだれをなくされたのですか」
とアナウンサーが質問しました。
おばあさんは少し気をはりなおして、
「息子です」
と、こたえられました。
青い風が吹きました。
アナウンサーはご主人でしょうと問い直した。
おばあさんは青い風がとおりすぎて驚いておられました。
歯の間から空気がもれる東北弁(秋田)。
3人の子どもを育ててゆかれた。
炎天下、汗が流れ白いタオルでぬぐわれていました。
なんとたくましく大きな人でしようか。
青い風を吹かせることができる人でしょうか。
おばあさんの胸には死なれた夫は、
むかしのまま、ビーズ玉のように輝き、
もう終戦から34年、息子も夫の歳をとうにこえておられます。
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