磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

鱧男の小説などをUP。環境問題に戦争・原発を!環境問題解決に民主主義は不可欠!

戦争未亡人 日の当たる田んぼ

2005年09月10日 | 短編など
戦争未亡人 日の当たる田んぼ

私はあのおばあさんを知っています。
ほんの2~3分しか見てないけれど、
あのおばあさんを知っています。

NHKの昭和万葉集で戦争をテーマにした
和歌がとりあげられていた時、
わたしはあのおばあさんを知ったのです。

暑い夏の夜を眠けまなこで、どんな和歌だったのかも
見逃してしまいました。

一人のおばあさんが田んぼのあぜ道に立って、
にこっと笑っておられました。

顔は日に焼け、気持ちよく皺ができていました。
アップされると、歯が幾本か抜けていて、愉快さがくわわりました。

そんなことも気に止めずに、にこっと笑っておらました。
背筋がしゃんとしていて、年よりくさくなく、左手には鍬をもっておられました。

「おばあさんは、戦争でだれをなくされたのですか」
 とアナウンサーが質問しました。

おばあさんは少し気をはりなおして、
「息子です」
と、こたえられました。

青い風が吹きました。
アナウンサーはご主人でしょうと問い直した。

おばあさんは青い風がとおりすぎて驚いておられました。
歯の間から空気がもれる東北弁(秋田)。

3人の子どもを育ててゆかれた。
炎天下、汗が流れ白いタオルでぬぐわれていました。

なんとたくましく大きな人でしようか。
青い風を吹かせることができる人でしょうか。

おばあさんの胸には死なれた夫は、
むかしのまま、ビーズ玉のように輝き、
もう終戦から34年、息子も夫の歳をとうにこえておられます。
夫、おばあさんの息子に変わっていました。




↓1日1回クリックお願いいたします。

ありがとうございます。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。