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龍の声

龍の声は、天の声

「虚と実を見極める」

2013-11-07 07:30:20 | 日本

菅家一比古さんから、「言霊の華」が届いた。実にいいねー!
以下、要約し記す。



現在、巷(ちまた)では大物かつ超有名なテレビ司会者であるM氏の子息の犯罪で、M氏の話題が多くマスメディアを賑わせている。

これまでも過去に有名女優、有名俳優、タレントの子女の覚醒剤事件、詐欺事件、暴力事件等々が報じられてきた。その度に親は記者会見で親の教育に問題があったと謝罪している。そういう親たちは芸能界、マスメディアの華であり寵児であった。しかしそれはあくまでも「虚」の世界であり「実」の世界ではない。

華やいだ世界に身を置き「私」の世界、プライベートの世界までも「虚」で彩(いろど)り、作り上げてしまったのである。それがもろに子供に影響をもたらし、子どもまでが虚の世界が当たり前のように思ってしまい、実(真実、実在、実相)の世界を知らないまま、「虚」の世界のままで生きて行くことになる。

生活すること、お小遣いを得ること、自由を味わうこと等々は、額に汗し、時に我慢、忍耐し継続的に努力した結果もたらされ、得られるものと言う実感を克ち取らなければいけない。

その時、虚の世界を突き破り実在感、実存感を得られる。それが魂の充足となる。

名優、渥美清は「男はつらいよ」の「フーテンの寅さん」は、あくまでも虚の世界であることを熟知しており、それ以外は常に「実」の世界に身を置き、プライベートは絶対に他人に見せることはなかった。だから奥さんの顔も子どもの顔もついぞ見たことがない。きっとプライベートでは普通の地味な夫であり父親だったのだと思う。彼は虚と実をよく知っていたのだろう。

私たちの人生も常に虚の世界の限界を見極め、常に実在、実存、実相である魂の喜ぶ世界を選択し生きなければならない。





「中国の海洋戦略④」

2013-11-07 06:50:53 | 日本

◎まとめ

中国の海洋戦略に関する文献から見る限りでは、目下のところ中国海軍が追求している目標は西太平洋全域への覇権の拡大であり、沿岸から近海へ、近海から外洋へと海洋覇権を着実に拡大しようするのが、現在の中国の海洋戦略の基本方向と評価できるであろう。

またこのことは、防衛白書などに示されている現実の中国海軍等の行動とも符合しており、その一環としていま尖閣諸島に対する威圧行動がとられていることに、注目する必要がある。

中国の行動の背後には長期的な戦略目標がある。
中国にとり尖閣諸島は、台湾と並び、太平洋への出口を制する最大の要点であり、西太平洋の覇権を握るには、何としても確保しなければならないとみなされている。

これらから判断すれば、中国が、力関係が不利な場合に一時的に融和策をとることはあっても、長期戦略の中で尖閣諸島の占拠を諦めることはないとみるべきであろう。




<了>





「中国の海洋戦略③」

2013-11-06 07:30:59 | 日本

4 現実の軍事力バランスから見た張世平の批判に対する評価

しかし、張世平のような、列島線観念では中国海軍の世界的活動には不十分とする海上権力についての考え方は、現実の軍事バランスからみると、いまだにその実行は非現実的と言わざるを得ない。

中国の隣接地域における局地的な対米軍事バランスにおいては、中国大陸に配備され近隣地域を攻撃可能な、核および非核の各種のミサイル戦力と地上配備の戦闘機などの戦力投射能力が、対米優位をもたらそうとしていると言うことはできる。

このことは米国が中国の「接近阻止/地域拒否戦略」を重大な脅威ととらえていることにも表れている。しかし、米国の空母打撃群のような外洋型空母を持たない中国海軍が、真の世界的な戦力投射が可能になるには、まだまだ年月を要する。

この点については、張世平も、航空母艦を恫喝に使用するという問題を研究する必要性を強調していることからみても、自らも問題点として認識しているとみられる。

したがって、中国海軍が本土の掩護から離れて、自由に世界中の外洋を行動することを前提とする、張世平が主張する海上権力グローバル化論は、遠い将来の目標として今後長期間をかけて追求すべき目標ではあっても、現在の中国の海洋戦略の現実的な目標を示すものとは言えないであろう。

中国海軍力の現状は、第1列島線内では何とか行動の自由を確保し、第2列島線への進出を試みている段階と言えよう。

むしろ張世平の主張で注目されるのは、第2列島線として千島列島と北海道が含まれ、オホーツク海と日本海が明確に包含されていること、及び第3列島線としてハワイ諸島のみならず、アリューシャン列島からライン諸島が含まれ、ほぼ西太平洋全域を対象としている点である。

第2列島線の範囲は、第2列島線確保の段階で、在韓、在日米軍基地を排除し、日本と極東ロシアを封じ込め、日本海からオホーツク海までの行動の自由を確保するとの意思を示唆している。

中国は現在、日本海に面する羅先地区の開発に大規模な投資を行ない港湾、道路などのインフラを整備しているが、日本海からオホーツク海、さらに北太平洋から北極海に至る海域での海上権力の優位を近い将来獲得するための布石であろう。

中国海軍が、日本の北海道西岸から千島列島西部にまで進出し日本海からオホーツク海の海空優勢を握ることは、日本が日本海側からも中国の脅威を受けることを意味し、韓国も東西北の3正面から包囲されることになり、韓国の国防は極めて困難になるであろう。

さらに第3列島線が西太平洋全域をほぼ覆う海域を包含していることは、中国が、外洋型空母を整備し、長期的には西太平洋での海上権力を握ろうとしていることを示唆している。

このことは、米太平洋軍のキーティング司令官が、2007年5月に訪中した際、会談した中国海軍の楊毅少将から、ハワイを基点として米中が太平洋の東西を「分割管理」する構想を提案されたと、2008年に米上院の軍事委員会で証言していることと符合している。

また軍事戦略上、尖閣諸島と台湾は重要な価値を有している。東海の水深は大部分が100メートル未満であるが、中国大陸から太平洋に出るには必ずこの浅い東海を経由しなければならない。

しかし東海では潜水艦が秘匿して外洋に出るための水路は限定されている。張世平は、この数少ない貴重な水路を制し、中国が太平洋に出るのを「かんぬき」のように閉ざしている、第1列島線中の最大の要点が、尖閣諸島一帯と台湾であるとみている。

また、尖閣諸島は小島群ではあるが、レーダを配備できれば、中国側の防空上の警戒監視空域は400キロメートル以上東方に推進されることになる。







「中国の海洋戦略②」

2013-11-04 21:21:46 | 日本

2 中国の海洋戦略の基本方向と3つの「列島線」

中国は現在、海洋戦略上は南方を最重視している。中国の海洋戦略の専門家である張世平は、「南方から外洋へ、外洋から全地球へ」というのが、国家として勃興し発展する方向及び国家の軍事力が発展する方向に関する選択であると述べている。また、世界的に広がっている国家利益のために、世界に通ずる戦略的シーレーンに対し、有効な安全保障を提供し、中国の勃興の実現を確実に保障することが、海軍の基本的任務であり、「世界的に展開し、遠洋においてシーレーンを守ること(遠洋保交)」が中国海軍の戦略的選択である」としている。ただし、中国の外洋進出のためには、「列島線(链岛)」の突破が必要とされている。

海洋主権護持の観点から、列島線について、第1、第2、第3の列島線が中国の海洋戦略文献では主張されている。いわゆる「3つの列島線」という、「かんぬき」のような島嶼群により、米国は中国に対する軍事的な包囲網を形成しているとみている。

約20人の中国の戦略専門家の共著である『中国の地理的な安全保障環境に関する評価報告(2010-2011年)』では、第1列島線は、日本の九州からマレー半島に至り、この中に韓国、日本、台湾省、フィリピン、インドネシア、ブルネイなどの諸国がある。

第2列島線の核心であるグアム島には、西太平洋最大の米海空軍基地がある。第3列島線の核心はハワイ諸島であると記述されている。これが列島線についての中国専門家の一般的な認識を示していると思われる。

第1、第2のみならず、ハワイを核心とする「第3列島線」という地政学的概念が明確に言及されている点は、注目される。


3 「列島線」観念に対する批判

しかし軍事科学院研究員の張世平海軍少将は、以下のように、このような列島線という考え方について、批判的である。以下の主張は張世平個人の主張であり、どこまで現実の海軍戦略に影響があるかは分からないが、列島線観念の現代的意義を示唆する興味深い事例である。

彼の主張によれば、「列島線」は中国の海軍の建設にとり重要な観念であり、中国海軍の発展をけん引するだけの重要な影響力を持っている。
第1列島線は、中国の黄海、東海、日本の琉球列島、中国の南海、フィリピン群島等から成り、第2列島線は、千島列島、北海道、南方諸島、マリアナ諸島、カロリン諸島、ニューギニア島などから成り、第3列島線は、アリューシャン列島、ハワイ諸島、ライン諸島などから成るが、いずれも「海上権力(海权)」に関わる問題である。

これらの列島線観念の狙いは、中国に一歩一歩海洋へ発展するための段階を指し示すことにあるとされている。しかし張世平は、以下のような批判を展開する。実際は、これらの「列島線」は一種の観念であり、大陸的な海上権力の概念である。その指し示す方向は明らかではなく、局限性という大きな問題を抱えている。

中国が直面する海洋は東方にあり、中国の主要な海岸線は東方に向いている。歴史上の西方列強と日本の侵略も東方からなされた。現在の世界の最強最大の海軍力は東方に存在する。

確かにそれはそのとおりだが、中国の海洋生命線は太平洋のみではなく、中国が必要とするものもまた太平洋西岸の第1、第2、第3列島線内の行動の自由権のみではない。列島線観念は、興隆しつつある中国にとり、もはや「解放」ではなく「桎梏」となっている。

さらに、彼はその理由を以下のように説明している。中国の必要とする海上権力は、全地球的なものであり、太平洋、インド洋、大西洋、北極海など全方位にわたるものである。中国の利益は世界に拡散し、中国の海洋活動も全世界にまたがっており、中国の責任は世界に及んでいる。
「近岸防御―遠海防衛(海から海へ)―世界的な平和維持(海から陸へ)」、これが中国海軍にとり発展の歴史的必然であり、「遠洋保交」こそ、これからの中国海軍が目指すべき方向であると強調している。

このようにグローバルパワーとなることが海軍の目標でなければならないというのが、張世平少将の主張である。




「中国の海洋戦略①」

2013-11-04 21:21:46 | 日本

矢野義昭さんの論文「中国の海洋戦略」を是非とも読んで欲しい。
以下、要約し4回にわたり記す。


いま尖閣諸島周辺では、中国の公船が領海侵犯を繰り返し、無人機が尖閣諸島の領空を侵犯するなどの事案が起こっている。このような中国側の強硬姿勢の背後にある中国の海洋戦略とは、どのようなものであろうか。この点を中国側が公表した戦略文献により検証する。

1 中国の海洋安全保障環境に対する認識

中国の戦略専門家の間では、習近平総書記の方針に沿い、「富国強兵」が地政学的な戦略の根本原則ととらえられている。
中国は、地理的に三方が陸地に囲まれており、海洋は東正面にしか存在しない。中国が面する海洋は大きく、南海、東海、黄海の3方面に区分されるが、これら3方面の海洋への進出の必要性が、より重視されるようになっている。

各海洋方面の安全保障環境については、以下のように述べられている。

●南海方面は、域外大国の参入により混乱し、域内各国間の対中連携体制が強まり、各国の軍事費が増加して海空軍の建設が進んでいると、警戒感を示している。

●黄海方面は、米国主導で米日韓の同盟強化と活動が活発化する一方で、ロシアによる北方領土確保態勢の強化が進み、朝鮮半島では衝突が生じ南北が対峙し北朝鮮の核問題解決は停滞しているとみている。特に米空母等の演習活発化に対する警戒感を示している。

●東海方面では、まず日本との間で資源開発、国境問題、島嶼の帰属をめぐり対立が深まり、日本がしばしば挑戦的となり、同海域での偵察・監視・警戒・測量などの活動を強化しているとしている。東海方面の記述では、日本を台湾よりも先に重点的に記述して、台湾以上に重視する姿勢を見せている。対日敵対意識を露わにし、また日本側の抑制的対応には言及していない。

●台湾について、台湾当局は、先端的な装備を購入または開発し、演習や文献では依然として中国を仮想敵にしているとしている。特に2010年の米国からの64億ドルに及ぶ武器輸出と米国がF-16C/Dなどの兵器を輸出しようとしていることに反発を強めている。また台湾の国産の対艦ミサイル、巡航ミサイル、対ミサイル能力の研究開発を脅威視し、各種ミサイルの配備例を挙げている。さらに演習活動の活発化も指摘している。

このように、海洋正面については全般的に、各方面で周辺国との対立関係が強まり、周辺国が防衛力を増強し対抗策をとっていることに警戒感を強めている。中でも東海正面では、「核心的利益」とし「国土統一」の目標である台湾よりも、日本に関する記述が先に書かれ量も多く、敵対的姿勢の記述が目立つ点は注目される。

日本の尖閣はじめ南西諸島の確保を、台湾併合よりも時期的にも戦略的にも優先するとの中国の戦略方針を反映しているのかもしれない。
他方で、台湾側の防衛力向上には注目しており、台湾の防衛力強化は、それなりの対中抑止効果を発揮していると言えよう。また記述の順序から見る限りは、既に島嶼をめぐり軍事衝突が生起している南海正面が最も重視されている。

中国がグローバルな経済活動を展開しようとするときに、立ちはだかる敵対勢力として、最も脅威感をもってとらえられているのは、米国である。中国は、米国が中国を、東北アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、北アジアの5方向から、「取り囲んで封じ込めながら接触を増やす(ヘッジと関与)」という戦略を採用しているとみている。

また、台湾の独立を認めないとしつつも、「中国が武力行使を決定したと声明を発した場合は、米国は必ずや台湾の自衛を支援する」とする、米国の台湾に対する「あいまい」戦略も、祖国統一を妨害しようとする最大の脅威ととらえている*







「中国 19分野での抑圧・弾圧の実態③」

2013-11-03 07:22:57 | 日本

(14)民主的統治の制度
中国国民は指導者選出を含む公的活動へのフル参加を認められていない。習近平、李克強ら最高指導者も不透明かつ非民主的な方法で選ばれた。司法から全人代、メディア、大学まで、中国共産党がすべてを支配している。最近も政府高官の私財の公開を求めた、反腐敗、社会正義を推進する活動家たち25人が当局に逮捕された。

(15)市民社会
市民の社会的権利を守るための非政府組織(NGO)や非公式な市民ネットワークに対する中国政府の厳しい規制は、世界人権宣言のなかの「結社の自由」の保障に明らかに違反する。中国政府は共産党の統治に批判的な市民の集まりには強い規制を加える。同政府は今年中に市民団体の登録に関する新規定を発表すると述べているが、その展望は不明なままである。

(16)司法へのアクセス
中国当局は2012年11月の共産党大会の期間中、北京で法輪功信者、人権活動家、請願者たち多数を再教育収容所に拘束した。大会中の請願や抗議を封じるためだった。著名な人権活動家たちはなお拘束されたままである。一般市民も不公正を司法当局に訴え、是正策を得るアクセス方法は保証されていない。

(17)公衆衛生
中国政府が公衆衛生を守り、特に食糧と医薬品の安全性を保つ能力に対して、国民は不信感を述べている。中国初の精神衛生法が2013年5月に発効したが、民主活動家や抗議運動指導者らが懲罰のために精神病患者として拘束されることを防ぐ手段を明記していない。

(18)香港とマカオでの事態
2017年の香港行政長官の選挙で、住民すべての投票権保障を実現しようとする動きがあるが、中国当局は反対している。マカオでも同様に住民全員の選挙権保有が求められているが、なお当局の抵抗が強く、予断を許さない。

(19)政治犯データベース
この「中国に関する議会・政府委員会」の活動の中核とされる中国政治犯の資料収集では、2013年9月現在、合計1304人の中国人が政治犯と宗教犯として拘留されている。その他に6005人が過去に政治犯、宗教犯として逮捕され、いまはすでに解放されたか死亡したという。

以上のように中国の人権弾圧の実例を伝える報告は、米国政府と議会のそれぞれの対中政策形成にとって大きな規範となる。

中国は、要するに人権の弾圧と自由の抑圧の国なのである。米国に限らずどの国の政権も中国に対する政策を選ぶ際は、中国内外の動きをしっかりと見つめることが先決となろう。その考察ではまず相手国家の政府の特徴を見ることが重要となる。たとえ膨大な手間がかかっても、である。

個人の人権や自由は、世界人権宣言で真っ先に約束された個々の人間たちの基本的な権利である。その基本的な権利が中国では共産党独裁支配により、一般国民から大幅に奪われている。この年次報告はその現実をいやというほど繰り返し伝えているのだ。

「人権弾圧」はまさにグローバルに忌避し排斥せねばならない現象である。わが日本も、自国と自国民にとって、それが何を意味するかを真剣に考えて対応すべしということでもあろう。


<了>






「中国 19分野での抑圧・弾圧の実態②」

2013-11-02 07:53:49 | 日本

(5)チベット
2012年9月から今年7月までにチベット人65人が中国当局の弾圧に抗議するため焼身自殺をした。表現、結社、移動の自由の剥奪への抗議だった。中国当局はチベットの言葉や文化を薄め、焼身自殺者の家族への懲罰的措置をも強めている。中国政府はチベットの宗教指導者ダライ・ラマとの対話も果たしていない。

(6)新彊
中国当局は、新彊地区で独自の言語、文化、宗教への権利を尊重する民主主義的な措置を求めるウイグル人指導者たちに、厳しい抑圧の措置を取った。また当局は著名なウイグル人学者が国外へ旅行することを禁止する一方、香港のメディアの取材に協力して通訳をしたウイグル人を逮捕し、懲役11年の刑に処した。この取材は、中国当局によるウイグルの史跡の破壊を伝えるものだった。

(7)少数民族の権利
内モンゴルでは、民族的な文化を平和的に維持、発信しようとするモンゴル民族代表が迫害や懲役を受けた。遊牧民の多くが草原から追われた。モンゴル民族の人権を主張する活動家は当局から拘束を受けたままである。中国当局は、内モンゴルの医学校施設の一部を中国当局に押収されたことに抗議した元校長に対して、懲役3年の刑を言い渡した。

(8)人口計画
中国政府の「一人っ子政策」による国民の家族構成計画や出産プロセスへの介入、特に2人目の子供の出産への懲罰金、強制不妊や強制中絶などは国際的な人権規範に違反する。中国当局は2013年3月、人口問題を管轄する政府機関を再編成し、「一人っ子政策」の実施の責任を一部移管した。この動きは「一人っ子政策」の緩和を意味すると解釈される一方、なお地方政府は同政策のより厳しい実施を続けている。

(9)居住と移動の自由
中国政府は戸籍(戸口)制度の継続により、国民が自由に居住場所を決める権利を否定している。
農村から都市に移動した労働者たちが、都市戸籍を保有していないことによって社会福祉などで差別を受け、社会全体の不安定につながる。チベット人、ウイグル人、政治活動家とその家族たちなど合計1400万人もが国外への移住を禁じられている。

(10)女性の地位
中国の地方、中央の政府職員雇用での女性の比率は、国際的な女性差別撤廃宣言が提示する基準にはるかに及ばない。教育や雇用全般での女性差別も、新指導層の登場後もなお広範である。中国の官営メディアが報じた家庭内暴力防止の新法律もなお実現していない。レイプ被害者の若い女性も現行刑法では適切な法的保護を受けていない。
 
(11)人身売買
中国政府は、女性や児童の売買取引を防ぐ国連の議定書に沿った法的措置を国内で実施したと主張するが、米国国務省の人身売買の今年の国際報告では、中国はなお最下位のカテゴリーにリストアップされた。中国の内外では多数の男女や子供たちが、いまも強制労働、強制結婚、性的迫害のために売買されている。

(12)中国領内の北朝鮮難民
中国は国連の難民保護の規定などに違反して、自国内の北朝鮮難民を本国へ強制送還している。送還された難民は北朝鮮政府から苛酷な懲罰を受ける。中国政府は北朝鮮政府と協議のうえ、最近は難民の摘発をさらに強めるに至った。中国領内の北朝鮮難民女性は人身売買、強制結婚、売春を強いられている。中国政府は自国領内で生まれた北朝鮮難民の子供たちも本国へ強制送還している。

(13)環境
中国政府は自国内の激しい大気汚染にもかかわらず、環境保護の施策を公表する措置を取っていない。中国政府は特に土壌汚染についての情報を国家機密として扱っている。新しい環境保護法でも、環境汚染を引き起こした責任組織を訴えられる当事者は、政府が認めた組織だけと規定している。






「中国 19分野での抑圧・弾圧の実態①」

2013-11-01 07:03:41 | 日本

古森義久さんの「中国 19分野での抑圧・弾圧の実態」についてかかれた論文があった。
以下、要約し、3回にわたり記す。



中国は習近平国家主席、李克強首相という新指導層を迎え、国家や社会の開放、改革の方針を宣言した。しかし現実には共産党独裁による国民の人権の抑圧や自由の制約は従来よりもさらに悪化した。

米国の議会と政府が一体となった政策諮問機関「中国に関する議会・政府委員会」がこの10月中旬に発表した2013年度の年次報告が以上のような総括を打ち出した。

中国の人権状況は2013年9月までの1年ほどにどのような実態を示したのか。 同報告は総括として以下のような諸点を指摘した。

・当委員会は中国当局が習近平、李克強らの新指導体制下で自国民の表現の自由、結社の自由、宗教の自由、共産党の権力の緩和、法の統治の確立などに関して前進がないことを認識した。新体制のスタート時には、改革や開放、当局の権力の制限を示唆する公式の言明がなされ、中国全土にわたって、期待が表明されていた。しかし新指導部はすぐに人権尊重や法の統治の確立を求める動きを弾圧し始め、公共事案に対する共産党の支配を再宣言するようになった。中国はその結果、基本的な人権の保障や政治的な改革のないまま、経済の近代化だけを追求するというこれまでの路線を継続することとなる。

・新指導部は多方面での抑圧の緩和や自由の拡大を言明し、特に憲法の遵守や汚職の追放を強調したが、2013年春までにはその種の公言を実行しないことが明白となった。同年9月までには当局は許志永(北京郵電大学の法学部教授で憲法学者)や郭飛雄(広東省の著名な民主活動家)を含む約60人を逮捕、拘束、あるいは「失踪」させて、表現の自由、結社の自由を弾圧した。

・中国当局は、自国の経済に関しても政府や党に均衡を欠くほど大きな役割を果たさせている。その方法は国有企業への不公正な補助金供与、投資や雇用で中国企業が不当に有利になるような民間介入などであり、いずれも世界貿易機関(WTO)の規則に違反している。中国当局はまた人民元の対ドルレートを不当に低く保つ一方、外国の知的所有権の大規模な盗用を続けている。

以上、要するに同報告は、中国の指導部が習近平体制に代わっても、改革・開放・民主化どころか、独裁統治の抑圧・弾圧がむしろ激しくなってきたと断じているのである。

悪化の傾向を実証する具体例などを19の分野に分けて詳しく報告する。

(1)表現の自由
中国国民がインターネットを利用して、政府についての情報を共有し、政府への抗議を述べることが多くなったのに対し、当局はその自由を抑圧する不透明な措置を強めた。ネット利用者の実名登録の義務づけを強め、検閲を広めて、国際規範の違反を激しくした。政府の女性再教育労働センターの運営や北朝鮮政策を批判的に報じた中国人ジャーナリストたちが逮捕された。

(2)労働者の権利
中国当局は依然、労働者の自由な結束や独立労組の結成を許していない。特に地方から都市部へと移動した移民労働者の労働契約がなく、年金や医療サービスも決定的に欠けている。一方、成長率の高い電子関連企業では未成年労働者の雇用が多くなってきた。

(3)刑事訴訟手続き
中国当局は2013年1月に既存の刑事訴訟法を改正したが、なお任意の拘束や拷問が絶えていない。許志永や陳克貴(盲目の人権活動家の陳光誠の甥)への弾圧は、単に政治的活動だけを理由とする拘束がいまなお続いていることの実証である。

(4)宗教の自由
中国の憲法は「通常の宗教活動の範囲内に留まる」という表現で国民の宗教の自由を制限し、仏教、カトリック、道教、イスラム教、プロテスタントの5つだけしか活動を認めていない。しかもその5宗教は国家が管理し、各宗教の指導者たちはみな政府への登録を義務づけられる。中国当局はカトリック教会内の人事にまで干渉している。これらの行動は世界人権宣言に違反する。