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「同居と一人暮らしはどっちが得? 生活者の損得意識」

2018-04-01 07:12:01 | 日本

三矢正浩さんが「同居と一人暮らしはどっちが得? 生活者の損得意識」について掲載している。
以下、要約し記す。



◎高齢男女で温度差・・・「一人暮らし」の損得

生活がいろいろと変化するこの季節に合わせて、住まいや働き方などにスポットを当て、調査結果を紹介したいと思います。
 
まずは、この季節に大きく変化することが多い住環境について。
親元を離れたり、単身赴任があったりと、住まいの変化は生活単位の変化に結びつくことも。そこで、「家族との同居」「一人暮らし」の損得についてみてみます。家事の手間や生活費負担の度合い、生活の自由度などなど、さまざまな尺度が入り混じっての判断になるかと思いますが、結果はこうなりました。

・家族との同居は・・・
 得だ:80.6%
 損だ:19.4%

・一人暮らしは・・・
 得だ:46.7%
 損だ:53.3%

出典:博報堂生活総合研究所「お金に関する生活者意識調査」
(2017年11月、全国20〜69歳男女3600人、インターネット調査 ※以降出典同じ)
 
「家族との同居」では8割近くが得と答えているのに対して、「一人暮らし」ではスコア差は小さいですが、若干損が上回っています。損得意識の上では「家族と同居>一人暮らし」となりました。同居によって実現できる生活上の助け合いや費用軽減などのメリットと、自由さが多少損なわれるデメリットとを天秤にかけつつ、得だと感じている生活者が多いということでしょうか。
 なお「一人暮らし」のスコアについては、性年代でブレイクダウンすると、少し興味深い結果が見えてきました。男性では、20代から60代へと年代が上がっていくにつれて、一人暮らしを得だと思う割合が急激に下がっていきます。が、その一方で、女性は年代が上昇しても損得のスコアはあまり大きく変化していません。男女の60代を比較するとその差は大きく、

男性60代 得だ:29.5% 損だ:70.5%
女性60代 得だ:43.6% 損だ:56.4%
 
となっています。

若い男性には「得なもの」だった一人暮らしが、歳とともにだんだんと「損なもの」へと変わっていく。その要因には、加齢とともに、家事など日常生活のさまざまな部分で、配偶者など同居者に依存する気持ちが強まっていることなどが推察されます。世代的に「男性の片働き+専業主婦」の世帯が多いことの影響もあるでしょう。
 かたや女性のスコアが年代によって大きく変わらない要因には、「家事などは一通りできるし、やろうと思えば自分一人でも生きていける」と、そんな意識を持っている人が一定数いるということがうかがえます。
 ある一組の夫婦。夫は歳とともに「一人では生きられない」との気持ちを増していく一方で、妻は「一人で暮らしても構わない」との冷静さをずっとキープし続けている・・・。そんなことをイメージすると、「自分の妻はどうだろうか・・・」と、少しゾワゾワするものを覚えます。
 かつて、妻が定年後の夫に対して「粗大ごみ」「濡れ落ち葉」と揶揄する言い回しが話題になり、最近も「熟年離婚」の増加が報じられています。すれ違う高齢男女の内面が、「一人暮らし」の損得意識差からもなんとなく垣間見える、そんな調査結果となりました。


◎住まいの損得、生活者は「持ち家>賃貸」
 
さて住まいの変化にあたっては、「どこに住むのがよいのか?」に加えて、「家を買うべきか? 買わずに借りるべきか?」も大きな問題です。「持ち家は住宅ローン完済後に資産が残る」「いやいや、資産価値の乏しい古い物件が残るだけ」・・・と、この手の議論は尽きることがありません。
 
もちろん答えはその時々、置かれた状況によっても変わってくるかと思いますが、生活者の昨今の認識はどうなっているのでしょうか。

●持ち家VS賃貸

・家を買うことは・・・
 得だ:74.4%
 損だ:25.6%

・家を借りることは・・・
 得だ:33.4%
 損だ:66.6%
 
それぞれの損得意識をみると、「家を買う」については得との認識が大きく上回っているのに対して、「家を借りる」では正反対の結果。実に3分の2の人が損という認識を示しました。損得意識の上では「家を買う>家を借りる」という状況のようです。
 
戦後の高度成長期には、不動産価格が上昇を続けたこともあり、「住宅を所有することが将来の資産形成につながる」といういわゆる“マイホーム神話”が生まれ、住生活にも大きな影響を与えました。が、その後のバブル崩壊で土地の価格は大きく下落。さらに個人個人の働き方や人生設計が多様化していることもあり、近年では「持ち家はむしろリスク」という論調もよく目にするようになりました。
 
それでも「持ち家」に軍配を上げている生活者。かつての“マイホーム神話”が今も根強く残っているのか。あるいは昨今の低金利によって、住宅ローンを借りるメリットを感じやすくなっているのか。興味深いところです。


◎「働」の損得、「副業」は9割弱が得
 
新社会人、転勤、転職などなど、春は働くことについても大きな変化がある季節。ということで、働く・仕事に関する事柄についても、生活者の損得意識をみてみましょう。

●「働」の損得

・就職は・・・
 得だ:90.7%
 損だ:9.3%

・起業は・・・
 得だ:59.1%
 損だ:40.9%

・転職は・・・
 得だ:60.7%
 損だ:39.3%

・副業は・・・
 得だ:85.8%
 損だ:14.2%
 
まず、企業等で働き口を得る「就職」については9割が得との認識。一方で自ら立ち上げる「起業」については、得との回答は6割となりました。起業後にうまく行かなかったときのリスクの大きさを心配してか、損との回答がだいぶ高くなっています。
 
同様に「転職」も得が6割、損が4割との回答。「人生100年時代」「働き方の多様化」が盛んに言われる時勢ではありますが、心理的には皆が皆、働き方の変化やリスクを受け入れられるわけではない実態が見えてきます。
 
年代別にみていくと、「起業」では全年代を通じて損得スコアの変動はそれほど大きくありませんが、「転職」では年代が上がるにつれて得のスコアがゆるやかに低下(=損のスコアが上昇)。その結果、50代から60代にかけて、得のスコアで「起業」が「転職」を逆転します。転職市場での年齢的な有利不利や、現職での立場などを勘案すれば、歳とともに「転職=損」の意識が高まるのも自然なことなのでしょう。
 
ただ上述の「人生100年時代」の考え方にのっとれば、歳を重ねても「転職=得」の意識がキープされたり、むしろ高まっていったりするような働き方の枠組みづくりが求められるのかもしれません。
 
さてそんな中、得との回答が損を大きく上回っているのが「副業」。実に9割弱が得との認識で、全年代を通じて高い水準を保っています。本業を継続した状態で収入増につなげられるという“低リスク”イメージによるものからか、転職や起業よりだいぶ肯定的に捉えられている様子がうかがえます。
 
副業の形態は多岐に渡りますが、最近はフリマアプリをはじめとして、個人が自分のさまざまな“資産”を生かしてお金を得られるサービスが広がりを見せ、身近なものになってきています。
 
どの年代にも精神的ハードルの低い副業を通じて、一人ひとりが自分の“資産”に自覚的になり、かつそれを高めていく。そしてそのうちハードルの高い転職や起業などにも臆することなく向き合えるようになっていく・・・。と、やや理想論的かもしれませんが、そんな「人生100年時代」の描き方も、現実味を帯びてきているような気がします。