龍の声

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「進化し続ける豆腐④」

2014-03-31 07:52:45 | 日本

おいしい豆腐を目指すための試行錯誤も続いている。基本的には、豆乳濃度が高い豆腐ほどおいしい。一般的な濃度は8~9%ほどだが、11%以上になると甘みを感じるようになる。しかし、豆乳濃度を高くすると、固まりづらいという技術的問題が出てくる。一方、凝固剤の濃度は0.2%や0.3%。豆腐メーカーは毎朝、絞った豆乳の濃度を計測し、加える凝固剤の量を微妙に変えている。ここには職人技がいまも入っている。

大豆の品種によっても、豆乳や凝固剤などの組み合わせ方は違ってくる。いま、国産大豆で多く使われているのは「フクユタカ」。たんぱく質が豊富で、豆腐にしたとき固まりやすい品種である。

日本の大豆は総じてたんぱく質が多い。甘い豆腐を作るのに適している。

しかし、日本が輸入しているアメリカの大豆も最近、たんぱく質含有量の多いものができている。日本の豆腐メーカーの志向に合わせているわけである。

日本人は大豆を栄養源として頼りにしてきた。しかし、現状は豆腐向けの大豆の大部分を米国などからの輸入に頼っている。日本豆腐協会資料によると、豆腐製品に使われる原料大豆は年間50万トン弱。原料大豆の調達先は、8割強が米国、カナダ、中国などからの輸入になっている。

2000年代には、男前豆腐店の「男前豆腐」などのブランド品がブームになった。2013年には「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。

しかし日本の豆腐に追い風が吹き、前途洋々かというと、決してそうではないようだ。

豆腐の単価はここ数年、値崩れを起こしている。1世帯あたりの豆腐の年間消費量はここ20年、75丁から80丁で大きな変化はない。ところが、消費金額は1994年の7886円から、2012年の5614円へと大幅に下がった。単価が下がってきているのだ。

全国豆腐連合会は2013年7月、各スーパーに値上げ要請を、翌8月、日本チェーンドラッグストアー協会に豆腐製品の廉価販売自粛要請を出した。値崩れの背景には、ドラッグストアなどでの豆腐の価格破壊がある。化粧品や医薬品といった“本丸”の製品で利益を上げるため、集客目当てで豆腐を赤字覚悟の値段で販売する店も多いという。

スーパーも単価を下げざるをえない。豆腐メーカーに仕入価格の値下げを要求してくる。

日本豆腐協会の調べでは、調査対象企業8社の全出荷金額に対する経費の割合は、2011年で99.9%。つまりメーカーの利益は0.1%しかない状況だ。1985年には7.7%、2005年でも3.6%は確保できていた。

豆腐の値崩れは“街の豆腐屋”にも影響する。豆腐製造業者の6割以上は従業者3人以下。つまり“街の豆腐屋”だ。2002年に全国の豆腐製造業許可施設は1万5028カ所だったのが、10年後の2012年3月末には9548カ所まで落ち込んだ。“街の豆腐屋”が次々に廃業している。

豆腐を安く買えることは、消費者にしてみれば得にも思える。だが、豆腐の価格破壊が続けば、豆腐の製造自体が廃れていき、おいしい豆腐を選べなくなる事態になりかねない。より大きく見れば、日本で大きく発展した食文化の1つが衰える事態になりかねない。

豆腐は、日本人のたんぱく源を支えてきた主流の食品である。若い人たちにもっと豆腐を食べていただきたい。そして、豆腐メーカーももっとおいしい豆腐を作っていってもらいたい。そのためには、逆ざやで販売しているような状況を脱しなければならない。

日本に根付き、発展してきた食品でも安泰とは言えない。将来を生きる人が日本の豆腐の歩みを追っていったとき、今という時はどのように映っているだろうか。




<了>