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「日本酒の秘密①」

2014-03-01 08:51:26 | 日本

日本酒はその名の通り日本の酒だが、世界の酒とはどう違うのか。その特徴の一つとして米麹(麹菌)を用いた製造法があげられる。日本酒の起源は定かではないが、713年の「播磨国風土記」に「神社の神様に供えた米飯が、古くなってカビが生えたので、それで酒を醸した」と記されていることから、この頃すでに米麹を用いた日本酒が造られていたとされている。また、糖化と発酵が同時に行われる並行複発酵にて造られる醸造方法も特徴である。一般的に言われる日本酒とは、定義上では「清酒」とされている。
以下、3回にわたり学ぶ。



【製造の秘密】

・蒸米・製麹

まず、玄米を精米する。この精米歩合によって製品の特徴が変わるのでとても重要な作業である。精米するのは、玄米の胚芽や外層部に微生物の栄養源となる成分が多く含まれるため、麹菌や酵母が過度の生育状態となり、良質の酒ができないためである。
そして洗米・浸漬した米を蒸す。蒸した米に、種麹(微生物を培養したもの)を接種し生育させる。これが麹と呼ばれるもので、この作業を製麹(せいきく)という。 米を蒸すのはデンプンのα化を行い麹菌の酵素作用を受け易くすることと、水分調整、付着している雑菌の殺菌を行うためである。

・酒母

出来上がった麹を用いて酒母(しゅぼ)を作る。酒母とは「もと」とも呼ばれる予備発酵で、伝統的な生(き)もと(現在ではほとんど作られていない)や、それを改良した山廃(やまはい)もと、さらに現在主流の速醸(そくじょう)もと等の製法がある。また、酒母を作らないで本発酵を行う酵母仕込という方法もある。

速醸もとでは、麹と水を混合しそこに乳酸と酵母を添加する。そして蒸米を加えて発酵させ、約2週間で出来上がる。山廃もとでは乳酸を用いず、自然発生する硝酸還元菌や乳酸菌が生育・死滅後に酵母を添加する。この場合約4週間ほどかかる。

・仕込

今度は出来上がった酒母をベースに本発酵を行う。仕込は蒸米や麹、水を3回(4日)に分けて徐々に加えながら発酵させる、三段仕込と呼ばれる方法で行う。また、この3回を順番に初添、仲添、留添と呼ぶ。
まず初日の初添は、酒母に麹、水を加えそして蒸米を添加し発酵させる。翌日は踊りといい、酵母の増殖をはかるため仕込を休む。そして3日目の仲添は、仕込中のタンクに麹と水、蒸米を添加し発酵させる。さらに翌日の留添も同様に麹と水、蒸米を添加する。ここまで行ったものをさらに20~25日間ほど発酵・熟成させる。これがもろみと呼ばれるものである。また、吟醸酒や本醸造酒の場合、もろみの発酵・熟成が完了した段階でもろみに醸造アルコールを加える。
仕込を3回に分けて行うのは、酒母中に形成させた酸やアルコール、酵母濃度が急激にうすめられるのを避け雑菌による汚染を防止するためや、発酵に必要な糖分濃度などを調整するためである。
また、製麹や発酵・熟成は温度や湿度、酸素、時間の管理が非常に微妙で難しいため、おいしい日本酒を造るために日々研究・改良されている。

・製品化

熟成したもろみを圧搾機にかけて圧搾し、清酒と酒粕に分ける。この操作を上槽(じょうそう)という。次にこれをオリ引き(白濁している成分を沈降させ取り除く)し、さらにろ過を行う。この段階のものが新酒である。
次に新酒を火入(ひいれ)する。火入とは加熱することで、貯蔵中の変質を防ぐために60~65℃に加熱し有害微生物の殺菌、酵素の失活などを行なう。火入が終わったらこれを貯蔵する。貯蔵することにより新酒香が消え、味も丸くなる。
貯蔵が終わった清酒は、仕込タンク毎に若干味のばらつきがあるため、数本のタンクの酒を調合し品質を均一化する。この段階のものが原酒である。
このままではアルコール分が高いので、割水(加水)して調整する。さらに、再度火入し加温したまま充填し、日本酒(清酒)の出来上がりである。