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「黒川レポート・国会事故調査報告書への反応①」

2013-01-12 08:33:52 | 日本

月刊『FACTA』1月号に、「黒川レポート・国会事故調査報告書への反応」について掲載されている。
重要なので以下、2回にわたり要約し記す。



東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の手による「国会事故調査報告書」(以下、報告書)が衆参両院議長に提出されたのは、その発足からおよそ7カ月後の7月5日だった。592ページにも及ぶ大部な報告書は、そのスタッフらの手によって衆参両院に所属する国会議員すべての元にも配られた。
それから、およそ5カ月。国民の信頼を、世界からの信用を取り戻すために設置された委員会の思いを込めた報告書は見向きもされず、店晒しにされたままなのである。

黒川委員長以下10人の委員とスタッフは延べ1167人の関係者から900時間に及ぶヒアリングを行った。さらに、被災者計400名を集めた3回のタウンミーティングや1万人を超える被災住民からアンケート調査を行い、海外調査も3回に及んだ。限られた時間の中で、委員とスタッフが心血を注いだのが、この未来への提言書ともいうべき報告書だった。

そもそも、日本の憲政史上初めて衆参両院議長の下に、この委員会を設置したのは、東京電力、政府という事故の当事者から独立した調査機関によって事故の真相を明らかにし、国家としての信頼を取り戻すのが目的ではなかったか。

報告書の冒頭は、次の一行で始まっている。「福島原子力発電所事故は終わっていない」と。しかし、皮肉なことに、この言葉を真摯に受け止め、福島第一原発事故に切実な危機感を抱いているのは、日本の国会でも国会議員でもない。1863年に米国政府の学術機関として発足した全米科学アカデミー。今回、同アカデミーが米連邦議会から福島原発事故の調査依頼を受け、独立調査委員会を設置、その委員会による公聴会が11月26日に開催されたのである。

東京・港区にある政策研究大学院大学の教室には、米国政府研究機関、財団、大学などの研究者に加え、米駐日大使館の高官らが顔を揃えていた。それぞれの研究分野は、原子力工学はもちろん、公衆衛生、物理学など多岐にわたっていた。だが、関心はただ一つ。福島第一原発で何が起き、それに対して、どう対応してきたのか。そもそも事故の原因はどこにあり、それが今、どのように改善されたかという点にあった。


20名を超える調査委員会メンバーの前に登場したのはもちろん「ドクター・クロカワ」だった。報告書は9月に英訳され、事故調のホームページから自由にダウンロードできる。それは「黒川レポート」と呼ばれ、米国だけではなく、原発を保有する国々で高い評価を得ていた。

およそ45分に及ぶ黒川氏のスピーチの後、会場から堰を切ったように質問が相次いだ。
「福島第一原発の吉田昌郎所長への聞き取りはどのように行われたのか……」「アイスランドの地熱はほとんど日本のメーカーの装置で運営されているのに、日本ではなぜ地熱発電に力をいれないのか……」

詰まるところ、参加者の関心は「黒川レポート」に対する日本国内の対応、とりわけ今後のエネルギー政策や原子力政策にどのような影響を与えたかという点だった。
「日本で初めて国会の下に第三者委員会を設け、事故調査を行い、報告書を提出しました。こういう委員会を、世界が注目しています。しかし、残念ながら、我々が掲げた明日への提言に対する明確な対応はとられていません。報告書を生かすも殺すも、日本の政治家のリーダーシップにかかっています」と、黒川氏は苦言を呈した。