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「中国のユダヤ人?温州商人」」

2011-10-29 09:16:10 | 日本
「中国のユダヤ人?温州商人」」


最近の中国経済は国有企業の「独り勝ち」状態が続いている。政府はインフレ対策として金融引き締めを強化したが、それにより生じた銀行の「貸し渋り」により中小民営企業は厳しい状況に置かれている。その典型例が温州の輸出志向の強い中小製造業である。

宮家邦彦さんは、中国経済のかげりの中で、中国のユダヤ人とも言われる温州商人について説いている。
中国のユダヤ人?温州商人!これは面白い。
以下、要約する。


温州の商人は、豊かな財力や商才、旺盛な投資意欲がゆえに「中国のユダヤ人」とも称される。

だが、その「中国のユダヤ人」とも言われる温州商人を生んだ浙江省温州市などで、経営破綻や経営者の失踪が続発している。
これまで温州商人は儲けた金を不動産投資や投機に回して大儲けしていたのだが、こちらもリーマン・ショック後のバブル崩壊で大損害を被っている。温州市の民間融資の10~15%が年内に不良債権化する見通しだ。


問題はなぜここまで温州商人が追い詰められたかである。
その理由は温州商人が「ユダヤ的」どころか、実に「非ユダヤ的」というか「中国的」な行動パターンに固執したからだと思う。

ここで、ユダヤ人と温州商人の違いをみてみる。

1.ユダヤ人の行動は「神との契約」に基づく宗教倫理やその文化的伝統に基づくものである。
温州商人の行動は商業的効率こそ高いものの、基本的な商売倫理が欠如している場合が多い。中には、不動産の投機などエゲツナイ「金儲け」としか思えない行動も少なくなかった。

2.ユダヤ人の行動は「民族生き残り」のための長期的ビジョンに基づくものである。
温州商人も三方を山に囲まれ、耕地が狭く、出稼ぎに頼らざるを得ない逆境の中で努力を重ねたことは事実だ。しかし、その行動原理は「子孫繁栄」であっても、差別された民族の「生き残り」ではなかった。

3.ユダヤ人は教育に投資し、サービス業のプロフェッショナルを重視する。
温州商人が人材の育成を進めていることは事実だが、それはあくまで通常の商業人、投資家としての資質の向上であって、民族絶滅を回避するための手段としての知的専門職の追求ではない。

4.ユダヤ人はさらなる差別を回避するため、目立つ行動を極力避ける。
温州商人は集団で一致団結して行動する傾向が強いが、その種の行動が周囲から如何に顰蹙を買うかについては概して無頓着である。

5.ホロコーストを経験したユダヤ人は「ギャンブル」はしない。
温州商人は失敗を恐れず、富と財産を求めて常にリスクを取り、時には手段を選ばず、夜逃げするかもしれない。
 
すなわち、
温州商人の行動原理は文化大革命後の中国の典型的な漢族商売人の行動原理と基本的に同じである。
温州商人は「中国のユダヤ人」ではなく、「中国商人の中の中国商人」なのである。
また、
どんなに大損をしようと、会社が倒産しようと、夜逃げしてでも、再起を期すのが中国商人である。
であるから、温州商人は必ず復活するだろう。