Runrun日記

最近読んだ本ーことり



「博士の愛した数式」を読んだ時に、小川洋子さんって何者かと、思いました。
この小説を手に取った理由はそこにあります。小川洋子さんの不思議は益々深まりました (笑)

小川洋子 著作 「ことり」 朝日文庫

いきなり、”小鳥の小父さん”が孤独死する所から始まります。親類縁者は、全くいなかったのだろうか?
お兄さんは、11歳の頃に、言葉を失い、小鳥の言葉(ポーポー語)しか語れなくなっていました。子供が言葉を無くし、他人とのコミュニケーションが取れなくなったと知った時の両親の気持ちはいかばかりか。母親は心労のあまり早く亡くなってしまい、父親は仕事に逃避して、最後は自殺?のような死に方をしてしまいます。唯一、お兄さんの言葉が解るのは、弟の”小父さん”だけで、二人で生活していく事になります。この小説は、この兄弟の一生を描いていました。

小川洋子さんは、またしても不可思議な人を描いています。「博士の愛した数式」では、記憶を失った人、この小説ではポーポー語しか語れない人。

お兄さんは、言葉の語れない生活弱者で、弟が養って生きていくしかない。お兄さんは、弟としか意識を通わすことが出来ず、小鳥の事を深く愛していた。弟の”小父さん”も、兄を愛し、小鳥を愛します。

色々なエピソードを描きながら小説は進んでいきます。
鳥の絵柄の包装紙に包まれたキャンディー”ポーポー”を毎週水曜日に買いに行くお兄さん。その包装紙で小鳥のブローチを作った事。旅行に出かけようとするが、架空の旅行で終わってしまう二人。幼稚園の鳥小屋の前で、じっと鳥を眺めるお兄さん。

お兄さんは、五十二歳の時に幼稚園の鳥小屋の前で心臓麻痺を起こし亡くなります。
小父さんは、この時、幼稚園の園長さんに頼んで、鳥小屋の掃除・世話をさせてもらうように頼みます。この時から、小父さんは、園児たちから「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになります。弟は兄と七つ違いだったから、この時45歳。

その後、小父さんは一人で密やかに生きていきます。既に婚期は逸していたのでしょうか。図書館の司書の女性にほのかな恋心を抱いたりもしますが。
公園で鈴虫の鳴き声を聞く老人に出会います。子供がさらわれて悪戯される事件があって、小父さんが犯人でないかと疑われます。それを期に、幼稚園の鳥小屋の世話が出来なくなります。20年ほど鳥小屋の世話をしたとありますから、この時既に65歳。
最後の話は、傷ついたメジロの幼鳥を保護する話です。
メジロの鳥籠を抱いて、密やかに一生を終わります。

小鳥の話も面白いが、もっと近隣の人達が、この兄弟を助ける事は出来なかったのだろうか?
違うな? 
ま、小説の話だし、小川洋子さんの描きたかった事は、違うのだろうけれど!
色々と、考えさせる物語!

この小説のお気に入り度:★★★★☆

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