ひろむしの知りたがり日記

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「ロングストリート」実戦ジークンドー講座 (3) ─ テクニック編 ②

2014年07月21日 | 日記
ある日のトレーニング風景です。
マイク・ロングストリートの事務所の中庭で、リー・チョンはしなやかでスピーディーな蹴りを連発し、その音をロングストリートに聞かせて動きを感じ取らせようとしていました。そして、
「次は私に合わせて動け」
と指示します。それに従ってロングストリートが前へ後ろへとステップし始めると、すかさず厳しく叱咤します。
「違う! 漠然と動くんじゃない、私に合わせて動くんだ」
さらにリーは、「集中しろ」「心を開け、風を感じろ」「鳥の声が聞こえるな?」と矢継ぎ早に、感覚を研ぎ澄ませることを求めます。
次第に感じを掴んできたロングストリートに、リーはキックをしろと促しました。ロングストリートは即座に反応し、リーの方へ足を踏み出してサイドキックを繰り出します。
会心の蹴りにリーは大きく「よし!」と叫び、「どんな感じだった?」と問います。「自然に足が出た」というロングストリートの答えに、リーは「さあ、もう一度」と再びキックを要求しました。
ところが、無意識に放ったその蹴りがどうやって出たのかわからないロングストリートは、「待て、思い出す」と考え込みます。
それに対してリーは、「全然分かってない」と怒りを顕にしました。
「闘いは一撃では終わらない。考えることなくコンビネーションが使えなければならない。それができないのなら、ボディーガードを雇え!」

このシーンから、ブルース・リーを世界的なスターに押し上げた映画、「燃えよドラゴン」の名場面を連想する方は多いでしょう。
少林寺で武術を修行するリー(「ロングストリート」と同じ役名です!)が少年にキックを教える際に、やはり効果的な蹴りを放った少年が「どうだった?」と聞かれて思い出そうと天を仰ぐと、「考えるな! 感じるんだ」と諭します。ロングストリートに蹴り技を指南するシーンとそっくりのシチュエーションです。
少年との絡みは、ブルースの発案で撮影されたものだそうですが、「ロングストリート」のこのシーンが、彼の念頭にはあったのかもしれません。


ロングストリートに闘い方を教えるリー・チョンの姿は、まさしく武術家ブルース・リーそのものです

リーの厳しい言葉はさらに続きます。
「目のせいにするな! 耳で聞け」
そしてゆっくりとロングストリートの周りを歩いて、「私はどこだ?」と自分の居場所を音から感じ取らせようとします。そして見当違いの方向を指さす彼に、「違う! 考えるのをやめろ」と強い口調で言いました。
そんなリーに、ロングストリートがついに切れます。
「講釈はいいから、闘い方を教えろ!」
リーは苦笑を浮かべ、「そのうち分かる」と言うと、その場を立ち去ってしまいました。

スターリング・シリファントはこのシーンを、自身がブルースから受けたトレーニングに基づいて書きました。
ブルースは彼に目隠しをさせ、自分の動きに合わせて動くように指示し、それを何週間も続けさせました。このことによって、対戦者の身体の動きに注意を集中し、自分と相手との関係を理解させようとしたのです。
この印象的なシーンは、シリファントが実際にブルースの弟子ならではこそ、生み出されたものなのです。

リーから見放された直後、ロングストリートは不正を暴こうとしている運輸会社を挑発するために、彼を襲った男たちの1人である港湾労働者に決闘を申し込みます。無謀ともいえる闘いを前に、背水の陣のロングストリートは、再び教えを請うためにリーの骨董店を訪れるのでした。


【参考文献】
ブルース・トーマス著、横山文子訳『BRUCE LEE:Fighting Spirit』PARCO、1998年
中村頼永著『世紀のブルース・リー』ベースボール・マガジン社、2000年
松宮康生著『ブルース・リー最後の真実』ゴマブックス、2008年

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