上司の「アントワネット様」との話し合いの前に、私は転職に至った
顛末を予めメールで伝えていた。転職の理由はあくまで「方向転換」、
会社への不満等は告げていない。
実際面と向かって話す機会が来た時、「アントワネット様」はすでに
私が退職することを前提に話を進めた。
私は9月末日退職、その前に有休を消化したい旨を伝え、既に新たな
転職先が見つかっていることを改めて告げて、退職願を提出した。
「この会社に取ってはとても残念なことだわ。でも・・・」
彼女はにやっと笑ってこう続けた。
「・・・同じことを考えているとはねぇ。私も9月末で退職なの」
ああ、やっぱり、と私は納得した。この数ヶ月間、彼女の「フェード
アウト」っぷりは目に余るものがあったからである。
マネージャーである「メンターさん」や、アシスタントマネージャーに
仕事を振りまくり、自分は部内会議にはほとんど出ず、会社にもあまり
来ない。仕事の相談はすべてメールで対応していて、その姿を直に
見ることはとても少なかったのだ。
その「アントワネット様」も結果的には3年ちょっとの在籍だった。
長く勤める人の居ないムードは、すでに「社風」と言って良いのかも
しれない。
私は極めてにこやかに、この会社での処遇について感謝の意を述べ、
この経験を活かして次の勤務先で頑張ります、と話した。
ともに来月にはいなくなるもの同士、お互いに面倒は避けたいせいか
「上っ面」の会話で時が過ぎて行く。
「縁の下の力持ち、だったのにねぇ・・・。居なくなると困る人が
たくわんいるわね」
私はどこの職場に行っても、そう言う役割を負うことが多い。
人の愚痴を聞いて、人のケンカの仲裁をして、人の代わりに謝って・・・。
ギスギスした雰囲気のなかで、私はまるで通訳のように他人の話を
つないでいる。
この職場で、それが果たして必要なことだったのか。
今の私には、わからない。
顛末を予めメールで伝えていた。転職の理由はあくまで「方向転換」、
会社への不満等は告げていない。
実際面と向かって話す機会が来た時、「アントワネット様」はすでに
私が退職することを前提に話を進めた。
私は9月末日退職、その前に有休を消化したい旨を伝え、既に新たな
転職先が見つかっていることを改めて告げて、退職願を提出した。
「この会社に取ってはとても残念なことだわ。でも・・・」
彼女はにやっと笑ってこう続けた。
「・・・同じことを考えているとはねぇ。私も9月末で退職なの」
ああ、やっぱり、と私は納得した。この数ヶ月間、彼女の「フェード
アウト」っぷりは目に余るものがあったからである。
マネージャーである「メンターさん」や、アシスタントマネージャーに
仕事を振りまくり、自分は部内会議にはほとんど出ず、会社にもあまり
来ない。仕事の相談はすべてメールで対応していて、その姿を直に
見ることはとても少なかったのだ。
その「アントワネット様」も結果的には3年ちょっとの在籍だった。
長く勤める人の居ないムードは、すでに「社風」と言って良いのかも
しれない。
私は極めてにこやかに、この会社での処遇について感謝の意を述べ、
この経験を活かして次の勤務先で頑張ります、と話した。
ともに来月にはいなくなるもの同士、お互いに面倒は避けたいせいか
「上っ面」の会話で時が過ぎて行く。
「縁の下の力持ち、だったのにねぇ・・・。居なくなると困る人が
たくわんいるわね」
私はどこの職場に行っても、そう言う役割を負うことが多い。
人の愚痴を聞いて、人のケンカの仲裁をして、人の代わりに謝って・・・。
ギスギスした雰囲気のなかで、私はまるで通訳のように他人の話を
つないでいる。
この職場で、それが果たして必要なことだったのか。
今の私には、わからない。