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お仕事どんぶり

正社員、契約社員、派遣社員、嘱託社員、アルバイト・・・
経験してきた「仕事」と日々の生活についての記録です。

不動産物件 受付・案内の仕事77(雨の日はブルー世田谷区編)

2005年11月30日 09時37分25秒 | 仕事あれこれ
営業ウーマンが去った後、再び静かな時間が流れた。
夕方になるに従って、濡れた足下から寒くなってきた。

私は少しでも体を温めるために、現場の近くを早足でぐるぐる動き回った。

「ブルーシャトウで待機」→「現場の前で待つ」→「早足ウォーキング」の
セットを何度繰り返したことだろう。

あたりが暗くなりかけた頃、現場の空き地で「ジャリッ」と足音がしたので
「ブルーシャトウ」からひょいと顔を出してみると、中年の男性がものすごく
驚いて声を上げた。

「うわぁぁ!すいません!誰もいないと思いました!私は近所の不動産屋で、
ここをちょっと見に来ただけなんですぅ!!」

聞いてもいないのに、こちらが聞きたいことを叫んで、男性は逃げるように
してその場を立ち去った。
予想外のものに遭遇すると、饒舌になる人がいる。

業務終了時間の18時にはもうすっかり暗くなった。
私は「ブルーシャトウ」を原状回復して、ただの「角材の山」に戻し、雨で
湿った資料を抱えて事務所に戻った。

今日がこの仕事の最後の日なので、タイムシートに担当者のサインをもらう。
また、この仕事をやるかどうかはわからないが、来年の3月までは確実に
おさらばだ。

後日、派遣会社の担当者には、自分が常勤になったので、しばらく派遣の
仕事はしない事を伝えた。
「また、お仕事がご紹介できる状況になったら、ぜひぜひお願いしますね」と
言われ、「その状況」にいる自分の姿を想像して、それが自分にとって良いこと
なのか、悪いことなのかわからなくなって、苦笑した。
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不動産物件 受付・案内の仕事76(雨の日はブルー世田谷区編)

2005年11月29日 16時05分59秒 | 仕事あれこれ
国道246号線沿いのラーメン屋で私は濃い味のラーメンを食べ、
ひとときの間、寒さから解放された。

さっきまでお尻の下に敷いていた新聞を読み、休憩時間ギリギリまで
ラーメン屋に粘った後、現場に戻る。

案の定、「ブルーシャトウ」には黒猫がいた。私は共存の道を望むが、
猫は迷惑らしく、どこかへ走って逃げていった。

午後になり、雨はますます激しくなった。

お客さんが来る確率の高い「ゴールデンタイム」に、私は一応現場の前で
待っていた。すると営業車が一台やって来て、若い営業ウーマンが年配の
男性のお客さんを案内した。

私は車から降りるお客さんに自分の傘をさしかけた。
男性は私の頭のてっぺんから、足の先まで何度も見て、若い営業ウーマンに
「お宅の会社は、こんな雨の日に、女性にこんな仕事までさせる訳?」と
聞いた。

営業ウーマンはとっさにどう答えて良いかわからずに「ええ、まあ」と曖昧な
笑顔を浮かべたが、私は「この仕事」を「こんな仕事」とは思ったことはない。
今日は確かに天候には恵まれなかったが・・・。
当の営業ウーマンだって、もっともっとエラい目にあっていることだろう。

帰り際、営業ウーマンは私を少し恨みがましい目で見て、私の目の前で大げさに
ため息をつき、黙って車に乗った。
「お疲れさまです」という私の声は、彼女の耳にどう聞こえたのだろう。
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不動産物件 受付・案内の仕事75(雨の日はブルー世田谷区編)

2005年11月28日 13時17分57秒 | 仕事あれこれ
まず、大工さんの道具類をひとまとめにさせてもらって、次に猫の足跡
だらけのコンパネの上に持っていた新聞紙を敷き、自分が座れるスペースを
作る。

続いて、現場に落ちている針金やバン線を拾って、ブルーシートの一辺に
ついているハトメ穴に通して引っぱり、タープを張る要領で、隣の家との
境目にある金網に結びつけて「ひさし」を作った。

一応「人がいますよ」と知らせるつもりで、赤い傘を広げて出しておいた。
これは、テレビ時代劇「水戸黄門」で、先に宿に着いた弥七が「御一行」に
居場所を知らせる方法にならったつもりだが、これは全く効果のなかった
事を後で知る。

とりあえず、「座れる場所」「雨をよける場所」を作ってそこにいる。
木の香りに包まれて妙に落ち着く空間だ。
今日はここが私の城、便宜上「ブルーシャトウ」と命名する。(笑)

ブルーシートに雨がかかって、パラパラという音がする。
私はその音をBGMに文庫本を読んだり、携帯の通販サイトで本を買ったり、
友人にメールをしたりしながらお客さんの足音にも耳を澄ましていた。

時々は外に出て、傘をさしてお客さんが来ないか待ったりもしたが、人が全く
通らない住宅街で、家の前の空き地でぼんやり突っ立ている姿は、不審者にも
見えるのではないかと思った。

黒猫は、時折姿を見せては遠巻きに「ブルーシャトウ」を眺めていた。
普段の生活では考えられないほどにゆっくりと時間が過ぎ、やっとお昼の休憩
時間になったので、私は駅の方へ向かって歩き始めた。
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不動産物件 受付・案内の仕事74(雨の日はブルー世田谷区編)

2005年11月27日 12時10分01秒 | 仕事あれこれ
現場にはキャンプで使うような折りたたみ型のテーブルとイスが、
雨ざらしになって置いてあった。イスの座面のキャンバス地はじっとりと
濡れている。

仮設トイレの中は静かだが、この中に入ってまさに「雪隠詰め」の状態で
いてもしょうがない。

骨組みだけの家のどこかに少しでも天井のある部分はないか探していると、
隣の家の塀からこちらをじっと見つめている痩せた黒猫がいた。
近づくと逃げるが、すぐに戻って来て様子をうかがっている。
何か訳でもあるのかと思いつつ、家の前に山積みにされている木材の方へ
目をやった。

ブルーシートがかけられた木材の山は、ぎっしり部材が詰まっているのかと
思ったら、内部には大人一人が横になれるくらいの空間がぽっかりと開いて
いた。頭の上と下はコンパネ、左右の壁は角材の束だ。そこには大工さんが
置いていった道具や釘などが無造作に転がっていて、たくさんの猫の足跡も
あった。

ここは黒猫の雨宿りスポットに違いない。
私もその空間に入ってみたが、風も入ってこないし濡れないし、意外に快適
なのだった。

黒猫には申し訳ないが、私は今日の居場所をここに決めて、少しカスタマイズ
することにした。
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不動産物件 受付・案内の仕事73(雨の日はブルー世田谷区編)

2005年11月26日 12時37分53秒 | 仕事あれこれ
「メインの仕事」で常勤で働くことが決まって、土日祝にやっていた
不動産屋の受付・案内の仕事は10月10日の仕事を最後に辞めることに
した。

その日は「体育の日」だというのに、朝から冷たい雨が降っていた。
余りにも雨がひどい場合は、仕事自体がキャンセルになることもあるらしい
のだが、私の最後の仕事はそういうことにはならず、私は駒沢大学駅から
少し離れた建築中の物件の担当となった。
2階建て、20坪強で7000万円弱のお値段だ。

現場には、コンクリートの基礎に柱と梁だけが組合わさった状態の物件が
あった。あたりの様子はアパートやこじんまりとした家、そして大豪邸が
狭い路地を挟んで混在する不思議な場所だ。

どんよりとした暗い空、降りしきる雨・・・。あたりはひっそりと静まりかえる。
今日、物件を見に来ようと言う酔狂なお客さんはきっといないだろう。

傘をさす以外に雨をしのぐ場所は仮設トイレの中だけだ。
基礎のコンクリート部分には雨水が溜まり、浅い養殖池のようになっていた。
そこに雨が落ちるとぽちゃん、ぽちゃんと陰鬱で不規則なリズムを刻む。
地面はぬかるみ、靴はすぐに濡れて足先から冷えて来た。

さて、この場所でどうやって来ないお客を待ちつつ過ごそうか。

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