3D CG, CAD/CAM/3Dプリンタ な日常でつづる クルスの冒険ブログ

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種目が違う、ということだ

2010年05月30日 | □今日は休日
 
<最初に解説> 
「3次元形状を活用する会:3D-GAN」は、非営利の業界団体です。
従いまして会員企業さんにお仕事を紹介することは多数ありますが、
中間マージンは頂戴せず、会員に対して無償で紹介・仲介を行っています。
ただし、当会の事業は多岐に渡っており、「お仕事の仲介をする」ことが
会の中心的目的ではないことをご理解くださいますようお願いいたします。
当会は飽くまで業界団体であり、製造業の受発注あっせん事業ではないことを
ご承知おき下さい。
 

さて。先週、とある「雑誌出版社からのご相談」でこんな仕事を取り次いだ。
 
あるカタチをした造形物の

「全体をちょっと小さくて、少し各部のバランスが違うバージョンを作りたい」
 
こういうご依頼。元になる造形物は、手で作ったものだった。
 
よくご存知の方であれば、
 
「3Dスキャン(デジタイズ・計測)して、モデラーソフトに持って行って、修正して、
RPとかで出力だな…」
 
と、一瞬で理解出来るお話し。
 
依頼主から訊かなきゃならないこともすぐ思い浮かんで、確認して… 
 
依頼主の不安を解きほぐして、「大丈夫ですよ、出来ますよ」と。
 
慣れたものです。
 
その道の仕事を知っていれば、「どれどれ…」とカタチを見せてもらい
 
「…あ、出来ますよ。大丈夫」
 
と、すぐに判断も出来る内容でした。
 
なので即座に、すぐ動いていただけそうな会員さんに電話…
 
「じゃ、明日スキャンして、その時点からモデリングもしますね」
 
という素晴しいスピード感でお仕事が進みました。
 
結果は?と言えば、モノを見て判断したとおりの納期で出来ちゃったわけです。

依頼主の雑誌社さんの目的は達したし、会員さんにお仕事も紹介できたしで、
 
「めでたし、めでたし」…
 
…そうか?本当に、それでめでたいのか?… とモヤモヤしています。
 
そのモヤモヤの原因は、自分でも分かってます。
 
「こういう事が道具とある種のスキルをもって可能、ということ自体が、本当に知られていないのだな…」
 
ということが原因です。
 
例えるならば、手書きの書類を持っている人が居て、その人が
 
「明日の会議でこの書類を20人に配らなきゃならない…書き写すのは大変だし、間違ったらどうしよう?…」
 
と思いつつ、ワタシの所に来るようなものです。
 
で、ワタシは、「世の中にはコピー機というものがあるのですよ!」
 
と、言っているわけです。
 
もちろんコピー機をよく知っているワタシは
 
「…大丈夫、きれいにコピーできますよ。20枚ならこれくらいの値段です。明日に間に合いますって」
 
てな事を説明して、コピーをして差し上げる… と。
 
で、「めでたし、めでたし」…
 
いやいやいやいや… 違うと思う。ダメだダメだ。
 
ワタシのモヤモヤは、
 
「手書きの書類を20枚に増やしたいときは、コピー機がある」
 
ということが、あまりにも世間に知られていないことにある。
 
「出来た!スゴイですねー!」
 
と喜んでいただくのはこの上なく嬉しいし、笑顔もこぼれるのだけれど、
 
次の瞬間モヤモヤとしてきて、表情も曇ってしまう。
 
 
なぜ曇るか?といえば、こういう状態のままだと
 
「3D形状を扱う仕事やスキルは、一向にその市場を大きく出来ない」
 
からだ。
 
市場を大きくする、ということはすごく単純化して言えば
 
「今までのお客様ではない、新しいお客様をつくる」
 
という事に尽きる。
 
そしてそれを実現するには、
 
新しい単価や、価値基準を作る(お客様が違えばおサイフ事情やコスト感が変わる)
 
こともすごく重要になる。
 
自分が実業の分野で成功する(=お金が儲かる)
 
ということは、これはこれで、ある。重要なことだと思う。
 
だけど、
 
とにかく自分の居るこの市場、それ自体を大きくして、その中で自分の分もある程度儲ける
 
というアプローチは、やっぱりすごく大変だ。
 

…とまぁ、ここまで書いて気が付くのだけれど…
 
今回、モヤモヤしながらも

 
「今までのお客様ではない、新しいお客様をつくる」

という事では、今回また作ったわけだ。しかも、設計・製造業などではない「雑誌社」だ。
 
間違いなく今までのお客様層では、無い。
 
こういった一回々々の仕事を積み重ねることが
 
私たち、3D形状データを扱う仕事の市場を大きくして行くことだろう。
 

そうして、表情を曇らせたり、ニコニコしたり、繰り返しながら
 
世界を広げて行くしかないだろうな。
 
CADとかCAMとかRPとかが発展して来て、今や成熟市場になっている中で、
 
従来から「在る」市場に対して何かを売る、という話ではなくて
 
同じ道具やスキルを売っているとしても、

従来には「無かった市場を作る」、という今までとは全く違う種目をやっているのだな…
 
と、思う。
 

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2 コメント

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Unknown (熊谷)
2010-05-31 08:31:18
技術は日々進歩して、新しい技術もまた日々誕生してますね。

その中にあって既存の技術に満足している方に新しい技術を「知」ってもらい、さらにその利便性を「識」ってもらう事はなかなかに難しく大変です。

今よりもより良いモノがあるのなら、それを沢山の方々に使って貰いたいです。

散文駄文ですみません。
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在る、ことと 知られていること (クルスの冒険)
2010-05-31 20:03:20
熊谷さま、
 
やー…もう、そのとおりでして。
「在る」ということと「知られている」ということは別の話で、
さらに、「認識」されていることもこれまた別の話なんですよね。
 
まぁ、多くの人に知られていないものは、実際には
「在る」ことにはならない… という事も言えなくはないですね。。。
 
少し気の長い話かも知れませんが、この3Dデータの認識は、
10年かけて変えていく話と、思っています。
 
3D-GANは、もう3年目です(おお!)
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