3D CG, CAD/CAM/3Dプリンタ な日常でつづる クルスの冒険ブログ

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神田明神へお参り

2008年01月14日 | □檄文
 
皆さま、お寒ぅございます。
クルスの冒険でございます。
いや、ありがたいことに仕事が忙しくなって来まして…イタズラで書いている「フィクション」の筆が止まっております(笑)。
完全に止まっているのではなく、ああいうのはアタマの中にある構想を書き出すのは終わっていても、何か「格好付けた感じ」にするのに手間がかかるんですよね。

あれは、次なるCADシステムが現場で普及する時は…?
という空想のお話を書いているのだけれども、これはもう本当に個人的な脳内レジャーの世界ですから、あんまり本気にしないでね、と。ただ、空想ってのはある程度の現実を踏まえるから面白いのであって、そこは楽しませていただいております。

ただ、ワタシは、次なるCADシステムの普及においては、基本的な問題意識を「生産性」には置いていない、んです。ミもフタも無い話ですが、どんなに素晴らしい機能を持たせても、新世代の普及には凄く時間がかかるだろうと思っています。
現在シェアを持っている各社は、必ずや囲い込み戦略を取るだろうから、それに対抗してシェアを逆転しよう…なんて事はとてもとても難しい。素晴しい機能を考えだした人も、自分で企業を興してシェアの逆転を狙おうとはしないだろう。その技術を現在高いシェアを誇っている企業に売った方が、安全で安価で有利だからだ。
こんな風潮も、市場からロマンを喪失させている大きな原因だ。
まぁ何もCAD/CAMに限った話ではなく、すでにソフトウェアやITという存在が、そうなんだろうから、仕方ないのだけれど。
 
もちろん、CAD操作そのものの生産性に改善と向上の余地はまだまだあるとは信じているけれども、CADの操作は非常に複雑なものであるから、どれだけ生産性の高いCADが完成しようとも現行CADの「慣れ」を飛び越えていきなり生産性を発揮するCADが作れるとは考えにくいということもある。
当然どんな道具にも慣れは必要で、新しいものに替えた時の生産性は一旦落ちる。そして慣れるにしたがってジワジワと生産性は向上し、以前の道具の生産性を追い抜く… とまぁ、こういう話であることは解る。
ただ、まだ見ぬ新しい道具の生産性(の可能性)によって顧客を説得し、大規模に展開されインフラ化したこの道具を入れ替えて行こう… という顧客側の動機を、見出し難いと判断してます。

おカネに色は着いていない。何用のおカネということは無いのが普通だ。
だとすれば、CAD用の予算というのは末端の行政の話であって、組織の上層部に行くにしたがいおカネに色はない。だから、例えば社員寮を建設することと新しいCADに入れ替えることは、予算上競合するのだよね。
残念な話だけれども、もしワタシが製造業の社長であるとしたら、あまねく社内に広まり安定的に稼働しているCADソフトウェアを入れ替えるような動機は持たないだろう。そんなおカネがあるなら、もっと他に使いたいところがあるはずだと思う。
例えば海外生産拠点への投資に。例えば優秀な新卒者を採用するために。

CAD屋さん、特に技術系・開発系のヒトは、CADの予算と社員寮の予算のどちらが大事か?という観点を持ち得ないだろうけれども、これは当然のことだ。
もはや、CADの競合は他社のCADなんかじゃない、と思うのだ。
 
まぁ、それでもCADのお話だから(笑)これから何が大事なの?と言われたら、漠然としているけれども、以下のように愚考するね。

1.市場を大きくとらえることの出来るソフトウェア構造
昔から、
「3Dの正体は、そこに盛り込まれている情報量」
と言い続けて来ているけれど、それ。
最初に結論を言っちゃうと、CGはCADとして使うには入れられる情報量が足りな過ぎて、逆にCADは沢山の情報量を入れないと成立出来ない、って仕組みになってるのが問題だ。
考え方としては、「CGを基本に、そこに入れられる情報量を増やす」ってことでいいだろう。

CADの市場とCGの市場が分かれているのは、非常に馬鹿々々しい。
少なくとも「3Dモデリング」という行為においては全く同じ道具で両方の市場を一つに捉え得るはずだ。
CGのニーズから見ればCADとは、
「形状定義がキツ過ぎて面倒臭いし変更も厄介…」
ということであり、
CADのニーズから見ればCGとは、
「形状定義が曖昧過ぎて製造に使えない…」
ってことだろう。どうもそこが市場を分けている(機能における)決定的な要因らしい。
ならば、

「とても大まかな3Dモデリング(と容易な変更)」

         ↓

「より正確な形状の定義(精度・寸法)」

っていう風に、情報を後から付加して行くようにできればいい。
これで、CGの場合は情報を付加するのを途中で止めればいいし、CADのユーザは製造に必要なだけ追加すればいい。
それには形状はポリゴンやボクセルで定義されていればいいんじゃないだろうか。少なくとも線と面で定義されていると、それだけで入口である「とても大まかなモデリング(と容易な変更)」は実現出来そうにないからだ。

ポリゴンでは精度が出ない、とかいう人はよもや世の中のCAMに形状を任せてはいないよね?今市場に存在するCAMソフトウェアの多くはポリゴンで形状を処理して、加工データを作ってる。だから、ポリゴン=精度出ない、という思考は単なる思い込みでしかない。思い込みっていうのは視野が狭いってことか、知識が足りないってことか、または論理的思考が出来ていない、ってことのどれかだ。それであれば、知れば変わる。問題は小さい。

次なる問題は、ポリゴン的なモデリングに設計として要求される寸法概念やその他の情報(アセンブリや部品点数の制御)が盛り込めるのか?にかかってくるだろう。これが、より多くの情報を付加する、ってことだ。逆に、設計の非常に初期の段階であれば、それはCGの状態(設計としては情報が足りないけど3Dになっている状態)で止めておけるから、これはこれでとても使い道があるだろう。

3Dによる設計の初期段階では、CGであっても十分にその効果を期待できるものだ。
主にレイアウトや形状のイメージをつかむためだね。世の中に沢山あるオフィスのレイアウトソフトなんかを使ってみるとそれが良く分かる(あれは設計行為だもん)。
むしろ、3D CADの最大の欠点である
「形状を作るのが大変で、変更はもっと大変」
という性格が、この初期的な効果を大幅にスポイルしている、と見るべきだろう。
ワタシは逆だと思うのだよね。
世の中に存在する非常に多くの機械は、設計における初期の段階はCGで良くて、その後は製図で良いのかも知れない… と。今、3DのCADを使うメリットが見いだせない製品は、きっとこちらの方が使い方としては向いていると、見ています。例えば板金の箱にユニットや配線を詰め込んだ分電盤的構造の製品とか、ですな。

いずれにしても、今の3D CADは、盛り込まなきゃいけない情報量の下限が高すぎるのだ。
もっと情報量が少ない状態(=CGの状態と言っていい)を許容して、それがその後の情報付加に対応出来ることが理想だと思う。

で。

最後に待っている、「設計とは?」って話題については、これはカスタマイズの世界に任せるのがいい。「設計とは?」っていう問いに正解はなくて、それぞれの考え方と慣習があるだけだ。これこそ各社が競って独自性を打ち出すべき所であるし、競争力にもなるだろう。ある程度のスタンダードを咀嚼したアドオンのパッケージがあっていいし。同じように、CGとしてのアドオンも存在するようになるだろう。レンダリングやアニメーション、画像・映像効果としてのアドオンだ。

要するに、

「3D形状の定義という行為において、CGユーザとCADユーザを同時に満足させるソフトウェア + カスタマイズ環境」

これをコンセプトとしてより具体的な機能を考えて行くのが、良いだろうと信じている。そして、出来あがった形状に対して(どの情報量で止めるかはユーザ次第だね)ナニをするか?は、カスタマイズ・3rdパーティに委ねる… という構造だ。

…とは言え、だ。
さらにミもフタも無い話をしちゃうと(笑)、こういうお話を真面目に聞いて、真面目に考えて…ってヒトは、ほとんど居ない。こここそが、私たちの置かれたもっとも嘆かわしい状況を表していると思う。特にヒドいもんだ、と思うのはこの市場の(本来は)主役であるべき海外CAD開発メーカーのトップには、居ないだろう。
ワタシの知る限り、そういう人は居ないね。
海外には、期待もしていませんけれども、ね。

ここには書くことはないけれども、もっと仰天するようなアイデアも持っているので、「次世代CADシステム」という商品の開発に夢と希望と技術と、それと資金も、お持ちの方は是非お声お掛け下さい。タブーと思い込みを排してまずはお話をしましょう。


2.「業務」以外の「動機づけ」
これは、CAD屋さんの技術や開発のヒトとはあまり関係がない。
で、むしろこの2.の方が大事だと、ワタシは思っているね。
なぜか? それはカンタン。「今までそれが無さ過ぎたから」(笑)

あらゆる製造業において、最も重要なのは、CADソフトじゃない。
CADソフトを使う、「社員」だ。まぁ、派遣とか雇用形態にも色々あるから、「人材」としておくのが妥当でしょうけど。
 
よほどデカい会社で、その道具が道具以上の意味を持っていない限り、会社にとって重要なのは、

「このCADを使う」
ってことじゃなくて、
「どのCADでもいいから、3Dモデリングしてくれる」
ってことだ。

そうか?… そうだ。これはもう間違いない。
CATIAの使える人が何人欲しい… だの、Pro/Eの使い手が何人欲しい…だのと言っていられる企業は、そもそもCADなんてまず入れ替えない(笑)。

大半の企業は、
「とにかくIGESになりゃなんとかなるから、3Dを使えるヒトが欲しい」
次に
「出来ればウチの持ってるCADを使える人が欲しい」
ってことだろう。
 
会社にあるCADを覚える時間があったら、派遣されて来る、または新入社員が、自分で持ってくる、すでに使えるCADがあったら、それに勝るものはそうはない。

新入社員が、すでにバリバリと3Dモデリングが出来て、とりあえずカタチを間違わず、IGESにはなって来るのだとしたら… CADなんちゃ、とりあえず何でもよかろう。

そこで「このCAD使ってもらわないと困る!」というのは、どちらかと言えば社内IT行政的な価値観であり、経営や設計現場的な価値観とはやや異なるだろう。
(もちろん、巨大企業になればなるほど行政の効果は高いので、それはそれで価値はあるけどね)

ここから先は、ロマンチシズムだと自覚しつつ書くのだけれど…
 
使える人が増えれば、その人達が使っている道具に合わせて、行政は変わる(かも知れない)。なぜならば、行政は本質的に勝ち馬に乗る性格があるから(笑)。
 
ワタシには、機能による変化よりも、使える人による変化の方が、常にリアリティがあるんです。 
 
という、お話として、残り2話くらいかなぁー…
書きますよー。大真面目に、おちゃらけますけども(笑)。