臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の朝日歌壇から(8月25日掲載・其のⅡ・土曜夕刊)

2014年08月30日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]

(川崎市・中堀きみ子)
〇  みすずかる信濃の国の佐久平浅間立あり蓼科立あり

 「みすずかる」、即ち「水篶刈る(水薦苅る)」は、「信濃」に係る枕詞であるとされているのであるが、「水篶(水薦)」とは「篠竹」の意であり、信濃の国には篠竹が多く生えていることから、「水篶刈る(水薦苅る)」と言えば、すぐさま、国名としての「信濃」が連想されるので、「水篶刈る(水薦苅る)」が「信濃」を導き出す枕詞となったのでありましょう。
 一方、名詞としての「水篶(水薦)」は、本来的には「みすず」では無く、「みこも」と読むべきなのであるが、これを江戸時代の著名な万葉学者の賀茂真淵が「みすず」と誤って読んでしまった事から、「信濃」の枕詞としての「水篶刈る(水薦苅る)」が「みすずかる」と読まれる事になってしまったとする異説も在る。
 それはともかくとして、本作は、万葉以来の遠大な時空間を連想させる、「みすずかる」という枕詞で以って詠い起こし、「みすずかる信濃の国の佐久平」と、いにしえから肥沃の地とされている「佐久平」を中心とした「信濃の国」を、悠久かつ雄大に把握して紹介し、真夏にその地に降る「夕立」には、浅間山方面から降り始める「浅間立」と、蓼科方面から降り始める「蓼科立」との二種類が在る事を述べ、併せて「佐久平は、真夏に、その二種類の夕立が降るが故に気候風土に恵まれた悠久な大地である」と褒め称えているのである。
 〔返〕  水篶刈る空母信濃の排水量「六万八千六十総頓」


(館林市・阿部芳夫)
〇  蝶を追う虫取り網が大空をゆっくり密かに捕まえにゆく

 「虫取り網」そのものが、「大空をゆっくり密かに」「蝶」を「捕まえにゆく」のでは無くて、「蝶を追う」昆虫採集者が、自ら手にした「虫取り網」を、「大空をゆっくり密かに」「蝶」に近づけて行って、結果的には「蝶」を捕まえる事に成功したのである。
 しかしながら、朝日歌壇の常連中の常連たる阿部芳夫さんともなれば、そうした事実をそのままに表現したのでは入選も覚束ないと計算したのか、敢えて、「虫取り網」を擬人化して、「蝶を追う虫取り網が大空をゆっくり密かに捕まえにゆく」としたのでありましょう。
 私は、本作に接した瞬間、まるで無声時代の映画を観ているように感じたのであるが、この歌読み上手(?)の私をして、そのような異様な感覚に陥れたのも、本作の作者・阿部芳夫さんの優れた技巧でありましょうか?
 〔返〕  蝶を追う虫取り網の如くしてアンパンマンを捕らえた安倍ちゃん
 前掲の返歌中の「アンパンマン」とは、あの方を指して言うのである。
 

(さいたま市・佐藤治男)
〇  シベリアの墓標に共にぬかづきし友ははや亡し我も老いたり

 いわゆる「シベリヤ墓参」がその途に就いたのは、1992年5月のことである、とか。
 だとすれば、前年にソビエト連邦が崩壊して、あの巨大な北の大地が「ロシア連邦(Российская Федерация)」に生まれ変わったものの、未だに混乱状態にあった最中の事であった。
 それ以来、彼の酷寒の大地に、戦友や肉親を葬らなければならなかった方々は、彼の国の政治家諸氏の顔色を覗いながらも、営々として「シベリア墓参」を繰り返して来たのではある。
 しかしながら、彼の酷寒の地の墓標の前に額づいて、今は亡き戦友や肉親などの極楽往生を願って人々も、歳月の流れと共に年老い、死に絶えてしまって、次第に数が少なくなってしまったのであるが、本作の作者・佐藤治男と共に遠くシベリヤまで足を運び、「墓標に共にぬかづきし友」も亦「はや」亡くなってしまって、佐藤治男さんご自身も亦、年老いてしまったのである。
 〔返〕  哀しきは北の大地の墓標かな鳥羽何某の「何某」見えず


(飯能市・高橋節子)
〇  戦争を語らず父は骨になる頑固一徹憲兵のままに

 元「憲兵」の方々が、敗戦後「戦争を語らず」じまいで亡くなってしまったとは、よく聴く話であり、亦、その方々が、敗戦後「頑固一徹」を装っていた、という話もよく耳にします。
 思うに、かつての「憲兵」の方々は、国家機密に触れる機会も多くあったのであり、一般の兵士の方々とは異なった仕事をなさっていたので、敗戦後は「頑固一徹」を装い、世間様に目立たないように暮らすのが得策だったのでありましょう。
 〔返〕  戦争をせざる為さざる戦争に関はらざるを佳しとするべし


(福島市・美原凍子)
〇  烈日のなか八月の貨車が来る過去の闇乗せ重き貨車来る

 作中の「貨車」を単なる「貨車」とせずに、「八月の貨車」とした事に拠って、詠い出しの「烈日のなか」及び「過去の闇乗せ」という四句目の措辞がより生かされる結果になったのであるが、作者の意図としては、「特定秘密保護法の施行」や「集団的自衛権の行使」に反対する作者自身の姿勢を、「八月の貨車」を中心とした一首全体の表現を通じて、象徴的に述べたかったのでありましょう。
 それにしても、「八月の貨車」とはよく思い付いたものである。
 これが、一箇月前の「七月の貨車」や、一箇月後の「九月の貨車」であったり、同じ八月の乗り者でも「八月の電車」だったり「八月のバス」だったり「八月のジェット機」だったりしていたのでは、様になりませんからね?
 〔返〕  八月の最終バスの乗客は「降りますランプ」を押すことも無し


(札幌市・藤林正則)
〇  整然と一万千七百五十の椅子並ぶ平和記念公園雨降り続く

 本年の「広島市原爆死没者慰霊式」に於いては、主催者の広島市当局が予め列席者数を「一万千七百五十」名と想定していて、その分だけの「椅子」を雨降る会場に並べて置いたのでありましょうか?
 本作の作者・藤林正則さんは、NHKのテレビ中継などで、列席者の正確な員数を耳にしていて、それをそのまま本作の表現に採り入れたのではありましょうが、それにしても「一万千七百五十の椅子」とはあまりにも語呂が悪く、藤林正則さんの詠歌力を以ってしても、是が一首の短歌として成立するか否かの境目の数字と言うべきであり、作者ご自身がその数字に拘るならば、更なる推敲を要求したい場面である。
 〔返〕  整然と並べられたる一万余雨に降られて椅子も涙す
 ところで、彼の慰霊式に於ける安倍総理の挨拶が、前年度の「コピペ」であるとか無いとか、マスコミでいろいろと取沙汰されているのであるが、次に本年度のそれと昨年度のそれとをそのままに、下記の通り、無断転載させていただきますから、心ある方々にはご一読賜りたく、お願い申し上げます。

≪平成26年全文≫
 広島市原爆死没者慰霊式、平和祈念式に臨み、原子爆弾の犠牲となった方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げます。今なお被爆の後遺症に苦しんでおられる皆様に、心から、お見舞いを申し上げます。
 69年前の朝、一発の原爆が、十数万になんなんとする、貴い命を奪いました。7万戸の建物を壊し、一面を、業火と爆風に浚わせ、廃墟と化しました。生き長らえた人々に、病と障害の、また生活上の、言い知れぬ苦難を強いました。
 犠牲と言うべくして、あまりに夥しい犠牲でありました。しかし、戦後の日本を築いた先人たちは、広島に斃れた人々を忘れてはならじと、心に深く刻めばこそ、我々に、平和と、繁栄の、祖国を作り、与えてくれたのです。緑豊かな広島の街路に、私たちは、その最も美しい達成を見出さずにはいられません。
 人類史上唯一の戦争被爆国として、核兵器の惨禍を体験した我が国には、確実に、「核兵器のない世界」を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります。
 私は、昨年、国連総会の「核軍縮ハイレベル会合」において、「核兵器のない世界」に向けての決意を表明しました。我が国が提出した核軍縮決議は、初めて100を超える共同提案国を得て、圧倒的な賛成多数で採択されました。包括的核実験禁止条約の早期発効に向け、関係国の首脳に直接、条約の批准を働きかけるなど、現実的、実践的な核軍縮を進めています。
 本年4月には、「軍縮・不拡散イニシアティブ」の外相会合を、ここ広島で開催し、被爆地から我々の思いを力強く発信いたしました。来年は、被爆から70年目という節目の年であり、5年に一度の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催されます。「核兵器のない世界」を実現するための取組をさらに前へ進めてまいります。
 今なお被爆による苦痛に耐え、原爆症の認定を待つ方々がおられます。昨年末には、3年に及ぶ関係者の方々のご議論を踏まえ、認定基準の見直しを行いました。多くの方々に一日でも早く認定が下りるよう、今後とも誠心誠意努力してまいります。
 広島の御霊を悼む朝、私は、これら責務に、倍旧の努力を傾けていくことをお誓いいたします。結びに、いま一度、犠牲になった方々のご冥福を、心よりお祈りします。ご遺族と、ご存命の被爆者の皆様には、幸多からんことを祈念します。核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、世界恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします。
           平成二十六年八月六日  内閣総理大臣・安倍晋三
≪平成25年全文≫
 広島市原爆死没者慰霊式、平和祈念式に臨み、原子爆弾の犠牲となった方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げます。今なお被爆の後遺症に苦しんでおられる皆様に、心から、お見舞いを申し上げます。
 68年前の朝、一発の爆弾が、十数万になんなんとする、貴い命を奪いました。7万戸の建物を壊し、一面を、業火と爆風に浚わせ、廃墟と化しました。生き長らえた人々に、病と障害の、また生活上の、言い知れぬ苦難を強いました。
 犠牲と言うべくして、あまりに夥しい犠牲でありました。しかし、戦後の日本を築いた先人たちは、広島に斃れた人々を忘れてはならじと、心に深く刻めばこそ、我々に、平和と、繁栄の、祖国を作り、与えてくれたのです。蝉しぐれが今もしじまを破る、緑豊かな広島の街路に、私たちは、その最も美しい達成を見出さずにはいられません。
 私たち日本人は、唯一の、戦争被爆国民であります。そのような者として、我々には、確実に、核兵器のない世界を実現していく責務があります。その非道を、後の世に、また世界に、伝え続ける務めがあります。
 昨年、我が国が国連総会に提出した核軍縮決議は、米国並びに英国を含む、史上最多の99カ国を共同提案国として巻き込み、圧倒的な賛成多数で採択されました。
 本年、若い世代の方々を、核廃絶の特使とする制度を始めました。来年は、我が国が一貫して主導する非核兵器国の集まり、「軍縮・不拡散イニシアティブ」の外相会合を、ここ広島で開きます。
 今なお苦痛を忍びつつ、原爆症の認定を待つ方々に、一日でも早くその認定が下りるよう、最善を尽くします。被爆された方々の声に耳を傾け、より良い援護策を進めていくため、有識者や被爆された方々の代表を含む関係者の方々に議論を急いで頂いています。
 広島の御霊を悼む朝、私は、これら責務に、旧倍の努力を傾けていくことをお誓いします。
 結びに、いま一度、犠牲になった方々の御冥福を、心よりお祈りします。ご遺族と、ご存命の被爆者の皆様には、幸多からんことを祈念します。核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします。
       平成二十五年八月六日  内閣総理大臣・安倍晋三
 〔返〕  なるほどな是ではまるきしコピペだよ小保方さんを責められないよ


(北海道・斉藤洋子)
〇  午前5時コンブ漁は始まりぬ長き汀はあめ色の帯

 「長き汀はあめ色の帯」との、隠喩を用いた把握が宜しい。
 〔返〕  彼の国は採り放題のコンブ漁午前5時からいよいよ開始


(坂戸市・山崎波浪)
〇  靴箱の隅に一足下駄ありて一度も履きし覚えなきかな

 それを言うならば、私の場合は次の通りである。
 〔返〕  靴箱の隅に半足靴在りて誰のか判らぬガラスの靴だ


(東京都・上田結香)
〇  少々の筋肉と多く友を得てスポーツクラブも二年目の夏

 それを言うならば、私の場合は次の通りである。
 〔返〕  僅かだが贅肉減らして疲れ果て朝の散歩を終わって帰る


(船橋市・武蔵義弘)
〇  ステテコに腹巻姿の我を見て似合いすぎると妻は苦笑す

 それを言うならば、私の場合は次の通りである。
 〔返〕  猿股は褌よりも涼しくて夏の下穿きもってこいだぞ

今週の朝日歌壇から(8月25日掲載・其のⅢ・土曜朝刊・再訂版)

2014年08月30日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]

(和泉市・長尾幹也)
〇  手柄盗ってそのうえわれを能無しと評する人にお中元贈る

 選者の高野公彦氏の寸評に「世の中は理不尽なことが多い。長い物に巻かれる悔しさ」とあるが、高野公彦氏と言えば、時には「愚直」とも評されるくらいの真っ正直なご性格の方であるから、氏は、本作を現実の出来事を詠んだ作品として捉え、前述のような寸評を述べられたのでありましょう。
 然るに、和泉市にお住いの長尾幹也さんと言えば、朝日歌壇の常連中の常連として知られた、極めて著名な歌人であり、彼の作品がほぼ毎週のように当歌壇に掲載されているという事は、彼のご家族やご親戚の方々は勿論、彼と同じ和泉市内にお住いの方々、彼と同じ大阪府内の歌詠みの方々、更には、彼の勤務先の方々など、大勢の方々がご存じのはずである。
 したがって、本作の内容が、仮に現実の出来事に取材したものであったとしたならば、彼・長尾幹也さんから「手柄」を盗んだ挙句に、彼を「能無し」と決め付けた人物、即ち、朝日歌壇の常連歌人たる長尾幹也さんが、屈辱感と重ね重ねの恨みに耐えながらも「お中元」を送らざるを得なかった人物は、必ずや、彼と職場を共にする人物であり、彼の上司である事は、殆ど間違い無いはずでありましょうし、もしもそれが本当の事であるならば、彼・長尾幹也さんの是からの職業生活に於いても、多大なる影響を与えるはずであり、その影響とは、彼、長尾幹也さんを失業させてしまうような質の影響であるはずである。
 といった事柄に基づいて判断すれば、本作は、才人・長尾幹也さんが、サラリーマン社会に取材した短編小説でも書くつもりになって詠んだ「フィクション短歌」であると、断定せざるを得ない事にもなりましょうし、また、敢えて言うならば、この作品を首席に選んだ選者の寸評、即ち「世の中は理不尽なことが多い。長い物に巻かれる悔しさ」は、この作品に与えた寸評と言うよりも、むしろ、この「フィクション短歌」のテーマに就いて触れた短文として捉えた方がより適切な捉え方という事にもなりましょう。
 〔返〕  生ハムに毒針刺してのお中元食えば忽ち冥途特急    


(京都市・古川やす子)
〇  「みんなで」じゃなくて「ふたりで」見たいのと言えずに想い浴衣としまう
 
 京都市にお住いの古川やす子さんは、この夏のせめてもの想い出として、彼と「ふたりで」映画を見たかったのであるが、気の利かない彼は、在ろう事か「映画なら、友達の友達も連れて、みんなで行こう」などと、凡そ、女心の「お」の字を知らないようなことを言い出したので、結局のところは、彼と二人で映画を見る事は勿論、彼への「想い」さえも「浴衣」と一所に箪笥の底にしまってしまわなければならない事態になってしまったのである。
 〔返〕  「イントゥ・ザ・ストーム」この夏彼と二人で見た映画!恐かったから彼の首にしがみ付いたの!


(調布市・水上香葉)
〇  言霊の幸う国の木に止まり法・崩・不穏とふくろう鳴くよ

 せっかく「言霊の幸う国」とまで言っているのだから、どうせなら「鶯が法、法、法華経と鳴く」と言って欲しかったのである。
 入選したさに朝日新聞の「解釈改憲反対キャンペン」に迎合するのも宜しいが、大概の所で止めておかないと、逆に言霊様の祟りに遭うかも知れませんよ!
 〔返〕  言霊の栄える国の木に止まり仏法僧と鳴く鳥がいる 


(大阪市・石田貴澄)
〇  手作りの暑中見舞いの暴れ文字そうか元気か僕も元気だ

 そのC調振りには感心する他ありません!
 〔返〕 パソコンで表も裏も書けるから暑中見舞いは容易いもんだ!


(東京都・上田結香)
〇  「恐い事件あったね」「どの?」と言うような恐い世の中になってしまった
(徳島市・上田由美子)
〇  卵抱くキジバトの見る空の続き爆弾により子らが死にゆく

 本当に怖い世の中になってしまいましたが、私にとっては、易々と朝日新聞社のキャンペンに迎合する歌人ちゃんたちの方が、それよりもずっとずっともの凄く怖い存在なのである。
 〔返〕  防衛省の予算請求四兆円これじゃ益々軍事大国


(岐阜県・野原武)
〇  乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆる事なし

 戦争体験の無い若造どもが「憲法九条」を云々している時代であれば、それも致し方無しとしなければなりません。
 〔返〕  エノラゲイとはどんな芸お笑いの芸人こまつのよく遣るゲイだ
 即興で詠んだ拙作ではありますが、「エノラゲイ/とはどんな芸/お笑いの/芸人こまつの/よく遣るゲイだ」と、音数だけは「五・七・五・七・七」の三十一音に納まっているのである。 


(平塚市・風花雫)
〇  感じよく挨拶をして踏み込まず空気のようにこの街に住む

 そうした心掛けでは、「いざ、鎌倉!」という事態に遭遇しても、誰からも助けて貰えませんよ!
 〔返〕  人間は空気のようには住めません食事もするしオシッコもする
      感じ良く挨拶をして通り過ぐ!「あの人油断のならない人だ!」
 いつもいつも、ご近所の方々に「感じよく挨拶」をしているからと言っても、必ずしも、ご近所の方々からの評価が高いとは限りませんぞ!
 私の今は亡き長姉は、居住地・秋田県羽後町の新町長を評して「今度の町長は、私のような皺苦茶婆さんにまで、丁寧なお辞儀をするから、なかなか油断がならないぞ!」などと言っていたのであり、同じ町内の同年輩の方々の殆どが、これと似たような事を口にしているのである。  

(横浜市・松村千津子)
〇  四本の矢を射終へれば弓道着汗ばみ肩で息する八月

 弓道なんて他のスポーツと比較すれば、どうせ老舗の御隠居様の芸妓遊びみたいなものですから、「四本の矢を射終へれば弓道着汗ばみ肩で息する」のも、当然の事なのかも知れません。
 作者の意図からすれば、本作を通して、今年の夏の異常な暑さを強調して言いたかったのかも知れませんけど!
 〔返〕  通し矢でその名馳せたる紀伊国(きのくに)の和佐大八郎の矢数八千
 紀州藩士・和佐大八郎が京都・三十三間堂に於いて命中させた矢数を正しく言えば、「13,053
射中の命中数が8,133本」であり、その命中率は六十二%であったとか?
 横浜市にお住いの松村千津子さんは、同じ道を志す武芸者として、彼の和佐大八郎の締めていた褌に集っていた虱の爪の垢でも煎じて飲んでみたら如何でありましょうか?

 
(富山市・松田梨子)
〇  人間の言葉をしゃべる猫かもね風かもね桃かもね妹

 松田家に於ける話題は、専ら松田家の家族の自慢話である。
 こんな事では、子供たちの社会性が育つはずも無く、視野を狭めるだけでありますから、先ずは、長女の梨子さんが率先して広く世間に目を向けなければなりません!
 〔返〕  ご家族のことしか詠まない歌人かも松田梨子さん視野広く持て