臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

一首を切り裂く(020:幻・其のⅠ・選歌中)

2011年11月10日 | 題詠blog短歌
(じゃこ)
○  おばさまはだし昆布とか玉子とか幻をすぐお取り寄せする




(西中眞二郎)
○  正月はいつもと違う日なるとの幻想未だ持ちて過ごしぬ
(髭彦)
○  幻想に終らぬことを祈りつつ遥かな民の起つを喜ぶ
(帯一鐘信)
○  幻の便座と呼べるあたたかさいつも知らないうちにはじまる
(野州)
○  カーテンを閉めれば暑き講堂の幻灯でみたエスキモーの暮らし
(増田静)
〇  読みさしを伏せると「人」の形かな文庫しなやか幻冬舎文庫
(くろかわさらさ)
〇  幻のようだったねと薄荷水舌をすべれば夏はおしまい
(矢野理々座)
○  「幻滅をした」と言うけど現実を見た方がよい時もあるはず...
(藤田美香)
○  幻がわたしのもとにやってきて幻だけど信じろという

(津野)
○  鬼となり百まで数えて振り向けばきみもあの子も消えて幻
(行方祐美)
○  ゆめ幻のやうな匂ひに包まれよ朝の五時の霞む浴室

(砺波湊)
○  オアシスの幻に似て灰色の校舎のなかでひらく祭りは

(さくらこ)
○  ひと時の逢瀬にたぶん必要な夢幻の愛が落ちてるホテル
(牛 隆佑)
○  ここにいたかもしれなかった僕たちが幻になり消えゆくところ
(A.I)
○  夕暮れの幻灯そしてチェンマイのゲストハウスに積もる静けさ
(不動哲平)
○  幻は幻らしく四〇分四〇〇〇円の夜にまた病む
(砂乃)
○  リアルには耐えられないと逃げ込んで幻想世界を生きる少年
(酒井景二朗)
○  幻のごとき命か日だまりにしづまる墓に酒を注ぎつ
(原田 町)
○  八幡山より見わたす安土城址は夢幻か湖水の光る
(ひじり純子)
○  幻の指令を受ける男たちコスモクリーナー不確かなもの
(葵の助)
○  「夢幻」というハンドルネームでケータイのブログやってたこともまぼろし
(湯山昌樹)
○  幻であってほしいと願えども冷たく地震(ない)の跡は残れり
(芳立)  「白骨の御文」に 
○  ゆく水によしやあしやと幻のひとよながれてうき草のあと
(梳田碧)
○  蟻の曳く荷物は骸ばかりなりキャラバンサライも遠い幻
(牧童)
○  幻術の根を侍らせてヒヤシンス水栽培のドラマは続く
(萱野芙蓉)
○  月もひとりおぼろに傾ぎ灰色を帯ぶる四十一帖幻
(穂ノ木芽央)
○  あの娘の名知るためだけに小走りで真夏の森の幻燈会へ
(るいぼす)
○  暗闇に響く足音とまらない夜が明けるまで続く幻聴
(小夜こなた)
○  生むあてを絶ちし吾が子が花影に「元気ですか」と揺れる幻
(五十嵐きよみ)
○  幻想が崩れるように溶けてゆくコーヒーカップの上のクリーム
(南葦太)
○  在り得ない背中に触れたはずの手に時折襲いくる幻肢痛
(伊倉ほたる)
○  口づけをせがむグロスをかわしつつ幻覚めいて花びらは散る
(雑食)
○  あの人の幻はまだ必要で留守電の声まだ消せなくて
(紗都子)
○  ひたむきな顎のラインをとがらせて君が見上げる空は幻
(水絵)
○  この惨事幻であれ夢であれ 祈るすべしか無き身口惜し
(やまみん)
○  幻を愛していたのは どっちなの?愛する事に 疲れ果てたの?...
(おおみはじめ)
○  幻をかたる金融詩人らがあまた集へるニューヨークかな
(佐田やよい)
○  曖昧な記憶のような明るさが幻灯機から零れれば冬
(久哲)
○  小規模な幻想帯を持ったまま時間につぶされている喫茶店
(那緒)
〇  幻覚と言い聞かせては凝視する地獄絵図あり画面の向こう
(史緒)
〇  桜舞う朧月夜の夢幻能うたかたの恋影も残さじ
(冥亭)
〇  きのうまたあすも幻さもあらばきょうのこの日を現(うつつ)と思うな
(中村成志)
〇  月光は空き屋にも降り幻と見紛うごとくすずらんの房
(我妻俊樹)
〇  幻灯をはずして壁にあてながらただ真っ白になるだけなのよ
(希)
〇  幻でいいわけがない明日からの天気をしきりに気にするあなた
(理阿弥)
〇  幻なき一生を急ぐ男の子らにジサツウキンのホームぞ暗き 
(藻上旅人)
〇  幻をみると時は少しだけ歪んじまうので 意味は消え去る
(晴流奏)
〇  幻想に胸を焦がして堕ちてゆく一夜の夢と笑わば笑え
(ぱぴこ)
〇  幻の君が好きです居酒屋で再会なんていらないのです
(黒崎聡美)
〇  一年をたしかに過ごしたはずなのに幻のように咲く沈丁花
(花夢)
〇  (ほうしゃのう)見えないものが見えるとしたらそれは幻(ほうしゃのう)

(志歩)
〇  17の孤独の味が沈んでる今は幻カルピスの底
(天国ななお)
〇  二十年前なら夢と笑っても昨晩ならば幻でしょう
(松木秀)
〇  現実に軸足移す「幻想は現実である」と話す人いて...
(新藤ゆゆ)
〇  約束が守れなくても明け方に幻滅したとしてもおかえり
(藤野唯)
〇  強いんじゃなくてどうでもいいんだね 愛されたのは夏の幻
(東 徹也)
〇  幻想や仮想でないと気付くまでこの口づけを繰り返すだけ...
(伏木田遊戯)
〇  幻のかげろうの身であればこそ手鎖の恋秘して滅べよ
(北爪沙苗)
〇  喜びを病巣として幻を乗せた列車を見送る真夏
(千葉けい)
〇  目覚めれば肩の形も浮かぶのに紅さす指は幻と言う
(今泉洋子)
〇  幻の迦陵頻伽を一目見ん格天井を飛び立つ姿を

(北爪沙苗)
〇  喜びを病巣として幻を乗せた列車を見送る真夏
(なぎ)
〇  かたくなに三角座り 幻灯機いじる横顔照らされている
(遥遥)
〇  これは幻ですかこれは幻ですかこれが現実ですか
(ひぐらしひなつ)
〇  幻想曲弾き終えてのちゆるやかに波打ちながらあなたが戻る
(豆野ふく)
〇  旅先の赤提灯は幻想の灯り 今夜は夢まで飲もう
(山階基)
〇  幻の水棲獣の抜け殻を現地の人は揚げ物にする
(夏嶋真子) 
〇  真夏日の水曜午後二時新宿に西瓜畑と祖父の幻影
(粉粧楼)
〇  幻の帝国滅ぶ予感抱き君に抱かれる夜は終らず
(鳥羽省三)
〇  幻想のたまゆら醒めしマニフェスト粉砕しませシュレッダーもて 

一首を切り裂く(019:層・其のⅦ・未だ残る尻の明かりの記憶さへ)

2011年11月10日 | 題詠blog短歌
(村木美月)
〇  残されるものだけが知るかなしみが化石になって地層に眠る

 豪華客船・タイタニック号が氷山に衝突して間もなく沈没しようとしている時、選ばれて緊急避難用のボートに乗れる者と乗れない者とに別れるのであるが、ボートが未だタイタニック号から離れていない段階では、ボートに乗れないと決まった者は「残されたもの」では無くて、「残されるもの」でありましょう。
 三陸の村が津波に襲われて大勢の人が亡くなってしまったと確認された時、運良く津波に攫われなかった人は「残されるもの」では無くて、「残されたもの」でありましょう。
 このようにして、「残されるもの」と「残されたもの」との間には自ずから大きな違いがある。
 と言うことは、「残されるものだけが知るかなしみ」と「残されたものだけが知るかなしみ」との間にも大きな違いがあるということでありましょう。
 本作の作者・村木美月さんは、こうした違いをほとんど意識しないままに本作をお詠みになったのではありませんか?
 その点についての詮索はこの程度にするとして、私はこの作品を、『愛の化石伝説』というタイトルのフランス映画を観ているような感じで読みました。
 〔返〕  残された者だけが知る悲しみよ瓦礫と共に東京に行け!   鳥羽省三
      残された者だけが知る悲しみよ黄砂となって中国へ飛べ!
      残された者だけが知る悲しみは元素と化して故郷を守れ!  


(伊倉ほたる)
〇  指に残る背骨をなぞる感触がリアルな夢の深層心理

 「リアルな夢の深層心理」とまで言ってしまう必要があったかどうかが問題である?
 ご自身の「深層心理」を分析し得たとしても、それはほんの自己満足に過ぎず、短歌作品としては、面白くも可笑しくも無いのではありませんか?
 それよりも、もう少し朦朧かつ曖昧な表現にした方が深みのある作品になりましょう。
 「彼の指が恥骨をなぞる感触を忘れ得ずしてオフィスに在り」、「指に残る背骨をなぞる感触が恥ずかしそうにパソコン叩く」とか何とか、いろんな詠み方が在るようにも思われるのですが?
 このままでは、「本作の作者・伊倉ほたるさん(38歳)は、蒲田の駅前で指圧治療院をお一人で経営なさって居られて、ごくたまに訪れる悪役タレント某の『背骨をなぞる』ことを唯一の楽しみとして侘しい独身生活を過ごしていらっしゃるのでありましょうか?」などと、質の悪い冗談の一つも言いたくなるような駄作と言えましょうか?
 〔返〕  未だ残るダイヤの指輪の記憶のみ冬の蛍を支へて居らむ   鳥羽省三
      未だ残る尻の明かりの記憶さへ冬の蛍の命の証し


(逢)
〇  やさしさが重なって層になっていき下のやさしさがつぶされていく

 塵も積もれば山となり、上層の塵が下層の塵を潰してしまうのでありましょう。
 「やさしさ」が幾重にも重なった時、下層の「やさしさ」が上層の「やさしさ」の重みに耐え切れずに「つぶされていく」という現象は、私たちの身の周りに於いてもよく発生する現象である。
 〔返〕  怨恨が十重に二十重に層を成し熱く燃え立ちマグマとはなる   鳥羽省三


(富田林薫)
〇  悲しみのアンモナイトの貝殻はやがて地層に抱かれていた

 「貝殻」は余分かも知れません。
 〔返〕  悲しみのアンモナイトは罅割れて太古の地層に抱かれて居た   鳥羽省三


(本間紫織)
〇  より一層強く感じる八月の汗とあなたと花火のにおい

 「八月」は性のマグマが沸騰し爆発する季節でありますから、「汗とあなたと花火のにおい」に猛り狂った、本作の作者・本間紫織さんの性も亦、お名前に相応しくなく乱脈を極めるのでありましょう。
 〔返〕  しおらしさかなぐり捨てて乱れんか彼と花火の匂いに狂い   鳥羽省三


(晴流奏)
〇  化粧水角質層へ染み込ませ今より君に見つめられたい

 高級な「化粧水」を「角質層」へたっぷりと「染み込ませ」、「今より」以上にもっともっともっと「君に見つめられたい」ということでありましょう。
 だが、「化粧水」の乱用は肌の衰えを促進するばかりでなく、血行を悪くし、内臓の機能を極度に低下させますから、よくよくご注意なさって下さい。
 〔返〕  オーデコロン剥げた頭に振り掛けて「いざ、鎌倉!」と出陣せしも   鳥羽省三


(飫肥正)
〇  幾層も連なるしらべ追ううちに混沌としてバッハのフーガ

 飫肥正さんの仰る通りの境地で眠ろうとして、私も毎晩、一種の就眠儀式のようにして「バッハ」のオルガン曲『トッカータとフーガ・ニ短調』を流しながらベッドに入って居りますが、その効果たるや絶大なものがありまして、今では、他の曲では眠りに就くことが出来なくなってしまいました。
 〔返〕  追っ駈ける音に重なる音と音 J・S・バッハの『トッカータとフーガ・ニ短調』   鳥羽省三

 
(月原真幸)
〇  壜詰めの成層圏という説をくつがえさない三ツ矢サイダー

 「しゅるしゅると立っては、パチッと消えて行く『三ツ矢サイダー』の泡が、希薄で爽やかな『成層圏』の空気を感じさせる」という趣旨のCMが、かつて放映されていたのでありましょうか?
 〔返〕  瓶詰めの成層圏への誘いに朝晩欠かさず三ツ矢サイダー   鳥羽省三


(佐藤紀子)
〇  ひつそりと時間の層に埋まりゆく逢ひしあの日も別れし時も

 失恋にしろ、得恋にしろ、恋をしていた過去の日々の思い出が、「ひつそりと」堆積して行く「時間の層」の中に「埋まりゆく」という発想の作品は、結社誌を見ても新聞歌壇の入選作を見ても腐臭が立ち込めるほど沢山在りますから、今更、佐藤紀子さんの頗る優れた頭脳を悩ませる必要は少しも無いかと存じます。
 こんな有り触れた歌境でご満足なさって居られる佐藤紀子さんとも思えませんが?
 〔返〕  逢ひし日も別れて住む日も尚更に君に貸したるあの一万円   鳥羽省三


(我妻俊樹)
〇  あの青い高層ビルの天井の数をかぞえてきたらさわって

 「あの青い高層ビルの天井の数」となって居りますが、もしかしたら、「あの青い高層ビルの天丼の数」の間違いではありませんか?
 「天井の数」は、数えようとしても適当な序数詞が在りませんから数えようがありません。
 それに比べて、「天丼の数」の場合は、「一杯、二杯、三杯」と、どんなに数が多くても数えることが可能です。
 また、「あの青い高層ビル」のオフィスに配達された「天丼の数」を数えるくらいの奇特な男性だったら、少しぐらい「さわって」やっても決して損にはならないでしょう。
 〔返〕  あの青い高層ビルの秘書課まで大盛り天丼配達してね    鳥羽省三
      天丼の数を数えるデリバリーに触ったことを覚えてる指


(今泉洋子)
〇  何層も塗り重ねたる化粧を落としてやつとわれに戻れり

 三句目のリズムの乱れがあまりにも惜しまれます。
 いっそのこと「何層も塗り重ねたる若化粧落としてやつと我に戻れり」となさったらいかがでありましょうか?
 〔返〕  何層も塗り重ねたる白壁の奥の御殿の化け猫騒動      鳥羽省三
      厚化粧落としてやっと清算すやつと我との昏い関係


(奈良絵里子)
〇  カフェオレの白と茶色の層のとこ 混ぜつつ話す好きな場所とか

 何と幼稚で他愛なくあどけない表現でありましょうか、この幼稚で他愛なくあどけない表現が、本作の魅力の全てでありましょう。
 〔返〕  Tシャツの白とピンクを交互に着 君に話そう痒いとことか   鳥羽省三
      これからはおれの気質の悪いとこ直すとかする短気なとこも


(きたぱらあさみ)
〇  壊れてるのは君だろうオゾン層みたいに淡いブラウスを着て

 福島第一原発のメルトダウン騒動の影響に因ってなのか、「オゾン層」破壊の話題も、マスコミの表面から消えてしまったような感じである。
 もしかしたら、この状態が健全かつ正常な状態ではないか、とも思われます。
 ところで、「オゾン層」の問題は、「淡い」淡くないのレベルの問題では無くて、「壊れて」しまってぽっかりと穴が開いている、といったレベルの問題では無かったのですか?
 〔返〕  唐変木は君だろう金も無いのに煙草プカプカ煙吐いてて   鳥羽省三


(なぎ)
〇  生ぬるい君の階層構造のどの辺りまで到達してる?

 「生ぬるい君の階層構造」と言っただけでもリアルなのに、「どの辺りまで到達してる」とまで言われてしまったら、あまりにもリアルなので腰を抜かしてしまいそうな気分です。
 〔返〕  生ぬるい君の感触わたくしのどの辺りまで到達してる?   鳥羽省三


(豆野ふく)
〇  薄鼠の乱層雲が邪魔をして君が見えない七月七日

 天の川の上空に「薄鼠の乱層雲」が立ち込めたのでありましょうか?
〔返〕  薄鼠の乱層雲を乗り越えて彼と彼女は逢えたのでしょうか?   鳥羽省三


(鳥羽省三)
〇  百層倍越中富山の萬金丹 丹下キヨ子の天狗懐かし

 「越中富山の萬金丹」が置き薬として我が家の薬棚に置かれていた頃、あの「丹下キヨ子の天狗」姿が話題となっていたというだけの関係で以って、「丹下キヨ子の天狗懐かし」などと言ってしまったのは、余りにも安易な発想でありましょう。
 〔返〕  富山ではお杓文字振っての米騒動 萬金丹に蜃気楼かも   鳥羽省三 

一首を切り裂く(019:層・其のⅥ・雨よ、降り出せ)

2011年11月09日 | 題詠blog短歌
(五十嵐きよみ)
〇  乱層雲ひくく垂れ込め永遠にやむことのない雨よ、降り出せ

 五十嵐きよみさんらしからぬ、推敲不足の作品である。
 作者の創作意図は、至る所見えない身柄を拘束する現状の中から救済されるべく破れかぶれの心情のままに、「乱層雲ひくく垂れ込め」、「永遠にやむことのない雨よ、降り出せ」と叫び出したい点にありましょう。
 だとしたら、作中の“読点”は、もう一か所、即ち「乱層雲ひくく垂れ込め」という詠い出しの二句の後にも置いて、「乱層雲ひくく垂れ込め、永遠にやむことのない雨よ、降り出せ!」とするべきでありましょう。
 また、短歌とは、本来的には“三十一音ひと続きの韻文でありますから、本作は、いっそのこと“読点”も“びっくり記号”も用いずに「乱層雲ひくく垂れ込め永遠にやむことのない雨よ降り出せ」とあるべきでありましょう。
 〔返〕  過ぎぬれば世界の民の嘆きなり竜神様よタイの雨やめたまへ   鳥羽省三


(夏樹かのこ)
〇  「油絵は重ねて塗れば塗っただけ層の記憶が増してゆきます」

 「油絵」の特質は、「“水彩画”や“日本画”とは異なって、“重ね塗り”や“厚塗り”が可能なところに在る」とは、よく耳にすることである。
 本作の意は、「その『油絵』の特質の一つである“重ね塗り”は、『塗れば塗っただけ層の記憶が増してゆきます』」ということでありましょうが、だとしたら、「油絵」を描く人は、“重ね塗り”をする度ごとに、新たな絵を描いているような気分に浸っている、ということになるのでありましょう。
 「一枚の『油絵』の下に、それとは全く構図も描線も異なる絵が隠されていることがレントゲン写真によって解明された」といったニュースに接することがありますが、“重ね塗り”の究極的な到達点は、そうしたことに在るのでありましょうか?
 〔返〕  襖絵にはつか重なる描線は狩野派の絵師の苦労の跡か   鳥羽省三


(香-キョウ-)
〇  思い出は上書きじゃない重層になると思えば淋しくないよ

 「思い出は上書きじゃない重層になると思えば淋しくないよ」とは仰いますが、「いっそのこと、『思い出』も一回こっきりの、パソコンの『上書き』のようなものであれば救いがあるのに」と思ったりすることだってありますよ。
 〔返〕  思ひ出が思ひ出を呼び眠られずその場限りの思ひ出無きや!   鳥羽省三


(るいぼす)
〇  表層は笑ってたけどホントウは何を感じていたのだろうか

 ルイボスはマメ目マメ科植物だ。
 ルイボスはマメだ。
 ルイボスをマメに働いた。
 ルイボスは針葉樹みたいな葉を持つ。
 ルイボスは赤褐色になったとき落葉する。
 ルイボスは南アフリカ共和国のセダルバーグ山脈一帯にのみ自生する。
 ルイボスは乾燥した摂氏三十度以上の温度差の高い場所を好むため、セダルバーグ山脈以外の土地での栽培に適さない。
 ルイボスの乾燥させた葉はルイボス茶になる。
 ルイボス茶は甘みがあり、カフェインを含まず、タンニン濃度もごく低く、抗酸化作用を持つ健康茶である。
 ケープ地方の先住民・コイサン人は、古くからルイボス茶の効能を知って居て、薬草として採集していた。
 ケープ地方に入植したオランダ移民はルイボス茶を紅茶の代用品として用いた。
 南アフリカ共和国では、ルイボス茶に牛や山羊の乳と砂糖を入れてミルクティーにして飲むのが一般的であるが、世界のその他の地域ではそのまま飲むことが多い。
 南アフリカのカフェでは、ルイボスのエスプレッソやカフェ・ラッテ、カプチーノも人気がある。
 
 ルイボス茶は我が国にも輸出され、健康茶として人気がある。
 ルイボス茶を飲む人はよく働きよく笑う。
 ルイボス茶を飲む人は、表層では笑ってるけど心底で何を感じてるんだろうか?
 ルイボス茶を飲む人は、笑いながら自分だけが長生きしようとしてるんだろうか?
 ルイボス茶を飲む人は信用出来ない。
 ルイボス茶に限らず、一般的に茶を飲む人は信用出来ない。
 千利休は茶を飲む人だから秀吉に信用されずに殺された。
 ルイボス茶を飲む人は、表層で笑いながら心底で死と権力について考察しているのである。
 〔返〕  表層は乾いたみたいに見えるけど土の底ではいつも濡れてた   鳥羽省三
      唇を渇いたみたいに見えるけど膣の中ではいつも濡れてた


(新田瑛)
〇  射し込んだ光はやがて層を成しあなたを弛く固定してゆく

 月明かりの射し込む部屋のベッドで行われた情交の有様をそのまま詠んだのでありましょうか?
 「射し込んだ光」の「層」の中で「弛く固定」されている女性の女性自身を開かんとしている男性の男性自身の有様が彷彿とされる一首である。
 〔返〕  射し込んだ光の中で悶えつつやがて貴女は静かに眠る   鳥羽省三

一首を切り裂く(019:層・其のⅤ・夢にうなさるひと老ひてなほ)

2011年11月08日 | 題詠blog短歌
(髭彦)
〇  深層に何眠りゐて奇怪(きつかい)な夢にうなさるひと老ひてなほ

 あの髭彦さんさえも「奇怪な夢」にうなされていると聴いて、何か一安心したような気がします。
 私たち高齢者にとっての過去半生の出来事は、全て悔恨の種でしかありません。
 そんな種を抱えている私にとっては、眠らなければならない夜という時間帯は「奇怪な」悪魔が支配する異界のようなものである。
 本作の作者・髭彦さんも亦、私と同様に夜な夜なそうした異界に足を踏み入れることになってうなされているのでありましょう。
 〔返〕  老ひぬれば更に激しくうなされむ果たし得ぬ夢は怨念となる   鳥羽省三


(さくらこ)
〇  降り積もる想いの層はジュラ紀から変わらず恋の化石抱いてる

 地質年代を大まかに分類して言えば、古い方から順に“冥王代”“始生代”“原生代”“顕生代”と大別され、その中の“顕生代”は“古生代”“中生代”“新生代”と中間分類され、中間分類した三つの年代を更に分類して言うと、“古生代”は“カンブリア紀”“オルドビス紀”“シルル紀”“デボン紀”“石炭紀”“ペルム紀”と、“中生代”は“三畳紀”“ジュラ紀”“白亜紀”と、“新生代”は“古第三紀”“新第三紀”“第四紀”と細部分類されるのである。
 私たち人間は、現在、この巨大な宇宙に於ける支配者として我がもの顔の振る舞いをしているのであるが、前述した地質年代で言えば、幾つかの分類の中の最も新しい年代、即ち“顕生代”の中の“新生代”、その“新生代”の中の“第四紀”になってから、辛うじて頭を擡げることが許され、地球上を自由に往来することが許された哀れな存在に過ぎないのであるから、間も無く到来するはずの“化石燃料の枯渇”やそれに代わるはずであった“原子力発電”の行き詰りを引き合いにして説明するまでも無く、決して威張るに値しない存在なのである。
 ところで、作中の「ジュラ紀」とは、“中生代”の中の二番目に分類される地質年代の名称であり、今から約1億9960万年前に始まり、約1億4550万年前まで続く地質年代である。
 三畳紀と白亜紀に挟まれたこの時代は中生代の最盛期であり、次の時代の白亜紀と共に、子供たちや子供離れをしていない大人たちも大好きな“恐竜の時代”でもある。
 SF映画『ジュラシック・パーク』のヒットに因って、「ジュラ紀」という時代は、恐竜が我がもの顔で地球上を歩き回り、後世、「化石」として発掘される生物の栄えた時代としてイメージされたのであるが、本作は、そのイメージから発想され、恋物語として仕立て上げた作品であるが、「降り積もる⇒想い⇒想いの層⇒層は⇒ジュラ紀⇒ジュラ紀から⇒変わらず⇒変わらず恋⇒恋の化石⇒抱いてる」という連鎖反応的な言葉の運びが、その魅力の大半を成しているのである。
 〔返〕  降り積もる恨みの層が重なって四十七士は吉良亭討ち入り   鳥羽省三


(酒井景二朗)
〇  比較的所得の低き層なれど友とこぞりて酒をば酌まむ

 “ささやかなる楽しみ”というところでありましょうか?
 「比較的所得の低き層なれど」という詠い出しが、抜群に宜しい。
 〔返〕  比較的頭の悪い鳥羽なれど他人の歌のこき下ろしする   鳥羽省三


(葵の助)
〇  そんな気はないから服を何層も纏ってきたのに剥がされている

 “葵の助語録”には、「帯や紐やベルトは解かれたり外されたりする為に巻くのであり、着物や服は剥がされる為に身に纏うものである。」と記されているのでありましょうか?
 ところで、本作の作者・葵の助さんは男性と思われますが、だとしたら、“もてもての恋泥棒・葵の助”ということになりますね。
 それとも、お相手のお女中は、加齢臭プンプンで髪の毛を紫色に染めたお局様でありましょうか?
 〔返〕  そんな気が予感としてもあったからパンツをおニューに取り替えたのに   鳥羽省三

一首を切り裂く(019:層・其のⅣ・君と我とはもはや合体)

2011年11月07日 | 題詠blog短歌
(飯田彩乃)
〇  きみの指とわたしの膚(はだ)のあわいにも他人という名の層があるのだ

 恋人と熱烈な愛撫を交わしている最中に、「きみの指とわたしの膚のあわいにも他人という名の層があるのだ」などと無粋なことを仰ってはいけません。
 既に一線を越えているのですから、「たにんという名の層」は克服させている筈ではありませんか?
 表記及び表現上の問題点について指摘すれば、「膚(はだ)」という振り仮名付きの表記は無用であり、また、一首全体が口語調で終始しているのでありますから、三句目を「あわいにも」とせずに「間にも」とした方が宜しいかと思われます。
 〔返〕  くれなゐに胸乳染めたる抱き合ひ君と我とはもはや合体   鳥羽省三
 「合体」なんて言うと、『釣りバカ日誌』みたいな感じになってしまうのでありますが、一首全体をお笑いにしてしまうのも宜しいかと思いますが、もう少し露骨に言いますと、次のような一首ともなりましょう。
     くれなゐに胸乳染めての四つ相撲 琴と稀勢とはもはや同体   鳥羽省三


(螢子)
〇  嘘ひとつ隠すためまた嘘をつく君の言葉は層と成りゆく

 「嘘」を吐いてばかり居る不実な彼に対する、本作の作者・螢子さんの感情が剥き出しにされている一首である。
 「嘘」と「嘘」の間に、また別の「嘘」が挟まっていたりして、「君の言葉」は「嘘」を幾つも重ねた“ミルフィーユ”状態になっていることを、逸早く見破ったのでありましょうか?
 〔返〕  吐いた噓かくすため吐く嘘も在り彼の心は嘘のミルフイユ   鳥羽省三


(砺波湊)
〇  「ざわめきって層になるんだ緞帳の脇から暗い客席見れば」

 場末のストリップ小屋の“演出家兼幕引き”になって一生を送ることが、十代の頃の私の夢でありましたが、こと志しとは異なり、国語教師という極めて詰まらない職業に従事して老いる結果となってしまいました。
 本作は、そんな若い頃の私が、舞台の袖に居て、ふと漏らしてしまった溜息のような作品である。
 一首全体を「鍵カッコ」で囲むなど、名手・砺波湊さんとしても、それなりに工夫を凝らした、棄て難い作品でありましょう。
 〔返〕  「踊り子の流せる汗と涙とが乾く間も無く次の出番が!」   鳥羽省三  


(梅田啓子)
〇  わがこころの断層写真に映りいる埋まることなき若き日の孔

 未だに「わがこころの断層写真に映り」居て、永久に「埋まることなき若き日の孔」とは、巧まずして、よく言い得た言葉である。
 歌詠み特有の感情の激しさと情熱的な言行ゆえに、ぽっかりと空いた心の「孔」でありましょうか?
 〔返〕  若き汝のMRIに映り居て永久に消し得ぬ感情の襞   鳥羽省三                 


(原田 町)
〇  わが乗りし電車は地下何層目この上下にも線路あるらむ

 “東京メトロ”の各駅の窓口で貰える“メトロネットワーク”というパンフレットを眺めていると、東京都内の地下には、“東京メトロ”や“都営地下鉄”の電車が縦横無尽に走っていて、一種複雑な錯綜状態を極めていることが解るのであるが、それらの中で、最も多くの地下鉄電車が止まるのは“大手町駅”である。
 同駅には、東京メトロの千代田線・丸ノ内線・東西線・半蔵門線の電車に加えて都営地下鉄の三田線の電車も止まるので、駅の地下は、少なくとも五層を成しているものと判断される。
 本作、即ち「わが乗りし電車は地下何層目この上下にも線路あるらむ」という、首都圏の住人でなければ解らないような一首を為したのは、恐らくは、本作の作者・原田町さんが、久しぶりに日本橋の三越本店の宝石売り場にお出掛けになろうとした際に、乗車なさった電車が“大手町駅”乃至は“永田町駅”の辺りに差し掛かった時でありましょうか?
 私の予測が的中しているか否かは、原田町さんのコメントに拠らないと判りませんから、ご多忙中、大変失礼には存じますが、原田町さん、何卒、宜しくお願い申し上げます。
 〔返〕  勝手なる予測を立てし魂胆は貴女のコメントの誘引にあり    鳥羽省三
      きのふ我が銀座で見惚れし貴婦人は恐らく原田町さんならむ
      きのふ我が築地の市場で出会ひしは買ひ出し姿の町さんならむ
 なんちゃって、勝手なことばっか書いてる“71歳4ヵ月半”である。         


(藤田美香)
〇  二層めに閉じ込められた時間からあたしのルーツを嗅ぎ出している

 藤田美香さんの御作中の「層」は、原田町さんの御作中の「層」とは異なって、地下鉄電車の線路の「層」では無く、藤田美香さんご自身の存在の「層」でありましょうか?
 だとしたら、その「層」は地下鉄の線路以上に錯綜を極めていて、先ず、全体が「過去・現在・未来」と三層を成していて、それらの三層も亦、それぞれ幾つかの「層」を成しているのでありましょう。
 作者・藤田美香さんが「二層めに閉じ込められた時間からあたしのルーツを嗅ぎ出している」とお詠みになっておられる「二層め」とは、恐らくは、三層を成している「過去」の「層」の中の「二層め」のことでありましょう?
 最近、何かと話題になっている“ニュートリノ”は光速を超えているということでありますから、それに乗って、
藤田美香さんご自身の存在の“過去の層”の「二層め」に遡って行けば、ご自身が仰る通り、恐らくは「閉じ込められた時間からあたしのルーツを嗅ぎ出」すことも可能なことでありましょう。
 そういうことでありますから、どうぞ頑張って下さい。
 でも、貴女の過去が“醜いアヒルの仔”であったとしても、そんなにがっかりすることはありませんよ。
 〔返〕  飾り窓に閉ぢ込められし夕べから娼婦の君を救ひ出したい   鳥羽省三
      玉ノ井の「抜けられ桝」の袋路で吾と出遭ひし過去世の汝よ
      玉ノ井の「抜けられ桝」の袋路で娘らの遊べる大波小波

一首を切り裂く(019:層・其のⅢ・唐突に高層アパート顕れて)

2011年11月06日 | 題詠blog短歌
(西中眞二郎)
○  唐突に高層アパート顕れて緑の中に廃墟めきたる

 「緑の中」に「唐突に」「顕れ」た「高層アパート」を「廃墟めきたる」という思いで見ている本作の作者・西中眞二郎さんの胸の中に去来するものは、祖国・日本及び首都・東京に住む人々の一人としてのご自身の日々の生活に対する忸怩たる思いでありましょうか?
 今や、世界一の借金大国と成り果ててしまい、行き詰ってしまった医療・福祉・年金等の行政や雇用対策・教育問題などのことを思えば、通産官僚OBとしては呆然たる思いに囚われてしまうのでありましょうか?
 〔返〕  唐突に暴走自転車顕れて「じじい、邪魔だ!」と撥ねられちゃった   鳥羽省三


(tafots)
○  本棚の地殻変動もうもうとこの層は母この層は祖父

 今や、ご家庭の書籍類は、“売却”乃至は“焼却処分”に処してしまわなければならない時代に到達しました。
 かく申す、評者も、一昨年の首都圏Uターンに際して、営々と積み上げていた書籍の大半・一万冊以上を処分してしまい、今や、必要に応じて、川崎市内の図書館通いを日課としております。
 御「祖父」様の「層」に堆積している書籍などは、今や苔生してしまって、古書店に売り払おうとしても、一銭の代価も得られられないような代物であるに違いありません。
 “ハウ・ツウー物”を中心とした御「母」堂様の書籍共々、一日も早く焼却処分してしまいましょう。
 〔返〕  黒煙が葬り火のごと宙に舞ひ祖父の形見の円本の燃ゆ   鳥羽省三


(映子)
○  ばあちゃんと 母さんわたし で かき混ぜた   オンナ三層 ぬかどこ伝説

 「オンナ三層」「ぬかどこ伝説」というご発想自体はなかなか優れているご発想かと存じます。
 それにしても、どんな理由があっての“分ち書き”でありましょうか?
 単語単位でもないし、文節単位でもないし、句単位でもないし、まるで中途半端で、意図不明で見苦しいだけが取り得の“分ち書き”ではありませんか!
 作者の思慮の浅薄さが剥き出しですから、即刻止めましょう。
 〔返〕  婆ちゃんと母と私が掻き混ぜて手垢で滲んだ糠床伝説     鳥羽省三
      祖母・ハナと母のゆかりが掻き混ぜて娘・杏奈に伝へむ糠床
 “オンナ四層”の、由緒正しく、ポツリヌシ菌塗れの糠床にさせていただきました。


(紫苑)
〇  幾層も塗りては研げるうばたまの黒にほひたつ闇蒔絵(やみまきゑ)かな

 「やみまきゑ」との振り仮名が無用かと思われます。
 作者としては、「うばたまの」という枕詞まで用いてお詠みになった文語短歌なので、「闇蒔絵」は「やみまきえ」では無く「やみまきゑ」であることを強くイメージさせたかったのでありましょうが、そうした無用なことを為すのは、所詮、ご自身の俄か勉強・俄か知識の程をあからさまにしているようなものでありましょう。
 〔返〕  たらちねの母の朱沢の色紙箱螺鈿ほつれて闇に零るる   鳥羽省三

一首を切り裂く(019:層・其のⅡ・アップルパイの層は崩れる)

2011年11月05日 | 題詠blog短歌
(祢莉)
〇  何層も重なるバウムクーヘンのはがれた辺り僕の立ち居地

 何処のハイカラ紳士が使い始めた言葉かは知らないが、「立ち位置」という言葉は、極めて座り心地の悪い言葉である。
 それにも関わらず、短歌作者の中のある者は、格別必要の無いような場合でも、この座り心地の悪い言葉を敢えて使おうとするのである。
 私の感じる所に拠ると、この言葉が作中で使われている短歌作品の八割以上は愚にもつかない駄作であり、しかもそれらの大半は、この座り心地の悪い言葉を使わないで、既存の言葉、例えば、「立場・見地・観点・立脚点・居場所・境地」といったようなごく有り触れたような言葉を使っても表現意図が十分に伝わるような作品なのである。
 本作の作者も亦、彼のハイカラ紳士の類でありましょうか?
 一首の末尾で「立ち位置」という言葉を使おうとして、あろうことか「立ち居地」などという、東京以西本邦初演の言葉を使ってしまったのである。
 歌詠み人の中には、頼まれもしないのに身の恥を曝け出すことを趣味としている人種、つまり“自虐傾向の強い人々”が多いのであるが、本作の作者も亦、そのお仲間でありましょうか?
 ここまで書いて来て、たった今、気が付いたのであるが、斎藤茂吉の名作「最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」に用いられている名詞「逆白波」は、作者・茂吉自身の造語だと言うことである。
 本作に用いられている品詞名不明の語「立ち居地」も亦、「逆白波」同様に、作者ご自身の造語でありましょうか?
 〔返〕  幾層も重なるバウムクーヘンの剥がれた辺りは意地でも食わぬ   鳥羽省三
      タクシーが逆さ津波にさらわれて客もろともに大海の藻屑


(峰月 京)
〇  大層な切り株ひょいと腰掛けて?綿菓子仰ぐ バームクーヘン

 あのお馴染みの「中心にドーナツ状の穴が在り、断面に樹木の年輪のような同心円状の模様が浮き出たケーキ」についてであるが、作中には「バームクーヘン」とありますが、それか「バウムクーヘン」かが問題でありましょう? 「標準的なドイツ語では[baʊm]と発音するので、『バウムクーヘン』の方が、より現地音に近い表記である」とは、私の周辺のいわゆる“ドイツ語通”の弁であるので、参考の為に記しておきましょう。
 一首全体、夜店好きでお菓子好きな大人が、お子様に「バームクーヘン」の形状の特質について説明しているような作品である。
 惚けたような軽妙な言い回しが、本作の魅力でありましょうか?
 〔返〕  切り株に小人がひょいと腰掛けて蟻番してるバウムクーヘン   鳥羽省三


(ひじり純子)
〇  我が体どこを切ったら幾層の年輪があるかバームクーヘン

 本作の作者・ひじり純子さんは、ご自身の年齢の高さをあからさまにしたいような願望に駆られているのでありましょうか?
 だとしたら、いっそのこと、日赤か済生会病院か徳洲会病院か佐久総合病院にお出掛けになられ、“CТ検査”か、もしくは“MRI検査”をご受診なさったらいかがでありましょうか?
 紹介状は、ご近所の掛かり付けの町医者で、文書料千円程度で書いて貰えますよ。
 〔返〕 屋久杉と争う如き高齢でひじり純子さん元気な婆さん   鳥羽省三


(矢島かずのり)
〇  見る影もなくなる前は層だったバームクーヘン片の一枚

 せっかくの「バームクーヘン」を生かし切れずに、お題の「層」に振り回されているような作品である。
 〔返〕  ラーメンにされる前には僧だった酒に溺れた俳人山頭火        鳥羽省三
      中華蕎麦にされないまでもなんちゃうか?「咳をしてもひとり」の放哉


(遠野アリス)
〇  層になるパイをさくりと齧るたび好きだった君を思い出してる

 本作も亦、お題の「層」を持て余しているような作品である。
 お題に振り回されて居てはいけません。
 お題を味方にして詠まなければなりません。
 〔返〕  アップルパイの層を眺める度ごとに君のオッパイ思い出してる   鳥羽省三


(青野ことり)
〇  クリームとパイが層なす(落ち着いて)初めてのときだからこそです

 「クリームとパイが層なす」とは、初体験をしようとしている彼が、彼女の秘所に触れた際に思わず漏らしてしまった呟きであり、「(落ち着いて)初めてのときだからこそです」とは、その道のベテランの彼女の彼に対するご助言の言葉でありましょうか?
 「だとしたら、あの乙女チックな“青野ことり”さんらしからぬ、大胆かつ思わせ振りな作品をお詠みになったことである」と、評者もビックリ仰天させていただきました!


(津野)
〇  甘過ぎる嘘吐く顔の昼下がりアップルパイの層は崩れる

 評価の難しい作品である。
 私見を述べさせていただきますと、本作の骨子は、「昼下がりアップルパイの層は崩れる」という“シュルレアリスム絵画”的なイメージに在り、その前の「甘過ぎる嘘吐く顔の」までは、作中の語「昼下がり」を導き出す為の“序詞”的な存在かと思われますが、作者の方の表現意図を是非ともお伺い致したく存じます。
 文法的に説明すると、「甘過ぎる嘘吐く顔の」という連文節中に用いられている格助詞の「の」について、評者は“比喩用法”の格助詞「の」である、と思っているのである。
 このような問題作を詠みっ放しにしておいてはいけません。

 〔返〕  臭過ぎる屁を簸る男の昼下がりアップルパイは食傷気味だ   鳥羽省三
 津野さんの作品とは釣り合いの取れないふざけた返歌ではありますが、ご希望次第で、御作への返歌として相応しいような真面目な作品とお取り換えが可能です。
 〔返〕  甘過ぎる顔持つ男の待つ夕べ“マダムシンコ”の開店予告   鳥羽省三
 本日・11月5日は、私の連れ合い・鳥羽翔子の65歳の誕生日なので、私は川崎市高津区溝の口の旧大山街道沿いに在る洋菓子店(岡本かの子の生家跡)にケーキを買いに出掛けます。
 高津図書館に行くふりをして、こっそりと出掛けようと思っております。


(nobu)
〇  何層にもなったパイ生地に包まれたように甘いあなたの愛

 どうぞ、ご勝手に「何層にもなったパイ生地に包まれたように甘いあなたの愛」に包まれて居て下さい。
 でも、あまりに過ぎると、甘さに噎んで窒息死してしまいますよ。
 「パイ生地」の甘さの根源は、「何層にもなった」ところに在るのではなくて、砂糖を沢山入れているところに在るのである。
 お間違えになられませんように。
 〔返〕  何層も重ねたようなパイみたく厚ぼったくて暖かい毛布   鳥羽省三


(空音)
〇  誘惑は生クリームの層にあるミルクレープにフォークひと刺し

 俗に言う「メタボへの誘惑」というヤツでありましょうか?
 〔返〕 ミルクレープを抹殺しよう!不格好なクの字の重なりフォークでひと刺し!   鳥羽省三


(新藤ゆゆ)
〇  (だいじょおぶ)新作パフェのしあわせな層のとこだけすくって食べる

 「お前、だいじょおぶか?そんなに食べてばっかいると、超メタボになっちゃうぞ!俺は知らないからな!」と彼。
 「あたし、だいじょおぶだってば!だって、新作パフェのしあわせな層のとこだけすくって食べてるんだから!」と彼女。
 かくして、愚かでメタボなご夫婦の語らいは、夜更け方まで果てし無く繰り返されるのである。
 彼の股座には乙類焼酎の一升瓶が、彼女の膝の上には「新作パフエ」が6個も入った箱が、しっかりと乗っているのである。
 彼と彼女は、子作りを忘れてしまったご夫婦でありましょうか?
 〔返〕  大丈夫、男の酒は鹿児島の薩摩白波一升瓶で   鳥羽省三

一首を切り裂く(019:層・其のⅠ・ミルフィーユもしくはミルフイユ)

2011年11月04日 | 題詠blog短歌
 私は、一升瓶を抱いて母親の胎内から出て来たという質の悪い伝説の持ち主であるうえ、ご承知の通りの怠け者の勉強嫌いなので、つい先日まで知らなかったのであるが、昨今の世の中には、甘ったれの女性どもが「ミルフィーユ」と呼んで好んで食べる、パイ生地を何枚も重ねたような気持ちの悪い物質の中にカスタードクリームやチョコレートや苺やジャムなどが包まれているフランス渡りの甘いお菓子が在るそうだ。
 冗談はさて措いて、「ミルフィーユ」の本来の名称は「mille-feuille」であり、仏語発音で「[milfœj]ミルフーイュ」、英語発音で「[milfœj] ミルフーイュ」である。
 また、その種類も、「ミルフイユ・ロン(mille-feuille rond)」、即ち<丸い形で、側面にはカスタードクリームを塗り刻んだフイユタージュをまぶして上面に粉糖をまぶしたミルフィーユ>。
 「ミルフイユ・グラッセ(mille-feuille glacé)」、即ち<フォンダンがけにしたうえ、チョコレートで矢羽模様などを描き飾りとしたミルフィーユ>。
 「ミルフイユ・ブラン(mille-feuille blanc)」、即ち<3枚のフイユタージュ生地を用いる代わりに、中央の1枚をスポンジケーキに置き換えたミルフィーユ>。
 「ミルフイユ・オー・フレーズ(mille-feuille auxfraises)」、即ち<苺のミルフイユ、ナポレオン・パイとも言われ、クリームだけでなく苺も挟み込み、冷やして供されるミルフィーユ>など、多種多様であるそうだ。
 更に申せば、「ミルフィーユに用いられるクリームとしては、カスタードクリームがよく知られているが、生クリームやバタークリームなども広く用いられ、クリーム以外にも、アプリコットジャムやリンゴのコンポートなどが使われる場合もある」ということでもある。
 上記の記事中の中身のある事柄の全ては、フリー百科辞典『ウィキペディア』から得た知識であるが、それに加えて同辞典には、<パイ菓子以外のミルフィーユ>として、「薄切りの肉・魚や野菜を何層にも重ねた料理を“ミルフィーユ”または”ミルフィーユ仕立て”と呼ぶことがある」という、グルメ通の私でさえ知らなかった事まで記載されているのである。
 不勉強な私・鳥羽省三が、居ながらにしてこのような該博な知識を得ることが出来たのは、ひとえにフリー百科辞典『ウィキペディア』のお蔭であり、この機会に、同辞典の関係者の皆様に篤く篤く御礼申し上げます。
 さて、この度、「題詠2011」のお題「層」について皆様方がお詠みになられた作品をありがたく熟読させていただきましたが、それらの作品中に、上記「ミルフィーユ」関連の作品が数多く見られましたので、先ずは、それらを鑑賞させていただきたいと思います。


(星川郁乃)
〇  ささやかな好意の層を重ねあげやがてミルフィーユができあがる

 「ミルフィーユ」の最大の特徴であり、“お題”ともなっている「層」に着目してお詠みになった、先ずは無難にして嫌味の感じられない作品である。
 「塵も積もれば山となる」という諺が在るが、「ささやかな」ものであっても、「好意」を込めて焼き上げた“パイ”の「層」を三枚も「重ねあげ」れば、「やがて」は「ミルフィーユができあがる」のでありましょう。
 〔返〕  三枚の悪意の層を積み上げたミルフィーユさえ時には甘い   鳥羽省三
 私・鳥羽省三は、いかにも鳥羽省三らしい意地の悪い作品で以って、佳人・星川郁乃さんの佳作に対する返歌とさせていただきました。


(壬生キヨム)
〇  ミルフィーユはおいしいけれど(じゃなくって)骨が埋まった地層の話

 壬生キヨムさん一流の“肩透かし”的な作品ではあるが、落とし穴に嵌ったような感覚、即ち“ブラックユーモア”として読めば、それなりに味のある作品でありましょう。
 〔返〕  「ミルフィーユ、美味しかった」と礼言わず「虫歯が増えた」と悪たれる壬生   鳥羽省三

 
(冥亭)
〇  この星の熱き息吹きは刻々と古代地層をミルフィーユせり

 「この星」、即ち、私たちにとっては掛け替えの無い“地球”の「熱き息吹き」は、数百億年前から「刻々と古代地層」を重ね上げて「ミルフィーユ」の如き、美味しく住み心地の良いものに、造物主がお造りになったのでありましょう、という意味でありましょうか?
 末尾の表現「ミルフィーユせり」の意味がやや難解ではありますが、言わんとするところは、短歌鑑賞に慣れた読者には、間違いなく理解されることでありましょう。
 〔返〕  この星の地底のマグマはミルフィーユの苺が腐敗した証しでしょうか?   鳥羽省三   


(東雲の月)
〇  何層も重なったものなんだろう僕はタマネギきみミルフィーユ

 本作の作者・東雲の月さんは、彼の恋人と、厚い毛布の重なったベッドの中で、睦言を交わすみたいな気分で、「何層も重なったものなんだろう?」と、「何層も重なったもの当てゴッコ」をしているつもりになっているのでありましょうが、肝心要の彼女は、不感症なのか、それとも、濃厚な愛撫の余韻に浸っているのか、彼の問い掛けに対して、何ら関心を示さないので、彼ご自身が、「『僕はタマネギ』『きみミルフィーユ』」と、しきりに自問自答して、彼女の関心を惹こうとご努力なさっているのでありましょう。
 〔返〕 「何層も重なったものなんだろう?」「僕のあそこと君のあそこの襞!」   鳥羽省三


(葉月きらら)
〇  好き嫌い重なりあったミルフィーユそんな感情層を突き刺す

 本作の作者・葉月きららさんは、女性としては珍しく「ミルフィーユ」嫌いなのでありましょうか?
 彼女は、今しも、パイ生地が「重なりあったミルフィーユ」を前にして、「この『ミルフィーユ』か、『好き嫌い』が幾層も『重なり』合って出来ているのであると思えば、とても耐え難いのであるが、『そんな』気持ちの悪い『感情』の『層』のような『ミルフィーユ』を、私はこの手に持っている鋭いフォークで『突き刺す』のである」と思っているのでありましょうか?
 「ミルフィーユ」という甘くて高級なお菓子を題材としながら、その「層」に「好き嫌い」の「重なり」合いを感じて、「そんな感情層を突き刺す」とまで仰る、女の情念に注目するべきでありましょう。
 〔返〕  情念の鋭きフォークで突き刺してミルフィーユ伯を闇に葬る   鳥羽省三


(はこべ)
〇  ミルフィーユ層のうつくし出来栄えにひとりほほえむ明日のパーティー

 手作りの「ミルフィーユ」でありましょうか?
 「明日のパーティー」では、何方も気持ちが悪いとか言って、食べてくれないのかも知れませんよ!
 たから、今夜のうちに、自分一人で、その「出来栄え」の「うつくし」さに見惚れて、勝手に「ほほえむ」のが宜しいかと思われます。
 〔返〕  ミルフィーユ甘さも甘し汚らし手作り品は食べる気もせず   鳥羽省三
 手作りの「ミルィーユ」の一枚一枚の層には、作った人の指の汚れや指紋などがたっぷりと滲み込んでいるのでありましょう。
 そういう訳で、私は、よそ様にお邪魔しても、手作り品は一切食べません


(嵐家 昇)
〇  食欲を興奮させる美しき見事な層よ苺ミルフィーユ

 嵐家昇さんも亦、どうぞご勝手に「興奮」なさって居て下さい。
 〔返〕  食欲を減退させるミルフィーユ作った人が美女なら未だしも   鳥羽省三


(北大路京介)
〇  チョコパイが幾層もあるミルフィーユいっしょに食べよ コーヒー煎れて

 北大路京介さんも亦、嵐家昇さんやはこべさんとご一緒に、「チョコパイが幾層もあるミルフィーユ」をお食べ下さい、「コーヒー」の「煎れて」ね。
 〔返〕  苺層が幾段もあるミルフィーユ仲間で食べよう。残しちゃ駄目よ。   鳥羽省三

  
(くろかわさらさ)
〇  白黒の写真を床でミルフイユの層をひとつひとつとはずす

 私・鳥羽省三の鑑賞能力を超えること遙かなるものが感じられる作品かと思われます。
 今どき、「白黒の写真」を持ち出すところから拝察させていただきますと、本作の作者・くろかわさらささんは、かなりの“カメラお宅”のように思われます。
 昨今の“カメラお宅”の方は、「床でミルフイユの層をひとつひとつ」と外して、「白黒の写真」に収めるのでありましょうか?
 それは、一種の前衛芸術でありましょうか?
 〔返〕  床上のミルフイユ嬢の布を剥ぎカラー写真にばっちり収める   鳥羽省三

一首を切り裂く(018:準備・其のⅤ・想定を超えた事態を想定し)

2011年11月03日 | 題詠blog短歌
(蜂田 聞)
○  想定を超えた事態を想定し準備するとう無限ループよ

 自分の能力を超えた役割りを自分に課し、果てし無き「無限ループ」に足を踏み入れてしまった者の漏らす溜息を聞いているような思いで鑑賞させていただきました。
 但し、この度の原発事故を未然に防ぎ得なかった、東電などの原子力発電の関係者などは「無限ループ」の遙か手前で足が竦くめて立ち止まってしまったような輩であり、彼らの「想定」は、あまりにも甘い「想定」と言わなければなりません。
 たまたま、今日・11月3日付けの朝日新聞・朝刊の第三面に「炉内の把握 なお困難-臨界の可能性-キセノンと断定」という見出しを付けた記事が掲載されておりましたが、詰まるところは、自民党政府や電力業界の輩の「想定」の甘さが原因で生じた「無限ループ」の罠に嵌って、私たち国民や民主党政府の面々が苦しみの声を上げている、という報道以外の何物でもありませんでした。
 〔返〕  想定の甘さが産んだ鬼っ子に子孫末代永久に苦しむ      鳥羽省三
      汚染土を除去して運び埋め立てた所も汚染土無限ループだ


(穂ノ木芽央)
○  しあはせの準備ととのへましたからあとは靴紐むすぶだけです

 そう、そうなんですよ。
 「しあはせの準備」を全て「ととのへ」てしまったら、「あとは」たかだか「靴紐」を「むすぶだけ」の仕事しか残されていないんですよ。
 でも、それも、いくら「しあはせ」の為とは言え、あまりにも空しく寂しいことではありませんか?
 そういう訳で、私見を述べさせていただきますと、私たち人間は、人間の中でも取り分け“いわゆる先進国”の人間は、あまりにも「しあはせの準備」をする事を性急に行い過ぎたと思います。
 直前の作品の作者・蜂田聞さんの言い分ではありませんが、「しあはせの準備」を整えてしまった者の前に在るのは、また果てし無い「しあはせの準備」でしかありません。
 詰まるところ、私たち“いわゆる先進国”の人間は、今や「しあはせの準備」の“無限ループ”に陥ってしまったのです。
 考え深そうな顔をして、「TAKEOKIKUCHI」ブランドの26センチの「靴」の「紐」をおもむろに結んだりしてね。
 〔返〕  靴・鞄・スーツ・ネクタイ・イタリア製 本人だけが純国産品   鳥羽省三



(伊倉ほたる)  
○  曇りのち雨の準備はできていてあたりまえには傘はいらない  
 
 「曇りのち雨の準備はできていて」とは、「ビニール製の簡易レインコートを鞄の中に忍ばせていて」とか、「会社のロッカーに予備の傘を置いていて」といった意味でありましょうか?
 だとしたら、「あたりまえには」などと前置きせずに、ただ単に「傘はいらない」と言ってしまえば済むはずであるが、それと知って居て、それをしない所に、この作品の作者特有の病根を指摘しなければならないのである。
 この広い世の中には、見栄を張って離婚するとか、見栄を張って自己破産するとか、見栄を張って駄目な男と結婚するとか、見栄を張って自殺するとか、およそ世間並みの常識では考えられないような行動に走る人間が居るのであるが、「『曇りのち雨』の場合の『準備はできていて』『傘はいらない』」と言えばいい所を、「曇りのち雨の準備はできていて」と「傘はいらない」のと間に「あたりまえには」などという、全く不要な修飾語句を置くような人間も、それらと同じような類の人間でありましょう。
 本作の四句目「あたりまえには」に、この作品の作者特有の“見栄”と“狂気”とを指摘しなければならないのである。
 〔返〕  「曇りのち雨のち時々狂気」当たり前には言えない病い   鳥羽省三


(浅草大将)
○  ひと冬を越しの白嶺の山小屋に夏待ちがほの準備中の札

 「ひと冬を越しの」とありますが、「越し」は、越中(富山)を意味すると同時に「ひと冬を越し」との掛詞のように思われます。
 それについては納得するとしても、納得し難いのは、「越しの白嶺」と、恰も「白山」或いは「白峰三山」が越中の山であるが如きの詠い方である。
 富山県を代表する民謡『越中おわら節』の文句にも、「越中で立山 加賀では白山 駿河の富士山 三国一だよ」とありますから、その点については、やや無理な表現のようにも思われますが、いかがなものでありましようか?
 〔返〕 ひと夏を越の立山籠もり居て浅草大将いつも「準備中」   


(鳥羽省三)
○  いつ来ても「準備中」との札下がり浅草大将ラーメン怠業

 直前の短歌の作者・浅草大将さんの“いなせな後ろ姿”に嫉妬心を覚えたあまり、作者名の「浅草大将」を勝手に「ラーメン店」に見立てて詠み、「いつ来ても『準備中』との札下がり浅草大将ラーメン怠業」と、作者の浅草大将さんを揶揄しただけのことに過ぎません。
 お題「準備」の作品には、投稿者の皆様もさんざんお悩みになられたことと思われ、主催者の五十嵐きよみさんの御作を含めて、いずれ劣らぬ凡作揃いでありましたが、拙作も亦、その例外ではありません。
 「準備」とまで、一単語まるごと指定されてしまうと、その内容もかなり限定されてしまうのでありましょう。
 
〔返〕  室田準 備前長船抜きざまに芸妓三人即座斬殺     鳥羽省三
     池田準 備前藩主の裔にしてお祭り寿司が大好き人間
 少しは変わり映えがするかと思って、即興で詠みましたが、作中の人物「室田準」は残忍そのものの刀狂いであり、「池田準」は所謂“鉄ちゃん”であり、“バカ殿様”でもある。
 投稿作・二百首余りの中に、たった一首だけ、お題「準備」の「準」と「備」とを切り離して詠んだ作品が在りましたが、内容的には、鑑賞意欲をそそるような作品ではありませんでした。 

一首を切り裂く(018:準備・其のⅣ・右腕をあかるいほうに這わせてねむる)

2011年11月02日 | 題詠blog短歌
(花夢)
○  生きてゆく準備のように右腕をあかるいほうに這わせてねむる

 大半の生物には、“向日性”という「あかるいほう」を好む性質がありますが、もはや熟女の段階に達した本作の作者・花夢さんが、今更「右腕をあかるいほうに這わせて」眠ったとしても、これ以上「右腕」が伸びる筈もありませんし、仮に伸びたとしても、それは「生きてゆく準備」の足しにもならないものと判断されます。
 とは言え、一種の就眠儀式のようにして、「右腕をあかるいほうに這わせてねむる」時に、当事者の花夢さんが、「私はこうして『生きてゆく準備』をしているんだな!」と思ったとしても、それには何の不思議も無く、むしろ、“心の自然的な働き”とも言えましょう。
 かかる点にご注目なさってこの一首を詠んだのであれば、本作は花夢さんの久々の傑作と申せましょう。
 〔返〕  生きて行く準備の一つであればこそアクエリアスを飲むこともある   鳥羽省三


(逢)
○  冷えているアクエリアスを飲みほして涙をつくる準備はできた

 「涙」は人間の体内から排出される排出物に過ぎませんから、「涙をつくる準備」として「冷えているアクエリアスを飲み」乾す必要は無いかと存じ上げますが、いかがでありましょうか?
 〔返〕  冷えているアクエリアスも飲み干した箱根山坂一気に駈けむ   鳥羽省三


(じゃこ)
○  人よりも準備に多少手こずっているだけやからニートて呼ぶな

 我が国は、内閣府の「青少年の就労に関する研究会」の中間報告に於いて、「若年無業者」を「学校に通学せず、独身で、収入を伴う仕事をしていない15~34歳の個人」と定義している。
 また、「ニート」とは、上記の「若年無業者」のうちの「非求職型および非希望型」、つまり「就職したいが就職活動していない」または「就職したくない」者としており、日本で「ニート」というと大抵はこの意味で用いられるのが一般的である。
 本作の作者・じゃこさんの言い分をそのまま信じるとしたら、彼は「人よりも準備に多少手こずっているだけやから」、「若年無業者」とは言えても、「ニート」とは言えないかも知れません。
 とは言え、「若年無業者」でありながら、「人よりも準備に多少手こずっているだけやからニートと呼ぶな」とは、あまりにも世間知らずで手前勝手な申し分である。
 [彼」を「ニート」と「呼ぶ」ことが出来なかったとしたならば、私たち平均的な勤労者は、誰のことを「ニート」と呼べばいいのでありましょうか?
 〔返〕  出汁じゃこはお湯に入れられ出汁採られ娑婆の役無くなれば捨てられ   鳥羽省三

一首を切り裂く(018:準備・其のⅢ・供給のインフレーション)

2011年11月02日 | 題詠blog短歌
(Yosh)
○  供給のインフレーション無駄の元支援の準備の刻を考え

 作家の池澤夏樹が朝日新聞に毎月一回『終りと始まり』という総題のエッセイを連載していて、私たち文学ファンを、それが掲載される月初めの夕刊を心待ちさせている。
 昨十一月一日の『終りと始まり』は、「<遠い人々と身近な問題>温度差を理由とせずに」と題して、先日来、世界中の人々の心配の種となっている、タイの洪水問題や南スーダンの問題について論じていて、その後半部に、それと関連して、次のような二つ段落があり、私の関心を惹いたので、それらの段落をそのまま転載させていただきたい。

 タイは遠いし、南スーダンはもっと遠い。ぼくはたまたまどちらの地も知っていたから関心がつながった。
 先日、京都でタクシーに乗っていて、運転手氏とほとんど口論になった。いわゆるタクシー会話で景気のことを話しているうちに先方が「日本中で今いちばん元気なのは福島ですよ」と言った。「仕事はないのに金が上から降ってくる。パチンコ屋と居酒屋が満員御礼」と言うのを聞いて、むきになって反論しているうちに、なんとも大人げないことを言っている自分に気づいた。            (以上『終りと始まり』より転載)

 「運転手氏」の無謀かつ乱暴発言に対して「むきになって反論」するのも、私の大好きな紳士・池澤夏樹氏らしいところでありますが、「むきになって反論するうちに、なんとも大人げないことを言っている自分に気づいた。」と反省してしまうのも、いかにも、私の大好きな識者・池澤夏樹氏らしくて微笑ましいと思います。
 私の大好きな池澤夏樹氏とは異なり、紳士でもなく、識者でもない、本作の作者・“Yosh”さんが運転するタクシーに、池澤夏樹氏が乗車したとしたら、また、大きな口論が始まってしまうに違いありません。
 だが、数ヶ月前の朝日新聞の記事に拠ると、「被災地となった三陸のある町に於いては、見舞い品として全国各地から送られた毛布の置き場に困り果て、焼却処分にしてしまった」ということであるから、本作の作者が言わんとしている事、即ち、「地震の見舞い品は、時には『供給のインフレーション』を起こして『無駄の元』になってしまうから、『支援の準備』をしている者は『刻を考え』なければならない」という鋭いご提言は、強ち暴論として退けられなければならないような性質のもので無いことは、私が敢えて申し上げるべき事でもありません。
 〔返〕  供給のインフレーション無駄の元! 若者は我に発露を呉れろ!   鳥羽省三
 「発露」の内容については、いろいろとご想像なさって下さい。
 若者たちが持て余し、その処分に困っている「発露」は、現在の「我」が最も必要としている「発露」に違いありませんが、必ずしも“精液”ではありません。


(湯山昌樹)
○  晴れの場に防災頭巾準備して卒業式が静かに始まる

 この作品に詠まれている事柄は、今の教育現場の実態をそのまま表しているに違いありません。
 でも、いくら何でも、「卒業式」という「晴れの場」に「防災頭巾」を「準備して」入場しなければならないとしたら、それはあまりにも異常な事態かと思われます。
 〔返〕  座布団が防災頭巾に早変わり卒業式は忽ち修羅場   鳥羽省三


(五十嵐きよみ)
○  生きるとは死にゆく準備 吹く風にあらがう木々の声を聞きおり

 「生きるとは死にゆく準備」という、有り触れた趣旨の作品が十数首の多きを数えましたが、それらの代表的な存在として、本作を採り上げました。
 「吹く風にあらがう木々の声」は、「死にゆく準備」をしているのでは無く、むしろ、死にたくないとして「風」に抵抗しているのでありましょう。
 だが、生きんとして「風にあらがう木々の声」を「聞き」ながら、本作の作者・五十嵐きよみさんは、生物が生きんとして一所懸命に自然に抗ったとしても、それは所詮「死にゆく準備」でしかない、と感じているのでありましょう。
 〔返〕  吹く風に抗ふ如く木々は呼ぶ命の限り抵抗せよと   鳥羽省三


(遥遥)
○  原発が存在するのは凶器準備集合罪ではないでしょうか

 私見をのべさせていただきますと、「原発」を誘致し、その代償として得た交付金や税金で財政の一部を賄っている市町村長や県知事及び彼らを首長の椅子に座らせている住民は、「凶器準備集合罪」容疑で逮捕されるべきと思われます。
 しかしながら、「原発」の所在地の首長たちの首は、今のところ極めて安泰と見受けられ、彼らの任期が切れて首長選挙が行われたとしても、彼らや彼らの後継者が選ばれる可能性が極めて大である。
 こうした点から判断すると、本作の作者・遥遥さん及び私の考えは、極めて特殊な考えとして、我が国の選挙民から退けられるのではないでしょうか?
 〔返〕  原発の容認派知事再選し青森県民命知らずか?   鳥羽省三


(今泉洋子)
○  言葉なんてたくさん使つたものの勝ち準備するのは辞書のみである

 どんな場面を想定すれば、こうした馬鹿馬鹿しい結論が得られるのでありましょうか?
 例えば、短歌を詠む場面ならば、人によっては「準備するのは辞書のみである」ということも、稀には在り得ましょう。
 しかし、それも作品のレベルの問題であって、本作程度の作品であったならば、「辞書」は勿論の事、鉛筆だって、紙だって、論理だって要らず、ただ単に感情に任せて詠めるかも知れません。
 更に一言すれば、「言葉なんてたくさん使つたものの勝ち」とまで言うに及んでは、佐賀の狂女の狂気の沙汰でありましょう。
 〔返〕  沈黙は金なり言はぬ存ぜぬの古川知事殿みんな見習へ   鳥羽省三


(卓上驟雨)
○  ガムテープ準備しました。ゴムホース、眠剤、お酒、手紙、露草

 「ガムテープ準備しました」から始まり、「ゴムホース、眠剤、お酒、手紙」と必携道具を並べ立てた挙句の末尾の「露草」には、真に風情が感じられて素晴らしい。
 「一酸化炭素中毒で自死する者の身の回りにも、『露草』程度の供花が在って欲しい」といったところでありましょうか?
 〔返〕  卓上に遺書など置いときました。驟雨の最中あの世行きです。   鳥羽省三


(るいぼすのブログ)
○  旅までの準備期間ははやぶさの往復切符を眺めて暮らす

 「はやぶさの往復切符」に限らず、「切符」を購入してから旅立ちの日までは、「切符を眺めて暮らす」のが、平均的かつ典型的な庶民というものでありましょう。
 したがって、“るいぼすのブログ”の管理人殿は、歌の上手な平均的かつ典型的な庶民でありましょう。
 〔返〕  はやぶさの片道切符をポケットに刑事二人が東京を発つ   鳥羽省三
 本(11月2)日の午後9時から、テレビ東京系列で、松本清張3週連続スペシャルの一環として、『張込み』が放映されますから、ご期待あれ!

一首を切り裂く(018:準備・其のⅡ・できるだけ色のなまえをつくっておくね)

2011年11月01日 | 題詠blog短歌
(藤田美香)
○  春がくる準備その一できるだけ色のなまえをつくっておくね

 「できるだけ色のなまえをつくっておくね」とは仰いますが、私・鳥羽省三の知り得る範囲内でも、赤・青・緑・黄色・白といった「色のなまえ」以外に、次のような「色のなまえ」が在るんですよ!
 それ以外の「色のなまえ」を作ったとしても、肝心要の「色」そのものにも限りがありますから、貴女のなさろうとしていることは、「春がくる準備」としては、全く無用なことではありませんか?
 赤系統━━━━━鴇色、茜色、ワインレッド、カーマイン、ボルドー、マゼンタ、牡丹色、蘇芳色
 オレンジ系統━━肌色、黄丹、蜜柑色、柿色、クローム・オレンジ、キャロット、杏子色、小麦色
 黄色系統━━━━アイボリー(象牙色)、クリーム、刈安色、支子色、山吹色、カーキ、ゴールド(金色)、レモン・イエロー(檸檬色)
 茶系統━━━━━ベージュ(白茶)、栗色、鳶色、チョコレート色、団十郎色、ココア色、キャメル(駱駝色)、コーヒー、
 緑系統━━━━━萌葱色、鶯色、ビリヤード、青磁色、ターコイズ・グリーン、エメラルド・グリーン、オリーブ、モス・グリーン
 青系統━━━━━新橋色、シアン、スカイブルー、ターコイズ・ブルー、浅葱色、藍色、インディゴ、納戸色
 紫系統━━━━━ウィスタリア(藤色)、パンジー、江戸紫、京紫、モーブ、ラベンダー、ライラック、二藍
 白・灰・黒系統━スノー・ホワイト(純白)、鉛白、乳白色、シルバー・グレイ(銀鼠)、チャコール・グレイ、アイボリー・ブラック(漆黒)
 〔返〕  春が来る準備その二 出来るだけ明るい絵具を買っておいてね    鳥羽省三
      春が来る準備その三 出来るだけ大きなキャンバス張っておいてね
      春が来る準備その四 出来るだけ景色の良いとこ見つけておいてね
      春が来る準備その五 お昼にはハムかつサンドのお弁当だね


(akari)
○  桜舞う季節に向けて準備中 我がうちにある種子を育てる

 「桜」の季節には「桜」以外の花は目立ちませんから、「我がうちにある種子を育てる」のは、季節をもう少し先にずらす方が宜しいかと思います。
 〔返〕  桜舞う季節に向けて確保中 ブルーシート及び酒好きな人   鳥羽省三
 

(髭彦)
○  万端の準備整へ臨むこと乏しかりけむ吾が人生に

 「吾」は「吾が人生に」於いて「万端の準備整へ臨むこと乏しかりけむ」と悔恨の情に浸るのは、髭彦さんならずとも、何方でも同じようなことかと思われますし、かく申す私などは、この頃、日夜、この思いに囚われて、体重が一ヶ月で四キログラムも落ちてしまいました。
 これも亦、終活の一環でありましょうか?
 〔返〕  日の暮れて道なほ遠し帰らむと思へど帰るべき故地も無し   鳥羽省三


(ほたる)
○  わたくしが壊れてしまわないように別れる準備しているなんて

 一首の意は、「『わたくしが壊れてしまわないように別れる準備しているなんて』、私はちっとも思わなかったわ?それにしても、なんて優しい主人なんでしょう!」というところでありましょうか?
 それとも、「『わたくしが壊れてしまわないように別れる準備しているなんて』、私は少しも気付かなかったわ?それにしても、なんて優しい上司なんでしょう!」というところでありましょうか?
 そのいずれの場合にしても、遊び慣れた中年男が相手の女性に引導を渡す時の、あまりに常套的な手管であるに過ぎません。
 それなのに、愚かな女性は、感激の涙を流して慰謝料も碌々取らずに身を退いてしまうのである。
 作品の出来栄えとしては、まだまだのレベルにありましょう。
 いっその事、「ほたるんのこと壊してしまわないように別れ支度をしているなんて」と、もう少し塩らしく、可愛らしくお詠みになったらいかがでありましょうか?
  〔返〕  私はちっとやそっとで壊れません準備万端お誘い歓迎   鳥羽省三


(音波)
○  ヤクルトを5本パックで買いこんだ明日も生きる準備だこれは

 「ヤクルトを5本パックで買いこんだ」にしろ、配達付きでたかだか五百円程度のことでありましょう。
 それなのに、「明日も生きる準備だこれは」とは、身振りがあまりにも大袈裟過ぎましょう。
 本作の作者・音波さんは、目下失職中でありましょうか?
 〔返〕  ヤクルトは買った日に呑む飲料で買い溜めしてはいけませんこと   鳥羽省三


(砂乃)
○  珈琲と煙草の香りの準備室体育教師の怒声の響く

 体育科教師以外の教師は、「体育科準備室」のことを密かに“蛸部屋”と呼んでいるとの事である。
 「怒声が響く」とか「珈琲と煙草の香り」が満ちている程度だったら救いがありますが、ある県のある高校に於いては、女子の教育実習生に対するセクハラ行為が行われたり、マリファナの香りが立ち込めていた、という噂もありました。
 〔返〕  十人に一人の教師が馬鹿者で他の九人大迷惑だ   鳥羽省三


(稲生あきら)
○  いつ何時閻魔に会ってもいいようにきちんと二枚準備しておく

 「二枚舌」を「きちんと準備しておく」と仰るのでありましょうが、「閻魔」様が、貴方の為に「準備しておく」“舌切除システム”は、最新式の改良型ですから、「二枚」でも「三枚」でも、まるごと抜かれてしまいますよ。
 〔返〕  いつ何時「いざ、鎌倉!」か分りません新しいパンツを穿いときなさい   鳥羽省三


(酒井景二朗)
○  青春は準備不足のままに來て何も殘さず過ぎ去りにけり

 本作の作者の仰る「青春」とは、主として“年齢”としての「青春」であり、「青春」特有の実質を伴ったものではありません。
 “遅れ花”という言葉も在りますから、酒井景二朗さんにとっての真実の「青春」はこれからなのかも知れません。
 いつ何時「青春」が襲来しても、決して立ち遅れることが無いように準備をお忘れ無く。
 〔返〕  明日にでも「いざ、鎌倉!」が襲来す! 愛馬を肥やせ! 刃を研け!   鳥羽省三


(たろ)
○  からからと 食餌の準備聞き付けて 我は我はと群がる毛玉

 「食餌の準備」をしているのを「からからと」「聞き付けて」、「我は我はと群がる」とは、何と言う“食い意地”の張った「毛玉」でありましょうか?
 その「毛玉」とは、比叡山の悪法師たちの陰毛を集めて作った「毛玉」に違いありません。
 だとしたら、お腹を満たした後で何をするか判りませんから、業火で焼いてしまいましょう。
 〔返〕  たろたろと地獄の業火が燃え盛る毛玉悪玉みんな焼いちゃえ   鳥羽省三