臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅠ)

2014年02月26日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]

(三鷹市・坂本永吉)
〇  掻掘の井の頭池の底泥に自転車二百まみれてゐたり


(松坂市・こやまはつみ)
〇  スニーカーごしの畦道きのうより柔らかくなり梅も咲き初む


(名古屋市・山田静)
〇  アンティーク・ドールのような小保方さんSTAP細胞の作製ひろうす


(川崎市・赤松郁夫)
〇  ぬるま湯で切干し大根戻すごと真冬のプールをゆったり泳ぐ


(イギリス・ボイド知子)
〇  ここに我ありと木星が枯れ枝の毛細血管の中にて光る


(島田市・水辺あお)
〇  靖国を詣でてどこが悪いかと詰め寄る君は孫祀るのか


(名古屋市・福田万里子)
〇  スケジュール通りにクラス回ってく鬼に扮した教頭先生


(行方市・鈴木節子)
〇  湯タンポの位置つま先で上下させ早き目覚めに母を想へり


(ホームレス・宇堂健吉)
〇  途方もなく空広かりきリュック背負ひホームレスの道踏み出ししとき


(ホームレス・坪内政夫)
〇  集め来し新聞で読む強過ぎてマゲを結えない遠藤のこと

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅡ)

2014年02月26日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]

(鎌倉市・千島麻美)
〇  科学者に「女子」の冠つけないで讃えるようになれよこの国


(大阪市・蒼井杏)
〇  如月のシーラカンスのような朝がベランダよぎる尾びれゆらして


(国東市・水無瀬ゆう)
〇  春からは遠距離恋愛はじめます君を心で全部満たして


(岡山市・酒井那菜)
〇  ふきだしを毎日君と積み上げてそろそろ月に手が届くころ


(町田市・冨山俊朗)
〇  声優を八十二にて逝かしめて波平ずっと五十四のまま


(大館市・小林鐐悦)
〇  薄日差す市の路上に寒鮒は笊に盛られてあぎといており


(宇都宮市・鈴木孝男)
〇  誰よりも一緒に生きた妻だから俺が一番悲しんでいい


(国分寺市・森田小夜子)
〇  来ぬバスをひとつかた向き待つ群れは海の果て見る鷗のごとし


(横浜市・芝弥生)
〇  正社員逮捕と多分言はぬだらう契約社員逮捕と言ひて


(西条市・亀井克礼)
〇  野の川の岸かた寄りに淀む水  川藻が青くゆらぎ春立つ 

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅢ)

2014年02月26日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]

(富山市・松田梨子)
〇  人間は迷って悩んでしぼむけどときめいてまた少しふくらむ


(ホームレス・宇堂健吉)
〇  途方もなく空広かりきリュック背負ひホームレスの道踏み出ししとき


(和泉市・長尾幹也)
〇  自らを殺し勤むと決めにしを休みたし遊びたし生身のわれは


(名古屋市・中村桃子)
〇  こっそりとひとりで何度も封筒を開けてはながめる合格通知


(防府市・渡辺文子)
〇  反対のうねり収まる時怖し秘密保護法のゆくえ見つむる


(広島市・熊谷純)
〇  真夜中のコンビニエンスストアにてレジを打ちつつ明日を想ふ


(舞鶴市・吉富憲治)
〇  土竜らが掘りし盛り土あまた見ゆ春は河原にまず来るらしも


(町田市・石井澪子)
〇  多く聞き少なく語れと説く尊者傾ぎて御座す五百羅漢寺


(埼玉県・酒井忠正)
〇  寒休み下駄のスケートみな履いて鬼ごつこせしたんぼのリンク


(新座市・末広俊子)
〇  立春の雨戸をくれば節分の豆をはみいし雀いとしき

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅣ)

2014年02月26日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]

(ホームレス・宇堂健吉)
〇  途方もなく空広かりきリュック背負ひホームレスの道踏み出ししとき


(静岡市・安藤勝志)
〇  加害者もまた弱者なる記事読みぬ格差社会の底果てしなく


(高知市・佐野暎子)
〇  玄関の前に落ちてる顔はだれマスクだらうと夫が答へる


(坂戸市・山崎波浪)
〇  もしかして誰もいないのではないか静まり返る真昼の団地


(千曲市・松林のり子)
〇  ダウラギリ背にせる峡の村落の棚田は蕎麦の刈り入れさなか


(奈良市・阪上元)
〇  大寒の凍てつく朝を地に降りてかそけき声に鵙地鳴きする


(千葉市・愛川弘文)
〇  縹から茜に変わる海越しの富士を収める教室の窓


(豊川市・山本洋子)
〇  うららかにチリンチリンとねこ通るアネモネスミレ起こして通る


(富山市・成瀬堅)
〇  白銀の立山連峰眠りをり淡く色付き芽吹く里山


(福岡市・松本千恵乃)
〇  こんこんと湧く水のごといつまでも磯野波平の声わすれません

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅣ)

2014年02月26日 | 今週の朝日俳壇から
[長谷川櫂選]

(山形市・松浦敬次郎)
〇  最上川姿かくしてふぶきけり


(熊本県菊陽町・井芹眞一郎)
〇  地に触るるばかりに春を待つ柳


(横浜市・細井華人)
〇  生きてあり春宵なれば寝ずあり


(大阪市・坂梨開)
〇  起き抜けのコップの水よ春が来た


(大阪市・奥野義治)
〇  煮凝や木乃伊の如く包まれて


(さいたま市・柳ケ瀬正昭)
〇  この国のかたち暗澹菜の花忌


(津市・中山いつき)
〇  寒鰤かつぎ女のもとに走りけり


(神戸市・平松洋南)
〇  傍らの石を力に下萌ゆる


(松江市・三方元)
〇  嬉しさや俳書に在の赤蕪


(前橋市・池畠敏子)
〇  鬼やらひ鬼を労ふ升の酒

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅢ)

2014年02月26日 | 今週の朝日俳壇から
[金子兜太選]

(東京都・井原三郎)
〇  吾を打つ用捨なき豆たれが撒く


(ドイツ・ハルイォーク洋子)
〇  日矢縫ひつ大陸列車ゆくや冬


(静岡市・松村史基)
〇  鬼帰宅して節分の始まりぬ  


(藤岡市・飯塚柚花)
〇  土を見るやうに見られてゐる落葉


(うきは市・江藤哲男)
〇  山眠る鳥獣戯画を懐に


(高槻市・都築憲)
〇  ユトリロの白のいざない寒さかな


(福山市・黒部良三)
〇  耳鳴りを包め春眠ありがたし


(福島市・引地こうじ)
〇  除染中地蔵に着せる雪合羽


(堺市・成山きよし)
〇  三月や尿瓶の口がこちら向く


(前橋市・荻原大空)
〇  蒼天や職退き役退きおらが春

今週の朝日歌壇から(2月24日掲載・其のⅡ)

2014年02月26日 | 今週の朝日俳壇から
[稲畑汀子選]

(秋田市・五十嵐修)
〇  この雪のありてこんなに子等遊ぶ


(香川県琴平町・三宅久美子)
〇  しばらくは雪積む様を見てゐたく


(熊本市・西美愛子)
〇  目の焦げて目刺しの目刺しらしくなる


(豊中市・堀江信彦)
〇  逸る気を押しとどめたる余寒かな


(彦根市・阿知波裕子)
〇  風に乗り風を描きぬ春の雪


(福山市・広川良子)
〇  行先を叱つて叩く芝火かな


(札幌市・岩元京子)
〇  雪靴でさへも転倒してしまふ


(八代市・山下しげ人)
〇  一斉に青空に向く冬芽かな


(熊本県菊陽町・井芹眞一郎)
〇  日と話し風と話して黄水仙


(神戸市・池田雅一)
〇  ひゆるひゆると風の鳴る夜のおでんかな

今週の朝日俳壇から(2月24日掲載・其のⅠ)

2014年02月26日 | 今週の朝日俳壇から
[大串章選]

(米子市・中村襄介)
〇  立春のこの荒れやうも故郷なる


(長野市・縣展子)
〇  春立ちてより七曜のはづみけり


(青梅市・青柳富也)
〇  立春大吉人の意見も聞いてみる


(野田市・松本祐一)
〇  それからの夜の華やぎ春の雪


(今治市・横田青天子)
〇  恋の猫極楽橋を渡りけり


(西海市・前田一草)
〇  白鳥の仕草見返り美人めく


(東京都・おがわまなぶ)
〇  白梅の心の襞にそつて落つ


(香川県琴平町・三宅久美子)
〇  東京の夢あきらめて麦を踏む


(熊本市・寺崎久美子)
〇  対岸の人と歩くや鳥雲に


(福津市・下村靖彦)
〇  独楽で負け面子で勝ちて別れけり

今週の朝日歌壇から(2月17日掲載・其のⅣ)

2014年02月19日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]

(福島市・美原凍子)
〇  鮮やかな緑色なす封筒で内部被爆検査通知来ぬ

(福島市・澤正宏)
〇  春空に津波てんでこ知りながら救助で吞まれた人の碑が光る

(垂水市・岩元秀人)
〇  半農の漁師ら白き豆畑に海の歌など口ずさみおり

(船橋市・酒井知衣)
〇  またひとつ増えるあだ名が嬉しくてこっそりノートに書きとめておく

(富山市・松田わこ)
〇  新しいセーラー服を着た私家中の鏡に見せに行く

(三原市・岡田独甫)
〇  コンビニで節分の豆買いて食う我が心中の鬼払わんと

(前橋市・兵頭宇亮)
〇  売る牛の吐く白息を浴びながら牛飼達の値踏み始まる

(東京都・上田国博)
〇  ベランダの餌に来る鳥に序列ありおのが大きさ知りゐる不思議

(茨木市・瀬川幸子)
〇  スポーツカーのやうに来たりて潜りたりカワウは黒き体光らせて

(イギリス・ボイド知子)
〇  ふたご座に抱かれ木星がまばたきもせず見つめる地球の孤独

今週の朝日歌壇から(2月17日掲載・其のⅢ)

2014年02月19日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]

(西海市・前田一揆)
〇  「決められる政治」が決めた秘密保護、辺野古埋め立て、靖国参拝

(前橋市・和田明)
〇  「遠き過去」が「近き未来」になりそうな素朴な怖れ秘密保護法

(山形市・黒沼智)
〇  分断と孤立の島に沖縄を追ひ込んでゆく日本の政治

(横浜市・杉本恭子)
〇  五百億くれるといわれ目をつぶる民と思うかため息深し

(瀬戸内市・安良田梨湖)
〇  カーテンをやさしく縛り思いだすあなたを好きになった日の風

(富山市・松田梨子)
〇  友達が優しくあきれてこう言った「リコちゃんここは泣くところでしょ」

(広島市・大堂洋子)
〇  反抗期終わるのかって思ってたけど終わるんだ子の「ありがとう」

(広島県府中市・内海恒子)
〇  心配をさせたくないから話さない君の優しさ時にはさびしい

(三郷市・木村義煕)
〇  死んだあと本当の吾と語り合いこの世のことは詫びねばならぬ

(行橋市・木村葉子)
〇  ウルトラマンタロウ歌って駈けまわる甥眺めつつ待つ火葬場で



今週の朝日歌壇から(2月17日掲載・其のⅡ)

2014年02月19日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]

(福島市・美原凍子)
〇  かなしみは動かずしあわせは揺らぐ降りては消ゆる淡き雪ひら

(宇都宮市・鈴木孝男)
〇  比島より父は遺骨で帰りしか千鳥を拝す靖国を背に

(中津市・久恒啓子)
〇  人麻呂の歌碑訪ひ来たる奈多の海ゆ伊方原発遠く光る見ゆ

(高松市・桑内繭)
〇  「きな臭い匂いがする」と楽天家の夫が呟く秘密保護法

(アメリカ・郷隼人)
〇  獄窓に春の七草摘みおれば「雑草喰うのか?」と人の問いたり

(瀬戸内市・安良田梨湖)
〇  カーテンをやさしく縛り思いだすあなたを好きになった日の風

(ふじみ野市・高橋正幸)
〇  もう一度登る夢あり赤岳の写真の前でいまはリハビリ

(東かがわ市・河野久之)
〇  孤独死なき介護施設を見舞えれば姉の淋しき瞳に出合う

(広島市・大堂洋子)
〇  反抗期終わるのかって思ってたけど終わるんだ子の「ありがとう」

(富山市・松田わこ)
〇  新しいセーラー服を着た私家中の鏡に見せに行く



今週の朝日歌壇から(2月17日掲載・其のⅠ)

2014年02月19日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]

(笠間市・北沢錨)
〇  庭に来る小鳥を描くたのしみのきのふは鶫けふは尉鶲

(北九州市・綿谷はな)
〇  新参は食べて遊んで寝て食べて先住猫は今日も不機嫌

(東京都・山木海絵子)
〇  ジャンプして行って戻ってそれっきり雪の野原のヒメネズミの跡

(三次市・佐藤昌樹)
〇  野兎の毛の色白く変わりしや雪の野原に熊鷹の飛ぶ

(福島市・美原凍子)
〇  鮮やかな緑色なす封筒で内部被爆検査通知来ぬ

(富山市・松田わこ)
〇  新しいセーラー服を着た私家中の鏡に見せに行く

(千曲市・松林のり子)
〇  石畳ゆきたるままの人多しマルファの村のダウラギリへの道を

(吹田市・船越一英)
〇  朝日射し田の霜柱ゆるみてか稲の株より湯気が立ちおり

(神奈川県・九螺ささら)
〇  揺れてゐて菜の花のにほひただよつて頭の中が黄色くぬるい

(安中市・入沢正夫)
〇  うねってる浅間颪の黒雲の流れる先に赤城颪雲



今週の朝日俳壇から(2月17日掲載・其のⅣ)

2014年02月18日 | 今週の朝日俳壇から
[金子兜太選]

(鈴鹿市・東口正男)
〇  獅子舞に頭食はす文化かな

(八王子市・額田浩文)
〇  狼を滅ぼし神にせしは人

(いわき市・星野みつ子)
〇  流氷や言葉衰へ痩せゆけり

(群馬県東吾妻町・酒井せつ子)
〇  猫好きと知って熱燗重ねをり

(洲本市・高田菲路)
〇  雪をんな無人の筈の給油所に

(船橋市・斉木直哉)
〇  夜の爪の光虚しき二月かな

(鴻巣市・佐久間正城)
〇  福島に戻れぬ日々や鬼遣らひ

(神戸市・森木道典)
〇  骨太になりたしと言ふ雪達磨

(岸和田市・大内純子)
〇  悴むや赤子まるまる赤くなり

(東京都・青柳森)
〇  時計めがね春に浮かれて隠れん坊

今週の朝日俳壇から(2月17日掲載・其のⅢ)

2014年02月18日 | 今週の朝日俳壇から
[稲畑汀子選]

(伊万里市・田中南嶽)
〇  風花の地を這ふ力残りけり

(熊本市・山澄陽子)
〇  葱刻み可もなく不可もなき暮し

(神戸市・岸田健)
〇  寝たきりも返上近し春隣

(堺市・奥村英忠)
〇  まへがきのやうに笹鳴聞いてをり

(静岡市・松村史基)
〇  マフラーの中より女現るる

(八代市・山下接穂)
〇  ことの外手足ほそりて春を待つ

(長崎市・徳永桂子)
〇  耐へるてふことの気品や寒牡丹

(藤沢市・小田島美紀子)
〇  句に溺れ句に救はるる老の春

(東京都・丹羽ひろ子)
〇  万両の一粒づつのたしかさよ

(高松市・白根純子)
〇  寒紅を引きて弱音を吐かざりし



今週の朝日俳壇から(2月17日掲載・其のⅡ)

2014年02月18日 | 今週の朝日俳壇から
[大串章選]

(茨城県阿見町・鬼形のふゆき)
〇  千年の石棺に咳ひびきけり

(桶川市・小林茂之)
〇  恋猫やシェークスピアの村芝居

(福山市・廣本貢一)
〇  風花や小さきピエロの舞ふごとく

(洲本市・高田菲路)
〇  雪だるま黒き涙を流しをり

(東京都・望月清彦)
〇  鶴よばふ天に応のあるごとく

(市川市・吉住威典)
〇  公魚の朝日にふれて凍りけり

(金沢市・今村征一)
〇  二三日海鼠のやうに眠りたし

(東京都・小出功)
〇  ペンギンはいつも正装風光る

(由布市・立川さよ子)
〇  煮凝が昨日の皿に乗ってをり

(川越市・大野宥之介)
〇  氷柱折る若き日辿りながら折る