臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

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020:劇(鳥羽省三)

2012年08月31日 | 題詠blog短歌
日劇の幕間で算盤弾いてゐたメガネ男はトニー谷だぞ
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019:そっくり(鳥羽省三)

2012年08月31日 | 題詠blog短歌
木久扇のそっくりさんになれるなら木久蔵ラーメン主食にもせむ
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018:希(鳥羽省三)

2012年08月31日 | 題詠blog短歌
希土類の某国依存体質は克服すべき重大事なり
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017:従(鳥羽省三)

2012年08月31日 | 題詠blog短歌
あらたしき因幡の守は従五位上大伴家持いやしけ吉事
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016:力(鳥羽省三)

2012年08月31日 | 題詠blog短歌
はらからは年齢順にあの世行き「次はわたし!」と姉は力みぬ
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015:図書(鳥羽省三)

2012年08月31日 | 題詠blog短歌
萬巻の図書を収むる蔵に居て糊食む紙魚の幽き生よ
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一首を切り裂く(014:偉・其のⅠ・政界のラスプーチンとしての名を)

2012年08月30日 | 題詠blog短歌
(紫苑がさね)
○  偉丈夫を恋ひし驕りの日の過ぎて痛みを分かつ掌を知る

 一般的なこととして言えば、ある女性が「偉丈夫」と言えるような男性に恋をしていた日があったとしても、それらの日々を、必ずしも「奢りの日」と言わなければならないわけでは無い。
 それなのにも関わらず、本作の作者が、過去の「偉丈夫を恋ひし」日のことを「驕りの日」としているにのは、作者ご自身の質素で内省的なご性格の故でありましょうか?
 本作の意は、「そうした『驕りの日』が『過ぎて』から、作者ご自身が、ご自身と『痛みを分かつ掌』の存在をあらためて知った」ということである。
 と、ここまで解釈してはみたが、本当のところは本作の文意の詳細は私には解りません。
 作者のかつての恋人は「偉丈夫」と言われている男性であった。
 世間の人々から「偉丈夫」と言われるからには、その男性は、ヘラクレスか大関・把瑠都のような男性であったに違いない。
 そのヘラクレスか把瑠都関のような「偉丈夫」は、女性と握手することを趣味としていて、本作の作者も亦、彼に会うたびに「掌」を握られ、「掌」と彼女とは「痛みを分かつ」ともがらとなっていたのでありましょうか?
 〔返〕  女丈夫と言われる女を妻に持ち尻に敷かれて煎餅になる   鳥羽省三

 
(西中眞二郎)
○  あんまり偉くならなかったなと我がことを友ら言いおらむと帰路に思えり

 本作の作者の西中眞二郎さんは、都内のホテルで行われた同窓会などの後、未だホテルに居残っていたり、二次会で銀座に出掛けたりしている同窓生たちが、「あいつ(西中眞二郎さん)は、小学生時代から秀才の誉れ高く、このままで行ったらどんなに『偉い』人間になるか知れない!彼の将来に待っているものは、総理大臣の椅子であり、ノーベル賞受賞者としての栄誉であろう!と思っていたが、そうした僕らの予想と期待に反して、あいつも『あんまり偉くならなかったな』」と、「我がことを」噂しているだろう、と思いながら奥様の待っている家路へと急いでいるのでありましょう。
 こんなことを言っては、西中眞次郎さんに失礼かも知れませんが、客観的に見ると、西中眞二郎さんは、「位人臣を極めた」とまでは言わないが、国家公務員としては充分に「偉く」なったのである。
 キャリア官僚としてのご自身の役割と責任を十二分に果たし、世間的な見方をすれば「功成り名を成し遂げた」存在なのでありましよう。
 それにも関わらず、上掲の歌に示されたような心境になるからには、西中眞二郎さんには、彼なりの「不完全燃焼の思い」があるのでありましょう。
 人間誰しも、時折り「不完全燃焼の思い」を抱くものであるが、一般的、世間的な立場に立って言えば「功成り名を成し遂げた」キャリア官僚の胸に去来する「不完全燃焼の思い」には、また格別なものがありましょう。
 〔返〕  「あの馬鹿が銀座の酒も飲まないで古女房を………」と噂している   鳥羽省三


(流川透明)
○  偉そうにショートケーキを頬張ってキェルケゴールの話などする

 本作の作者・流川透明さんは、何某氏の「ショートケーキを頬張って」いる様を見て、「偉そうに」と評しているのでは無く、「ショートケーキを頬張ってキェルケゴールの話などする」から、「偉そうに」と評しているのである。
 流川透明さんによると、「ショートケーキを頬張ってキェルケゴールの話などする」のは、〈禁忌〉なのである。
 それでは、「ショートケーキを頬張って」いる時に話題にするに相応しい事柄とはどんな事柄でありましょうか?
 〔返〕  苦そうにチーズケーキを頬張って尖閣島の話などする   鳥羽省三
 
 
(宇津つよし)
○  大勢の人の前でも暴れずに よく我慢した偉いぞちんちん

 作中の「ちんちん」はまさしく「偉い」。
 通常、大勢の人が居れば、その中には「ちんちん」が「暴れ」出す程の美人の一人や二人は必ず居るものである
 それにも関わらず、「暴れずに」居たから、作者の宇津つよしさんは、自らの「ちんちん」の我慢強さを褒めたのでありましょう。
 〔返〕  大勢の美人の前で悄気ていた どうしたちんちん美人嫌いか?   鳥羽省三


(鳥羽省三)
○  政界のラスプーチンとしての名を益々上げよおらが義偉

 衆議院・神奈川二区選出の菅義偉議員の出身地は、秋田県湯沢市であり、私・鳥羽省三とは同郷である。 
 と言っても、彼の出身地を詳細に言えば、秋田県湯沢市の郡部、即ち湯沢市雄勝町秋の宮地区の湯ノ岱であり、峠を一つ越えれば宮城県の名湯・鬼首温泉という辺地であり、私のそれは、湯沢市の中心地区である。
 したがって、少し感情的に言えば、彼・菅義偉氏をして「おらが義偉」と言うことには、若干ならざる抵抗を感じざるを得ないのであるが、そこのところは我慢して「おらが義偉」とさせていただいたのである。
 ところで、彼・菅義偉氏は、地元の高校を卒業した後、集団就職した東京のダンボール工場で働く傍ら、法政大学で学業を修め、神奈川二区選出の有力衆議院議員・小此木彦三郎氏の秘書となって政界の裏表を知り、今日の地位を得たのである。
 彼の寝業師としての力量は、人も知るところであり、人呼んで「我が国・政界のラスプーチン」とは、彼にとっては決して恥じるべきニックネームではありません。
 〔返〕  この秋は関ヶ原だぞラスプーチン菅義偉よ吼えろよ吠えろ   鳥羽省三    
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一首を切り裂く(013:逆・其のⅠ・真逆という言葉づかいも真っ当なるか)

2012年08月30日 | 題詠blog短歌
(原田 町)
○  真後ろや真横のあれば真逆という言葉づかいも真っ当なるか

 誰が言い始め、誰が流行らせたのかは存じ上げませんが、マスコミや若いタレント、更にはそれの取り巻きなどの馬鹿者の間で、「真逆」なる言葉が大流行りであり、票目当ての若い政治家なども、「正反対」と言うべき場面で「真逆」と言って、訳知り顔にしている。
 そうした昨今の現状を踏まえての作品ではあるが、作者の原田町さんとしては「正反対」と言うべきところを「真逆」という世情を肯定しているのではなかろう。
 〔返〕  股引や猿股穿けばひかないがショーツ一枚では風邪引くぞ   鳥羽省三


(磯野カヅオ)
○  春めける毛足の長き絨毯を逆立てながら吉報を待つ

 「春めける毛足の長き絨毯を逆立て」る事と「吉報を待つ」事との間には、格別な因果関係は無い。
 冬は暖かくて重宝した「毛足の長き絨毯」も、「春めける」頃ともなれば、その汚れが目立ち、洗ったり埃を払いたくなるものである。
 本作に於いては、そうした季節感を伴った作業をする場面が、たまたま、息子さんか何方かの入学試験などの「吉報を待つ」場面と重なったのでありましょうか?
 〔返〕  啓蟄に毛脛を剃ればぞろぞろと穴の底から毛蟹が出て来る   鳥羽省三


(佐藤紀子)
○  長靴の左右を逆に履きゐし児 父親となり娘を叱る

 「長靴の左右を逆」に履いていて、窮屈だとも感じないのか、平然としていた「児」が小学時代の私の周辺にも居たものである。
 本作の意は、歳月の流れに伴って、そうした「児」が大人になって、結婚をして、「娘」の「父親」となり、少年時代の自分と同じような〈バカ〉をやらかしている「娘を叱る」という訳である。
 この場合で大切なことは、「父親」に叱られている「娘」のやらかした〈バカ〉が、必ずしも少年時代の「父親」と同じ、「長靴の左右を逆」に履くこととは限らないことである。
 高校生であるのにも関わらず一人前に彼氏が出来て子を孕んだのかも知れないし、駅前の本屋で漫画『こち亀』を万引きしたのかも知れないし、ただ単に「父親」の叱咤激励趣味の犠牲となっているのかも知れないのであり、其処の辺りを、あれこれと考えるのが本作の鑑賞ということでもある。
 〔返〕  長靴を真逆に履いた猫が居て子鼠たちが大喜びした   鳥羽省三


(なまにく)
○  出席番号の逆から当てられて渡辺が超戸惑っている

 教師を職業としていた自分が言うのも何であるが、教師という単純頭の人間どもは、自分が職業の一環としてやらかしている行為の意味するところに心が回らないものである。
 例えば、私の大学時代の旧友の鰐淵君は、「英語Ⅰ」の出席番号が最後であった為に、その履修期間の一年間を通じて、ただの一回もテキストの英訳を「当てられ」たことがないことを自慢にしていた。
 彼は遊び好き、勉強嫌いのなまくら男で、特に英語が大の苦手であった為に、「自分に何時、英訳の順番が回って来るのか?」と戦々恐々たる気持ちで居たのだ、と言う。
 大学か高校かは判然としないが、本作に登場する教師は、私や鰐淵君の「英語Ⅰ」の担当教官・郡山助教授とは異なって、少しは頭がいいというか、悪戯好きというか、この場面に於いては、「出席番号」の最後から当てたので、当てられることを予測していなかったのに「当てられ」た「渡辺が超戸惑っている」というのである。
 「超うまい」とか「超かわいい」とか「超バカ」とか「超天才」とか、何事に於いても単語の頭に「超」を付けなけれは済まない馬鹿者どもが横行している昨今ではあるが、本作での「超」は、世のそうした風潮をも風刺していて、真に効果的な表現である。
 〔返〕  馬鹿者の「超」と「ハサミ」は使いよう切れない頭もたまには利れる   鳥羽省三


(鳥羽省三)
○  いにしへの逆さクラゲを今風に言へばラブホと言ふのでせうか?

 「逆さクラゲ」の常連であったことを今更誇りにする訳ではありませんが、あの頃のことが急に懐かしくなり、「逆さクラゲ」なる淫靡さを伴った隠語を口にしてみたくなったのである。
 〔返〕  地図帳で温泉マークを見るたびに棄てた女の顔思い出す   鳥羽省三   
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一首を切り裂く(012:眉・其のⅡ・美しい名を持つ山の筆頭に)

2012年08月29日 | 題詠blog短歌
(庭鳥)
○  美しい名を持つ山の筆頭に眉山あげたし姿もうまし

 作中の「眉山」とは、中国の名称として知られる「眉山」でありましょうか?
 それとも日本各地に点在する「眉山」でありましょうか?
 仮に前者であるとしたら、彼の国が暴虐的な体質を剥き出しにしている現在、この作品を高く評価することは出来ません。
 手元の古語辞典(全訳古語辞典・旺文社刊)に拠ると、作中の末尾の形容詞「うまし」とは、「①りっぱだ。素晴らしい。②満ち足りて快い。楽しい。」の意である。
 その「①」の場合でも「②」の場合でも、話し手が何かについて「うまし」という肯定的な判断を下す時は、多分に話し手自身の感情を込めて、「りっぱだ・素晴らしい・満ち足りて快い・楽しい」と言うのでありましよう。
 短歌の鑑賞に国家間のいざこざを持ち出すのは、いささか問題がありますが、島国根性に毒された日本国民の一人としての今の私には、お隣の経済大国の「眉山」を「美しい名を持つ山の筆頭に」上げたり、「うまし」としてホールドアップする気にはなりません。
 〔返〕  このところ評者はいささか狂気にて理性的判断を忘れてしまう   鳥羽省三


(アンタレス)
○  感情の薄れゆかむを惜しまねば詞心も失せし眉間の皺も

 「眉間の皺」はともかくとして、本作の作者のアンタレスさんの「詞心」が「失せ」たのは、ご自身の資質や精進の不足が原因であり、「感情の薄れゆかむを惜しまねば」ということと関係がありません。
 つまり、作者のアンタレスさんは、この場面に於いても、我田引水的な負け惜しみを言っているのである。
 で、この際注意しておきますが、作中の「詞心」は「詩心」とするべきであり、末尾の「眉間の皺」は減ったのでありましょうか?増えたのでありましょうか?
 物理的には年齢と共に増えるのが自然ですが?
 〔返〕  詩心(しごころ)の薄れ行くのを惜しむから皺も寄せるし歌も詠むのだ   鳥羽省三


(もふ)
○  麻雀に国士無双があるのならあって当然眉目秀麗

 作中の「眉目秀麗」とは、「容貌が優れて美しく端整なこと」を表す四字熟語であり、「主に容貌の整った若い男性に用いる語」である。
 作者の意図とすれば、「麻雀」の役満に男性の強さを褒める「国士無双があるのなら」、女性の美しさを褒める「眉目秀麗」が「あって当然」という意味を込めた一首かと思われる。
 だとしたら、この場合の「眉目秀麗」は、作者ご自身の意図に添わない四字熟語ではありませんか?
 ところで、美しい女性の形容語としての四字熟語として、私の調べた限りに於いて、次のような語が挙げられるが、これらの中で「国士無双」に対抗出来るようなものは、何れでありましょうか?

 ☆ 一顧傾城(いっこけいせい)城主が一目惚れして、城が傾くほどの絶世の美女。 
 ☆ 一笑千金(いっしょうせんきん)笑顔が千金に値するという美女。 
 ☆ 雲中白鶴(うんちゅうはっかく)白鶴が雲間を優美な姿で飛翔することから、品性の優れた高尚な婦人を指す。 
 ☆ 紅口白牙(こうこうはくが)赤い唇と白い歯の意から美女を形容して言う。 
 ☆ 紅粉青蛾(こうふんせいが)紅と白粉と青く引いた眉の意から、美人の上手な化粧を指す。 
 ☆ 羞月閉花(しゅうげつへいか)月も恥じらい、花も閉じてしまうほどの美女。
 ☆ 閉月羞花(へいげつしゅうか)花も恥じらい、月も隠れてしまうほどの美女。 
 ☆ 朱唇皓歯(しゅしんこうし)赤い唇と白い歯の意から美女の形容。 
 ☆ 仙姿玉質(せんしぎょくしつ)並はずれた美女の形容。  
 ☆ 明眸皓歯(めいぼうこうし)美しく澄んだ瞳と白く整った歯を持つ美女。 
 ☆ 窈窕淑女(ようちょうしゅくじょ)頭脳明晰で美顔の淑女。 
 ☆ 蛾眉皓歯(がびこうし)蛾の触角のように細く弧を描いた美しい眉と白い歯の美人。 
 ☆ 曼理皓歯(まんりこうし)きめの美しい肌と白い歯の美人を形容した語。 
 ☆ 粉白黛墨(ふんぱくたいぼく)白粉や眉墨の際立っている美人。 〇曲眉豊頬(きょくびほうきょう)美しい眉とふっくらと豊かな頬。美人の形容。 
 ☆ 沈魚落雁(ちんぎょらくがん)魚も深く沈み、雁も落ちてしまうほどの目も眩むような美女。 
 ☆ 仙姿玉質(せんしぎょくしつ)仙女の姿のように高尚で優雅な美女。 
 ☆ 氷肌玉骨(ひょうきぎょっこつ)梅の異称から美女の形容。 
 ☆ 国色天香(こくしょくてんこう)国色は国内で最も美しい色から転じて国一番の美人。天香は天上のものと思うほどの芳香から転じて非常に美しい人を形容した語。

 〔読者の方々への宿題〕   上掲の語の中から、「国士無双」に対抗し得るような四字熟語を選び、その聴牌形なども考えてみましょう。
 〔返〕  潟暮れて沈魚落雁獲物無し朱唇皓歯の君も待たなむ   鳥羽省三

  
(寒竹茄子夫)
○  眉根寄せ寒の小蠅(さばへ)を凝視(みつ)めゐる青年ひとり厨に残し

 今風に一回り年下の「青年」と結婚したものの、婚約当時の予想とは異なり、夫の青年の収入があまりに少ないので落胆したアラフォーの妻が、今となっては炊事の手伝い役でしかない夫に落胆している図柄でありましょうか?
 〔返〕  眉根寄せ寒の小蠅を凝視ゐるアラフォー妻の哀れな図柄   鳥羽省三


(葉月きらら)
○  弧を描く貴方の眉を中指で辿ってみてもそれだけの距離

 末尾の七音を「これだけの距離」とした方が、より具体的、より視覚的な表現になって宜しいかも?
 〔返〕  への字なる貴方の眉を両の掌で小突いてみても煙草止めない   鳥羽省三


(詩月めぐ)
○  無防備な君の寝顔が愛おしい凛々しい眉も長い睫毛も

 人間であれ、犬や猫などの動物であれ、命ある生き物が悪意を持って近づこうとしているかも知れない我が前で「無防備」の姿勢を保っている様は、愛しくて愛しくてならないものである。
 まして、犬や猫や鶏や熱帯魚などの動物ではなく、「凛々しい眉毛」と「長い睫毛」を持った「君」であれば、尚更に「愛おしい」ことでありましょう。
 ここにも、年下の男性と結婚して、毎日の暮らしに「愛おしさ」を感じてる女性が居ると思えば、評者の私も嬉しくなっちゃいます。
 いい年をした女性が年下の男性に熱々となっている図柄は、傍で観てゐても愛らしくなってしまうものである。
 詩月めぐさんも頑張って下さい。
 〔返〕  無防備な君のくちびる愛おしく思わず盗むアラフォーのわたし   鳥羽省三
      口臭は嫌われますから仁丹をいつもバックに入れて居ります


(五十嵐きよみ)
○  あやふやな気持ちを抱えた朝に見る左右の眉のかたちの違い

 その長さ二センチメートル足らず、左右合わせて僅かに四センチメートルに満たない、あの描き眉の長さや形も、日によって気分によってさまざまである。
 さすれば、「あやふやな気持ちを抱えた朝に見る左右の眉のかたちの違い」というこの一首の趣きは、字面以上に陰影が深く、その内容は、作者にとっては私たち読者の想像以上に愛おしいものであるに違いない。
 〔返〕  あたふたと出掛けた夕べのデパ地下の魚売り場の刺身の値引き   鳥羽省三


(さとうはな)
○  木漏れ日が綾なす椅子に向き合いて眉うつくしき人と思えり

 眉毛の美しさを褒めるのは、通常、女性のそれに対した場合である。
 だとしたら、女性たる本作の作者・さとうはなさんと「木漏れ日が綾なす椅子に向き合いて」いる人は女性ということになる。
 と、いうことになると、一見、純粋無垢なる相聞歌と思われた本作に俄かに暗雲が射し、その内容が、同棲への愛を詠った隠微なものとなってしまう。
 深読みでありましょうか?
 〔返〕  木漏れ日が綾なすプールに泳ぎゐてビキニ姿を撮られちゃったの   鳥羽省三


(原田 町)
○  ふさふさの眉は長寿の徴しとか鏡のわれの覚束なさよ

 原田町さんのご年齢は、昔風に見るなれば、立派な「長寿」と申せましょう。
 ぎんさんの娘四姉妹ほどではありませんが、お年に不足はありません。
 「鏡」の前で覚束ない気持ちになることはありませんよ。
 〔返〕  ふさふさの眉毛は長寿の徴しなり原田町さん描き眉でなし   鳥羽省三


(峰月 京)
○  「眉毛ってなんであるの?」の弟に「ないとこわい」と兄が答える

 「ないとこわい」ということを自覚しているから、昨今の女性たちは、通勤途上のバスや電車の座席で、どいつもこいつも<描き眉>をしているのでありましょうか?
 〔返〕  「おちんちんってなんで要るの?」と弟が「そのうちわかる」とその兄が云う   鳥羽省三


(由弥子)
○  亡き母が隣に立ちて墓花の黄色が足らぬと眉ひそめたり

 亡くなってからまでも、いちいち細かいことまでケチをつける「母」であるが、どうせなら、詠い出しの五音を「亡き義母が」としたら、もっとリアルになって宜しいかも?
 〔返〕  亡き母が夢枕に立ち「盆花は水を吸うぞ!」と我が妻に云う   鳥羽省三


(佐藤紀子)
○  明けやらぬ西空高く淡あはと眉の形の白き三日月

 「三日月」とは、陰暦三日目の月であり、円弧状の細い範囲だけが輝いている月である。
 また、「三日月」の黄経は太陽よりわずかしか先行していない為に、陰暦三日の日没の直ぐ後(約二時間後)に、北半球に於いては光っている側を右下(南半球に於いては左下)にして沈む。
 その一方、「三日月」の<出>は、日の出の直ぐ後である為、通常、肉眼では見ることが出来ません。
 「三日月」の形と似ているが、光っている側が東西逆側の月を「二十六夜」と言う。
 「二十六夜」は、日の出の前に光っている側を北半球に於いては左下(南半球に於いては右下)にして上る。
 したがって、作中の「眉の形の白い三日月」なる「月」とは、正しく言うと「二十六夜」の「月」のことではありませんか?
 題詠短歌にご参加なさって居られる歌人もさまざまではありますが、佐藤紀子さんのような名人上手ともなれば、このような些細なる失着も見逃せません。
 それとは別に、「眉月」という美しい言葉がありますから、殊更に「眉の形の白き三日月」という言い方をすることは許されません。
 〔返〕  明けやらぬ東の空に淡淡と二十六夜の月輝きぬ   鳥羽省三


(衛星ドロップ)
○  もう誰も好きにならない今日こそはきつめに眉をひいて旅立つ

 「きつめに眉をひいて」旅立ったとしても、バスや電車の座席や、職場での作業の手を休めて鏡を見て<描き眉>をしているような心掛けの女性なら、これからも度々失恋の思いを重ねることになりますよ。
 要は心掛け次第であり、「眉」を「きつめ」に引くとか、ゆるめに引くとかの問題ではありません。
 男性というものは、見た目は馬鹿面をしていても、案外、観るべきところを観ているものですよ。
 〔返〕  もう誰も好いてくれない!描き眉をきつめに引いてもゆるめに引いても   鳥羽省三


(ぽむ酢)
○  眉間寄る出来事ばかりの日々であれ昔の日々を美化したくない

 「昔の日々を美化したくない」という心掛けは、実に真面目で実に見事な心掛けと申せましょう。
 然るに、だからと言って、「眉間寄る出来事ばかりの日々であれ」とは、何という言い条でありましょうか!
 これでは、自分ばかりか他人の幸福を呪詛するような内容の歌になってしまいますよ。
 〔返〕  眉間寄る出来事ばかりの日々よ去れ昔の事は忘れてしまえ   鳥羽省三


(今泉洋子)
○  白眉なる一語をさがすより深くこころの景色描かむとして

 ともすれば誤読しがちな作品ではあるが、二句切れの作品である。
 即ち、「白眉なる一語をさがより←→深くこころの景色描かむとして」という、倒置法的な言葉の運びとなっているのである。
 ところで、作中の「白眉」なる語は、手元の辞書『大辞林』の記載するところに拠ると「①白いまつげ。②(中略)兄弟中で最も優れている者。また、衆人の中で最も傑出した者。同類中で最もすぐれているもの。」という意である。
 で、本作中に用いられている「白眉」は、上記の中の「同類中で最もすぐれているもの。」ということになりましょうか?
 だとしたら、本作の意は、「私は私自身の詠む短歌の中で『より深くこころの景色』を『描かむ』とする思いがあるから、同じ言葉の中でも、最もその情景を表すに相応しい言葉を探そうとしているのであるる」ということになる。
 私・鳥羽省三は、予ねてより本作の作者・今泉洋子さんの投稿歌作成作業が遅々として進まない様子なので、他所ごとながら心配していたのである。
 しかしながら、彼女が、こうした殊勝な心掛けで以って作歌に当たっていたことを知って、心が休まるような思いになったのである。
 今泉洋子さんのこれからの投稿作が楽しみである。
 〔返〕  白眉なる投稿作と評さんと貴女の作を心待ちにする   鳥羽省三
      白眉なる目元休めて微笑みぬ心の景色を深く看取りて
 私は、今となっては、白眉白髭白頭の高齢者となってしまいましたが、その昔は、数多寄り来る女高生たちを掻き分けて、古典教育に勤しんだものでした。


(桑原憂太郎)
○  斜に上がる眉と伏し目の素振りから営業職の悩み事を知る

 「斜に上がる眉」と「伏し目」とは、上下逆向きの形相である。
 そうした逆向きの形相こそは、「営業職」の日常の厳しさを象徴するものでありましょう。
 〔返〕  例ふれば奈落に堕ちし染五郎眉毛逆立ち伏し目がちなり   鳥羽省三


(鳥羽省三)
○  原沙知絵明眸皓歯眉毛濃し細腰流麗才色兼備

 「題材が良ければこんな傑作も生まれる!」と自画自賛しているところである。
 何を隠そう、私は原沙知絵嬢の隠れファンの一人ではありますが、彼女が「才色兼備」であることは、私自身の単なる希望であります。
 〔返〕  春風亭昇太 妻妾未だ無く独り者座布団ためてお金も貯める   鳥羽省三
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一首を切り裂く(012:眉・其のⅠ・引力の証しとしてか眉は下向く)

2012年08月29日 | 題詠blog短歌
(矢野理々座)
○  長崎と佐賀・香川では眉山(まゆやま)が徳島・岐阜は同じ字で眉山(びざん)

 山の名称として同じように漢字で「眉山」と書いても、長崎県や佐賀県や香川県のそれは「まゆやま」と訓読みし、徳島県や岐阜県のそれは「びざん」と音読みすることに着目しての一首である。
 いかにも矢野理々座さんらしい気の利いた発想の作品ではあるが、内容的にはそれ以下でもそれ以上でも無い作品とも言えましょうか?
 事の序でに香川県の「眉山(まゆやま)」について述べるとしましょう。
 同山は香川県三豊市に在り、海抜189mの、〈山〉と言うよりは〈丘〉と言った方がいいようなちっぽけな地球の襞である。
 私の友人の北さんは三豊市詫間町粟島の出身で、小学時代を粟島で育ったそうですから、彼は朝な夕なにこの山を郷土の名山として仰ぎ、「僕も大いに勉学に励み、大人になったら、あの山のような気高く立派な人間になりたい!僕はこれから一所懸命に勉強するぞ!」と強く願ったことでありましょう。
 と、ここまで書いて来て本稿の筆を閉じようと思っていたところ、たった今、話題にしたばかりの親友・北さんから電話が入った、とのことである。
 彼は現在、横須賀での多忙なる生活から足を洗い、単身で粟島の別荘暮らしを楽しんでいるはずであるが、「その彼が、週日の真昼間から私如き貧乏人に電話を掛けて来るとは、あの粟島で、一体どんな天変地異・珍事が発生したのか?」と思いながら連れ合いの差し出す電話の子器に手にしたところ、「地元・香川の眉山(まゆやま)の風光明媚さもさることながら、隣県・徳島の眉山(びざん)のそれには到底敵わない!徳島の眉山は、あの〈さだまさし〉の小説『眉山』の舞台となった名山であり、映画にもなった。だから、僕はさだまさしや眉山に敬意を表して、地元の眉山をさて措いて、徳島の眉山をブログで採り上げいのだ。この際、是非とも君も見たまえ!」とのことであった。
 件の眉山を採り上げている、北さんのブログのタイトルは『まほろばの島詩』である。
 そこで、私・鳥羽省三から、数多くの本ブログ(臆病なビーズ刺繍)の読者諸氏にお願いがあります。
 賢明なる読者諸氏よ、何卒、お暇な折には、北さんの写真ブログ『まほろばの島詩』をご訪問賜りたくお願い申し上げます。
 なお、親友・北さんが称揚して止まない徳島の眉山は、標高僅か290mとのことである。
 俗世間で謂う「山高きが故に尊からず」とは、このことを指して言うのでありましょうか?
 〔返〕  山低きが故に卑しからざるを疑う者は北さんを見よ   鳥羽省三
      山高きが故に尊からざるを疑う者は天狗の鼻見よ


(平和也)
○  齢経てあらがいがたき引力の証しとしてか眉は下向く

 本作に接して、私は、我が日本国の第81代内閣総理大臣にして、それと引き換えに日本社会党を壊滅状態に追い込んだとも言うべき政治家・村山富市氏を思い出してしまいました。
 村山富市氏と言えば、人も知るあの濃き眉毛を以て知られる人物である。
 彼が総理の座に就いた時、我が国のマスコミは、一斉に「眉毛が総理の椅子に座ることになった!村山富市氏の眉毛こそ〈福眉〉と言うべきだ!」と大騒ぎをし、国民挙げて福眉ブームに湧いたものであった。
 ところで、村山富市総理の眉毛は下向きではなかったような気がするが、だとしたら、万物にとって抗い難きさすがの万有引力も、あの村山富市氏の眉毛には働かなかったものと思われる。
 〔返〕  株は落ち林檎が落ちても村山のシンボル眉は下を向かない   鳥羽省三
      林檎・株・内閣支持率落つるとも総理の眉は下を向かずも
      万有引力の法則に背き村山総理の眉は落下せず
      ニュートンも首を捻って考えた?富市の眉に引力効かず?


(夏実麦太朗)
○  ロッカーの鏡のなかにひとりきり眉の角度を確かめている

 ♪ああ、あの人が、あの顔で、勤務先の「ロッカーの鏡のなかにひとりきり眉の角度を確かめている」なんちゃって、僕ちゃん、お菓子食って、コアラのマーチを食べて、笑っちゃいました!
 作者・夏実麦太朗さんの持ち前のユーモアセンスが余すところ無く発揮された傑作である。
 脱帽(剥げ頭露出!)。
 〔返〕  青バスでオカチメンコが鏡見て眉毛描いたり紅を塗ったり   鳥羽省三


(ほたる)
○  あおやぎの細き眉引く春の朝桜の夢みる君をおこさむ

 「青柳(あおやぎ)の」は「細き眉」に係る〈枕詞〉である。
 で、本作について言えば、枕詞を用いた古典和歌的な発想は、作者・ほたるさんの本来の持ち味とは異なりましょうが、それはそれとして、「あおやぎの細き眉引く春の朝」という詠い出しの三句は順調である。
 しかし、それに続く下二句の中に「桜」を登場させたのには疑問がある。
 初春の景物である「あおやぎ」と春真っ盛りの景物である「桜」の取り合わせが宜しくないのである。
 俄知識で以て慣れないことをしてはいけません。
 〔返〕  青柳の細き眉引く春のあさ君の夢見て僕は失禁   鳥羽省三


(ありくし)
○  早梅の風は眉毛に柔らかく昨日交わした嘘も忘れる

 春一番に咲く「梅」の花を散らす「風」に作者ご自身の「眉毛」は「柔らかく」靡き、その心地良さに、作者の〈ありくし〉さんは、「昨日」恋人と「交わした嘘も忘れる」という趣きを述べたのでありましょう。
 上三句の叙景と下二句とがよくマッチした佳作である。
 〔返〕  春風に眉を靡かせ歩こうよ昨日交わした嘘も忘れて   鳥羽省三
 尤も、最近の女性の眉毛はほとんど描き眉であるから、「春風に眉を靡かせ」て歩くということは不可能でありましょう。
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014:偉(鳥羽省三)

2012年08月27日 | 題詠blog短歌
政界のラスプーチンとしての名を益々上げよおらが義偉    ※義偉(よしひで-神奈川二区選出衆議院議員・菅義偉氏)
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一首を切り裂く(011:揃・其のⅡ・揃えた靴の舳先は海を)

2012年08月27日 | 題詠blog短歌
(吾妻誠一)
○  漕ぎ着いた上り框の奥暗く揃えた靴の舳先は海を

 御夫君(=吾妻誠一)の連日に亘る午前様に立腹なさった奥方様が、御帰館を待たずに御寝間にお入りになられた後の、吾妻家の玄関のご様子をスケッチなさったのでありましょうか?
 だとしたら、四、五句目の「揃えた靴の舳先は海を」とは、御夫君としては揃えて脱いだつもりであった靴が、逆八の字になっているご様子をお詠みになったのでありましょう?
 〔返〕  朝まだき伊根の舟屋の船揚場海に向かへる小舟幾艘   鳥羽省三


(峰月 京)
○  五月晴れ港の見える公園でひそかに君と歩幅揃えり

 「ひそかに君と歩幅揃えり」という四、五句目の七七句から読み取れるのは、彼(作中の君)一途の作者・峰月京さんの純にして余りある心である。
 考えるに、作中の「君」なる人物は、作者の峰月京さんに比して、四、五歳くらい年下の男性のようにも思われる。
 私も年に数回は横浜の〈港が見える公園〉へと洒落こんだりはしますが、密かに「歩幅を揃え」て、私の後に付き従って来る女性は未だかつて現れません。
 〔返〕  油照り港が見える公園で犬のうんちを踏んづけちゃった   鳥羽省三


(磯野カヅオ)
○  金星と月と木星揃ふ夜に木蓮白く揺れ初めにけり

 作中の「金星と月と木星揃ふ夜」とは、過ぎし平成二十四年三月二十六日のことである。
 時恰も、湘南大磯町の磯野カズオ亭に於いては白木蓮の花が咲き染めたのでありましょうか?
 だとしたら、天上と地上とでの、かかる清新なる一大光景に巡り逢うを得て、作者・磯野カズオさんの御喜びは如何ばかりであったか?
 〔返〕  金星と月と木星揃う夜にサザエはサンマを猫に盗られた   鳥羽省三


(山本左足)
○  「こち亀」が全巻揃っているという理由で通っている理髪店

 男性が定まった「理髪店」に通うようになった動機はさまざまであり、私のかつての知人の一人であった還暦過ぎの男性のそれは、「小、中学校時代の同級生であり理髪師である女性が、その年、ご亭主に死なれて寡婦になったから可哀想だ」という、大凡不純なる動機との噂でありました。
 彼の男性のその頃の境遇は失業者同然。
 然るに彼は、毎月、三千五百円の大枚を叩いて、その寡婦の理髪店に通い詰めになっていたのでありました。
 したがって、評者・鳥羽省三の冷静にして公平なる判断力を以てしても、「『こち亀』が全巻揃っている」という厳然たる事実は、教養ある男性が、その「理髪店」を通い付けにする「理由」として十分なるものと判断されます。
 〔返〕  「『釣りバカ』を全巻読んでしまった」と言って歯医者に通わなくなった   鳥羽省三


(壬生キヨム)
○  肩の位置揃えて見上げる オリオンの星が欠けても一緒にいたい

 作中の「オリオン」とは、冬の星座の定番とも言うべき〈オリオン座〉を指して言うのでありましょう。
 だとしたら、その〈オリオン座〉を印象づけるものとして忘れてならないのは、α星の〈ベテルギウス〉であり、それと同時に、中央に並ぶ〈三ツ星〉でありましょう。
 想うに、作者・壬生キヨムさんをして「オリオンの星が欠けても一緒にいたい」と言わしめた「オリオンの星」とは、「肩の位置揃えて見上げる」という前半の二句から判断して、前述の〈三ツ星〉の中の一個を指して言うのでありましょうか?
 以上の点から判断するに、本作は世に言う〈相聞歌〉では無く、性と年齢を同じくする男性同士の堅くて純なる友情を歌ったものであるとも思われる。
 〔返〕  右に真紀左に沙織を抱き寝してベデルギウスを眺めて居たり   鳥羽省三


(今泉洋子)
○  ひとつづつ済ませてゆかむ立葵咲き揃ふまで少し間がある

 本作の作者・今泉洋子さんのお住まいは西国・佐賀である。
 西国・佐賀に於ける「立葵」の「咲き揃ふ」時期は、六月下旬から七月上旬頃でありましょうか?
 だとしたら、その「立葵咲き揃ふまで少し間がある」時期と思われる六月の半ば頃までに、作者の今泉洋子さんは、どのような作業を「ひとつづつ済ませてゆかむ」とお思いになって居られるのでありましょうか?
 〔返〕  家事・挽歌・喪服の風通し ひとつづつ済ませてゆかむ立葵咲き揃ふまで   鳥羽省三


(原田 町)
○  ぎんさんの娘四人うち揃い元気元気の映像楽し

 本作の鑑賞に資する為、去る2012年8月22日09時18分付けの〈YOMIURI ONLINE〉に掲載された記事の中から、「ぎんさんの娘4人、計370歳…被害防止に一役」と題された記事を借用転載させていただきます。
 無断転載にて、大変失礼とは存じますが、関係者の皆様方には、何卒、曲げてご許容賜りたくお願い申し上げます。

 愛知県は20日、増え続ける高齢者の消費者被害を防ごうと、長寿で話題になった名古屋市の双子姉妹「きんさん、ぎんさん」の妹、蟹江ぎんさんの娘4人を「あいち消費者被害防止キャンペーンガール」に任命すると発表した。
 県民生活課は「おそらく日本で最高齢のキャンペーンガールになると思う。注目度の高い4姉妹の力をお借りして、被害防止を呼び掛けたい」としている。
 任命されるのは長女・矢野年子さん(98)と三女・津田千多代さん(93)、四女・佐野百合子さん(91)、五女・蟹江美根代さん(88)の4姉妹で、合計すると370歳になる。29日に任命式を開き、大村秀章知事が任命状とたすきをおくり、4人が被害防止を宣言する。4人は「自分たちが県民の皆さんにお役に立てるなら喜んで引き受けたい」と話している。
 活動期間は敬老の日(9月17日)を含む9月の1か月間。16日にはイオンモール東浦(東浦町)とイオンモール岡崎(岡崎市)で4姉妹によるPRイベントを開くほか、県内のJR私鉄、バスの中吊
なかづり広告(約8000枚)で被害防止をPRする。
 ぎんさんは2001年2月に108歳で他界。4姉妹は、ぎんさんが暮らした名古屋市南区の家に、ほぼ毎日のように集まっては、おしゃべりを楽しんでいるという。        以上、引用終り
 
 上記の記事の他に、昨年の末頃から本年に掛けて、テレビ局や新聞社・雑誌社などのマスコミ各社が関連記事を報道したのであり、本作の作者・原田町さんは、それらのいずれかの記事乃至はテレビ報道にお接しになられて、本作をお詠みになったのでありましょう。
 〔返〕  久しぶり原田町さんお元気で何よりでした今後宜しく   鳥羽省三


(ひろ子)
○  玄関に揃えて脱ぎし靴見やり心身ともの成長思ふ

 「玄関に揃えて脱」いだ「靴」の有様と言い、そのサイズと言い、祖母たる「ひろ子」さんと離れて暮らして間の、お孫さんたちの「成長」の著しさを想わせるものであったのでありましょう。
 〔返〕  手を合わせ「いただきます」と声合わせケーキを食べる孫の愛しさ   鳥羽省三


(鳥羽省三)
○  揃へ置く『謡曲大観・全七巻』菊判上製天金美装

 今となっては、取り返しの付かないことではあるが、二句目及び三句目の字余りを思えば、「揃へ置く『谷崎源氏・全五巻』菊判特装限定千部」とするべきであったと思っている。
 なお『謡曲大観・全七巻』も『谷崎源氏・全五巻』も、度々の転居に際して惜しみながらも何方かに呉れてやったと記憶している。
 〔返〕  愛読書『みみづのたはごと』文庫版上下二巻の寸法不揃ひ   鳥羽省三
 徳富蘆花著の『みみづのたはごと』は、神田(御茶ノ水坂下)の川村書店で買った、戦前の岩波文庫版・上下二冊を持っていたのであるが、その後、下巻のみ戦後の岩波文庫を入手したので、戦前版の下巻は棄ててしまったのである。その結果として、「上下二巻の寸法不揃ひ」といったような結果となったのである。
 それにしても思い出されるのは、御茶ノ水坂下の川村書店で買った戦前版の岩波文庫の数々である。
 『利根川図誌』『北越雪譜』といった稀覯本は、三崎町の「さぶちゃん」の〈半ちゃんらーめん〉が五十円以下で食べられた頃、大枚千数百円を叩いて泣く泣く手に入れたものである。
 〔返〕  揃え置く『短歌全集・文庫版』全十二巻創元文庫   鳥羽省三
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一首を切り裂く(011:揃・其のⅠ・このところ仏事なければ)

2012年08月27日 | 題詠blog短歌
(西中眞二郎)
○  このところ仏事なければ兄弟の揃う機会も乏しくなりぬ

 本作の作者は、私より二、三歳ご年輩の男性である。
 とすれば、お互いのご子息様やご息女様方の結婚式は勿論、お孫さん方のそれも既に終えられ、血を分けたご兄弟たちが一同に会する機会は、ご両親様やご先祖様方(或いは、ご兄弟及びその縁者の方々)の「仏事」以外に無いものと思われる。
 したがって、この一首の表現は、作者・西中眞二郎さんの、ご円満で度量の広さが反映されたユーモラスな表現であると同時に、「育て上げるべき者は育て上げた!嫁がせるべき者は嫁がせた!これから私たち兄弟が集まって話し合ったり杯を交わす機会が、もしも在るとすれば、それはお互いの葬式や血縁縁者の葬式や法事といったような仏事に限られるだろう。それなのに、この頃しばらく仏事が無かったから、兄弟お互いの顔を見る機会も無かった。その点は、目出度いとも言えようが寂しい気持ちが無いわけでも無い」といったような、諦観とも満足感ともつかない、かなり複雑な心境が窺われるのである。
 「このところ仏事なければ兄弟の揃う機会も乏しくなりぬ」というこの一首の表現からは、格別な目新しさも趣向を凝らした点も見受けられません。
 しかしながら、そうした極く平凡な表現を通して、ある一定の年齢に達した者が普遍的に味わうに違いない心境を表現し吐露している点は、西中眞二郎さんならではの名人芸と思われる。
 〔返〕  姉二人一昨年続けて亡くなりぬ俗事にかまけて弔ひもせず   鳥羽省三
 長姉及び三姉が一昨年続けて黄泉路に旅立ちましたが、私は自分自身の健康やその他諸々の事情に事寄せて、二回とも心ばかりのご芳志を遺族宛にお送りしたばかりで、葬儀には出席しませんでした。
 こうした点は、他の兄弟たちや親類縁者の方々のご理解の範囲を超えたことと思われますが、私自身に亡くなった姉たちを惜しむ気持ちや菩提心に欠けている訳ではありません。

  
(夏実麦太朗)
○  夕闇は東のほうからやってきて玄関の靴を揃えたくなる

 夏実麦太朗さん一流の作風ではあるが、「夕闇は東のほうからやってきて」という上の句の語り口は、のほほんとした言い方ながら理屈に適った表現である。
 だが、それとこれとがどうして結び付くのかが解らないのであり、その解らなさ加減が本作の魅力ともなっているのである。
 ところで、前述中の「それとこれ」との「これ」とは、「玄関の靴を揃えたくなる」という下の句の表現である。
 夕方になると、家族の誰かの帰りを待つみたいに気分になって玄関に佇み、何ということも無く「靴を揃えたくなる」といった気分になるのは人間的な真実であり、其処の辺りのことを詠んだのは、夏実麦太朗さんの名人芸と言うべきである。
 〔返〕  たそがれは西の空からやって来て俺の心をメランコリーにする   鳥羽省三


(秋月あまね)
○  相対に統べられている神廟のなか不揃いの獅子に狛犬

 秋月あまねさんは、気が付いてはならないところに気が付いてしまったのである。
 「神廟」の境内でしかつめらしい顔をしている「獅子に狛犬」あの二体の石像のポースは〈阿吽の呼吸〉を象ったものであり、あれはあれでワンセット。
 つまり、二体ワンセットで神様をお守りしてるんですよ。
 それなのに、何ですか。あなたは「不揃いの獅子に狛犬」なんて罰当たりのことを仰ったりして!
 〔返〕  統べられて秋月あまねく照りわたる獅子に狛犬阿吽の形相   鳥羽省三


(庭鳥)
○  お揃いで泳いでいると雪の日にお濠に立ちて白鳥を指す

 「『お揃いで泳いでいる』、あの『白鳥』たちの仲良しぶりは、何処かの国の皇太子様とお妃様みたいですね!」などと口走ってしまったら、不敬罪に抵触することになるのでありましょうか?
 〔返〕  指差すも亦不敬罪皇太子様はいつもお独りお可哀想ね   鳥羽省三


(アンタレス)
○  人数の揃えば始む麻雀に興ぜし頃あり今は懐かし

 「始む」と言い「興ぜし」と言い「あり」と言い「懐かし」と言い、本作中の用言の全ては文語であり、「古典仮名遣ひ」をしている。
 ならば、「揃えば」は〈仮名遣ひ〉及び〈古典文法〉に留意して、「揃へば」としなければなりません。
 そう言えば、その昔、家庭麻雀というものが流行っていて、家族四人が揃うと、電気炬燵の上の雀卓を囲んだことがありました。
 つい先日、次男のマンションのリフォームをするということで、荷物整理に出掛けたことがありましたが、押し入れの中の煤けたダンボール箱の中に麻雀牌が潜んでいたのを発見し、息子二人と私たち夫婦が家庭麻雀に興じていた頃を思い出しました。
 〔返〕  息子らと興じた頃が懐かしくダンボール箱の麻雀牌に見入る   鳥羽省三


(五十嵐きよみ)
○  上下巻揃うまで待つことにして窓辺にそっと置くアーヴィング

 歌意から推測するに、作中の「アーヴィング」とは、アメリカ合衆国の現代作家〈ジョン・ウィンズロー・アーヴィング(John Winslow Irving、1942年3月2日~)〉と思われ、「上下巻」とは、彼の代表作の一つと目され、筒井正明の翻訳で新潮文庫から発売されている『ガーブの世界』(上・下)と思われる。
 ならば、〈ポスト・モダン文学〉に代表される二十世紀文学潮流の最中に在って、その潮流に逆行するがごとく、敢えて「チャールズ・ディケンズを尊敬する」と公言し、ポスト・モダン文学の首魁として尊崇されていた、〈ジェイムズ・ジョイス(1882年2月2日~1941年1月13日)〉を「ゴミ」と評し、「オナニー本の作者」などと評してはばからなかった彼・ジョン・ウィンズロー・アーヴィングの代表作『ガーブの世界』こそ、まさしく、我が国現代文学の随一のストーリ・テーラーたる五十嵐きよみ女史の愛読するに足る作品と思われるのである。
 それにしても、私・鳥羽省三が、今から数十年前にブックオフの百五円均一コーナーから掘り起こして来て、たった三ページ読んで、読むに足らざる本として廃棄処分にした文庫本を、本作の作者・五十嵐きよみさんが「窓辺にそっと置く」のだとしたら、それこそ、まさしく二十一世紀の七不思議の一つとしなければなりません。
 長生きというものは〈経験するに値する時間潰し〉かも知れません。
 〔返〕  買って直ぐ読むに足らざる本として捨ててしまった『ガーブの世界』   鳥羽省三


(湯山昌樹)
○  如月の末の大雪 街路樹に揃いの衣装着せてゆきたり

 同じ「大雪」でも、「如月の末の大雪」に着目した点が宜しい。
 好みの問題ではありましょうが、三句目の「街路樹に」を、より具体的に「欅並木に」とか「公孫樹並木に」などとした方が宜しいかも知れません。
 月並みの発想ながら好感の持てる作品として鑑賞させていただきました。
 〔返〕  弥生尽午後風花が舞い散って梅の古木が開花しました   鳥羽省三


(矢野理々座)
○  13種牌を揃えて多面待ちあがれぬ役満恋と同じか...

 国士無双の体勢に入っているように思われますが、私自身の少ない経験から申し上げますと、十三面張のテンパイでの上がりはただの一度もありませんでした。
 〔返〕  男なら誰でも恋の聴牌の国士無双はつもるしか無し   鳥羽省三
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013:逆(鳥羽省三)

2012年08月25日 | 題詠blog短歌
いにしへの逆さクラゲを今風に言へばラブホと言ふのでせうか?
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012:眉(鳥羽省三)

2012年08月25日 | 題詠blog短歌
原沙知絵明眸皓歯眉毛濃し細腰流麗才色兼備
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