気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ…遅れてきた私
著作権は近藤に帰属します
白日傘さして私を捨てにゆく とつぴんぱらりと雲ケ畑まで

短歌人3月号 同人のうた その3

2017-03-22 15:22:03 | 短歌人同人のうた
雪どけの道に長靴汚しつつふるさとの空ある日うつくし
(木曽陽子)

曲がらない大根とまっすぐな人参さびしき世を渡りゆく
(長谷川富市)

雲梯のパイプとパイプにおさまっているなんて 冬の北斗七星
(𠮷岡生夫)

こんな所に歌の切れ端落ちてゐる拾ひ集めて今日の一首を
(高田流子)

ザンパノが砂をつかみて哭くところありありとして汀べの波
(三井ゆき)

内職をしてゐる母の傍らにおもちやの電車走らせをりき
(神代勝敏)

小柄なれど耳の大きな方にして悠仁さまは信号がすき
(今井千草)

閉店記念にもらひし椅子に腰掛けて振り返りみる杳き歳月
(中地俊夫)

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短歌人3月号、同人1欄より。

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短歌人3月号 同人のうた その2

2017-03-11 10:48:09 | 短歌人同人のうた
仏壇にクリスマスケーキ供えいる叔母とともあれ過ごす好日
(久保寛容)

一本の胡瓜にまぶす塩の量時のながれといくばくのしろ
(柘植周子)

海の中にゐる人は上つて下さい くり返しくり返し言ふ すぐに上つて下さい
(酒井佑子)

雪ははや声を失ひ雪としてここに降りつ積むひざ折るごとく
(阿部久美)

夕闇は馬のごとくに濃くなりぬ冬の京都をたちてたちまち
(小池光)

プレートが動きだすまで増幅す クリック・いいね・クリック・いいね
(本多稜)

ナショナリズムとヒューマニズムが手をつなぐオリンピックという物語
(生沼義朗)

トランプにどこか似てをり嚙みつき魔フレッド・ブラッシー現役の顔
(倉益敬)

るりふかき星座の切手あまた貼りこづつみおくる母となる子へ
(佐々木通代)

息子(こ)の葬儀を終へし夫婦の庭先に半月ぶりの干し物白し
(藤田初枝)

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短歌人3月号、同人1欄より。

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歳月の気化 阪森郁代

2017-03-08 11:39:20 | つれづれ
静けさを啄(つい)ばむのみの秒針は冬の日差しの届かぬ位置に

ヨブ記から少しはみ出す付箋あり花水木(はなみづき)すでに花期を終へたり

傾(かし)ぎつつ夜は深まる瓶詰めのジャージー牛乳立たせたるまま

滴(したた)りは夏の空より 刃を当ててふいに明るむ浅漬の紺

整理して整理のつかぬ本ばかり一冊分の隙間になごむ

歳月の気化を思へり午睡より覚めて肌には藺草(ゐぐさ)がにほふ

摘み取つたこともあつたと振り返る言葉は葉でも実でもあるから

セシウムと小さく声に洩らすとき身じろぎなしてしづかなる花

外光に白く浮き立つ夏の邸 絵画の中を人は行き交ふ

北半球に積もる埃を拭ふため地球儀二回転を強ひらる

(阪森郁代 歳月の気化 角川文化振興財団)

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阪森郁代の第七歌集を読む。

集題はここでの六首目から取られている。あとがきには、「社会の大きな出来事も、身辺の小さな出来事にしても、まるで気化してしまったかのように、たちまち忘れられていく時代であることを実感している」と書かれている。だからこそ、歌に託して残したいと言う。

阪森さんの歌は、地味な感じがするが、じっくり読むととても丁寧に言葉が選ばれていて、味わいが深い。一首のなかに作者独自の視点の入った言葉が選ばれている。「静けさを啄ばむ」「はみ出す付箋」の動詞の選択。
三首目は、浅漬の茄子が、切られる(斬られる)瞬間に命をもったように読んでしまった。七首目。下句は上句の説明のようにも解釈できるが、言葉を扱うことへの深い畏怖を感じさせる。「言葉」という字の意味を、改めて考えさせられた。十首目は、ユーモアのある歌。ここでも「強ひらる」の動詞にオリジナリティがあって面白い。地球儀二回転の句跨りが心地よい。
ほかにも、感心させられる歌がたくさんあり、短歌の滋味ということを考えさせられた。

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短歌人3月号 同人のうた

2017-03-08 10:37:49 | 短歌人同人のうた
冬日差す水のほとりは明るくて鷗のこゑのひびき降るなり
(青輝翼)

あらかじめ決められた質疑応答の隙間を紋白蝶が流れる
(猪幸絵)

旧年となりてゆくなり十二月のカレンダーの絵がわれをとりなす
(柏木進二)

霜月のひと月かたちを変えながら空より降(くだ)るあめみぞれゆき
(加藤隆枝)

思いやりその「やり」にある鈍感をくだいてくだいてトイレに流す
(鶴田伊津)

うちつけに火が意志を持つライターよりらふそくに身をうつししときに
(花鳥佰)

「ものみの塔」断るわれにドア開けてくれてありがたうと男去りゆく
(竹浦道子)

ぽつんぽつんと灯の点る郭しんとして過去世のやうに靴音ひびく
(小島熱子)

さえざえと貴婦人笑ふ長楽館ホールの絵画に内緒よ、といふ
(西橋美保)

冬空に鳴る裸木よゆるゆると朽ちてゆくなり父の肺葉
(洞口千恵)

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短歌人3月号、同人1欄より。

けむりほどの縁(えにし)あらねど星野源あかるく恋を唄ふは楽し
(近藤かすみ)

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短歌人3月号 3月の扉

2017-03-02 11:01:06 | 短歌人同人のうた
呼ばるるを待つ人のなかをちこちに二年後五年後十年後のわれ

視線合ふことを畏れて本を読むそれに飽きればまた壁を見る

(大橋弘志)

決められた時間の中で動きたり待合室は時のきれはし

次々と見知らぬ人が後に来て押し出されゆく待合室を

(齋藤和美)

半年ぶりの歯科健診にきてみれば待合室にBach流れる

エレベーター降りるとそこは待合室さながら静かな喫茶店のよう

(野中祥子)

週刊誌手もち無沙汰の手にとりて待合室に読むスキャンダル

わが友が舌癌の末に入りにける終(つひ)の待合室のホスピス

(秋田興一郎)

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短歌人3月号、3月の扉。題詠*待合室を詠む

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鱧と水仙 48号

2017-02-27 14:45:25 | 鱧と水仙
梢よりふる影のなか胡桃の実ころがつてゐる昼のテーブル

ひさかたの雲井通に行きしより日照雨のごとき貴方となりぬ

(近藤かすみ 雲井通)

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鱧と水仙48号がでました。
連作14首「雲井通」、特集「生誕150年子規のうた、発見」にエッセイを載せています。

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短歌人2月号 同人のうた その3

2017-02-22 18:22:38 | 短歌人同人のうた
沸騰の湯に没りてゆく美(うま)し世の法蓮草はみどりなりけり
(柘植周子)

初雪の降りたる午後に『いとしきもの』田村よしてる遺歌集届く
(室井忠雄)

冬となる濃き青空が映りおり机の上の雲形定規
(守谷茂泰)

裏木戸より椿へわたるくちなはのつやつやとして神無月あり
(曽根篤子)

いつせいに空へ飛びたつ野の鳩の風切羽よ冬ふかむ日に
(金沢早苗)

ひと夏を独り占めせるポスターに水着の美波里の厚きくちびる
(池田裕美子)

ベルトより束なす鍵を垂らしたるマッチョをりたりサーカス小屋に
(三井ゆき)

両の手に大根さげて来し人に大根もらひぬ視線が合ひて
(中地俊夫)

ねむりより覚めたるわれはエヂプトのスフィンクスのこと少し思へり
(小池光)

この冬の一番の寒さという夜なり一箇を届けにアマゾン・ドット・コム
(川田由布子)

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短歌人2月号、同人1欄より。

格別に大きな月の出るといふ夜を待ちつつタオルたたみぬ
(近藤かすみ)

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雪の降るまで 現代短歌3月号

2017-02-13 23:35:11 | 総合誌掲載
杉織りのコート似合ひし壮年の父にしたがふ雪の降るまで
(近藤かすみ)


2月14日発売の「現代短歌 3月号」に七首を載せていただきました。
ひさしぶりの総合誌掲載です。




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短歌人2月号 同人のうた その2

2017-02-08 12:40:38 | 短歌人同人のうた
宅配の手荷物かかへ門灯へ小走りにゆく男半袖
(紺野裕子)

冬の匂い香ばしく顔にまつわりて息すればつくづくと冬なり
(内山晶太)

まろやかなお地蔵さんのあたま撫ぜ純なるなみだ湧くときのあり
(斎藤典子)

いひたらざりしかと悔ゆれどもいひすぎて臍(ほぞ)かむよりはよからむ 寝ねむ
(蒔田さくら子)

飴玉を嚙まずにいられないと言う破片に満ちているだろう口
(谷村はるか)

「短歌人」に冨樫由美子の名がありてけふの日暮のビール楽しむ
(高田流子)

ネットなんか無視すればいいと言いくるる口調迷いなき柏木進二
(宮田長洋)

わが街に唯一のシネマ館ポポロ座のとなりの席にあなたはゐない
(山下冨士穂)

甲冑に身をよろひたる地蔵たち暗がりに佇つひたすらなりき
(長谷川莞爾)

天金の鈍く光れる円本の正岡子規集おりおりに読む
(おのでらゆきお)

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短歌人2月号、同人1欄より。


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短歌人2月号 同人のうた

2017-02-03 15:59:14 | 短歌人同人のうた
ラ・フランス一気に熟し香りたる今夜もしづか消灯ののち
(阿部久美)

三河屋のチラシの裏にわが書きし「かたたたきけん」母の文箱に
(有沢螢)

小粒なる渋柿あまた実らせて大笑いする柿の木があり
(関谷啓子)

黄の色にほのぼの咲けり石蕗(つわ)のはな誰も知らざる木の下陰に
(小林登美子)

年取つたねえと鏡の女にいふときに鏡の女はすこし怒りぬ
(西村美佐子)

トランプ氏を勝たせしちから解せぬまま読みをり『今昔物語集』
(洞口千恵)

現代短歌の主要テーマは孤独だと聴きて戻りぬひとりの部屋に
(八木明子)

淡からぬ濃からぬ鴇のかざきりのあけはふさはし老いづくわれに
(佐々木通代)

蓮根のむなしき穴を嘆きつつ目の手術日の前日となる
(青輝翼)

拭かぬ硝子戸がいつまでも綺麗であるやうに 一日の終りにわが祈ること
(酒井佑子)

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短歌人2月号、同人1欄より。


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