気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ…遅れてきた私
著作権は近藤に帰属します
白日傘さして私を捨てにゆく とつぴんぱらりと雲ケ畑まで

雪の降るまで 現代短歌3月号

2017-02-13 23:35:11 | 総合誌掲載
杉織りのコート似合ひし壮年の父にしたがふ雪の降るまで
(近藤かすみ)


2月14日発売の「現代短歌 3月号」に七首を載せていただきました。
ひさしぶりの総合誌掲載です。




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短歌人2月号 同人のうた その2

2017-02-08 12:40:38 | 短歌人同人のうた
宅配の手荷物かかへ門灯へ小走りにゆく男半袖
(紺野裕子)

冬の匂い香ばしく顔にまつわりて息すればつくづくと冬なり
(内山晶太)

まろやかなお地蔵さんのあたま撫ぜ純なるなみだ湧くときのあり
(斎藤典子)

いひたらざりしかと悔ゆれどもいひすぎて臍(ほぞ)かむよりはよからむ 寝ねむ
(蒔田さくら子)

飴玉を嚙まずにいられないと言う破片に満ちているだろう口
(谷村はるか)

「短歌人」に冨樫由美子の名がありてけふの日暮のビール楽しむ
(高田流子)

ネットなんか無視すればいいと言いくるる口調迷いなき柏木進二
(宮田長洋)

わが街に唯一のシネマ館ポポロ座のとなりの席にあなたはゐない
(山下冨士穂)

甲冑に身をよろひたる地蔵たち暗がりに佇つひたすらなりき
(長谷川莞爾)

天金の鈍く光れる円本の正岡子規集おりおりに読む
(おのでらゆきお)

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短歌人2月号、同人1欄より。


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短歌人2月号 同人のうた

2017-02-03 15:59:14 | 短歌人同人のうた
ラ・フランス一気に熟し香りたる今夜もしづか消灯ののち
(阿部久美)

三河屋のチラシの裏にわが書きし「かたたたきけん」母の文箱に
(有沢螢)

小粒なる渋柿あまた実らせて大笑いする柿の木があり
(関谷啓子)

黄の色にほのぼの咲けり石蕗(つわ)のはな誰も知らざる木の下陰に
(小林登美子)

年取つたねえと鏡の女にいふときに鏡の女はすこし怒りぬ
(西村美佐子)

トランプ氏を勝たせしちから解せぬまま読みをり『今昔物語集』
(洞口千恵)

現代短歌の主要テーマは孤独だと聴きて戻りぬひとりの部屋に
(八木明子)

淡からぬ濃からぬ鴇のかざきりのあけはふさはし老いづくわれに
(佐々木通代)

蓮根のむなしき穴を嘆きつつ目の手術日の前日となる
(青輝翼)

拭かぬ硝子戸がいつまでも綺麗であるやうに 一日の終りにわが祈ること
(酒井佑子)

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短歌人2月号、同人1欄より。


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2月の扉

2017-01-30 19:06:36 | 短歌人同人のうた
夕焼けが闇と攪拌されてゆくさま屋上にひとりみている

上弦の月をぼんやり映しつつ青い目薬落しておりぬ

(鶴田伊津)

高い所を怖がるわれをむかしから許して回る大観覧車

四十八年重ねし日々の頂上に仲よくをれどあやしくなりぬ

(竹内光江)

地図のかたちと同じ半島見ゆるなりなにもそこまでと思い見つるも

スチュワーデスこの音韻の格別にわれら昭和の男は恋す

(松村威)

幾つもの頂に立ちわたくしはいったい何を見たのだろうか

わが世界せまくなりしと裏山に登りて棲みいる町を見ている

(谷口龍人)

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短歌人2月号。題詠*高い所からを詠む

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短歌人1月号 同人のうた その3

2017-01-11 11:40:26 | 短歌人同人のうた
「じさつした嫁とそつくりのべつぴんさん」京都駅前広場でいはれる
(西橋美保)

人の死はすべて孤独死今日も船消ゆるバミューダトライアングル
(八木博信)

三万日超ゆるあゆみか脹脛揉みほぐしをり冬至の柚子湯
(小川潤治)

晩年に入りしよろしさ足一本ふやして初冬の街に出でゆく
(古川アヤ子)

灯油の匂ひふいに過ぎりぬ夕べの道あなしづやかに冬が来てゐる
(小島熱子)

箱根蔵王湯布院別府 袋より取り出だしては湯の花さかす
(榊原敦子)

ねむるのが下手な母の血だんだんとわれに濃くなる木犀にほふ
(佐々木通代)

隣人は鈴好むらし鍵束の鈴は鳴りつつドアを開けいる
(村山千栄子)

いづこからいづこへ渡る鳥ならむ小さき形が群れなし過ぐる
(三井ゆき)

スーパーに買いてつましき秋刀魚二尾家近づけば銀とがりゆく
(川田由布子)

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短歌人1月号。同人1欄より。
西橋さんの一連、面白く読んだ。同人は七首掲載なので、何首かは載らなかったのだろうか。この人の歌にある毒に惹かれる。八木さんも毒のある歌を詠む人で、注目している。

右手より左手冷ゆる不可思議に文(ふみ)を書かむと便箋ひらく
(近藤かすみ)

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短歌人1月号 同人のうた その2

2017-01-08 00:32:54 | 短歌人同人のうた
文法の間違ひ指摘するときに薄皮ほどの恥ぢらひのあり
(宇田川寛之)

上州の熟るる麦畑を旅せしも人に告げねばおぼろになりゆく
(斎藤典子)

いろいろのことはあるかとおもへども山寺修象歌なきは淋し
(小池光)

「おことば」といふ不思議なる日本語に耳慣れてゆく日本の秋
(高田流子)

ひと夏を励みくれたる無花果の枝剪り払ふ来る年のため
(武下奈々子)

真闇なす冬の杜よりひとつづつ言葉取り出す人に逢ふため
(大谷雅彦)

秋風の気配に触れてベビーカー押しゆく先に海が見えたり
(倉益敬)

副作用抑うる薬に副作用ありてまた来しこのファーマシー
(宮田長洋)

アールグレイの缶をあければいつの秋 子らとあつめし銀杏の出づ
(和田沙都子)

父のしるす候文などまねたるは前髪いまだあげ初めし頃
(宮本田鶴子)

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短歌人1月号、同人1欄より。

1月号に載るのは、11月12日〆切の歌。季節がずれるのは仕方がない。3月号の詠草を原稿用紙に清書して、投函した。また、来月に向けて作りはじめる。


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短歌人1月号 同人のうた

2017-01-04 11:54:53 | 短歌人同人のうた
モノレールは意外と揺れて空想をまた取り落とす秋晴れの日に
(猪幸絵)

蛾のねむり知らざりし四十年、ながき絵巻の空のそこここに飛ぶ
(内山晶太)

身支度の鏡のなかに降る雪は着地をなさずのらりくらりと
(阿部久美)

水流が馬の筋肉に見えるとき力が力を征す気配す
(生沼義朗)

ごきげんな秋のわたしをタバコとかくちぶえな気分に巻き込むな
(斉藤斎藤)

顔のなき茹で玉子のから剝きゆけば顔のなきゆで玉子あらはる
(真木勉)

コスモスの庭にたたずみ見わたせば風の抜け道あの世への道
(杉山春代)

朝のゆかより拾ふごきぶりの肢(あし)二本ほか何もなしこの死をよみす
(酒井佑子)

一つずつ終わらせてゆく些事・大事 冬空晴れる東京の街に
(西勝洋一)

渡り来て冬のいそぎに鳴きかはす水鳥のこゑは枯葦のなか
(渡英子)

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短歌人1月号、同人1欄より。

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短歌人1月号 1月の扉

2016-12-29 01:05:20 | 短歌人同人のうた
ドイツ語の詩集を閉じてやわらかな頬袋もつリスになりたし

はつふゆの歩道橋から夕雲の内ポケットのふくらみが見ゆ

(有朋さやか)

叩くたびビスケットの増えるポケットの歌をうたえば哀しきものを

ポケットのなき服不安と思いつつ出でて帰りて何事もなし

(古本史子)

もんぺ姿の母のポケットは何処やらと探りさぐりにし我が幼少時

内ポケットに饅頭隠して昼寝せり ほのぼの熱り饅頭もねむらむ

(和嶋忠治)

ポケットに蟬のなきがらつめこんで子のポケットは生死のにほひ

はたきたるみぎてを逸れてたはやすくポケットの渕を発ちし冬の蚊

(柘植周子)

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短歌人1月号。1月の扉。今月のお題はポケット。

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いとしきもの 田村よしてる 

2016-12-12 18:42:47 | つれづれ
きはまりて針箱投げし母の子の、投げつけられし父の子のわれ

「教師なんて糞食らへ」吐き捨て去りし少年あれは俺かも知れぬ

日溜りに爪切りをればすでに亡きちちははのこと思ひ出でたり

通勤の電車にゆられ唐突に職場放棄を空想したり

一人娘(ご)を嫁がせてのち妻も吾も猫の名を呼ぶことの増えたり

半世紀の歳月経(ふ)りし地図帳にいまはなき国、いまはなき町

卒業式前夜の床(とこ)でくりかへし生徒らの名を諳んじゐたり

軍隊の日々を多くは語らざりし父の形見の水筒ひとつ

枇杷の木の葉蔭に鳩の鳴くこゑがはつかくぐもる七月正午(まひる)

自転車を必死に漕げどつぎつぎと追ひぬかれゆく長き坂道

  2016年新年歌会の歌
贈られし秋田犬に「ゆめ」と名付けたるウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン

(田村よしてる いとしきもの 六花書林)

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短歌人同人で、昨年12月28日に急逝された田村よしてる(善昭)氏の遺歌集を読む。

田村さんは、小池光氏と同じ高校の教師をしておられ、その縁で短歌を始めたられた。同じく同僚の野村裕心氏と共に、小池さんと親しくしておられて、われわれは「のむらたむら」とお笑いコンビのように呼んでいた。小池さんが水戸黄門ならば、支える助さん格さん的な存在だった。

一首目、両親のけんかの場面だろう。緊迫感がある。その場にいるしかない幼い作者の目。短歌定型に場面がうまく収まっている。読点を置いて読みやすい。四首目。昭和のころ、「蒸発」という言葉があった。平成になってから「プチ家出」という言葉もあったことを思い出す。誰もそういう気持ちになることがある。六首目は発見のうた。下句のリフレインが利いている。七首目。ああ、いい先生だったんだなあ、と思う。それだけで充分だ。十首目は、本人も出るつもりで出られなかった新年歌会の詠草。詠草の〆切の12月20日には元気だったのに・・・。自分の人生や生活と離れて、見たものから取材している、これからはこういう方向に進むつもりだったのかと読んだ。可能性はいっぱいあったのに。

歌は、人柄のままに温かく善良である。わかりやすい。このところ、細かいところを見てはあれこれ言う歌会に参加して疲れている頭には、この素朴さにほっとする。佳い歌である。歌会で、「これは教師あるあるだね」とか「既視感がある」などとわかったようなことを言ってしまいそうな自分を恥ずかしく思った。

夏の全国集会で一緒に司会をしたこと、何かの会の途中でお土産を買ったことなど、思い出す。いつも笑顔でやさしい田村さんだった。

謹んでご冥福をお祈りいたします。


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舟はゆりかご 小黒世茂 

2016-12-01 21:52:37 | つれづれ
国の名に穀物実るめでたさの粟は阿波国、黍は吉備国

いつの日か失くせし磁石も文鳥もみつかりさうな森のふところ

ふきげんな炎(ひ)をなだめつつ焼芋の内はほらほら外はぶすぶす

人間をちよつと休んで泥のなか雨乞虫とならび夕星をみる

いくたびも月は盈(み)ち欠けふたり子のお馬のわれに老いきざすなり

実母には抱かれしこと継母には背負はれしこと 舟はゆりかご

笑ふこと怒ることなく夜の沖を見てゐし小さき父を忘れず

いつの間にかわれの首よりずり落ちるマフラーのごとちちはは逝きし

別珍の赤靴みやげに母さんはきつと戻るよ賢くならうね

吉野にはあの世この世を縫ひあはす針目のやうな蝶の道あり

(小黒世茂 舟はゆりかご 本阿弥書店)

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「玲瓏」編集委員の小黒世茂の第五歌集『舟はゆりかご』を読む。
小黒さんとは、関西である歌集批評会などでご一緒することが重なり、親しくさせていただいている。思えば、いつからのおつき合いなのだろう。しっかりと思い出せない。最近では神楽岡歌会でお会いする。

略歴を読むと、1999年に歌壇賞を受賞し、第一歌集『隠国』を上梓されている。ずっとずっと先輩だ。なのにとても腰の低い方である。歌集を読みたいと思っていたところ、手渡していただきありがたかった。そのときも「読んでもらえますか?」とおっしゃる。どこまでも低姿勢でやさしい方である。

和歌山に生まれ、大阪に住む作者。旅によく行かれるようだ。記紀にくわしく、土地の歌に特徴がある。おおらかな言葉にユーモアがあり、エッセー集も二冊出しておられる。

三首目の下句にあるような、調子のよいオノマトペが楽しい。五首目では自らを「子のお馬」と言っている。身を低くして、軽く見てほしいという謙遜を感じる。だれもが敬愛する人なのに、低い位置に自分を置くことで安心するという「損なタイプ」なのだろうか。それは、六首目にあるような、幼い日の苦労から来るものかと想像した。実の母と別れ、継母に育てられた経緯などを詠んだと思われる歌があり、涙を誘われた。九首目の結句「賢くならうね」も泣かせる。別珍の赤靴という当時の貴重なものを詠み込んで、心に訴える。
ほかに高齢の姑、姉、息子さんの歌があり、「六十歳代が詰まった」歌集だ。

最近の短歌の傾向として、自分の来歴を消している歌によく出合う。歌は短いから、そこに多くのことを盛り込むことはできないが、その場だけの感覚を詠うことばかりでは、やはり物足りない。自分と近い年齢のひとの来し方を感じることで、自らをふり返ることは、やはり心に沁みることである。わたしよりすこしお姉さんの小黒さんの歌集を読み、そんなことを考えた。



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