[高野公彦選]
(和泉市・長尾幹也)
〇 手柄盗ってそのうえわれを能無しと評する人にお中元贈る
選者の高野公彦氏の寸評に「世の中は理不尽なことが多い。長い物に巻かれる悔しさ」とあるが、高野公彦氏と言えば、時には「愚直」とも評されるくらいの真っ正直なご性格の方であるから、氏は、本作を現実の出来事を詠んだ作品として捉え、前述のような寸評を述べられたのでありましょう。
然るに、和泉市にお住いの長尾幹也さんと言えば、朝日歌壇の常連中の常連として知られた、極めて著名な歌人であり、彼の作品がほぼ毎週のように当歌壇に掲載されているという事は、彼のご家族やご親戚の方々は勿論、彼と同じ和泉市内にお住いの方々、彼と同じ大阪府内の歌詠みの方々、更には、彼の勤務先の方々など、大勢の方々がご存じのはずである。
したがって、本作の内容が、仮に現実の出来事に取材したものであったとしたならば、彼・長尾幹也さんから「手柄」を盗んだ挙句に、彼を「能無し」と決め付けた人物、即ち、朝日歌壇の常連歌人たる長尾幹也さんが、屈辱感と重ね重ねの恨みに耐えながらも「お中元」を送らざるを得なかった人物は、必ずや、彼と職場を共にする人物であり、彼の上司である事は、殆ど間違い無いはずでありましょうし、もしもそれが本当の事であるならば、彼・長尾幹也さんの是からの職業生活に於いても、多大なる影響を与えるはずであり、その影響とは、彼、長尾幹也さんを失業させてしまうような質の影響であるはずである。
といった事柄に基づいて判断すれば、本作は、才人・長尾幹也さんが、サラリーマン社会に取材した短編小説でも書くつもりになって詠んだ「フィクション短歌」であると、断定せざるを得ない事にもなりましょうし、また、敢えて言うならば、この作品を首席に選んだ選者の寸評、即ち「世の中は理不尽なことが多い。長い物に巻かれる悔しさ」は、この作品に与えた寸評と言うよりも、むしろ、この「フィクション短歌」のテーマに就いて触れた短文として捉えた方がより適切な捉え方という事にもなりましょう。
〔返〕 生ハムに毒針刺してのお中元食えば忽ち冥途特急
(京都市・古川やす子)
〇 「みんなで」じゃなくて「ふたりで」見たいのと言えずに想い浴衣としまう
京都市にお住いの古川やす子さんは、この夏のせめてもの想い出として、彼と「ふたりで」映画を見たかったのであるが、気の利かない彼は、在ろう事か「映画なら、友達の友達も連れて、みんなで行こう」などと、凡そ、女心の「お」の字を知らないようなことを言い出したので、結局のところは、彼と二人で映画を見る事は勿論、彼への「想い」さえも「浴衣」と一所に箪笥の底にしまってしまわなければならない事態になってしまったのである。
〔返〕 「イントゥ・ザ・ストーム」この夏彼と二人で見た映画!恐かったから彼の首にしがみ付いたの!
(調布市・水上香葉)
〇 言霊の幸う国の木に止まり法・崩・不穏とふくろう鳴くよ
せっかく「言霊の幸う国」とまで言っているのだから、どうせなら「鶯が法、法、法華経と鳴く」と言って欲しかったのである。
入選したさに朝日新聞の「解釈改憲反対キャンペン」に迎合するのも宜しいが、大概の所で止めておかないと、逆に言霊様の祟りに遭うかも知れませんよ!
〔返〕 言霊の栄える国の木に止まり仏法僧と鳴く鳥がいる
(大阪市・石田貴澄)
〇 手作りの暑中見舞いの暴れ文字そうか元気か僕も元気だ
そのC調振りには感心する他ありません!
〔返〕 パソコンで表も裏も書けるから暑中見舞いは容易いもんだ!
(東京都・上田結香)
〇 「恐い事件あったね」「どの?」と言うような恐い世の中になってしまった
(徳島市・上田由美子)
〇 卵抱くキジバトの見る空の続き爆弾により子らが死にゆく
本当に怖い世の中になってしまいましたが、私にとっては、易々と朝日新聞社のキャンペンに迎合する歌人ちゃんたちの方が、それよりもずっとずっともの凄く怖い存在なのである。
〔返〕 防衛省の予算請求四兆円これじゃ益々軍事大国
(岐阜県・野原武)
〇 乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆる事なし
戦争体験の無い若造どもが「憲法九条」を云々している時代であれば、それも致し方無しとしなければなりません。
〔返〕 エノラゲイとはどんな芸お笑いの芸人こまつのよく遣るゲイだ
即興で詠んだ拙作ではありますが、「エノラゲイ/とはどんな芸/お笑いの/芸人こまつの/よく遣るゲイだ」と、音数だけは「五・七・五・七・七」の三十一音に納まっているのである。
(平塚市・風花雫)
〇 感じよく挨拶をして踏み込まず空気のようにこの街に住む
そうした心掛けでは、「いざ、鎌倉!」という事態に遭遇しても、誰からも助けて貰えませんよ!
〔返〕 人間は空気のようには住めません食事もするしオシッコもする
感じ良く挨拶をして通り過ぐ!「あの人油断のならない人だ!」
いつもいつも、ご近所の方々に「感じよく挨拶」をしているからと言っても、必ずしも、ご近所の方々からの評価が高いとは限りませんぞ!
私の今は亡き長姉は、居住地・秋田県羽後町の新町長を評して「今度の町長は、私のような皺苦茶婆さんにまで、丁寧なお辞儀をするから、なかなか油断がならないぞ!」などと言っていたのであり、同じ町内の同年輩の方々の殆どが、これと似たような事を口にしているのである。
(横浜市・松村千津子)
〇 四本の矢を射終へれば弓道着汗ばみ肩で息する八月
弓道なんて他のスポーツと比較すれば、どうせ老舗の御隠居様の芸妓遊びみたいなものですから、「四本の矢を射終へれば弓道着汗ばみ肩で息する」のも、当然の事なのかも知れません。
作者の意図からすれば、本作を通して、今年の夏の異常な暑さを強調して言いたかったのかも知れませんけど!
〔返〕 通し矢でその名馳せたる紀伊国(きのくに)の和佐大八郎の矢数八千
紀州藩士・和佐大八郎が京都・三十三間堂に於いて命中させた矢数を正しく言えば、「13,053
射中の命中数が8,133本」であり、その命中率は六十二%であったとか?
横浜市にお住いの松村千津子さんは、同じ道を志す武芸者として、彼の和佐大八郎の締めていた褌に集っていた虱の爪の垢でも煎じて飲んでみたら如何でありましょうか?
(富山市・松田梨子)
〇 人間の言葉をしゃべる猫かもね風かもね桃かもね妹
松田家に於ける話題は、専ら松田家の家族の自慢話である。
こんな事では、子供たちの社会性が育つはずも無く、視野を狭めるだけでありますから、先ずは、長女の梨子さんが率先して広く世間に目を向けなければなりません!
〔返〕 ご家族のことしか詠まない歌人かも松田梨子さん視野広く持て
(和泉市・長尾幹也)
〇 手柄盗ってそのうえわれを能無しと評する人にお中元贈る
選者の高野公彦氏の寸評に「世の中は理不尽なことが多い。長い物に巻かれる悔しさ」とあるが、高野公彦氏と言えば、時には「愚直」とも評されるくらいの真っ正直なご性格の方であるから、氏は、本作を現実の出来事を詠んだ作品として捉え、前述のような寸評を述べられたのでありましょう。
然るに、和泉市にお住いの長尾幹也さんと言えば、朝日歌壇の常連中の常連として知られた、極めて著名な歌人であり、彼の作品がほぼ毎週のように当歌壇に掲載されているという事は、彼のご家族やご親戚の方々は勿論、彼と同じ和泉市内にお住いの方々、彼と同じ大阪府内の歌詠みの方々、更には、彼の勤務先の方々など、大勢の方々がご存じのはずである。
したがって、本作の内容が、仮に現実の出来事に取材したものであったとしたならば、彼・長尾幹也さんから「手柄」を盗んだ挙句に、彼を「能無し」と決め付けた人物、即ち、朝日歌壇の常連歌人たる長尾幹也さんが、屈辱感と重ね重ねの恨みに耐えながらも「お中元」を送らざるを得なかった人物は、必ずや、彼と職場を共にする人物であり、彼の上司である事は、殆ど間違い無いはずでありましょうし、もしもそれが本当の事であるならば、彼・長尾幹也さんの是からの職業生活に於いても、多大なる影響を与えるはずであり、その影響とは、彼、長尾幹也さんを失業させてしまうような質の影響であるはずである。
といった事柄に基づいて判断すれば、本作は、才人・長尾幹也さんが、サラリーマン社会に取材した短編小説でも書くつもりになって詠んだ「フィクション短歌」であると、断定せざるを得ない事にもなりましょうし、また、敢えて言うならば、この作品を首席に選んだ選者の寸評、即ち「世の中は理不尽なことが多い。長い物に巻かれる悔しさ」は、この作品に与えた寸評と言うよりも、むしろ、この「フィクション短歌」のテーマに就いて触れた短文として捉えた方がより適切な捉え方という事にもなりましょう。
〔返〕 生ハムに毒針刺してのお中元食えば忽ち冥途特急
(京都市・古川やす子)
〇 「みんなで」じゃなくて「ふたりで」見たいのと言えずに想い浴衣としまう
京都市にお住いの古川やす子さんは、この夏のせめてもの想い出として、彼と「ふたりで」映画を見たかったのであるが、気の利かない彼は、在ろう事か「映画なら、友達の友達も連れて、みんなで行こう」などと、凡そ、女心の「お」の字を知らないようなことを言い出したので、結局のところは、彼と二人で映画を見る事は勿論、彼への「想い」さえも「浴衣」と一所に箪笥の底にしまってしまわなければならない事態になってしまったのである。
〔返〕 「イントゥ・ザ・ストーム」この夏彼と二人で見た映画!恐かったから彼の首にしがみ付いたの!
(調布市・水上香葉)
〇 言霊の幸う国の木に止まり法・崩・不穏とふくろう鳴くよ
せっかく「言霊の幸う国」とまで言っているのだから、どうせなら「鶯が法、法、法華経と鳴く」と言って欲しかったのである。
入選したさに朝日新聞の「解釈改憲反対キャンペン」に迎合するのも宜しいが、大概の所で止めておかないと、逆に言霊様の祟りに遭うかも知れませんよ!
〔返〕 言霊の栄える国の木に止まり仏法僧と鳴く鳥がいる
(大阪市・石田貴澄)
〇 手作りの暑中見舞いの暴れ文字そうか元気か僕も元気だ
そのC調振りには感心する他ありません!
〔返〕 パソコンで表も裏も書けるから暑中見舞いは容易いもんだ!
(東京都・上田結香)
〇 「恐い事件あったね」「どの?」と言うような恐い世の中になってしまった
(徳島市・上田由美子)
〇 卵抱くキジバトの見る空の続き爆弾により子らが死にゆく
本当に怖い世の中になってしまいましたが、私にとっては、易々と朝日新聞社のキャンペンに迎合する歌人ちゃんたちの方が、それよりもずっとずっともの凄く怖い存在なのである。
〔返〕 防衛省の予算請求四兆円これじゃ益々軍事大国
(岐阜県・野原武)
〇 乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆる事なし
戦争体験の無い若造どもが「憲法九条」を云々している時代であれば、それも致し方無しとしなければなりません。
〔返〕 エノラゲイとはどんな芸お笑いの芸人こまつのよく遣るゲイだ
即興で詠んだ拙作ではありますが、「エノラゲイ/とはどんな芸/お笑いの/芸人こまつの/よく遣るゲイだ」と、音数だけは「五・七・五・七・七」の三十一音に納まっているのである。
(平塚市・風花雫)
〇 感じよく挨拶をして踏み込まず空気のようにこの街に住む
そうした心掛けでは、「いざ、鎌倉!」という事態に遭遇しても、誰からも助けて貰えませんよ!
〔返〕 人間は空気のようには住めません食事もするしオシッコもする
感じ良く挨拶をして通り過ぐ!「あの人油断のならない人だ!」
いつもいつも、ご近所の方々に「感じよく挨拶」をしているからと言っても、必ずしも、ご近所の方々からの評価が高いとは限りませんぞ!
私の今は亡き長姉は、居住地・秋田県羽後町の新町長を評して「今度の町長は、私のような皺苦茶婆さんにまで、丁寧なお辞儀をするから、なかなか油断がならないぞ!」などと言っていたのであり、同じ町内の同年輩の方々の殆どが、これと似たような事を口にしているのである。
(横浜市・松村千津子)
〇 四本の矢を射終へれば弓道着汗ばみ肩で息する八月
弓道なんて他のスポーツと比較すれば、どうせ老舗の御隠居様の芸妓遊びみたいなものですから、「四本の矢を射終へれば弓道着汗ばみ肩で息する」のも、当然の事なのかも知れません。
作者の意図からすれば、本作を通して、今年の夏の異常な暑さを強調して言いたかったのかも知れませんけど!
〔返〕 通し矢でその名馳せたる紀伊国(きのくに)の和佐大八郎の矢数八千
紀州藩士・和佐大八郎が京都・三十三間堂に於いて命中させた矢数を正しく言えば、「13,053
射中の命中数が8,133本」であり、その命中率は六十二%であったとか?
横浜市にお住いの松村千津子さんは、同じ道を志す武芸者として、彼の和佐大八郎の締めていた褌に集っていた虱の爪の垢でも煎じて飲んでみたら如何でありましょうか?
(富山市・松田梨子)
〇 人間の言葉をしゃべる猫かもね風かもね桃かもね妹
松田家に於ける話題は、専ら松田家の家族の自慢話である。
こんな事では、子供たちの社会性が育つはずも無く、視野を狭めるだけでありますから、先ずは、長女の梨子さんが率先して広く世間に目を向けなければなりません!
〔返〕 ご家族のことしか詠まない歌人かも松田梨子さん視野広く持て