○尾高指揮BBCウェールズ管弦楽団(BIS/brilliant)CD
丁寧。ロシア系演奏に慣れていると簡素で即物的に聞こえる。グラズノフの均整美が透明感のある音と良い録音で示されていて、ロジェストより聴き易いかもしれない。二楽章第二主題の天国的な幻想をここまで美しく歌い上げた演奏は無い。グラズノフはマーラーと同様スコアを音にすればそれでいい。そういう現場主義的な即物性を持ち合わせている。楽想の移ろいに忠実に、慎重に描き上げていく真面目さが奏功している。ただ三楽章はその美学が裏目に出て民族的感興を喚起しない。二楽章のぽっとした明るさ(二楽章はほんらい暗いのだが)のまま聴けてしまう。遅いしレガート気味である。ソロ楽器に難度の高い楽章なのでミスなく丁寧に完璧に仕上げようという意図なのだろう。最後の弦の三連符リズムのスピッカートをここまできっちり揃えている演奏は特異で初めて聴いた。
ボロディン前後からロシア国民楽派のアカデミズムは4楽章制交響曲の中間楽章を極めて対照的な雰囲気を持つ独立したピースとして配置するよう意味を拡大もしくは単純化しており、その究極の実践者としてのグラズノフをやるのであれば西欧的な形式概念を外し、二楽章はどん底の無言歌謡、三楽章は祝典用舞踏音楽として異常なコントラストを付けて欲しいとは思う。カリンニコフの1番がわかりやすいと思うが、この場合四楽章は確実にバラバラなそれまでの楽章から主題を全部抽出し並置もしくは複置することで統一感を持たせる、歌劇における終曲の役割を果たす。統一主題があればそこに更に重層的な処理が加わる。盛りだくさんだからえてして冗長感があったりもするが、この曲もまさにそれである。この演奏様式だとどうなのだろう、と思うが、指揮者の構造重視の姿勢がグラズノフのベト的に緊密な書法の裏まで浮き彫りにしていて面白いのである。そう、勢いで曲作りをしないからこその分析的アプローチで冗長感を避けている。ただ各声部間のバランスがやや崩れてきているか。音響的にバラケ感がある。コーダでは見事に最強奏で団円させ、全体設計の巧みさを改めて意識させられる。なかなかの演奏。
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丁寧。ロシア系演奏に慣れていると簡素で即物的に聞こえる。グラズノフの均整美が透明感のある音と良い録音で示されていて、ロジェストより聴き易いかもしれない。二楽章第二主題の天国的な幻想をここまで美しく歌い上げた演奏は無い。グラズノフはマーラーと同様スコアを音にすればそれでいい。そういう現場主義的な即物性を持ち合わせている。楽想の移ろいに忠実に、慎重に描き上げていく真面目さが奏功している。ただ三楽章はその美学が裏目に出て民族的感興を喚起しない。二楽章のぽっとした明るさ(二楽章はほんらい暗いのだが)のまま聴けてしまう。遅いしレガート気味である。ソロ楽器に難度の高い楽章なのでミスなく丁寧に完璧に仕上げようという意図なのだろう。最後の弦の三連符リズムのスピッカートをここまできっちり揃えている演奏は特異で初めて聴いた。
ボロディン前後からロシア国民楽派のアカデミズムは4楽章制交響曲の中間楽章を極めて対照的な雰囲気を持つ独立したピースとして配置するよう意味を拡大もしくは単純化しており、その究極の実践者としてのグラズノフをやるのであれば西欧的な形式概念を外し、二楽章はどん底の無言歌謡、三楽章は祝典用舞踏音楽として異常なコントラストを付けて欲しいとは思う。カリンニコフの1番がわかりやすいと思うが、この場合四楽章は確実にバラバラなそれまでの楽章から主題を全部抽出し並置もしくは複置することで統一感を持たせる、歌劇における終曲の役割を果たす。統一主題があればそこに更に重層的な処理が加わる。盛りだくさんだからえてして冗長感があったりもするが、この曲もまさにそれである。この演奏様式だとどうなのだろう、と思うが、指揮者の構造重視の姿勢がグラズノフのベト的に緊密な書法の裏まで浮き彫りにしていて面白いのである。そう、勢いで曲作りをしないからこその分析的アプローチで冗長感を避けている。ただ各声部間のバランスがやや崩れてきているか。音響的にバラケ感がある。コーダでは見事に最強奏で団円させ、全体設計の巧みさを改めて意識させられる。なかなかの演奏。