湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ラヴェル:弦楽四重奏曲

2006年07月13日 | ラヴェル
○ベートーヴェン弦楽四重奏団(meldac)1961LIVE・CD

懐かしい音だ。カルヴェあたりを彷彿とする非常に感情的な音だ。比較的乱暴というかぶっきらぼうな力強さがあるが、艶のある音色には旧きよき時代への感傷が確かに宿っている。透明な響きの美しさを煽る演奏が好きな向きには薦められないが(モノラルだし)、単純に面白さを求めるなら(決して物凄く変なことをしているわけではないのだが)薦められる。リアルなロマンチシズムだ。ライヴならではだが二楽章のピチカートなどちょっとずれたり外したりしている。しかし激しさだけではなく流れとフォルムがきちっと守られており、流麗さも弾むリズムもないがリアルなアンサンブルのスリルを味わえる(うーんスリリングな面白さがあるかといえばそういうこともないんだけど)。実演なら迫力あっただろう。3楽章もリアルなロマンチシズムが横溢する。しかしぶよぶよにはならない(この曲だしね)。4楽章は絶対音感のある人は嫌がるだろうが、「音程」に特色がある。ファーストがかなり高めにとっていて、他の楽器もそれぞれ「極端な音程」をつけている。だから4本で協和するはずの響きも揃わない。しかしこれは実演ならではの感覚で、正規の音程でとるよりもボリュームと一体感があるという、何とも説明しがたい状況の生み出したものなのだ(実際はファーストのチューニングが狂ってきたけど4楽章アタッカだから直す隙がなく指で調整しただけだったりして)。収録を前提としていないライヴの作法だからそれが雑然と感じられても仕方ない(録音状態はロシアのものとしては比較的良好)。音色も(カルヴェ四重奏団だってそうだけど)揃っていないので、とても「正統派ラヴェル信者」には薦められないが、特に後半の盛り上がりは「ここまできてそう上り詰めるか!」といった一種異様な迫力があり特筆できる。私はけっこうこの最後あたりの自主性を保ちながらの丁々発止は好きだ。全体としては○。いわゆる旧来の解釈ぶりであり余り特徴的なものはないが、単独では十分楽しめる。

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