湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆プロコフィエフ:交響曲第7番「青春」(1951-2)

2018年01月16日 | Weblog


アノーソフ指揮

◎チェコ・フィル(ARLECCHINO他)1954・CD

音の悪さが悔やまれる名演(当然モノラル)。ロシア伝統のロマンティストにしてロジェストヴェンスキーの父、アノーソフの手による演奏である。曲目はこれまたロマンティックなプロコフィエフの7番。この人の指揮は骨太の強さとうねるようにダイナミックな曲作りが印象的である。ゴロワノフに似たところもある、と言えばどのような感じか伝わるかと思う(そういえばゴロワノフもプロコが得意だったらしい)。この演奏ではその特質がうまく発揮され、無邪気でスケールの小さな曲という世評を覆すほど壮大で強烈な印象を残す。「青春」と呼ばれるこの曲は5、6番の系譜に連なるにしては余りにあからさまにわかりやすさを狙った旋律的音楽である。原曲は子供向けラジオ番組用の音楽であったそうで、書いていくうちに規模が大きくなり交響曲に育ってしまったらしい。たしかに「青春」というより「少年時代」と言った方がしっくりくるようなところもあり、愛らしい旋律、きらきらした音色、簡素な構造、どれをとっても何十年も溯った作品・・・即ちプロコフィエフ自身がまだ子供だったころの音楽・・・に思えてくる。何といっても一楽章の第二主題、四楽章の末尾で印象的に回想されるじつに素晴らしい旋律がこの曲に一本筋を通している。プロコの場合旋律そのものもそうだが、旋律の下でうねる内声部のかちっとした構造がウラの魅力となっており、この名旋律の下でうねうねとうねる内声がなければその魅力は半減していただろう。旋律の中にオクターブの跳躍を混ぜるところもいかにもプロコであり、先祖がえりしたとか古臭いとか言ってもやはり、これは紛れも無くプロコフィエフの作品である。楽しい思い出を振り返り、長かった生涯を回想するプロコフィエフ自身の姿が目に浮かぶ。ともすると無邪気な旋律だらけで飽きてしまうかもしれないこの曲に対してアノーソフがとった態度は、あくまで真剣に演奏する、というものだった。テンションを極度に高く保ち、遊びの無い凝縮された音楽を作る。いい年したオトナたちがギリギリ緊張感を保ちながら懸命に子供音楽を演奏する、それはともすると滑稽になりがちだが、プロコフィエフの素晴らしさは懐の深いところ、こういった演奏に対してはそれなりのオトナ音楽に変身するのが面白い。オトナのほのかな感傷を刺激する「おもいで」音楽、まあこの演奏は「ほのかな」などという薄さは無い「濃いい」演奏ではあるが、「青春」交響曲を理解するためには必要な演奏であると思う。プロコ元来の娯楽性は保たれているので、快楽派の方にもおすすめ。同曲コーダ有無の2版がある。好き好きだが私はないほうが落ち着いて終われる気がする。

○ソヴィエト国立交響楽団(DEUTSCH SCHARPLETTEN,ETERNA)LP

いきなりズーンと異常に引き伸ばされた低音に度肝を抜かれる。散漫なオケが不自然に遅いテンポで序奏部(第一主題)をかなで出すと、なんじゃこりゃ、と思ってしまう。しかし有名な第二主題になるとテンポはいきなり速くなり、雄渾で美しい歌が流れはじめる。情緒たっぷりの演奏ぶりはとても響くものがある。この主題をここまで真情を込めて感傷的に歌い上げた指揮者がいるだろうか。終楽章での再現の場面は更に自然な見栄を切り感動的に歌われる(ただ、この録音、基本的にヴァイオリンが遠く弱すぎる。そのため主題の最初の低音のフレーズが伴奏に埋もれて殆ど聞こえない。難点)。アノーソフはかなり恣意的なデフォルメを施す指揮者だが、この曲に限ってはとても自然で地に着いた感じがする。1、4楽章以外の楽章も、彫りの深い表現で耳を捉えて離さない。3楽章のそこはかとない哀しみが涙を誘う。そうだ、「青春」はこういう曲だった。プロコフィエフの遠い目が捉えた夢幻のような幼き日々、その思い出をひとつひとつ音に移し替えていったのだ。4楽章を何度も何度も聞いた。録音が悪すぎるので◎はつけられないが、ひょっとするとチェコ・フィルの盤より個性的で深みを増した演奏と言えるかもしれない(録音年代がわからないのでどちらが後なのかわからないが)。オケが持ち前の散漫さ(とくに弦)を発揮しているのは目を閉じて○をつけておく。いい曲だな、と少し幸せな気分になる演奏です。

※2004年以前の記事です
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